橋本元司の「価値創造の知・第224夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」②体系知と大きな物語

2019年3月31日 『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)づくり』

前夜(第223夜)は、「体系知と物語」の輪郭を綴りました。

本夜は前夜に引き続き、「知の操縦法 」(佐藤優著)を引用して、混迷する世界をとらえるために、「物語」と「価値創造」について記そうと思います。

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—百科事典を読んで知識を体系的に身に付けることで、「知識の枠組み」を知ることができるのです。

重要なのは、あくまで体系的でなければいけないということです。非科学的だけれど合理的な議論に対しては、体系的からの反論をしなければなりません。

例えば、「自分の子どもが感染症にかかってしまった、これは誰かが呪いをかけているに違いない」というような主張は、それ自体では筋が通っていて合理的ですが、他分野との連関からみるとナンセンスです。

個別の枠内にいると見えないことが、複数の枠-体系知があれば見えてくるのです。

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混迷する現代は、縦串の「業界」という世界の枠組みが壊れています。

それは、「情業」「脳業」と「新ライフスタイル」という世間の横串で、新しい枠組みが創られているからです。

それ故に、「単独の枠内」や「個別の枠内」にいると世間がみえないのです。

自分ゴトになりますが、その様なことを30年前に敏感に感じて、業界を超える枠組みや「異業種コラボレーション」に挑戦してきました。

さて、現在はどうでしょうか?

様々な業界や地域が、そして日本自体が「単独の枠内(鎖国)」でのうのうとしていることができなくなりました。「複数の枠-体系知」を持つことがマストなのです。

そして、そこには「複数の枠を超えたシームレスな物語」が必要になってきます。

再び、「知の操縦法 」を加筆引用します。

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—通史として、きちんとした物語の歴史を作らないと、最近の書店の歴史書コーナーのように、箸にも棒にも掛からない言説が市場で流通してしまう。

『人間は物語を作る動物なので、大きな物語を作ることをしなくなったら、粗悪な物語が流通するようになってしまいます』

だからこそいま、『知』の土台作りをしていかなければならないのです。—

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成熟から衰退期に向かっている会社や地域のご支援に伺う時に、

①「未来を変える」ことに重点を置く
②「現在の枠組み」の革新に重点を置く
③「現在の枠組み」を改善することに重点を置く

の様に、トップのスタンスはだいたい上記の3つに分かれます。

③「現在の枠組み」を改善すること、ではもう間に合わないことがほとんどなのですね。
それでも、①②に向かうことに、TOPの躊躇があります。

ポイントは、『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)』を創るコト。そして、それに向けて規模に合った挑戦を積み重ねて、実績をつくる。

上記をトップと社員が共通認識して、ベクトルを一つにして邁進する。

『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)づくり』

には、新しい時代の「体系知」「知の型」が求められます。そして、ここにコンサルタントの出来、不出来があります。

まだまだ多くのコンサルタントが「古い体系知=粗悪な物語」を使っています。それが、コンサルタントのレベルを落としています。

この「良質な物語」から、新価値が創造されます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第223夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」①

2019年3月30日 体系知とは大きな物語である

第217~222夜に亘り、「イチロー引退会見」と「価値創造」の関係について綴ってきましたが、その内容は心に突き刺さり、読めば読むほど、根源的で哲学的なのでした。

そして、それを読み解く時に思い浮かんだのが、昨年10月に未詳?楽部の特別ゲストであった「佐藤優」さんの混迷する世界をとらえるための『知の使い方』でした。

そこで一冊の著書『知の操縦法』から引用加筆させて貰って、「価値創造」との関係を綴っていこうと思います。

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◆体系知とは大きな物語である

ヘーゲルの哲学体系を示した「エンチュロクロペディー」は、円環をなしている「知の体系」という意味で、通常、百科事典と訳します。ある時代のある時点での知を輪切りにし、基盤を示すことが重要だ、とヘーゲルは考えていました。

『ヘーゲルの哲学体系』とは体系知のことですが、別の言い方でいうと、「大きな物語としての哲学や世界観」という考え方です。

ポストモダン以降は、小さな差異が強調されましたが、これを追求していくと、小さな差異からどうやって価値を生み出していけばよいのかという話になり、貨幣に転換されてしまいます。

いま、東大法学部を卒業しても、一昔前みたいに官僚にもならなければ司法試験も受けず、投資銀行に行ったり、デイトレーダーになったりしますが、エリートが自分の能力を「社会において何をなすべきか」ではなく、いかに金銭を稼げるかという方向に発揮するようになったのは、ポストモダンがいきついた必然だと思います。—

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20世紀後半のビジネスは、成長から成熟に向かい、決められたレールの上で、「小さな差異」で価値を生み出している時代でした、1990年前後から成熟から衰退に向かい始めました。成熟の延長線上に「未来」はありません。

21世紀の日本では、「人口減少と人工知能」が大きな要素となり、

「オペレーション&マネジメント」<「イノベーション&イメジメント(構想)」

が肝要な時代になりました。

「オペレーション&マネジメント」では、「小さな差異」では太刀打ちできずに、「大きな物語」が求人軸となります。

その「大きな物語」は、受験勉強や今の大学・大学院からは生まれてきません。明治以降の「知の型」が支配していてそこから脱皮できていません。

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人間は「心」で「つながり」をつくる生き物なので、
人間は、「物語」を介在させないことにはつながり合うことができません。
物語とは、新しい現実を受け入れる形にしていく働きです。(第54夜)
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新しい現実を受け入れるには、新しい世界と世間に対応した「大きな物語」が必要なのです。もう、その「物語」は明滅しています。

新価値創造研究所も「体系知」(第57夜)と「物語」を明確にして活動しています。

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橋本元司の「価値創造の知・第222夜」:「ICHIRO: ビジネスと野球の共通項 」⑥

2019年3月29日 どの記録よりも、自分の中で誇りを持てたこと

野球人生というキャリアの中で一番印象的だった場面を聴くことで、ICHIROさんの野球に対するスタンスや想いを知ることができます。

引退会見の中で、それを下記の様に答えています。

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Q.キャリアの中で一番印象的だった場面はありますか?

A.時間が経ったら今日が一番真っ先に浮かぶことは間違いないと思います。
今日を除けば、MVPやオールスター出場、10年200安打は小さなことに過ぎない。

今日のあの舞台に立てたことは…。
去年の5月以降のゲームに出られない状況にあって、チームと一緒に練習を続けてきた。
それを最後まで成し遂げられなければ、今日という日はなかった。

残してきた記録はいずれ誰かが抜いていく。
でも去年の5月から今日までの日々はひょっとしたら誰にもできないかもしれないと、ささやかな誇りを生んだ日々だった。

それがどの記録よりも、自分の中ではほんの少しだけ、誇りを持てたことかと思っている。—

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上記の10年200安打というのは、凄まじい記録です。

ビジネスと野球の共通項は、「競争」ということもあるのですが、「完成形がない、終わりがない、それは諸行無常」 ということがあります。

昨年10月の未詳?楽部で、特別ゲストで来られた「佐藤優」さんの言葉が上記に関係しているので下記に加筆引用します。

becomingのスーパースターがICHIROさんということです。

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今の能力や知識で最高のものを出したとしても、研究され時間が経ったり、新しい技術やデータや知識を得ることで変わっていきます。

「体性、知性」や「ビジネス」そのものに変化して発展していく内在性があるからです。それだから、学知・体系知は、beingではなく、becomingの性質のものです。

我々の勉強は、ヘーゲル的に言えば、生成の過程にあって永遠に終わりません。

「わかった」「できた」と思っていること自体は体系知で整合性がとれていますが、当然のことながら状況は変わり新しい知見が出てくるので、またやり直しをして、結論をださなければなりません。

このやり直しは延々と続いていくけれど、—

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そのような中での首記の引退会見です。

『でも去年の5月から今日までの日々はひょっとしたら誰にもできないかもしれないと、ささやかな誇りを生んだ日々だった。』

記録や希望、保証があるわけでなく、見えないところで黙々とこれまで積み重ねてきた準備、鍛錬を行う。

その積み重ねについては、『第217夜・ICHIRO: 積み重ねでしか自分を超えられない』に綴りました。

神様が、そのギフトを3月21日の引退試合にくださいました。

・beingからbecoming

・積み重ねでしか自分を超えられない

それは、ビジネスの最重要事項と再認識しました。

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橋本元司の「価値創造の知・第221夜」:「ICHIRO: 辛いこと、しんどいことに立ち向かうこと 」⑤

2019年3月28日 未来の自分にとって、大きな支え

ICHIROさんは、それまでの世間の常識や価値観を超える挑戦をしてきました。

知の連載では、第157~166夜のスティーブジョブズ編にそれを綴ってきましたが、そこには多くの壁や中傷、いやがらせ等があります。
レベルはぜんぜん違うのですが、自分も「ヒット商品プロジェクト、シナリオプランニング、事業創出プロジェクト」等で同様の体験をしてきました。

その真っ只中はたいへんなのですが、心と脳は集中してワクワクしていたりしています。
人にもよりますが、作用としてのプレッシャー(重圧)は、反作用としての「やる気や集中力」を倍加させます。

「不足」や「負の反動」(第3夜:負(マイナス)の美学、第206夜:落合陽一・負の想像力)が価値創造の重要な要素になります。

さて、引退会見の最後の質問にICHIROさんは下記の様に答えています。

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Q.孤独を感じながらプレーをしていると言ってたが、孤独感はずっと感じていたのか?

A.現在は全くその孤独感はない。それとは少し違うかもしれないけれど、アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと。アメリカでは僕は外国人ですから。

このことは、外国人になったことで、人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れた。

この体験っていうのは、まぁ、本を読んだり、情報を取ることができたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。

「孤独を感じて苦しんだこと、多々ありました」

ありましたけど、その体験は、「未来の自分にとって、大きな支えになるんだろう」と、今は思います。

だから、

『辛いこと、しんどいことから逃げたいと思うのは当然のことなんだけど、エネルギーのある、元気な時にそれに立ち向かっていく。そのことはすごく、人として重要なことなんじゃないかと感じています』

締まったね?最後。

長い間ありがとうございました。—

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「辛いこと、しんどいことから逃げたい」という気持ちはよくわかります。

しかし、それを突破した先には「自分の成長」「人生の充実」が待ち受けています。

それを、「エネルギーのある、元気な時にそれに立ち向かっていく」

そのことはすごく、『人として重要なこと』なんじゃないか、と言っています。

そんな珠玉の話の数々を多くの人たちが聴けたことが、ICHIROさんからのギフトでしたね。

自分は昨日64歳になりましたが、まだまだ内側に沸々としたエネルギーがあることを感じています。
掲げたミッションとビジョンに立ち向かっていきたいと思います。

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橋本元司の「価値創造の知・第220夜」:「ICHIRO: AIと野球 の将来」④

2019年3月27日 「体性」「知性」「心性」の魅力

現代バレーのトップカテゴリーではデータ分析が当たり前になっています。アナリストと呼ばれる専門家が、データバレーというソフトを駆使して、相手はもちろん自分のチームの分析を行い、戦略・チーム構成を練っています。

日本でも全てのV・プレミアリーグチーム、V・チャレンジリーグ等、アナリストがデータ解析を行っています。それを活用している様子はテレビで放映されています。

もっとドラスティックなのが MLB(メジャーリーグベースボール)です。MLB楽しみ方の新スタイルについて、新価値創造研究所「価値創造講座」で取り上げたのは2年前です。

それは、第36夜・第125夜、第147夜に記してきた「AIの進化」(①センシング②プロダクティング③コンサルティングの一気通貫)と深い関係があり、今の時代を大きく変動している『本質』です。

「MLB」の事例では、、
・球速
・ミットに届くまでの回転数(投手の疲れ等)
・球種、球筋

・守備位置

・フォーム、フォーメーション
・・・

等々、センシングがどんどん発達して、データ蓄積とデータ解析が進み、あたかも自分が司令塔になった気持ちになります。それが「茶の間」にまで届けられて『野球の楽しみ方』が変わりました。
野村元監督の「データ野球」は有名ですが、センシング・イメージングの進化が、それを大幅に前進・進展させました。
将棋にも「AI」分析で勝負のグラデーションが届きます。

現在のビジネスもそれまで「勘」に頼ってきたところを、事業の前段(ビフォー)をセンシングやビッグデータを使って可視化・イメージ化することで

・①センシング ⇒ ②プロダクティング ⇒③インテグレーティング(コンサルティング)
・①PREPARE(用意)⇒ ②PERFORMANCE(料理)⇒ ③PROMOTION(配膳)

という一気通貫ビジネスに変質・変態しています。時代を先取りして、その一気通貫の型をクライアント先に提示して、幾つかの企業・地域をご支援してきました。
その枠組みについては、第36夜・第125夜、第147夜で綴ってきました。

さて、②プロダクティングをメインとする製造業であれば、①~③を一気通貫することで、それまでの製造業から新サービス産業に脱皮することができます。
それは、蛹(サナギ)から蝶への脱皮と同じです。

さてさて、前置きが長くなってしまいました。
ICHIROさんは引退会見で語った珠玉をご紹介します。

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Q.野球の魅力はどんなところか?

A.団体競技なんだけど、個人競技でもあるところ。チームが勝てばそれでいいかというと、そういうわけではない。

個人として結果を残さないと生き残ることはできない。チームとして勝っていればいいわけではない。その厳しさが魅力であることは間違いない。

あとは、同じ瞬間がないということ。メジャーに来てから今に至るまで、全く違うものになった。

「頭を使わなくてもできる野球になりつつあるような、これがどうやって変化していくのか」
次の5年、10年。しばらくはこの流れは止まらないと思う。

『本来は野球というのは』、いや、ダメだな、これを言うと問題になりそうだから。

「頭を使わなきゃできない競技なんですよ、本来は」
でもそうじゃなくなってきているのがどうも気持ち悪くて。

ベースボールの発祥はアメリカだから、その発祥がそうなってきていることに、危機感を持っている人はけっこういると思う。日本の野球がアメリカに追従する必要は全く無い。

『やっぱり日本の野球は頭を使う面白いものであってほしい』

アメリカの流れは変わらないので、せめて日本の野球は大切にしなければならないものを大切にする野球であってほしい。---

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間違っていたら申し訳ないのですが、おそらく加速度的な「データ野球」の変質に危機感を持っているのだと思います。

これから重要なことは、

「人工知能(AI)にできないことは何か」を通して、人間とは何かを深く・高く・広く考えるというアプローチです。

そのためには、「身体の土台」「知の土台」「精神の土台」というものが、AI進化があることで、更に加速される時代になると思います。そのような変化に対応した「型」が求められてきます。
そのベースは、「体性」「知性」「心性」です。

上記については、またどこかの「夜」に綴ろうと思います。

ICHIROさんの革新は、

・ムキムキのキン肉マンではない「日本人の体型」でもMLBを凌駕できること
・「体性」「知性」「心性」に魅力があること
を実践されました。

『やっぱり日本の野球は頭を使う面白いものであってほしい』

「データ解析スポーツ」の流れは止められないと思うのですが、「体性」「知性」「心性」の型と創造に答えがあると洞察します。

ビジネスも同じです。
「AIot」「AIロボット」の流れは変えられません。人でなくてもAI機械ができることは、それに置き換わっていきます。
① AI転換への対応
② AIにできないことの価値創造

その①②を同時に進められる会社・地域・人が、日本の将来に必要です。
『本来と将来』を二つでありながら一つにとらえられることが肝要です。
(参考:第33夜・禅と価値創造③、第82夜・ビジネスで最も大切なコト)

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橋本元司の「価値創造の知・第219夜」:「ICHIRO: ファンの存在」③

2019年3月26日 ファン(FUN)がファン(FAN)になる

首記に「ファンの存在」と記していますが、「ファン(FAN)はファン(FUN)を通して、ファン(FAN)になってゆきます」
それは、「第108夜:ファン(嬉しい・楽しい)がファン(愛好者・熱狂者)を生む」に記しています。『良い目的』(第28夜、第107夜)を明確にしておくことが重要です。

ビジネスや地域創生に置き換えると、「ファン(FAN)」は「顧客」にあたります。
前夜・前々夜に引き続いて、イチロー選手の引退会見から、「価値創造」に密接に繋がる珠玉を綴ります。

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Q. ファンの存在はイチロー選手にとっていかがでしたか?

A. ゲーム後にあんなことが起こるとは想像してなかったけど、実際にそれが起きて。普段はなかなか日本のファンの方の熱量を感じることは難しい。

久しぶりに東京ドームに来て、ゲームは基本的には静かに進んでいくんだけれど、日本の人は表現するのが苦手だと思っていたけど、それが完全に覆った。

内側に持っている想いが確実にそこにあるということ。それを表現したときの迫力はこれまで想像できなかったものです。

あるときまでは自分のためにプレーすることがチームの為になるし、見てくれる人も喜んでくれるかなと思っていたけれど、
ニューヨークに行った後からは、「人に喜んでもらえることが一番の喜び」に変わってきた。

『ファンの存在無くしては自分のエネルギーは全く生まれない』と言ってもいいと思う。—

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前職・パイオニア社の「ヒット商品プロジェクト」のステージで、「ファン(FAN)とファン(FUN)」を意識することで、今までになかった「自分の内側からのエネルギー」が湧いてくることを実感してきました。

そのことと、ICHIROさんの云う
・「人に喜んでもらえることが一番の喜び」
・『ファンの存在無くしては自分のエネルギーは全く生まれない』
とは同じことと洞察しています。

その様に、「宇宙のルール」はできているのだと思います。

喜び・嬉しい・楽しいのFANが減少すると、愛好者・熱狂者のFUNが減少します。
そこに対応・適応できないと倒産(第13夜、第172夜)に繋がります。

同時に、自分の中に「喜び・嬉しい・楽しい」がないと長続きしないのですね。
それは、前夜の『できると思うから挑戦するのではなく、やりたいと思うなら挑戦すればいい』にも密接な関係があります。
下記、「少年へのメッセージ」もご覧ください。

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Q. 少年にメッセージを送ってほしい

A. 野球だけでなくてもいい、自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つけてほしい。夢中になれるものが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁に向かっていくことができる。

それが見つけられないと、壁が出てくると諦めてしまう。色んなことにトライして、自分に向くか向かないかよりも、自分が好きなものにトライしてほしい。—

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自分の「喜び・嬉しい・楽しい」と顧客の「喜び・嬉しい・楽しい」が繋がるといいですね。
それが、『事業』です。

そのような実践と体験をしてきました。
ただ、「諸行無常」という宇宙のルールがあるので、それは永遠には続きません。

それも、『事業』の宿命です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第218夜」:「ICHIRO: やりたいと思うことに挑戦する」②

2019年3月25日 『ミッション』と『ビジョン』の再定義

前夜に引き続いて、イチロー選手の引退会見から、「価値創造」に密接に繋がる珠玉を綴ります。

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Q. 夢を叶えて成功して、何を得たと思っていますか?

A. どこからが成功で、どこからがそうじゃないのかは判断できない。

だから「成功という言葉」は僕は嫌いなんですけど、新しい世界に挑戦するということは大変な勇気だと思うんですけど、ここはあえて成功と表現しますが、

成功すると思うからやってみたい、それができないと思うからやらない、という判断基準では後悔を生むだろうと思う。やりたいならやってみればいい。

『できると思うから挑戦するのではなく、やりたいと思うなら挑戦すればいい』

そのときにどんな結果が出ようと後悔はないと思う。自分なりの成功を勝ち取ったところでじゃあ達成感が残るかというと僕には疑問なので、基本的にはやりたいと思ったことに向かっていきたい。

何を得たかというと、「こんなものかなー」という感覚ですかね。
それは「200本」をもっと打ちたかったし、できると思ったし、1年目にチームが116勝して、その次の二年間も93勝して。勝つのは難しいものじゃないなと思ってたけど、大変なことです。

「勝利する」ということは。

この感覚を得たことは大きいかもしれないですね。—

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自分ゴトですが、前職・パイオニア社で、本社から総合研究所に異動しました。
下記の変換が大きな課題でした。

①技術オリエンテッドの「研究所」に、『顧客接点』『顧客価値視点』を注入すること
②同研究所に、体系的な『将来構想』を注入し、「次の事業の柱」を確立すること
③「イノベーション&マーケティング」を結合し、「新価値創造」の体質に更新すること
(2000年前後は多くの異業種コラボレーションや社外からの将来シナリオプランニング支援の依頼があり、大手企業の研究所にも伺いましたが、そのような研究所が大半でした)

『できると思うから挑戦するのではなく、やりたいと思うなら挑戦すればいい』

研究所には、それまで成長・成功してきた強みの「技術・技能」があるのですが、それらが、

・成長→成熟→衰退

という『諸行無常』の道を必ず辿ります。

それまでの用途や視点では『強み』でなくなることを意味します。

それは、「イノベーションのジレンマ」です。

問題は、「できること(技術)」と「価値を生み出すこと(顧客価値)」にギャップが生まれることです。

「従来能力で、自分達にできること」ということが『間に合わない』時代に突入しています。

それは、『家電』『自動車』も同じ道を辿っていきます。

そこに必要なのは、『ミッション』と『ビジョン』の再定義です。

「できるコト」からつくる「ビジョン」が時代とマッチングしない、価値レベルが低い事例を多くみてきました。

先ず、「やりたいコト」から「ビジョン」を構想してみましょう。

隆々としたイメージを創るのです。それは、会社も地域も人生も同じです。

すると、「不足」「余白」「負」が観えてきます。

それは、
・第22夜、第207夜:余白、
・第57夜:本来・将来・縁来
・第89夜:本質的な違いを生み出す方法
に記していますので関心のある方はご覧ください。

そこに「挑戦」するのです。

トップに、先ずその『イメージ』と『やり抜く覚悟』がないと実現しません。

想わなければ、動かなければ実現しないのです。

『できると思うから挑戦するのではなく、やりたいと思うなら挑戦すればいい』

これからの時代に上記は、子供から青年、大人、そして壮年の全てに言えるコトと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
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橋本元司の「価値創造の知・第217夜」:「ICHIRO: 積み重ねでしか自分を超えられない」①

2019年3月22日 遠回りすることでしか、本当の自分に出会えない

昨晩にイチロー選手の引退会見があり、最初から最後までその「言葉・言霊」に魅入りました。

本夜から「価値創造」に密接に繋がる珠玉の幾つかを引退会見から綴ります。

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Q.日本人としてイチロー選手を誇りに思っている人は多い。生き様で伝わっていたら嬉しいなと思うことはありますか?

A.生き様というのは僕にはよくわからないですけど、生き方という風に考えれば、先ほども話したように、人より頑張ることなんてとてもできない。

「あくまでも秤(はかり)は自分の中にある」

それで自分なりに秤を使いながら、自分の限界を見ながら、ちょっと超えていくを繰り返していく。するといつの日か「こんな自分になっているんだ」という状態になって。

少しずつの積み重ねしか、それでしか自分を超えていけないと思うんですよね。
「一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられない」と僕は考えている。

地道に進むしかない。進むだけではないですね。後退もしながら、あるときは後退しかしない時期もあるが、でも自分がやると決めたことを信じてやっていく。

それが正解とは限らない。間違ったことを続けてしまっていることもある。でもそうやって遠回りすることでしか、本当の自分に出会えない。ーーー

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『積み重ねでしか自分を超えられない』

これは、スポーツに限らず、「価値創造」や人生すべての道理に想います。
ただ、これを人は地道にできなくて、踏み外したり、諦めたり、楽な方に流れてしまうことが多いのですね。

自分ゴトですが、中学の時に、バドミントン国体3位の先生の指導を受けていましたが、その上で高みを目指すには、練習と実戦の『積み重ね』しかありません。
そうやったある時に、『壁』を超えている自分に気づいて嬉しくなったことを思い出します。

そして、第173夜「マイナスはプラスにするための準備期間」でも野球人「桑田真澄」さんの下記共感の言葉を思いだしました。

『練習したからといってすぐに結果が出るものではない。毎日コツコツ努力していると、人間はある日突然、成長する』
同じことを云っていますね。

さて、第147夜『真の企業再生・創生』(リストラではなく、リ・オリエンテーション)とは?
の中で、

・設計→技術企画→開発企画→ヒット商品→新事業創造→研究所→事業開発

という自分のプロフィールを記しました。

上記の「技術企画」というステージの時に、5年後に新設される「新工場の構想づくり」を統括部長から自分に白羽の矢が立ちました。

「10年後、20年後の未来を想定して検討、構想すること」

と言われ、当時33才の自分には「未来を洞察する」本格的スキルを持てていないことを自覚しました。
そこから、「将来・未来」を体系的・本格的に洞察する「価値創造の旅」が始まりました。

多くの一流の方達との出逢いと自分なりの積み重ねをそれこそ地道に行って、心得と方法を磨き上げました。
何回かの失敗と試行錯誤で、「ヒット商品プロジェクトのリーダーのステージでは、成長し将来洞察と価値創造実践が得意になっている自分」がありました。

その「道」に終わりはなく、油断していると遠のいていくという果てしない道なのですが、上記のイチロー選手の言葉には、それと重なる深みと共感がありました。
そう、今でも『価値創造の積み重ね』を更新しています。

価値創造から、事業創生、地域創生、人財創生へ

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橋本元司の「価値創造の知・第216夜」:「落合陽一: 無人化・自動化・脱人間化」⑫

2019年3月1日 日本再興!!

「落合陽一さんと価値創造」を11夜に亘り綴ってきましたが、本夜で一区切りにしたいと思います。
きっと、またどこかで綴りたい夜も出てくると思います。

前夜(第215夜)は、産業革命に匹敵するAI・超AIによる「脳業革命」について記しましたが、
それが私たちの社会(Society)に入ることで、産業やライフスタイルにどのような変化があるのでしょうか。
落合陽一さんが語った内容(第211夜)の一部を引用します。

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—明治のことを戦中の5年間を基準にして、まずそこの否定しから戦後憲法を作りました。しかし、1880年代から1930年代の日本の近代化ならびに工業成長は著しかった。

そのときには良いことも悪いこともあった。それを検証しないで戦後憲法を作った。そこをどうドラスティックに変え、コンピューター化していくかということだと思います。
—キーワードは無人化と自動化、脱人間化です。人間が人間の世話をするという常識だと思っていることを一旦忘れ、どうやって規格化した人間をなくし、パラメーター化するかということが大事だと思います。

その中でわれわれは人口減少ボーナスを受け取るために、無人化と自動化のあらゆるインフラを整えていかなくてはならないのだと思います。

勘違いしてはいけないのは、無人化自動化した環境やものの形は人の踏襲をする必要がありません。そこは脱人間化していかないと、型にはまった形をとってしまうのではないかと思います。

われわれは今デジタルネイチャー(計算機自然)の揺籃する、コンピューテイショナルダイバーシティ(計算機多様性)の世界に向かっています。

そこでは、われわれは新しい自然観と近代的人間性の超克を行っていくでしょう。

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ここに、「脳業時代」を母体とした新産業のキーワードが語られています。

・「無人化と自動化、脱人間化」

否応なく、新産業はこの方向に進んでいくものと洞察します。

ここでは、あらゆる分野で破壊的創造<ディスラプション>が繰り返されます。
もう私たちはそれを目撃し、体感しています。

それをずっと前に実感したのは、駅の「自動改札機」。
日本初の自動改札機は、1967年(昭和42年)に阪急電鉄北千里駅に設置された立石電機(現在のオムロン)製。
これは画期的でした。

オムロン創業者・立石一真氏は、未来社会に素晴らしい視点を持たれ、実行されました。
第109夜に、綴った3C(コンピュータ・コミュニケーション・コントロール)も立石一真氏から多くの刺激を受けました。

日本は自動化と機械化で伸びる産業が得意なのです。否、ここが生命線だと思います。

そして、“これまでのインターネットは統一された「マス」だったのですが、今後、AI/インターネットは個人化していきます”
そこに必要になってくるのは、左脳のComputational Diversity(計算機的多様性)と右脳の「おもてなし」です。
「おもてなし」については、第164夜に綴りましたので引用します。
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「おもてなし」とは
A.しつらい=ハードウェア
B.ふるまい=ソフトウェア(メニュー・プログラム等)
C.心づかい=ハートウェア(ヒューマンウェア)
の3つでできています。
それはとっても凄いインパクトのある言葉なのですがそれを洞察できている人は僅かです。
それが、いよいよ2020年から全面的に立ち上がります。

アップルは、「A.ハードウェア*B.ソフトウェア」という「顧客を囲い込む」覇者でしたが、2020年から「ハードウェア*ソフトウェア*ハートウェア」の「顧客に囲まれる“つながりづくり”」三位一体が世界を席巻します。
それが、「主客一体」(第93夜)の世界であり、「リアルな場」と「バーチャルな場」の双方から立ち上がり、それらが融合してゆくことが洞察できます。
いったい誰が覇者になるのでしょうか?
参考に、「おもてなし」時代の「価値共創とクラブ財」については、第97夜に綴っています。

さて、もう25年前になりますが、1993年に前職経営会議で発表した内容を記します。

「農業」⇒「工業」⇒「情業」⇒「脳業」⇒「興業」⇒「浄業」⇒

発表した1993年は、「情業」(高度情報時代)真っ只中であり、その次にくるのは「脳業」(AIoT時代)です。
ぴったし当たってますね。そして、その次は古代ローマ帝国を螺旋展開したした「興業」。それは時間差で併せて到来するのは間違いありません。
スティーブジョブズは、「情業時代」の王者でした。
次の覇者は、「ニッポン」でありたいですね。
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「脳業時代」の“Computational Diversity(計算機的多様性)”と「興業時代」の“おもてなし”をシームレスにすること(=新結合)。
そして、第205夜で落合陽一さんが気にしているwabisabi(ワビサビ)等の「日本の方法」(第76夜)を三位一体で組込むことが

「日本再興戦略」
の“ど真ん中”と洞察しています。

共に、「日本再興」に邁進しましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
落合陽一33