2020年3月25日 『エンパシー能力とコミュニケーション能力』
先週(3/21)放送のSWITCHインタビュー 達人達(たち)「ブレイディみかこ×鴻上尚史」の対談を観られましたか?そこには、「SDGsシフト」実践・実現に向けて重要なヒントが幾つかありました。
背景にある「SDGs」との共通点は、「ダイバーシティ(多様性)」への対応です。日本では、2000年以降から労働人口の減少と業態の変化から、労働力の確保と女性活用等が企業の課題となっていました。
近年は、グローバル化や顧客ニーズの多様化といった市場変化に対応するため、ダイバーシティ経営に取り組む企業が増えています。
多様性(ダイバーシティ)とSDGsとは深いつながりがあります。
同放送では
「これから日本がむかえる多様性社会に、いったいどう対応したら良いのか?」
という切実な問題をテーマに対談していました。
それは「SDGsシフト」の構想の入り口であり、実践課題です。
本夜は、その中のキーワードである「エンパシー」と「コミュニケーション能力」を切り取って説明します。
さて、「シンパシー」という言葉は日常的に使われると思いますが、「エンパシー」は聞きなれない人が多いのではないでしょうか。
放送では、「エンパシー」と「シンパシー」の違いを説明していましたが、理解を深めるために
A.「TRANS.Biz」(https://biz.trans-suite.jp/12730#sympathy)
B.「シンパシーからエンパシーのコミュニケーションへ」(https://sgmbibouroku.net/archives/3910)
の二つから加筆引用します。
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A.「TRANS.Biz」(https://biz.trans-suite.jp/12730#sympathy)からの引用
「シンパシー(sympathy)」はギリシャ語が語源で、「syn(一緒に)」と「pathos(苦痛)」というそれぞれの単語が組み合わさって出来た言葉です。
基本的な意味は「思いやり」「同情」「気の毒に思うこと」、また「共感」や「共鳴」となります。
「シンパシー」は相手を哀れに思うようなニュアンスが強いですが、そのベースには「共感」「共鳴」の気持ちが多く含まれているのが特徴です。
「シンパシー」に似た言葉に「エンパシー(empathy)」があります。「エンパシー」も「シンパシー」と同様に「共感」「共鳴」「人の気持ちを理解する」という意味がありますが、
明らかに異なる点は、相手を気の毒に思う「同情」というニュアンスが「エンパシー」にはあまり含まれていないことです。
「エンパシー」には「感情移入」という意味もあり「哲学」や「心理学」、また自己の感情を表現する「美術学」の世界で用いられる言葉です。
たとえば「共感が芽生える」「共感が湧く」というポジティブな状況においての熟語表現では「シンパシー」ではなく、むしろ「エンパシー」の方が適切でしょう。
「エンパシー(empathy)」には「同情」の気持ちは含まれないのです。
B.「シンパシーからエンパシーのコミュニケーションへ」(https://sgmbibouroku.net/archives/3910)
シンパシーというのは、自分の気持ちをそのまま相手に反映させるということですね。つまり、自分と相手は、同じ気持ちを抱いていることを前提にしているということです。
たとえば、自分が悲しいと思うことは相手も悲しいと思うし、自分が嬉しいと思うことは相手も嬉しいと思うだろうということです。
シンパシー的思考では、
悪口を言われる
→自分は傷つく
→だから、相手も傷つく
→謝罪などの対処
と考えます。シンパシーでは、「自分と相手の気持ちは同じ」「相手の気持ちはわかることが前提」といえます。
たいしてエンパシーは、自分と相手は異なる気持ちをもっていることを前提にしています。たとえば、友だちの悪口を言っている子どもがいたとしましょう。
学校の先生が「友だちの気持ちを考えなさい。自分が悪口をいわれたら、どう思いますか?」と指導します。
エンパシー的思考ではどうなるか?
悪口を言われる
→自分は傷つく
→相手がどう感じたかはわからない
→相手の気持ちを推測する
→謝罪などの対処
となります。エンパシーでは、「自分と相手の気持ちは同じではない」「自分の気持ちはわからないことが前提」になります。
そして、エンパシーとシンパシーのもっとも大きなちがいは、結論までの過程において、推測(論理的思考)がはいってくることです。
推測とは、現在までにわかっていることをもとにして、他人の心情や事情などをおしはかることです。—
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A.とB.の双方を咀嚼することで「エンパシー」の理解が深まれば幸いです。
同放送では「エンパシー」を下記で表現していました。
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・エンパシーとは、他人の立場を想像し感情を分かち合う能力
・対象に制限はない
・自分で誰かの靴を履いてみること
→「その人の立場だったら自分はどうだろう」と想像する能力を磨いていくこと
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「SDGs」を推進する時に求められる能力は、入り口は「シンパシー(sympathy)」であっても、構想・実現には「エンパシー(empathy)」の能力が必要になります。
つまり、
・自分で誰かの靴を履いてみること
・「その人の立場だったら自分はどうだろう」と想像し、推測(論理的思考)する能力
「世界中で起きているいろんな混乱を僕らが乗り越えていくには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみること」が必要になりますね。
SDGsの17ゴールを実現するためには、「エンパシーの能力」を磨き上げることが求められることが伝わったでしょうか。
「エンパシー(empathy)」で私たちの身近にある表現は、演劇や小説の中にあります。
2000年頃から、自分も前職パイオニア社で「ロールプレイ (役を演じる)」ことを事業開発や企画開発、マーケティングに取入れたこととも無縁ではなかったように思います。
同放送では上記を実現するための技術として、「コミュニケーション能力」について語り合っていました。
・「世間」とは、深い関わりがある人々との世界である
・「社会」とは、他者が生きる世界である
(高度成長時代の日本は)「世間」だけで日本は機能してきたが、それは企業の中でしか通じないルールであり、その世間は吸収合併で淘汰されてきた。今は、自分たちのルールだけではダメだと気づいた企業が生き延びでいる
グローバル化で、多様性に進むことは止められない。自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々と、どの様に関係をつないでいったらいいのか、を皆が模索しているのだと思う。
多様性も対応能力の問題に関係している。
そこに必要なのが、「コミュニケーション能力」
従来、コミュニケーションの上手い人とは、誰とでも友達になれるとか、簡単に人間関係を作れる人と思われているが、本当は『物事がもめたときに何とかできる能力がある人のこと』
どう折り合いをつけてやっていくか、「社会(他者が生きる世界)」の人がやってきたときに、もめたときに、何とかできることを練習しなきゃならない。
相手をなだめ透かしているだけでは問題は解決しないのですね。
そこには、「技術」が必要なのです。
気持ちって、思うだけでは伝わらない。技術がないと伝わりません。
自分たちには想像力があって、自分はその体験はしていないけど、もし体験したらどうなるか?という「エンパシー」を突き詰めることが肝要です。
上記「コミュニケーション能力」については、価値創造の知(第126夜:理解の秘密・インストラクション)に記していますので一部を下記抜粋します。
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—いま、世間を賑わしている『働き方改革』の大きな部分を占めているのも『相互理解=インストラクション』です。
仕事の中には、コミュニケーションのロスやトラブルで溢れていますね。
・「何が重要か」についての管理者と従業員のあいだの不一致
・多くの会社がいまだに従業員と機械を同じように扱っている
・何も決まらない会議にウンザリする
・「言ったじゃないか」と声を荒げることは?
・やっかいなマニュアルを放り投げたことは?
・仕事の成果が見えにくい
・働く人々の多様化が進む
・「わかったね?」「ええ、わかりました」というやりとりはあるが、いっこうに理解してもらえない
・・・
如何ですか?
上記は、1993年「理解の秘密」リチャード・ワーマンが著した中に記している一部です。もう絶版なのですが、「今また、その本が脚光を浴びています」と友人が話していました。
この「理解の秘密」は、松岡正剛師匠が監訳していたので、1998年に購入していました。
本書は、コミュニケーションロスを解消し、相互理解をはかるために、インストラクションの働きとその活用法を教えるはじめての指南書になります。
組織変革のためのリストラクチャリングや資源節約するより、まずインストラクションの仕組みを変えたほうがよほど効果的であるとすら思えるのだ。(引用:松岡正剛あとがき)
是非たくさんの日本人に読んで欲しいと思います。
さて、その後半に『模範的なインストラクター』という項目があります。
①大きな絵、すなわちインストラクションを与えられるコンテクストを説明できる人間
②ある分野の知識をほかの分野に応用できるように、パターンを見つけさせることのできる人間
③信頼感を植え付けることのできる人間
④ひとつのアイデアをいろいろに表現すること、つまり3次元的な像を示すことのできる人間
⑤自分の関心対象に熱意を持つ人間
⑥誤りを認め、リスクをおかすことを奨励する人間
⑦指導のためには、ときには慣習とは逆の方向にすすむことのできる人間
もう20年前の会社勤めの時に、上記に近づきたいと修練してきました。図らずも「価値創造~イノベーション」の「インストラクション」には上記のスキルが全て必要なのでした。
この「価値創造の知」シリーズには①~⑦を散りばめているのもそれが一因です。—
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以上、「エンパシー×コミュニケーション能力」について綴ってきました。
その二つの能力が「SDGs」実践・実現に、密接に関係することをお伝えできました幸甚です。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ