SDGsシフト㉚「価値創造の知・第275夜」:『SDGs成功の秘訣』

2019年12月27日 「グローバルスタンダード」&『SDGs成功の秘訣』

本年の「価値創造の知」コラム納めです。

ここしばらくは、SDGsシフトをテーマにして、第246夜から始めて本夜で30の連載になりました。
そこで、いい区切りなので、皆様に、いま思っているSDGs関係の重要な二つのコトをお伝えします。

一つは、SDGsを「グローバルスタンダード」とする先行認識
もう一つは、SDGsの「成功の秘訣」です。

それでは、一つ目から綴ります。
今月の中ごろに開催された「COP25」と絡めた内容です。

今月、スペイン・マドリードで国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が開催されました。
小泉進次郎環境大臣の脱石炭を示せない演説に対して厳しい批判の目が向けられ、国際環境NGOが「化石賞」を贈ってその消極的な姿勢を批判したと報じられました。

同月17日の閣議後記者会見で、COP25で石炭火力発電の利用に対して日本が批判されたことに触れ、「今は、脱化石燃料は現実的に無理だが、(将来的には)減らす」と述べ、見直しに向け国内調整に尽力する考えを示しました。

「COP25(気候変動枠組条約締約国会議)」とは、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標として、1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」(UNFCCC)に基づき、1995年から毎年開催されている年次会議です。
「パリ協定」は、先進国も途上国も公平に、温室効果ガス削減への責任を担うという歴史的な国際約束です。一国の利害や対立を超え、地球の未来のために行動することをうたって2015年に合意されました。

本年、190を超える国と地域が参加した「COP25」では、
・温室効果ガスの削減目標を引き上げるよう各国に促す記述、
・来年から始まる温暖化対策の国際的な枠組み、「パリ協定」の実施に必要なルールの一部、
をめぐって意見がまとまりませんでした。

それらに継続的に取組み、さらに広範な規模の社会課題をも包摂して、取り組んで実現しようというのがSDGsです。
身の回りをみても、今年起きた甚大な自然災害、惨状をどう自分ゴト化、日本ゴト化、SDGs化するのかが問われています。

重要なことは、今よりも良い未来の実現を目指す「SDGs」を『グローバルスタンダード』として自主的に先取りすること、認識することです。
自分ゴトなのですが、前職パイオニア社では、それまでなかった「異業種コラボレーション」によるヒット商品緊急開発プロジェクト(第14夜)の成功や、5年後・10年後の将来を読み解く「シナリオプランニング」(第10夜)による成果は、
「すでに起こった未来」(ドラッカー)の様に、体系的、本質的に将来を洞察することで引き寄せることができます。

すでに起こったことを観察すれば、それがもたらす未来が見えてくる。 いずれ顕在化する大きな変化を読み解く鍵は水面下で起きている兆候にある。
ドラッカーは、それらの兆候を “すでに起こった未来”と呼んでいるのですが、「気候危機」「地球危機」「人類危機」は水面下ではなくもう水面上に顔を出しています。
地球危機、社会危機、経済危機を利害を異にする多くの国々を一つのベクトルにまとめていくのに、このSDGsは「グローバルスタンダード」という求心軸に押しあがっていくのは明らかです。
その認識を持っている会社と持っていない会社では、大きな差が生まれるのは確実です。

このSDGsは罰則を科していないのが特徴で、以前にも綴りましたが、自主・自立・自律が前面に出て、これまでの護送船団方式の横並びの様に、ぼーとしていると置いていかれてしまう怖いルールなのです。
「受け身」の姿勢ではなく、能動的に把えて行動していくことが求められます

このピンチをチャンスに変えることのトリガーとして、国際的枠組みである「SDGs」を活用するという情報・知識が、日本の中でまだまだ伝わっていないというのが大きい課題ですね。
チャンスに変えるには、 知恵・バリューイノベーション・リーダーシップ、パートナーシップが必要なのですが、その壁を次々に乗り越えていくことが、企業に、地方自治体に、日本に求められています。

さて二つ目に、SDGsの「成功の三位一体の秘訣」を綴ります。
ご理解を深めていただくために図をご用意しました。

基本は三つの輪です。
①本業:経済価値
②SDGs:社会価値
③価値創造

持続可能な将来を創るためには、
社会価値(社会課題解決)と経済価値(利益)の両立が必要です。

そのために、5年後、10年後に上記が実現しているイメージを持って、少し大きな目標である「ありたい姿」を描くことが必要です。
どの山に登ろうとするのかが、それが遠くであろうともその輪郭がなければ、社員は動きようがありませんね。
視界を上げて制約を外し、
・実現したいコト
・社会に役立ち、社会から感謝されるコト
を踏まえて、自分たちの望みを描くプロセスが、従来のボトムアップアプローチ、改善アプローチと異なることです。
これが想像というステージの必要条件です。

それを実現するためには、それを推進し、実現する「成長エンジン」が必要です。
その成長エンジンは、強い「ミッション(深い知)」「ビジョン(高い知)」を土台にして、磨き上げ、立ち現れてきます。
この検討ステージをないがしろにすることが失敗の大元なのです。

このステージの創造が実現の要(かなめ)であり、新価値創造研究所は価値創造のプロフェッショナルです。
この輪は創らねばならない「必要」領域です。その実現のためには、自社単独では難しいことが多く、異業種パートナー、支援パートナー等のつながりが必要なのが特徴です。

この三つの輪を統合して、社会から感謝される「バリューイノベーション(広い知)」を構想し、実行し、更新することがSDGs成功の秘訣であり本質です。

先ずは目前の細部の検討にいかないで、SDGsをルール・ツール・ロール(第54夜、第80夜・第142夜)として、大きな視野・視座で未来から眺めてみる。
そして、この三つの輪を意識して、整理しながら統合・新結合していく。それが成長・成功への道筋です。

さてさて、来年は、東京オリンピックと共に、「SDGsの飛躍の年」になると宣言します。
共に力を合わせて、輝かしい未来を創りましょう。
それでは、皆様よいお年をお迎えください。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

SDGs三位一体99

SDGsシフト㉙「価値創造の知・第274夜」『ありたい姿と自分ゴト』

2019年12月16日『二つでありながら一つ』

「SDGsを実現するための一番のポイントは?」という同じ質問が先週・今週と続きました。

・「『①ありたい姿と②自分ゴト』の二つを高めてワンセットにすること」
と答えました。

「①ありたい姿」には、統合力と構想力(想像力と創造力)が必要です。
「②自分ゴト」には、響感力と当事者意識が必要です。
この二つは、心性・感性・知性が絡んでくるのでなかなか手ごわそうに見えるのですが、それを手に入れることでSDGsシフトの道筋が観えきます。

SDGsの本質は、「今よりも、地球・社会・一人ひとりの将来を良くしたい」という世界中の想い(ニーズ)に応えることにあります。
それを立脚点として、その社会価値と経済価値(利益)を統合していくこと。ボランティアでは長続きしませんから、持続可能にすることが必要です。
世界ニーズ、社会ニース、顧客ニーズに応えられれば、対価が巡ってきます。

いま、これまでのやり方、考え方の延長上に「ありたい姿」が観えていて、社員が「自分ゴト」として、やりがい・生きがいをもって働いているのであれば素晴らしい経営です。
ところが多くの場合は、現在と変化の激しい10年後に「これまでのやり方・考え方」では成長が見込めなくなっているのが見えているのが実情です。

しかし、「(経営)危機はチャンス」でもあります。

その時に、
1.「世界のニーズ」であるコト
2.「国・行政・金融・顧客」が後押しがあるコト
3.「各目標との有機的なつながり」の中に価値が発現するコト

この「SDGsの国際的枠組み」を上手に使って「自社の経営体質」を変え、「将来の経営危機」を乗り越えるツール(手段)・ロール(役割)として実践されてみてはいかがでしょうか?

「国際的枠組み」の参考事例として、「ベトナム(共産党による一党支配体制)のTPP(環太平洋パートナーシップ)参加」をみてみましょう。

ベトナムはTPPを、WTOよりも高度かつ広範な義務を伴い、将来の自由貿易協定のモデル構築を狙う「新世代の自由貿易協定(FTA)」と位置付けています。
・国有企業をなくす(非商業的援助の禁止や他締約国の企業や物品・サービスに対する無差別待遇の付与など)
・強権的なディールはいけない
・賄賂はいけない
・労働者の諸権利
・知的財産
等々、
社会主義の国でありながら、上記の決断は容易なものではなかったはずです。

それでも、「自力ではできないことをTPPの国際的な枠組みの中で自らを変えてゆく」
ことに舵をきりました。隣国の中国の脅威も勿論あったのでしょう。

・「自力・自社ではできないことをSDGsの国際的な枠組みの中で自らを変えてゆく」
と置き換えてみましょう。

その時の重要なポイントが、
「『ありたい姿と自分ゴト』の二つを高めてワンセットにすること」
にあります。

『ありたい姿と自分ゴト』は、コインの裏表なのです。
響感・共感できる「ありたい姿」がなければ、社員は「自分ゴト」になりません。
SDGsが「自分ゴト」になっていなければ「ありたい姿」には到達できません。

第264夜の吉野彰さん絡みで“二つでありながら一つ”について綴りましたが、
重要な心得であり方法なので引用します。
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第33夜(禅と価値創造③)で、“二つでありながら一つ”を綴りました。
イノベーション(新結合)の本質もここにあります。(第17夜)

『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは何だと思いますか?
それは、「二つ」にならないということにあります。
座禅の姿勢は、「結跏趺坐(けっかふざ)」という右足と左足を組んでいますね。

この姿勢は、『二つではない、一つでもない』という「二元」性の「一者」性を表わしています。
これが、もっとも大事な教えです。(引用:禅マインド)

もし私達の心と身体が二つである、と考えるとそれは間違いです。心と身体が一つである、と考えるとそれも間違いです。私達の心と身体は、“二つでありながら一つ”なのです。
私達は普通、もし何かが一つ(単数)でなければ、それは二つ以上(複数)であると考えます。けれども実際の人生の経験に照らしてみましょう。
私達の人生は、複数であるばかりではなく、単一です。私達は、互いに支え合うと同時に自立しています。

「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。
そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると
新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です。
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SDGsという枠組みを活用して、自社経営を大元(=空)で把えて、『ありたい姿と自分ゴト』を同時に実現(=色)する。
登る山(ありたい姿)の輪郭が観えて、その山に登ることに響感・共感できれば、やる気が芽生えます。
登る山を描くことに最初から参画していれば尚更です。

また、「強烈な危機感、自分ゴト化」を持っていれば、自立(外的)・自律(内的)の独り立ちにより、『ありたい姿』に早く近づく可能性が高まります。
そのような社風、社員を醸成されていることが有効です。

先週、長女が1歳2か月の孫を連れてきました。
色々なものを認識して、「あっ」「うっ」と対象を指刺して盛んに声に出していましたが、その真っ最中にお付き合いするのは、自分にとっては至福の時間です。
統合して言葉になっていくのは、『ありたい姿』を描くのに似ているところがあります。最初は、「まねぶ」から入って「まなぶ」のですね。

最初に、「SDGsの枠組み」を使って真似ていく、なぞっていく方法があります。
そこからではなくて、いきなりSDGsと将来事業の本質を把えて、ある補助線や欠けたピースを迅速に埋めることで一つ上のレベル、構想に到達する方法もあります。

多様なアプローチのグラデーションの中で、『ありたい姿と自分ゴト』をあざなえる縄のように、自在にナビゲートして、成長経営(SDGsシフト)に到達していただくことが私たちの役割です。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGs二つでありながら一つ