価値創造の知・第31夜 アイデアのつくり方① 基礎編

2017年2月27日 『アイデアとは既存の要素の新しい組合せ以外の何ものでもない』

アイデア/アイディア(idea)とは、「頭に浮かんだ考え」「発想」「着想」「思想」などの意味を持つ英単語です。(引用:ニコニコ大百科)

ビジネスにかかわらず、色々な場面で
「課題を解決するために、みんなで何かいいアイデアを出しましょう」
という「場面」に、皆さんも参加されたことがあると思います。
でも、なかなかそこからいいアウトプットに繋がらないことも経験しますね。

 さて、下に記す3項目の真髄(一番重要なコト)は共通しています。それは、一体何でしょうか?三番目の『禅』の重要なことが一体何かが鍵ですね。これが観えるとモノゴトの本質が洞察できるようになります。(グループで10分で検討していただくこともあります)
① アイデアのつくり方
② イノベーション
③ 禅

それでは、それらを3夜に分けて綴っていきたいと思います。
最初に『①アイデアのつくり方』からいきます。

写真の本『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング)の原著の初版は1940年に出版され、数十年間売れ続けている知的発想法のロングセラーです。
日本語版は、約100ページの薄い本ですが、大きい書店に行けば必ず置いてあります。研修・セミナーの場ではよくご紹介します。

そのエッセンスを記します。
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アイデアの作成について、知っておくべき一番大切なことは、
“ある特定のアイデアをどこから探し出してくるかということでなく、すべてのアイデアが作りだされる方法に心を訓練する仕方であり、すべてのアイデアの源泉にある原理を把握する方法なのである”

アイデア作成の基礎となる一般的原理については、大切なことが二つあるように思われる
1.アイデアとは既存の要素の新しい組合せ以外の何ものでもない
2.既存の要素を新しい一つの組合せに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい

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いかがでしょうか。今まで連載にお付き合いしていただいた方達はピンときますね。
上記の1.2.は、第26夜「未詳俱楽部入門」で記した松岡正剛師匠の『編集』そのものですね。
第18夜「間(ま)からご縁へ」はその実践例です。
第17夜「間(ま)と「創造」はそれを実現できるようにしたダイアグラムとなります。

次に、谷口正和師匠は「円形情報から球体アイデアへ」で下記のように説明をされています。
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気付きは、ほんの一瞬の出来事です。
それはあらゆる気付きの連鎖が、アイデアという発想を生み出します。常に気付きを意識することで、重層性が生まれ奥行きとなって表れていきます。

一瞬に思うことは幾重にも重なり合った情報がもたらします。
円を描くように収集された情報も、重層性を持つことでその情報は、球体へと変化していきます。
球体となって集約されたアイデアこそが、パラダイムチェンジを巻き起こすのです。
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上記、“①『編集』における関係性”と②『気づき』における重層性の双方の結合
が重要なポイントになります。
なので、「情報収集/選択の努力と、編集/創造スキルの習得」を実践され、相乗されると一気に価値創造の飛躍があります。

『アイデアとは既存の要素の新しい組合せ以外の何ものでもない』

さてさて、次夜は「アイデアとイノベーション」の関係を綴りたいと思います。
根っこは全く同じなのです。楽しみにしてください。
第31夜・価値創造による経営革新

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価値創造の知・第30夜 新価値創造研究所『経営革新のススメ』

2017年2月24日 新価値創造研究所『経営革新のススメ』

福沢諭吉の著書に『学問のすすめ』があります。価値創造夜話の連載が30夜を迎えたので、最近寄稿した「顧客価値創造にもとづく経営革新」をそのまま下記『経営革新のススメ』としてご覧いただけると幸甚です。

経営革新のすすめ「顧客価値創造にもとづく経営革新」ファイル

価値創造の知・第29夜 未常識と非常識

2017年2月19日 『第3の道』

前々回、前回の夜話は「志」「新しい目的」でしたので、その実現に深く関係する「未常識と非常識」をテーマにしました。
「価値創造」にとって、「常識」を離脱・逸脱することは必須なのですが、それにまつわる痛い体験を二つ綴ります。

1.第10夜詳細:「オーディオのイノベーション」
1992年の経営会議で、
「2005年前後を境にして、オーディオはCDの時代から、超高密度メディア(USBメモリ)や通信の時代に移行する可能性が大きい。
その為の準備を2000年までに行いたい」
という旨のプレゼンテーションを委員会メンバーを代表して行いました。

当時はCD全盛の時代ですから、すぐに担当部長に呼ばれて、
「橋本よ、そんなことは起きるはずがない」と。
その報告は非常識に思えたのでしょう。
その担当部長が退職されるときに、私のところにきました。
「お前が云うとおりになったな」
その時に、返答したのが、
「それは未常識だっただけです。超高密度メディア委員会メンバーのシミュレーションをただ図解してお伝えしただけです」と。

2.第14夜詳細:「社長直訴そしてヒット商品緊急プロジェクトへ」
1990年移行、ホームオーディオは衰退期に入っていました。
そこで、「『性能・機能』ではなく、『効能としてのライフスタイル』をベースにして、異業種コラボレーションでヒット商品を生み出す」
という提案を1995年の経営会議で行いました。
その後に、ある役員からお呼びがかかり、
「新社長がOKしても、こんな提案が上手く行くわけがないだろう。
一体、何を考えているんだ・・・・」
次々に厳しい言葉が続いて浴びせられました。

今、「目前にある課題・問題」に集中して、それを解決することを責務として事業を任せられている人からみたら、そのように映ったのもわかります。
ただ、第13夜「倒産、そして新価値創造」を体験してきた自分からは、
「役員の人達が退職するまではそれでいいかもしれないけれど、その後に残った多くの若い社員や家族のためには、今ここで新しい目的のために行動に移さなければならない」
という熱い思い(志)がありました。

役員からみたら、良からぬ非業、非常識に見えたでしょう。
どちらも自分からの常識から見ていたのです。そして、私の方は「後になれば判る未常識」だったのです。

①は時間軸で、②は対立軸で「常識とは何か」を教えてくれます。
そんな『常識』『未常識』『非常識』を教えてくれたのが、写真の本です。

それは31年前、つまり自分が30歳の時に出会った山本七平さんの著書です。有楽町にある本屋さんで、何故かこのタイトルが気になり、「常識の研究」「常識の落とし穴」と後に続く常識シリーズに夢中になりました。その後の自分の「常識を超える未常識」の基盤になりました。

丁度、「倒産、そして価値創造」(第13夜)に記した前職・パイオニア社の当時2000人規模のセンター工場で労働組合の支部書記長をしていた頃です。
30~35歳の時は、家に帰ってもなかなか眠れずに、夜中の2時くらいまで起きていて、自分の磨き方、生き方や将来の道筋を考えて悶々としていました。

組合執行部の会議の合間にその話しをしたら、「オレも、オレも」と相槌があり、自分だけではないのだと嬉しくなったことを思い出します。会社人生のその時期は、「次のステップへの大事な時」なのですね。きっと。

さて、山本七平さんは「常識」について次のように記しています。
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「常識」とは分析不可能なものであり、また明治になってできた言葉です。小林秀雄によれば、徳川時代には「常見」といったそうです。[反対語は断見(だんけん)]
常見(コモン・センス)の「センス」は「識」よりも「見」に近い。私達は確かに「常見」の世界に生きていて、「常見」で世の中、世界を見ている。
ただ、「見」は必ずしも「識」ではない。視点を違えて別の見方をすれば、「常見」とは違う面が見える。このさまざまな「見」を総合して判断を下せば、そこにははじめて「真の常識」が成り立つであろう。
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事例を二つほど記します。
1. 量の変化が質を変える
日本の高校進学率は、経済成長とほぼ同一カーブで上昇し、昭和30年50%、40年70%、50年90%となっている。これを量の問題として捉えると、これに対する教育施設の拡充、教員の補充といった問題になり、それに対応するのに大わらわになる。

その時、量に対応すれば問題が解決するのではなく、ここで問題の質が変化するのだとは、殆ど誰も考えない。
いわば、それ以前はもちろん、クラスの50%が高校に進学する時でも、残りの50%は、自分たちは「落ちこぼれだ」という意識は持たないし、社会もそういう目では見ない。

ところが90%前後高校進学となると、そうはいかない。ここで問題の質は変わり、これは教育施設の量の拡大では対応できない教育問題となってくる。

2.「二者択一以外」の道
日本に、カモシカ問題がある。同じようにどの国でも、絶滅に瀕した動物を保護すると、急速に増加するが、今度はその動物による食害問題が起こる。

すると、保護をやめて一定数以上は射殺・捕獲すべきか、あくまで保護すべきかが当然問題になる。日本でも檜の苗木をばりばり食べられてしまえば、山林業者にとってはカモシカは害獣ということになるであろう。保護を続けるなら、山林の保護をどうするか、業者への損害保障はどうすべきかが当然問題になる。

そして、こういう場合、議論はしばしば保護か、捕獲・射殺かの二者択一になりやすく、多くの場合、両者とも自説を固持して譲らないという対立になりやすい。

これはすべての問題についていえる。環境問題、貿易問題、また企業内の問題、各人の抱える問題、そのすべてについて、問題が二者択一のように見えてきたら、そのいずれでもない「第3の道」があるのではないか、ともう一度、探索してみる必要があるのであろう。

上記二つには、ビジネスのイノベーション・価値創造の本質が記されていました。
・「量」が、一定の水準を超えると、「質」が、劇的に変化する(第10夜、第11夜、複雑系)
・「矛盾」とは、発展の原動力“矛盾の止揚”である(第15夜、第17夜、第18夜)
この「質への変化」「矛盾の止揚」の視点・視座を柔軟に活用できることが、創造性「クリエイティブ&イノベイティブ」(第1夜)への本筋です。

ただ、実際の現場では、それまでの「常識」で成功した人達や組織が存在して権力(既得権)を持っているので、新しい「常識」に移行するのが遅くなったり、困難になることがあります。

さて、そこで重要になるのが、「何が変わって、何が変わらないのか」という認識です。特に、「何が変わらないのか」ということを共通認識することが移行をスムースにさせることが多いことを経験しています。
その双方をトップが認識されて、リーダーシップを発揮している会社は、卓越した機動力があります。

さて、本研究所の研修・セミナーでは、それまでの「常識」という分厚い黒い殻を破る心得と方法を先ず最初にお伝えしています。(コメントに追加しています)

そこでのポイントは、「これまではこうやって上手くやってきた」という従来のやり方や考え方を捨て去り、常識の壁を破り、その奥にある「3つの本質」を掴み取ることです。(第11夜)
それが価値創造の「トリニティ・イノベーション」(第21夜)です。

さて、山本七平さんは、あの有名な「日本人とユダヤ人」の作者とも言われています。
特に、明治維新という大変化の前後で起きた価値観の変化や、武士以外の庶民がどうして上手に対応できたのか、ということも分かり易く説明されています。
その示唆は、現在生じている日本や企業の課題や、これから起きるであろう諸問題への対応にはたいへん有効です。

30歳の時に、山本七平さんの書物から、ものの見方や考え方、特に「第3の道」に触れられることができたことを幸せに思います。そして、是非、若い方達にもそれらを経験して欲しいと思っています。

第29夜・価値創造による経営革新

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価値創造の知・第28夜 新しい目的をつくる

2017年2月16日  それは何ために?

私が編集の基礎を学んだ「プランニング編集術」(松岡正剛監修:第26夜)の編集エクササイズに「コップの言い換え」というお題があります。「コップ」は、どのように言い換えられるのでしょうか。

コップを「容器」と言い換えることができれば、Glass、花瓶、、歯ブラシ立て、水を入れた楽器、等々とイメージが広がります。コップを割れば「凶器」としても使えます。糸で紙コップをつなげれば、おもちゃの糸電話になります。
花器や楽器、凶器など、それらはコップの新しい使い道です。それは当初の飲料を飲むという目的と違う新しい目的になります。モノゴトの視点、視座の転換、逸脱です。

 様々な業種の経営をご支援していますが、事業を成立させているその会社の「要素・機能・属性」の中から、上記新しい目的を見つけることで、新商品や新事業を構想することができます。
これは効果覿面(てきめん)です。これは「生き方」「人財開発」にも応用、活用できます。

さて、動物園で新しい目的の事例を見てゆきましょう。従来の動物園はパンダやコアラ等の奇獣・珍獣で人を集めていました(それが目的でした)が、どんどん観客数が右肩下がりになりました。旭山動物園の獣医係長が「普通の動物の命の大切さを伝えたい」という新しい目的を見つけて実行、展開、更新することで、今の旭山動物園の隆盛があります。獣医係長は園長になりました。
そうなのです。人生や会社経営に行き詰っているときに先ず実践していただきたいのが、新しい目的を上手に真剣に見つけることです。人生と経営の風景ががらりと変わります。
その心得と方法は、トリニティ・イノベーション(第21夜)ステージの一番最初に「理論と演習」でお伝えしています。

さてさて、今夜ご紹介するのは「紺野 登」さんです。第15夜にも登場していただきました。
2004年、私が49歳の時に、総合研究所のトップから「研究所の二つの顕在的な課題・不足を解決する」ため呼ばれました。
それは、
①顧客と接触が不足しているコト
②将来の構想力が不足しているコト
でした。
「総合研究所の10年先の可能性、リスクをシナリオプランニングで洞察・構想する」ために、日本のシナリオプランニングの第1人者の紺野さんにモデレーターをお願いしました。
そこで、先の見えない不確かな未来を洞察する心得と方法をナビゲートして貰いました。その最中に、何か紺野さんと自分の共通項が多いことに気づきました。
聴いてみると、高校も大学も一緒だったのです。それも、高校の同級生で隣のクラスにいたのでした。(第22夜)
ご縁を感じずにはいられませんでした。

その重要なプロジェクトの中で、紺野さんが大事にされていたのは、

「一体、それは何のために」

という「目的」とさらに「未来の新しい目的、世界」について深く、高く、広く質問され、メンバーから未来の可能性を引き出していました。
2006年にそのプロジェクトで作成したものは、それまで作成したものと次元が違って納得のいく仕上がりになりました。
それはこれまで連載してきた、①編集工学(第26夜)、②目的工学(第28夜)、③価値創造工学(第21夜)の3つの工学の知が一つになった結晶です。
早速、発表会用に、2軸でできる4象限シナリオに基づいた10分のビデオ(2017年の未来)を作成しました。それは、10年後の世界を見事にいい当てることができたのでした。
是非、会社を経営を革新したい方達に見ていただきたいですね。(詳細は第15夜に記しています)
この結合の心得と方法(新しい型)が、その後の自分の知の財産になりました。

その紺野さんが2013年に著されたのが、写真の
「利益や売上ばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか」(紺野登+目的工学研究所)
です。
少し抜粋します。

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産業革命以来のビジネスと言えば、人々の消費と所有というニーズを満たすために、目に見える有形のモノをつくり、これを提供することがもっぱらでした。
多くの場合、価格や品質、経済性や利便性、時には新奇性やプレゼントなどに訴えて、その購買を促してきました。
人々のウォンツやニーズは、「技術ありき」のようなやり方だけで満たすことが難しく、すっかり口うるさくなった消費者や顧客の購買意欲を引き出すために、
モノとモノ、あるいは、サービスや経験など無形のコトと抱き合わせるようになりました。
(中略)
そして現在、--それこそ目的工学が求められている大きな理由の一つでもありますが、--従来のモノづくり、その発展形としてもコトづくりを超えて、
「コトづくりのなかにモノづくりを埋め込む」という考え方に変わってきています。

言い換えれば、ある目的を実現するために、あるべきコトを構想し、これをビジネスモデルに具体化し、ここにふさわしいモノ(手段)--それはローテクでもかまいません--を探したり、
時にはすでにある資産を再活用することです。
既存の資産や外部の知を、新しい視点やビジネスモデルで組み替えていくこと。これもイノベーションといえるのです。
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「手段の時代」から「目的の時代」です。手段にとらわれすぎて本質を失い、傾く経営を何度もみてきました。
本書は、まず「利益」ではなくて、「よい目的」を考えるビジネスを実践するために書かれています。
より良い未来を創ることを志向するビジネスパーソンにお薦めです。

AIやIoT、Robotという手段は間違いなく進展していくと思います。その特に、その手段がどのような意味を持ち、上位にある「よい目的」と自身の強みや資産とをつなげて価値創造することが肝要です。
「良い目的」が見つかると、良い未来が見えてきます。そうすると、それを実現するための良きパートナーも見えてきます。
上記を、①「構想」し、②「行動」し、③「更新」していく時代です。

さあ、隆々とした未来を創るために、「懸命」と「賢明」を結合し、共に顔晴って頑張ってゆきましょう。

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価値創造の知・第27夜 志(こころざし)

2017年2月13日 田坂広志さん

皆さん、田坂広志さんをご存知ですか。2011年 民主党政権にて内閣官房参与として原発事故対策、原子力行政改革、原子力政策転換に取り組まれていたので、よくメディアに出られていましたね。
田坂さんと私の出会いは20年前で、 田坂さんが日本総合研究所で「産業インキュベーション」のビジョンと戦略を掲げ、10年間に民間企業702社とともに、20のコンソーシアムを設立し、民間主導による新産業創造に取り組まれていた時でした。

 ちょうど、前職で多くの異業種コラボレーションによるヒット商品を創出していた時に、上記の「産業インキュベーション・異業種コンソシアム」の会合に呼ばれました。
そこで、スピーチを依頼されたのですが、その内容は後述します。

さてその時から感じていたのは、この方は「志(こころざし)に真剣であり本気の人」ということでした。
「未来を拓く君たちへ」(写真)で、「志」とは何か、を記されていますのでその一部をのせます。

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「志」とは、何か。
一言で述べておこう。

与えられた人生において、
己のためだけでなく、
多くの人々のために、
そして、世の中のために、
大切な何かを成し遂げようとの決意。
それが「志」だ。

その「志」を抱いて生きる。

そのことを、決して忘れないでほしい。
では、なぜ、我々は、「志」を抱いて生きるのか。
この本では、君に、そのことを語ろう。
だから、この本の副題は、
「なぜ、我々は『志』を抱いて生きるのか」
その理由について、君に語ろう。
その理由を知ることは、
この人生という名の山の
登り方を知ること。
そして、それは、君の人生にとって、
とても大切なこと。

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凄まじく伝わってくるものがあります。「広志」さんという名前は、志を広める人という意味が込められているのですね。現代のスーパー伝道師なのです。
人生に前向きな私の友人達が、田坂さん塾長の下記「田坂塾」に入門しています。

「田坂塾」とは、企業の経営者や組織のリーダーの方々が、互いの人間成長をめざし、切磋琢磨をしていく場です。
そして、「現実を変革する知の力」としての「21世紀の知性」を身につけた人間像を目指した活動をされています。

さて、自分が40歳前半の時にに、田坂さんから大きく影響を受けたことを3つ上げます。
1.「志」を抱いて生きる
2.「使える弁証法」
3.「知行合一(ちぎょうごういつ、ちこうごういつ)」
=知(知ること)と行(行うこと)は同じ心の良知から発する作用であり分離不可能である

よく、自分のセミナーや研修では、事業開発や人材開発を航海に例えることが多いのですが、これから船出(新事業)する時に、重要なコトは、錨(いかり)を何に置いているのか、そして、何処をめざしていくのか(北極星)、を明確にしてゆくことです。(価値創造第25夜 トリニティーイノベーションの①②です)

それを導きだしてくれるのが、1.「志」と2.「弁証法」になります。そして、1.&2.を結ぶ新機軸がみえたら、羅針盤を描くことができます。広い視野と大局観が生まれます。あとは「知行合一」あるのみです。

上記①②③と、全く同じことを前職の「ヒット商品プロジェクト」でプロデュースしていました。そして、様々な企業をご支援する現在も、その考え方、進め方は全く変わっていません。

さてさて、「ヘーゲルの弁証法」です。
これからのIoT社会、AI社会の未来を洞察する時の最強のツールになります。「使える弁証法」(2005年初版)を是非ご覧になって、使いこなされることをお薦めします。
「ビジネス生態系」「自分の人生」「ライフスタイル」等々、活用の幅はとてつもなく広いものがあります。

最後に、首記の自分のスピーチの一部をお伝えします。

「(前略)
田坂さんから、先ほど「弁証法」(=正反合)のお話しがありました。『知』にも触れられていたので、それについて思うところを述べます。

現在の知は『教養』ですが、それがITの時代になって進化が必要になってきたと思います。
弁証法で捉えれば、過去の江戸時代に大事にされていたのは、『修養』(徳性をみがき、人格を高めること)です。

その中心は、肚(丹田)にあり、肚の文化でした。茶道も柔道も相撲もそうですね。その修養が『正』です。
それが、頭のほうに上がってきて『教養』重視になったのが明治です。その教養が『反』です。

さて、21世紀の「知」はどのようになるのでしょうか。
弁証法でとらえれば、それは、「修養(正)」と「教養(反)」が結合した『修教(合)』の時代ではないでしょうか。
21世紀の日本に求められている、新しい「知」=『修教』をこの異業種コンソシアムで共に創り上げたいですね。
(後略)」

20年前にお伝えしたこの気持ちは今も変わっていません。
「おもてなし」(第2夜)と「現在の日本の教育」に求められているのは『修教の知』と確信しています。

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価値創造の知・第26夜 未詳(まだつまびらかでないこと)

2017年2月8日 未詳倶楽部

前職の40歳の時から、異業種コラボレーションをして「連続ヒット商品」をプロデュースしていました。その真っ只中に、「会えば、きっと橋本さんの将来を変える人になると思うのでおつなぎしたい」と知人に云われ、すぐに代官山近くにある事務所に伺いました。

 それが、松岡正剛師匠です。

メディアでは「知の巨人」と云われていますが、それを遥かに超えています。尋常ではなく蓄えられた知識と、それらを縦横無尽に取り扱う編集能力が凄まじいのです。そして、師匠の元に集う方達がとびきり格別で素晴らしい。
さて、ここでいう『編集』について語られていることを著書「知の編集術」より抜粋します。

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私が使う「編集」という言葉は、とても大きな範囲に使われています。普通は、新聞や雑誌の編集者がしている仕事を「編集」というのですが、そういう狭い見方をしていません。たとえば、人々が言葉や仕草でコミュニケーションをすること、その全てに「編集」というものが生きているとみなします。
だから普段の会話にも学問にもエンターテインメントにも、スポーツも料理も「編集」が生かされているわけです。
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当時の自分には、何かと何かをクロスすることで、生まれてくる「新しい性質・効能」、或は、動的には「新しい命づくり」の方法を「編集」と受け止めていました。
現在は当たり前なのですが、20年前に、当時では珍しかった異なる会社同士をつなぎ合わせる、編集する「異業種コラボレーション」、「新しい文化の創造」を使命にしていました。
その縁でお引き合わせしていただいたのだと思っていましたが、そんなに浅いレベルの話ではなかったことが後々わかりました。

事務所に何回か出入りしていると、「未詳俱楽部」という松岡師匠の主宰するプライベートクラブがあることを知りました。
どのようなものなのかも明らかにされずに、一泊二日の「未詳俱楽部」に参加することを許されました。
「未詳」とは、まだ詳しからず、まだつまびらかでないのです。

最初に例會の案内状が届きます。そこには、集合の時間と場所(日本各地)が書いてあるだけです。
そこに集う女性達は、服装がノーマルではなく半数以上が着物でした。男性も何か雰囲気が違い、サラリーマンのような自分がくる「場」ではないと感じました。
そして、集合場所で一枚の次第が渡されますが、プログラムの一切が伏せられたまま進行します。この伏せるふるまいが粋(いき)にもつながっていきます。

会員証(写真)の裏側には、五つの会則が記されていますが、その二つを上げます。

一.会員はかけがえなく、あてどもない気質をそなえている

一.会員はみだりに当倶楽部のことを口外しない

ということで、「みだりに(=これといった理由もなくやたらに)」記すことができません。(笑)

さて、その集合場所からしつらわれた会場に移動します。
そこは、おもてなし(第2夜)の世界です。そのしつらいから皆さんは亭主の趣向を想像していくようなのですが、粋(いき)な人達の中に野暮な自分がいることが判ってきて冷や汗がどっとでてきました。
それから、特別なゲストが登場します。様々なジャンルの「格別で別格な方達」が毎回来られるのです。そのゲストと共に夜のプログラムは進み、夜中を越えて宴は続きます。

そこでは、主人と客は分離されていなくて、毎回「主客一体」「一期一会」となり演じていきます。
「能、大鼓、三味線、謳い、俳句、料理、書、歌、茶道、茶碗(第5夜)・・・・」

それは、「日本という方法」を身をもって体感できる「至福と冷や汗」の入り混じった極上の「場」と「時間」でした。ただ、自分は粋人ではなかったので、いつもスタッフから「イジラレテ」、場を和ませる役どころでした。

最初の例會のその夜に師匠のヒアリングがあり、一人ひとり俳号をいただけます。
自分の俳号は、「耳窓」です。それは奥深いのです。
(そして、それがメールの頭の「jiso」になっています)

さて1998年に入門して以来、一年に2回くらいの「未詳俱楽部」に十数年参加し続けました。
また、そのご縁で、「連塾」「時塾」「椿座」にも連続参加して、「日本という方法」を自分の心と体と脳に刻み付けました。
それらの「極上の場」に、絶妙のタイミングで参加できたことを感謝しています。
さてここまで、「未詳俱楽部」を「みだり」に記したつもりはないのですが、破門だけはお許しください(笑)

前夜(第25夜)にも記しましたが、自分(新価値創造研究所)は、価値創造の肝となる方法を下記「トリニティ(三位一体)イノベーション」にまとめました。

①人を深く読む: 禅、わびさび
②未来を高く読む: 守破離
③広く全体を読む: 間(ま)

①②③それぞれに右側の「日本という方法」を中心に理論と演習を入れて、もう2000人以上の方達に、研修・セミナー・プロジェクトでお伝えしてきました。
それはこの「未詳俱楽部」の実体験が元になって「再編集」したものです。
より多くの方達に「日本という方法」と「ビジネス」を結合・編集したものをお伝えして、恩返ししてゆきたいと思います。

松岡師匠、ありがとうございました。これからも宜しくお願い致します。 橋本元司拝

 

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価値創造の知・第25夜 15年で3000冊を読む

2017年2月7日 「本」を読むとは?

萬巻の書を読むに非ざるよりは、寧んぞ千秋の人と為るを得ん。
昨日は東京世田谷の「松陰神社」を訪ねましたが、それは松下村塾聯(松下村塾の床の間に掲げられていた言葉)です。
直訳は「沢山の書物を読破するのでなければ、どうして長い年月にわたって名を残す、不朽の人となることができるだろうか。できはしない」

今夜は「本を読むこと」をテーマにしたいと思います。

35歳の時に、埼玉・川越工場から目黒本社に異動になりました。第14夜「社長直訴そしてヒット商品緊急プロジェクトへ」にもそれを記しましたが、エンジニア(技術)からプランナー(企画)への転身でした。
埼玉の自宅(鶴ヶ島方面)から、目黒本社までの片道通勤(痛勤)時間は、1時間45分なので往復3時間30分にもなったので、一念発起して一日一冊、本に集中して読破することを自分に課しました。
それで毎週金曜日の夜に乗換駅の池袋で下車して、ジュンク堂書店と東京旭屋書店のどちらかに行き、次週の5冊を購入することが週課となりました。

最初の頃は、通勤時間では足りなくて休日も使っていましたが、だんだんといいリズムができてきました。それは、幅広くプランナーの心得と方法を学ぶこともありましたが、
何よりも「他人の時間」ではなく、「自分の時間」を使っていることにあります。帰りの電車では熱中してしまい、降車駅をすごすことも多くありました。
さて、半年の100冊を過ぎると関心領域も広がってきて、本屋さんに行くと、あちらこちらから「本」が自分を呼ぶのです。これは今でも同じです。

いつの間にか、「知性・心性・脳性」が鍛えられたようです。
それが、異動から4年目の社長直訴(第14夜)に繋がっていきました。当時400冊の本達も自分の背中を押してくれました。
100社との異業種コラボレーションではそのための事前知識を身につけ、問題・課題が出る度に、それに適応した本を複数購入しました。
・「不確かな時代を読み解く方法」(第15夜)では、弁証法やシナリオプランニング関係。
・「100社の企業訪問フォーラム」(第23夜)では、訪問先関係。
・「文化経済研究会」(第24夜)では、150人のバリューイノベーター関係。

そのようにして、15年間で3000冊と積み重なりました。
「木」に例えれば、この本達が自分の「根っこ」になりました。
あちらこちらに根を伸ばし、また絡み合うものもあり、深く根を下ろすものもあり様々です。
これらが、自分の幹を支え、葉を生い茂らせてくれています。

そこから、自分(新価値創造研究所)の特徴である「トリニティ(三位一体)イノベーション」が形成されていきました。
①人を深く読む
②未来を高く読む
③全体を広く読む
まだまだ発育・発展途上にあります。

さて、目黒本社に異動になってから日課で800冊となった8年目に松岡正剛師匠との出会いがありました。それは代官山近くの事務所でした。
そこに一歩踏み入れた時に、その本の異常な多さと荘厳な佇まいに圧倒されました。逸脱した別世界が拡がっていました。

格別で別格なのです。

その後、赤坂事務所、豪徳寺事務所への移転がありましたが、日を増してその「輝き」「憧れ」は強くなっています。
嬉しいことに、豪徳寺の本楼で、「Editiz」のキックオフセミナー(写真)をやらせて貰いました。

次回は、松岡正剛師匠主催の「未詳俱楽部」に触れようと思っています。

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価値創造の知・第24夜 文化が発生して、その後に経済が起こる

2017年2月5日 バリューイノベーター150名を体験

価値創造・第24夜 文化が発生して、その後に経済が起こる

『おもてなし』とは、文明でしょうか、文化でしょうか?
それでは、『スマホ』は、文明でしょうか、文化でしょうか?

 いったい、『文化』とは何なのでしょうか?

私はそれを「特徴的な生活様式(ライフスタイル)を形成するソフトウェア・ハートウェア」と解釈しています。
よく比較される『文明』は、「科学技術に裏付けされた普遍的な価値を持つハードウェア」に置いています。

さて、21世紀の「心の豊かさ追求」の時代を牽引するのは「文化」です。
第20夜「新しい物差し」でも触れましたが、私は谷口正和師匠の主催する「文化経済研究会」の会員です。
そこでの重要な認識は、「文化が発生して、その後に経済が起こる」にあります。

前職では、「技術企画→開発企画→事業企画」と取組む対象が広がっていきましたが、どのステージでも大切にしていたのは、上記の「文化経済の認識」です。
「小手先の儲かることよりも、文化を発生させて新しい市場を創り経済を起こすコト」を重要視してきました。

その為に、自分の思考や行動が「新文化づくりのヒット商品(新ライフスタイル創造)」や「新市場/新事業開発」のほうに向かいました。
さて、当該事業の行き詰まりを突破するために、「新市場づくり、新文化づくり」を突き詰めて検討していくと、そこで観えてくる将来の風景・構想から、現在の「会社の本来」の見直しが必要とわかってきます。
この見直しの可否、及び出来不出来が次の成長に多大な影響を与えます。

スティーブジョブズが「iPod」を構想・創造したときに、そこでは、「ハードウェア・ソフトウェア(iTunes)・ビジネスウェア」の三位一体が浮かび上がりました。
そのことで、従来の音楽事業の『本来』というものが変わり、日本の音楽業界・オーディオ業界は顧客のライフスタイルが変わり大打撃を受けました。

旭山動物園の場合は、動物園の本来を「珍獣・奇獣で人を集めるコト」から「普通の動物の命を大切さを伝えるコト」に再定義したことで、新しい将来の風景が観えて、顧客が喜ぶ動物園スタイルに大きく変えていきました。

新しい音楽文化、新しい動物園文化の誕生です。

そうなんです。この「本来」を再定義できることが、将来構想、新市場/新事業創造にはとても重要になります。
「お客様が幸せになるライフスタイルを創造する」と、新しい文化が起きて経済が回り始めます。

現在、様々な業種業態をご支援していますが、行き詰まりから「改革」をご依頼される会社の場合には、それがB2Bであれ、B2Cであれ、
「お客様から喜ばれる新しい市場を創り文化を起こす」
ことを本気で目標にされるかどうかを時間をかけて話し合います。

それは、企業の大小とは全く関係ありません。
中小企業の場合は、お客様と響き合い、「この指止まれ」で同じ世界観を共感・共有し共に行動するコラボレーションパートナーを創ることができるかがキーになることが多いですね。

さて、谷口正和師匠が主宰の文化経済研究会は、2002年から2017年1月の間に、計75回開催されました。
http://www.jlds.co.jp/labo/
毎回、2名のバリューイノベーターが講師で来られるので、私はもう150名の方達のセミナーを体験したことになります。
これらの体験群も編集しながら、各企業に最適にカスタマイズして、研修・セミナーやご支援でお伝えしています。

是非、多くの方達に「文化経済研究会」の価値創造実例を体験していただきたいと思います。

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東京ビッグサイト三昧

2017年2月3日 安心・健康・快適「スマートウェルネス住宅」

東京ビッグサイト・イベント三昧
今日は、「インバウンドビジネス総合展2017」「木と住まいの大博覧会」「住まいの耐震博覧会」の三つを見てきました。
博覧会の方では、
・ゼロエネルギー住宅(ZEH)とは?
・健康を考えた住まいづくりとは?
・地震に強い住まいとは?
等々、2020年以降の「住まい」を感じることができました。
中でも、安心・健康・快適がつづく家
「スマートウェルネス住宅」(写真)の提案が良かった。
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また、そこでは非免震と免震で、大地震体験をしました。震度6(非免震)を1分間体験しましたがすさまじかったです。違うブースでは、地盤調査アプリで自分が住んでいるところの数値を知ることができました。(=現在地の地盤リスクを知ることができます)
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