橋本元司の「価値創造の知・第200夜」:「理解の秘密:師匠」⑤

2018年12月31日 松岡正剛師匠

2018年の大晦日に、記念の第200夜を綴ります。

「価値創造」のためには、それが改善であれ、革新であれ、考え方の母体・分母となる『型』を理解していることがとても重要です。
日本には、『上質な型』が受け継がれているので、それを体得、駆使することで『価値創造の知』を豊穣にすることができます。
今回のテーマの「理解の秘密」では、その母体・分母は、第197夜の『地:背景(バックグラウンド)・コンテクスト』にあたります。

インストラクションとしての「地(分母)と図(分子)」の理解に肝要なことは、たんなる説明や学習や指導要領ではなくて、送り手と受け手の相互の継承の“具合”にあります。
本夜は、自分の師匠との「相互の継承の具合」と「第5夜:守破離」を絡めて綴ります。
「千夜千冊1252夜:守破離の思想」から引用
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守って破って離れる、のではない。
守破離は、
・守って型に着き、
・破って型へ出て、
・離れて型を生む。

この思想は仏道の根本にも、
それをとりこんで日本的な様式行為をつくった
禅にも茶にも、また武芸にも、
開花結実していった。
・・・

宮城道雄(546夜)は、芸道は「型に入って型に出ることに尽きます」ということを頻りに言っていた。そのためにはまず師の門に入る。この当初の師弟相承で「型が動いている」という実感が如実に出てくることを、宮城は何度も強調した。
熊倉功夫(1046夜)は、「型は変移するが、前の型を否定して新しい型が生じるのではなくて、つまり排他的なのではなくて、新旧の型が相対的ないし補完的な価値をもち、重層的に積みあげられていく」と書いている。まったくそのとおりだ。
・・・

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そこには、川上不白、世阿弥、利休、織部、遠州が次々に交差しながら現れるので楽しめます。
皆さんの「世界と世間」(第81夜)が拡張すると想いますので、是非、上記全文をご覧いただけると幸甚です。

さて、自分が「経営革新や事業革新」というイノベーションに集中するときに、五感と脳裏を駆け巡るのが、『守破離』(第88夜)と「弁証法」(第15夜・第176夜)です。
様々な講座やプロジェクトでも必ずお伝えするのですが、その際に、肝要の『型』を動かすときにポイントとなるのが「心性・身体性」です。

受講者に、ビデオを含む事例を使って説明してもどうしても頭(脳性)の理解になります。そこにはどうしても伝えられることの限界があります。
自分にとっての『知』のご褒美・財産は、松岡正剛師匠主宰の「未詳倶楽部」(第26夜・第136夜)における「知の出遊」で出会った「格別・別格のゲストの方達の身体知」が大きく影響しました。。
そして、ゲストとホストである松岡師匠とのインタラクションによる「体性・心性・脳性」そして、『守破離の型』のインストラクションでした。

そこで出現する格別・別格を体験することで、「守破離」と「意味のイノベーション」(第130夜)が直結しました。「わかることは変わる」ことなのです。(第8夜、第128夜)
格別・別格の量と質が新結合して、「どうしたら心と身体に響く革新ができるのか」という課題の解決の道筋が観えてくることを経験しました。
そして、2020年以降の時代のキーワードとなる日本流の「第2夜:おもてなし(しつらい・ふるまい・心づかい)」がイメージできます。

その様な『豊穣のインストラクションの場』がこれからの「日本のイノベーション」には不可欠なのですね。

松岡正剛師匠の「格別・別格の場」の身体知により、ご支援対象の『地:背景(バックグラウンド)・コンテクスト』・『新ビジネス・市場』・『新ライフスタイル』の扉の多くを拓くことにつながりました。
そう、自分の中心軸には、松岡師匠による格別・別格の『指図・指南・インストラクション』が息づいているのですね。

そして、それをどう『編集』『継承』するのかが来年の課題です。

本年はたいへんお世話になりました。
皆々様のご多幸を心よりお祈り致します。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
松岡正剛小布施

橋本元司の「価値創造の知・第199夜」:「理解の秘密:指図・段取り」④

2018年12月26日 前職パイオニア社の設計時代

ここで再度、いったい「インストラクション」とは何かについて「監訳者あとがき」から加筆引用します。
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・・・インストラクションとは、そこに大なり小なりのスコープを現前させることだ。
いい訳語がないのだが、日本では江戸期に使われた「指図」とか「段取り」という言葉がほぼそれにあたる。
指図は、普請現場のための図面のこと、段取りは建築や芸能の勧進(プロデュース)のための手順表をいう。
インストラクションは、命令や指示ではない。「説明」である。人が行動をおこす前に、その行動を円滑にし、しかも充実させるための説明だ。
面と向かって口頭で説明できない場合は、マニュアルやハンドブックのような説明書になる。そのため、インストラクションでもっとも重要なことは相手をできるかぎり理解させることである。
そこに、「理解の情報学」あるいは「情報の理解学」とでもいうべきコツが必要になる。・・・

われわれの日々のコミュニケーションの大半を占めているのは、相手に何かを伝えるための会話である。
「わかったね?」「ええ、わかりました」というやりとりは必ずあるのだが、いっこうに理解して貰えなかったということが多い。
それでも日常生活だけなら、まだいい。これが仕事のためのコミュニケーションとなると、取り返しがつかなくなる。
だいいち、「早とちり」「聞き違い」「一知半解」「勝手な解釈」によるコミュニケーション・ロスは、重ねてみればあまりにも厖大になる。
組織変革のためのリストラクチャリングや資源節約をするより、まずインストラクションの仕組みを変えたほうがよほど効果的であるとすら思えるのは、そこだ。・・・
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インストラクションは、命令や指示ではなく、「説明」である。
作曲家がわれわれに提供してくれるのは、音楽そのもではなく、音楽を演奏するインストラクションである。これは誰にでもわかる表現手段でこと細かに書かれています。
バッハは、プレリュードやフーガではなく、それを演奏するためのインストラクションを後世に遺しました。
前夜(第198夜)に、前職パイオニア社で、自分が「設計」に従事していたことを記しましたが、そこでは、「企画」からの仕様を受けて、「構想」し、「設計図」を作成していました。
そこでは、最終製造現場で製品を組立てるための部品製造のインストラクションを八年間していたことになります。

20代前半に、添付写真のKP-77G・GEX-90等、ロンサムカーボーイ(コンポーネント・カーステレオ)という大ヒット商品の設計担当者となり、後半は国内、海外の大手自動車メーカーのOEM設計の立ち上げに関わりました。
そこでは、「指図」「段取り」「構想」の大基本を身につけることができました。その時のインストラクション経験が今の仕事の基礎になりました。

そのインストラクション(設計図)の出来、不出来がたくさんの関係者に影響を及ぼします。設計ミスしたらたいへんなのです。
さて、当時は、年末年始やゴールデンウイークの直前に、「本社・企画」や「自動車メーカー」から、「大きな変更(設計変更)」が入ることが日常茶飯事でした。
それまでの段取りが滅茶苦茶になりますね。その変更対応のため、超超過勤務と「連休」の半分以上は出社していました。

そう、上流の段取り(インタラクション)が悪いのですね。そのことによる現場のロスは計り知れないものがあります。
・設計にいれば、上流の「企画」「開発」
・「企画」にいれば、上流の「研究所」「経営」
のインストラクションの問題が否が応でも目につきます。

上流が、いいタイミングで有効な「指図」を出せないと、「段取り」を示せないと、現場は大混乱します。
それを革新することができれば、インストラクションの仕組みを変えることができれば「働き方改革」になります。逆に、それができないと取り返しがつかなくなります。
(リストラクチャリングの道に進みます)

そうやって、「設計」「技術企画「開発企画」「ヒット商品」「研究所」「新事業開発」と上流に異動していきました。
「インストラクション」の重要性が、会社経営、会社生活、夫婦生活、人生設計にも関わってくることがわかりますね。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

理解ロンサムカーボーイ

橋本元司の「価値創造の知・第198夜」:「理解の秘密:何も決まらない会議」③

2018年12月25日 「懸命」(WILL)と「賢明」(SKILL)

会社で「何も決まらない会議」でイライラしたことはありませんか?
誰もが経験しますね。

特に多いのが、
・リーダーシップの欠如
・イメージメントの欠如
・相手先や外的要因からの理不尽な要求
・問題の原因が分からない、見える化されない
・問題の先送り
・他の部門との連携が必要なのになされない
・営業・マーケ部門と設計・開発部門の責任のなすり合い
・等々

議論する時に、前夜(第197夜)の地(ground)の共有と本質を把えることが重要です。
そのことが有効な『次の一手』につながります。

自分ゴトなのですが、前職パイオニア社では、
・(工場)設計→労働組合→技術企画→(本社)情報企画→開発企画→ヒット商品→研究所→新規事業開発
という順番で異動しました。

「設計」時代には、「商品企画」の決定が遅く、そのしわ寄せが「設計品質」、「製造品質」に大きな影響を及ぼすことを身をもって体験してきました。
如何に上流のほうで、「質の高い」決定ができることが「設計」「製造」の負荷を無くす、つまり、「後始末」に時間がかかり悪循環になるを防いでくれるのです。
その取組みが「働き方改革」につながります。

決定の遅さで、「設計」の残業時間が、100時間越えを3か月続けた時は心身共に疲れ果てたことを忘れません。
そのようなことを何回か経験してから、2000人規模の労働組合の書記長になりました。
ここには、工場の横串でメンバーが集い、建前ではなく、本音の話が聴けたことがその後の全てのステップに役立ちました。

早速、超過勤務の「新ルール」を取り決めました。(第38夜:懸命と賢明、そして“働き方改革”)
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それはもう30年前の話になりますが、今で云う、「働き方改革」です。大局的に意識を変える必要があります。何か大きな事故がないと、なかなか治らないのですね。

残業に対する規制の新制度は、2年前に労組の先輩たちが創ってくれたのですが、数値を規制するだけでは歪や悲鳴が出てきます。
自分が30歳の時に、会社との交渉で事前準備して使った言葉は今でも覚えています。

“もう私たち組合員は、通常のレベルを超えて十分以上に「一生懸命」に仕事をしています。
今必要なのは、足りないのは、「一所賢明」ではないでしょうか。
「懸命」を超えるには「かしこく明らか」にする賢明の知恵が必要です。

会社は組合員の「一生懸命という精神力」に頼ってしまうのではなくて、「賢明」という“知”で働き方を改革する必要があります。共創しましょう”

という提言をして、「懸命」(WILL)と「賢明」(SKILL)を合わせた取組み、仕組み(新結合)を会社と労組でタッグを組んで進めました。叡智を集めて、仕組みを創ることがとても重要なのです。
そのことで、意識改革と大きな成果が出ました。
(上記の「懸命と賢明の新結合」も、第31夜~第37夜でお伝えした“二つでありながら一つ”という最も重要な方法です)
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労働組合を3年で降りる時に、「技術の方向性」を速く出せるように、『技術企画』という部門の開設を会社にお願いしました。
その一期生として「企画」と「技術(設計・開発)」の橋渡しを行い、技術発表会の「コンセプト(=新価値創造)」(第13夜:倒産、そして新価値創造)を定めて実践しました。

設計や労働組合(書記長)では速くモノゴトを決められていたことが、技術企画・開発企画では、不確実なことが多くなることで決定に時間がかかりました。
特に、「技術企画」では、二年ほど「書記」もしていたので、「何も決まらない会議」の時は、いったいどこに問題があるのかを客観的に観るいい経験をさせて貰いました。

そのうちに、先送り体質の「商品企画」の決定のやり方に「問題」があることが分かってきました。
その解決のための提案をしていたら、「本社・商品企画」に異動になってしまいました。

そこのやり方、物差しが時代の波に合わないので、次期社長に直訴しました。その第一弾が「ヒット商品緊急開発プロジェクト」の誕生に繋がったのです。
その延長上に、研究所の異動と「10年後の将来シナリオ」が続きました。

前述の様に、「本来と将来」を議論する時に、前夜(第197夜)の地(ground)の共有と本質を把えることが重要です。
そのことが、「何も決まらない会議」「働き方改革」の一丁目一番地です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
理解会議.jpg

橋本元司の「価値創造の知・第197夜」:「理解の秘密:インストラクションの構造」②

2018年12月22日 インストラクション図解

私たちの生活や仕事は「コミュニケーション」で成り立っています。
そのコミュニケーションを推進する役目を担っているのが、「インストラクション」です。
「インストラクション」と「コミュニケーション」は『二つでありながら一つ』(第33夜、第175夜)なのです。
その「インストラクション」の働きと活用法を理解していることが、個人的にも仕事にも人生を豊かにすることに繋がります。

それはどの様な構造をしているのでしょうか。
「理解の秘密」を自分なりに図解して加筆引用していますのでご覧ください。

さて、図の様に「インストラクション」には5つの要素があります。
1.送り手(GIVERS):インストラクションを出す人
2.受け手(TAKERS):受け手は、インストラクションにただ黙って従っているだけではなく、アクティブに行動しなければならない。
3.内容(CONTENT):メッセージそのものであり、表現方法には制約されない。
4.チャンネル(CHANNEL):メッセージの形式、仕上げ方でる。
5.コンテクスト(CONTEXT):インストラクションを届ける場面、背景である。

上記の5つの要素を地(分母)と図(分子)に分けました。

第105夜に記載していますが、「プランニング編集術:松岡正剛師匠監修」に書かれている「地」と「図」の関係がここでもたいへん参考になります。
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・発想のための「地」と「図」
情報には、「地」(ground)と「図」(figure)があります。地は情報の背景的なものを示し、図はその背景に浮かび上がっている情報の図柄をさします。
情報を瞬間的にとらえるとき、私たちは情報の図をみていることが多いものです。「地」情報は、漠然としていたり、連続しているいたりするので思考からついつい省いてしまいがちです。地の情報は、見ているようで見ていないのです。

意識して「地」の情報に着目してみましょう。何を地の情報としているかです。
・・・
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そう、「インストラクション/コミュニケーション」には、この依って立つ「地」(分母)の部分が重要なのです。
「夫婦喧嘩」のことを思い浮かべてみましょう。
だいたい、この「地」(分母)の部分が問題なのです。
お互いの拠って立つコンテクストが共通が多く、理解していればいいのですが、『背景(バックグラウンド)=地』が違いますね。
その場が、「疲れていてイライラする」場面であったりすると尚更です。

ご支援する会社の社長さんと自分との間にも、知識・体験・専門性の『背景(バックグラウンド)=地』が違います。
他業界の事例やビジネスモデル知識、対象事業の「本来と将来」の見立て、本質的な課題や不易流行の把え方等々です。まあ、同じであれば、ご支援することもありません。

前職・パイオニア社でプロデュースした「異業種コラボレーション」も、異業種でありながら、共通の価値観を紡ぎ出すためにこの『背景(バックグラウンド)=地』を共通認識することが重要です。

一体、何を分母として話をするのかによって、コミュニケーションの良し悪しが変わります。
それは、TV上の討論であったり、会社の会議であったり、夫婦の会話でも同様です。
何か会話や会議がうまく行かない時に、その「地」「分母」「本分」を『再定義』することがポイントです。

これをしないで、空回りした時間が過ぎてゆき、何も決まらない会議でいっぱいです。
そこでは、『価値』が生まれませんね。そして、それは「働き方改革」の分母でもあります。

図解のこの「地・分母・本分」を「送り手」と「受け手」が共通認識したらどうなるでしょうか。
はるかにスムーズになることがイメージできませんか。

第33夜、第192夜で「不易流行」について綴りましたが、この「分母(コンテクスト)」で「不易流行」を認識することが有効です。
それにより、いい見立て、いい仕立てにつながること、間違いなしです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
理解インストラクション

橋本元司の「価値創造の知・第196夜」:「理解の秘密:インストラクション」①

2018年12月20日 コミュニケーションロスを無くすために

YAHOOニュースで来春の大型の10連休(GW)について、45%が「うれしくない」というニュースが目に入りました。
内訳は、
・男性は「うれしい」43%が、「うれしくない」40%より少し多い。
一方、女性は51%が「うれしくない」と答え、「うれしい」は28%にとどまる。
・「うれしい」は若年層ほど多く、18~29歳は58%、30代は43%に対し、60代は25%、70歳以上は18%だった。
職業別では事務・技術職層の51%が「うれしい」と答える一方、製造・サービス従事者層の「うれしい」は35%にとどまり、50%が「うれしくない」。
主婦層では53%が「うれしくない」と答えた。

この結果を見て、皆さんどのように感じられましたか?
同じニュース、情報なのに、人によって受け取り方が変わるのがわかりますね。
さらに、時系列や欧米と比較することでその差がどこから生まれてくるのか、その課題が観えてきます。

自分ゴトの前職・パイオニア社に従事していた素直な感覚で云えば、自分は「うれしい」に丸○をつけたと思いますが、製造・サービス従事者層半分の50%が「うれしくない」とつけたことに関心を持ちました。
それは、「働き方改革」と多いに関係がありますね。
恒常的に忙しくて余裕がなくなると、ますます「配慮のない情報のやりとり」「本質的でない情報のやりとり」で誤解と失意に陥ることになりやすくなります。
「夫婦喧嘩」も同様で起きやすくなりますね。自分も経験してきました。良好的、本質的な「情報の受け渡し」は、人間生活のもっとも基本的な要素のひとつです。

そこで、本夜から「働き方改革」や「価値創造革新」に直結する「情報のやり取り」にまつわる構造や事例を、「理解の秘密」(リチャード・ワーマン:松岡正剛監訳)を参考にしながら綴ろうと思います。

それでは、この本の序盤を加筆引用します。
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・・・ インストラクションは人間生活のもっとも基本的な要素のひとつである。これは、はっきりとあるいはそれとなく、コミュニケーションを推進する役目をする。
・・・
インストラクションとコミュニケーション。この二つは表裏一体のものである。このふたつは、
・周囲の人々とどのようにかかわったらいいのか、
・どうやったら仕事がうまくいくか、
・身の回りの世界をどれだけ理解できるようになるのか、
こういったことに重要な役割を果たしている。

・情報を手にいれる方法、
・それを体系だてて理解する方法、
・コミュニケーションを通じて情報を交換する方法、
このような方法は、人間の生活のなかでもっとも大切な働きである。
インストラクションがなければ、大半の情報は役に立たない。
ファイルキャビネットに情報が入っていても、その場所や内容や使い方を知らなければなんの価値もない。
インストラクションがあってはじめて、これらの情報の価値は発揮される。
つまり、情報を利用する人に、それをわかりやすく説明するのが「インストラクション」なのである。
・・・
インストラクションは、知識や情報を理解する鍵なのである。
ほとんどすべての活動に、なんらかの形のインストラクションが含まれている。
・何をすべきか指示を受ける
・何をすべきか相手に伝える
・何かの利用方法、見つけ方、決め方、やり方を見出すなどである。
---------

そう、インストラクションは毎日の仕事や生活に浸透していて、まばたきや呼吸のようになっています。私たちは、ほとんど無意識のうちにインストラクションを与えたり、それに従っています。
その構造と活用法を理解することで、
・クライアント先とのコミュニケーション
・対象事業の顧客価値の明確化
・対象事業の本来と将来の羅針盤
・社員へのパワハラ
・退職希望者へのインストラクション
・組織改革

等々、「働き方改革」「価値創造革新」に役立ったことを実感しています。
経営のご支援(コンサルティング)の現場では、インストラクションを意識しながら実践・遂行しています。

それを理解することで、夫婦関係、友人関係や職場の上司との関係、政治・社会・経済の視点・視座が拡がり、解決への道筋が明確になります。

次夜は、自分の体験と関連付けながら、皆様に役立つことを狙いとしながら、「理解の秘密」(マジカル・インストラクション)をひも解いていきます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
理解の秘密

橋本元司の「価値創造の知・第195夜」:「芭蕉の知:道を究める」⑥

2018年12月13日 俳句道、華道、そして、価値創造の知(深い知)

前夜は、パイオニア社の「投資ファンドの完全子会社化」というニュースに関連づけて、
「③リオリエンテーション(「進むべき方向」の抜本的見直し)」の重要さについて綴りました。

芭蕉は、俳諧を「リオリエンテーション」したイノベーターでした。
それは、「言葉遊び(滑稽や戯れ)」の俳句を『俳句道』に高めました。
それは、新しい文化であり、ライフスタイルにつながります。

新価値創造研究所が考える「価値創造の望ましい姿」は、多くの人々に役立つ新しい文化・市場・ライフスタイルを創ることです。

さて、『俳句道』を命名しましたが、相撲道、華道、茶道、柔道・・・、と「~道」と「道」がついています。
そこで使われる「道」とは、何なのでしょうか?

辞書には、「道とは、(相撲等の対象における)真理追求や生き様のこと」とあります。

それでは、真理追求や生き様の「道」についての自分の強烈な印象を記します。

それは、2009年12月19日 松岡正剛師匠主宰「連塾 第3期JAPAN DEE4」でのことです。
当代随一の花人である川瀬敏郎(かわせ としろう)さんがゲストとして招かれました。

舞台の上で、花をいけられるその風姿、有り様、閑かさ、を観て息をのみました。
これまで経験したことのない、格別で別格な『華道』でした。

天と地のあいだで、心身をとおして、超一流の①しつらい、②ふるまい、③息遣い・心遣い、がありました。

閑かさや岩にしみいる蝉の声(芭蕉)

連塾の舞台には、華道の深淵な『閑かさ』がありました。
正直、ぶったまげました。

「あ~、これが本物の本当の華道なんだ」と。
言葉では伝えることができません。

この「価値創造の知」で何回か記してきましたが、
早くに、最初に、「格別・別格」の超一流を体験すること(第26夜・第119夜)がとっても重要なのです。

そこには必ず、身体性と心性と霊性があります。

芭蕉には、身体・現場をとおして、天と地のあいだにある心性と霊性の「真善美」を極めたように観えます。
ゆえに、それは『俳句道』にまで高まり、現在に続いているのではないでしょうか。

『道(タオ)』については、老子の知(第177夜)に綴りました。

その『道(タオ)』は、「空即是色空即是色」(第6夜)の『空』と同じであり、
それは「大元(おおもと)」のことを言っています。

『・・道』には、この「大元」に繋がっていることが必要です。

「価値創造の知」の第一法則(深い知:第85~86夜))は、この「大元」そのものです。
ゆえに、新しい文化・市場・ライフスタイルにつながります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
芭蕉俳句道

橋本元司の「価値創造の知・第194夜」:「芭蕉の知:パイオニア社の再生・再興」⑤

2018年12月11日 パイオニア社のリオリエンテーションの道筋

「パイオニア、香港・投資ファンドの完全子会社化へ」

という前職・パイオニア社のとっても残念なニュースが 先週12月7日に飛び込んできました。

本年5月中旬の第147夜に、
『真の企業再生・創生』とは? 「①リストラではなく、リ・オリエンテーション」
というテーマで、パイオニア社のことに触れました。
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・・・
経営は、縦の事業部に権限委譲していますが、経営の真の力は、将来ビジョンをイメージメントして、外部とそれらを横串して新文化を創る「プロデュース能力」です。
それを行うには、「深い知・高い知・広い知」を伴った企業の“ミッション・ビジョン・イノベーション”の明確化が絶対必要なのです。

そう、新しい経営陣には、「①リストラクチャリング」に安易に走るのではなく、“ミッション(錨)・ビジョン(北極星)・イノベーション(羅針盤)”と、真の企業再生・創生「③リオリエンテーション」が求められます。
真正面から取り組んでほしいですね。
・・・
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「次の一手」「次の柱」の用意と卒意はできたのでしょうか?

同時に、「真の企業再生のための3つの切り口」についても触れました。
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「行き詰まりの打破や、新たな成長を目指して、企業再生に取り組む切り口は3つあります。
①リストラクチャリング
「構造」の見直しを意味しますが、企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除するものです。
②リエンジニアリング
「機能」の見直しを意味しますが、企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除するものです。
③リオリエンテーション
「進むべき方向」の抜本的見直しを意味します。
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多くの会社が①②でお茶を濁していますが、上記①②は誰にも判りやすい「オペレーション」です。
12月7日の同日に、ニッサンのゴーンさんもニュースになっていましたが、ゴーンさんの得意なことも①②です。それも行き詰まりを見せましたね。
現在の多くの会社が①②が得意だった経営者の方達です。
ところが現在は、時代の変化・進化(第109夜、第169夜参照)の踊り場で、①②だけでは対応できなくなっていますね。
そのことは、経営者の方達はもう十分に承知しています。

今は、「③リオリエンテーション」の時代の踊り場であり、そのベースは、常識を逸脱しながら顧客満足価値を創造する「イノベーション」を開拓するパイオニアカンパニーが活躍する時代です。

さて、連載してきた『芭蕉』はその様な「踊り場」を生きて「俳句界」を開拓した、まさしくパイオニアでした。
この開拓で重要な視点は、芭蕉が生きた時代(1600年代後半)の背景をセットで視る必要があります。
そう、芭蕉が生きた時代と現在の状況には踊り場としての共通点がいくつかあるので、芭蕉がどの様な舞台でイノベーション(革新)をしたのか、を自分ゴトとして置き換えることで、今の経営に役立てていただければ幸甚です。

それでは、100分de名著:おくの細道 松尾芭蕉(長谷川櫂)から加筆引用します。
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江戸幕府がもたらした太平の時代の前には応仁の乱(1467~77)から130年以上続いた戦乱の時代がありました。
戦乱は今日の都を発火点にして日本全土に広がりました。この戦乱が日本の社会や文化に与えた影響は想像を絶するものがあります。
日本の歴史を眺めると、この戦乱の時代を境にして、それ以前の日本と以降の日本はまるで別の国であるようにみえます。
いいかえると、応仁の乱が巻き起こした戦火の中でそれまでの古い日本はいったん滅んでしまった。そして、戦火の中から新しい日本が生まれたということです。
このとき誕生した新しい日本が修正を加えられながらも現在まで続いているのですが、この新しい日本の最初の大詩人が芭蕉だった。

さらに踏み込んでみると、130年も続いた戦乱の時代に都だけでなく地方の都市も戦火で焼け、荒れ果てました。これによって貴族や大名や自社が保管していた多くの古典文学の文献が消失したり散逸したりしてなくなってしまいました。いつの時代でも戦乱は文化の破壊をもたらします。
その後の1600年前半に、本阿弥光悦・俵宗達・北村季吟等の日本の古典復興(ルネッサンス)がありました。芭蕉が生きた1600年代後半は、それらの古典復興を創作に生かした時代だった。
つまり、芭蕉は絶好の時代を生きたことになります。芭蕉が日本最大の詩人とされる背景には、こうした時代の力が働いています。
・・・
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さて、「蕉風開眼の句」と呼ばれる古池の句以前の俳句はどのようなものだったのでしょうか?
俳諧の本来の意味は「滑稽」や「戯れ」といった意味でした。それは、連歌を面白おかしく、親しみやすくしたものです。
それを簡潔に表わすと、古池の句以前のそれはずっと「言葉遊び(滑稽や戯れ)」の俳句でした。
それは「駄洒落」のようなものだったのです。

古池や蛙飛こむ水の音

はるか古代から日本文学の主流は和歌でした。その和歌は発生以来、一貫して心の世界を詠んできました
人の心を詠み続けてきた和歌に対して。言葉遊びの俳句が低級な文芸とあなどられていたのは当然です。
そうしたなかで芭蕉が古池の句を詠んで俳句でも人の心が詠めることを証明したのです。

そこに、「現実(実)と心の世界(虚)という次元の異なる合わさった『現実+心』の句」を開拓しました。

芭蕉の革新ポイントは、
・新しい舞台をつくる
・土俵を変える、逸脱する
・新しい目的をつくる
ことにあります。

上記については、次夜に、第177夜「老子の道(タオ)」と関連付けて綴ります。

さてさて、ここからパイオニア社が、「どの様な新しい道を開拓するのか」が肝要です。
ヒントや構想は、幾つかありますが、先ず二つアップします。

1.価値創造の将来は、「中心にはなく、周縁に」あります。
→「オーディオの未来は?」を参照ください(2017年5月14日 オーディオの定義を革新する)

2.「顧客に囲まれる」には?
「顧客に囲まれる時代」(第20夜、第72夜、第108夜)の新しい交差、新文化を創り、そのエコシステム(生態系)を創造する

ことにあります。
それは、「ハードウェア」だけではできません。

それができれば、仕上げの「第3ステップのイノベーション・レボリューション」に進むことができます。

やはり、それらはこれまでの①②「オペレーション」ではできません。
③「リオリエンテーション」から、開拓(パイオニア)しましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
芭蕉パイオニア

橋本元司の「価値創造の知・第193夜」:「芭蕉の知:『軽み(かろみ・かるみ)』」④

2018年12月7日 『軽み』・『却来』・『色即是空・空即是色』

前夜は、「不易流行」について綴りました。
それは、時が流れても変わらない不易に心を置きながら、時の流れとともに変わる流行に目を置く。

それは、第88夜「世阿弥の知 離見の見」「目前心後(もくぜんしんご)」を想起させます。
「眼は前を見ていても、心は後ろにおいておけ」ということ。
その本質は、「我見(がけん)」と「離見(りけん)」にあります。

それと同時に、第6夜「空即是色」と「不易流行」は同じことを云っていることに気づきました。
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「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。

そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です。
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第190夜に、蕉風開眼の「古池や蛙飛こむ水の音」の世界を紹介しました。
それは、古池の句は現実の音(蛙飛びこむ水の音)をきっかけにして心の世界が(古池)が開けたという句である、と。
「現実(実)と心の世界(虚)という次元の異なる合わさった『現実+心』の句である」ということです。

それは、「現実(実=色)と心(虚=空)」の図式です。

俗っぽい俳諧から、「現実(色)から心(空)を想起し、その空から色を推敲した」様式を創ったのが芭蕉ではないでしょうか。

そこにある「心(空)」が「不易」に近づき、高まっていくと「高尚」になっていきますね。

・高く心を悟りて俗に帰るべし(=高悟帰俗)

「小林一茶」(丸山一彦著)は、これを「俳諧の本質は、現実から出発しながら、それを一旦突き放し、廻り道をしながら、再び現実に帰ってくるところにある」
と著しています。

これを、芭蕉は「軽み(かろみ・かるみ)」と云ったのではないでしょうか。
「高悟帰俗」としての芭蕉の表現を「軽み」とすると腑に落ちます。
それは、第4夜(用意と卒意)の「侘び、寂び」にもつながってきます。

同時に、それは、第183夜の「世阿弥の知 却来の思想」でもあります。
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「却来」の思想は、優れた風儀がつまらぬ「なりふり」を一挙に吸収していくことをいう。くだらなさ、つまらなさ、下品さを、対立もせず非難もせず、見捨てもせず、次々に抱握してしまうのである。
なるほど「能」とは、このようにして万象万障に「能(あた)う」ものだったのである。・・・
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「空即是色」(第6夜)、「世阿弥の知 却来の思想」(第183夜)と「芭蕉の知 かろみ」(本夜)とが一直線で繋がりました。

さてさて、それを現代に引き戻すと、「高尚なコンセプト」を「かろみ」にする方法として活用できます。
例えば、
・池上彰さんの分かりやすいニュース解説
・第28夜 旭山動物園「命の大切さ」→動物が生き生きしている展示
・会社の理念→ビジョン展開
・自分の生きがい、やりがい
等々です。

今は、この連載で何回か記しましたが、「社会に役立つこと」と「会社の理念・活動」が繋がることが不可欠な時代になっています。
是非、社会の在り様、会社の在り様を再検討してみてください。
それは、「人生」においても同様です。

そこに、「価値のイノベーション」「意味のイノベーション」(第130夜)という『お宝』があります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
芭蕉かろみ

橋本元司の「価値創造の知・第192夜」:「芭蕉の知:『不易流行』」③

2018年12月5日 風雅の誠

五木寛之さんが、「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」のゲストの回でした。

そこでは、めまぐるしく変化していく時代のなかで、

・「変わる世の中、変わらぬ本質」
・「私たちも何を変えて、何を変えずに走るべきか(生きるのか)」

が大きなテーマの一つとなっていました。
この取組みは、永遠のテーマですね。

それは、まさしく『不易流行』です。
全ては「無常迅速」ですから、それは、人生、事業創生、地域創生、教育、政策等々にあてはまります。

それでは、日本俳句研究会から引用します。
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不易流行とは俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の中で見出した蕉風俳諧の理念の一つです。
芭蕉の俳論をまとめた書物『去来抄』では、不易流行について、以下のように書かれています。

「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」(去来抄)

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不易流行の『不易』とは、時を越えて不変の真理をさし、『流行』とは時代や環境の変化によって革新されていく法則のことです。
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・『不易』とは、時が流れても変わらない
・『流行』とは、時の流れとともに変わる

前職・パイオニア社で、「ヒット商品緊急開発プロジェクト」を立ち上げ、次々に「ヒット商品」を連発しました。
その多くは、その時代のツールで、現在リリースしても「ヒット商品」には届きません。
今でも初期iPodやガラケー携帯を記念として持っていますが、それらは、ツールが進化して売れませんね。

五木寛之さんは、それを
「時代とともに時代と寝る。時代のバックグラウンドの上で物語をすすめる。
それは、二度と帰ってこない。・・・」
と語っていました。

ポイントは、不易を分母として、流行が分子という構造があるかどうかです。
本質的な分母(不易)があれば、時代に適合した分子(商品・サービス)を生み出すことができます。
それは、「価値創造の知・第一法則」(第21夜、第85夜、第161夜)に記しています。
重要なのはインビジブルな本質・価値・意味を把えらえているかどうかにあります。
なので、今でも「ヒット商品」を創出する自信があります。

五木寛之さんは、日本が大事にするもの(不易)というテーマで、

「和を持って貴しとなす」
が変わらぬ本質であるとも語っていました。

さて、再び日本俳句研究会からの引用です。
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不易と流行とは、一見、矛盾しているように感じますが、これらは根本において結びついているものであると言います。

『蕉門に、千歳不易(せんざいふえき)の句、一時流行の句といふあり。
是を二つに分けて教え給へる、其の元は一つなり』(去来抄)

去来抄の中にある向井去来の言葉です。
『千年変らない句と、一時流行の句というのがある。
師匠である芭蕉はこれを二つに分けて教えたが、その根本は一つである』
という意味です。

難しい内容ですが、服部土芳は「三冊子」の中で、その根本とは、「風雅の誠」であり、風雅の誠を追究する精神が、不易と流行の底に無ければならないと語っています。

『師の風雅に万代不易あり。一時の変化あり。
この二つ究(きはま)り、其の本は一つなり。
その一つといふは、風雅の誠なり』(三冊子)

俳句が時代に沿って変化していくのは自然の理だけれども、その根本に風雅の誠が無ければ、それは軽薄な表面的な変化になるだけで、良い俳句とはならない、ということです。
(風雅とは蕉門俳諧で、美の本質をさします)
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蕉門俳諧の分母、根本は、『風雅の誠』にあるですね。

その本質があることで、
「卑俗ではなく、趣を介した自由な精神・芸術」
として受け継がれているのではないかと洞察しています。
会社や地域の再興、隆盛で必要なのは、「手段」ではない「本質・不易・目的」を明確化・共有化しているかどうかにあります。
それを持って、「時代とともに時代と寝る(五木寛之)」(=流行)のです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
芭蕉不易流行

橋本元司の「価値創造の知・第191夜」:「芭蕉の知:『虚に居て実にあそぶ』」②

2018年12月4日 芭蕉とAR・VR・AIの新結合

少し前に添付の様に、芭蕉の句で有名な山寺を訪ねました。
大仏殿のある奥の院まで1,015段ある石階段。「一段一段踏みしめていくごとに一つずつ煩悩が消え悪縁を払うことが出来る」と云われるその石階段を何とか上りきりました。

「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」

その「閑かさ」、「岩にしみ入る蝉の声」と頂上の景観を感じるためでした。
そこでは、世阿弥の世界にAR(オーグメンテッドリアリティ)、VR、AIがよぎったことが不思議でした。

さて、前夜に、古池の句は現実の音(蛙飛びこむ水の音)をきっかけにして心の世界が(古池)が開けたという句である、という蕉風の世界をご紹介しました。
ここにも「現実(実)と心の世界(虚)という次元の異なる合わさった『現実+心』の句である」ということが展開されていることがわかります。

ここで水先案内として、松岡正剛師匠の千夜千冊・991夜「松尾芭蕉 おくのほそ道」に幾つか引用します。
(対象の「全体と本質」を把むには、別格のナビゲーションに触れることがたいへん役立ちます)
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・・・ところで最初に言っておいたほうがいいだろうから言っておくが、芭蕉は天才ではない。名人である。そういう比較をしていいのなら、其角のほうが天才だった。才気も走っていた。
芭蕉は才気の人ではない。編集文化の超名人なのである。其角はそういう名人には一度もなりえなかった。
このことは芭蕉の推敲のプロセスにすべてあらわれている。芭蕉はつねに句を動かしていた。一語千転させていた。それも何日にも何カ月にもおよぶことがあった。
そういう芭蕉の推敲の妙についてはおいおい了解してもらえるはずのことだろう。
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そう、「編集文化の超名人である」ことを認識することで「芭蕉の知」のイメージが立体になっていきます。
続いて、991夜に記されている推敲の一部をご紹介します。

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(初)山寺や 石(いわ)にしみつく 蝉の聲
(後A)さびしさや 岩にしみ込む 蝉のこゑ
(後B)淋しさの 岩にしみ込む せみの聲
(成)閑さや岩にしみ入る蝉の聲
(初)五月雨を 集て涼し 最上川
(成)五月雨をあつめて早し最上川
(初)涼しさや 海に入れたる 最上川
(後)涼しさを 海に入れたり 最上川
(成)暑き日を海に入れたり最上川
(初)象潟の 雨や西施が ねぶの花
(成)象潟や雨に西施がねぶの花

どれを例にしても驚くばかりの「有為転変」である。とくに立石寺で詠んだことになっている「閑さや岩にしみ入る蝉の聲」は、初案の「山寺や石にしみつく蝉の聲」とは雲泥の差になっている。
なかんずく「しみつく」「しみこむ」「しみいる」の3段に変えたギアチェンジは絶妙だった。「しみつく」では色彩の付着が残る。「しみこむ」は蝉に意志が出て困る。それが「しみいる」になって、ついに「閑かさ」との対比が無限に浸透していくことになった。こんな推敲は、芭蕉一人が可能にしたものだ。とうてい誰も手が出まい。

われわれにとって多少とも手が出そうな芭蕉編集術の真骨頂は、おそらく、「涼しさや海に入れたる最上川」が、「暑き日を海に入れたり最上川」となった例だろう。
なにしろ「涼しさ」が、一転して反対のイメージをもつ「夏の日」になったのだ。そして、そのほうが音が立ち、しかも涼しくなったのである。
享保に出た支考の『俳諧十論』に、芭蕉の「耳もて俳諧を聞くべからず」という戒めをめぐった文章がある。連句の付合(つけあい)の心得をのべているくだりだが、実はこの言葉は「閑さや岩にしみ入る蝉の聲」にも、あてはまる。蝉の声は耳で聞いているのだが、それを捨てていく。そうすると、「目をもて俳諧を見るべし」というところへふいに出ていける。
これは「涼しさ」が涼しい音をもっているにもかかわらず、あえて「夏の日」という目による暑さが加わって、それが最上川にどっと涼しく落ちていくことにあらわれた。

「物によりて思ふ心をあかす」

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「上記の様に伝えてもらう」と、自分の様な凡人にもビシビシ「伝わります」ね。
そのことは、第60夜「価値創造イニシアティブ:現状を革新する7つの力」の5番目に記しています。

それが、「伝える力・伝わる力」(価値創造の知・第69~70夜)です。引用します。
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「伝えた」ことが「伝わる」に変換されるには、そこに化学反応が起きて、何らかの化合物ができるようなものです。

「伝える」⇒共感・共鳴⇒「伝わる」⇒変わる・行動する(変化・行動)
ここにおいて、「新しい関係が構築される」のが「伝わる」ということです。
「伝える」⇒わかる⇒「伝わる」⇒かわる
という方程式です。

私が前職でプロデュースした、連続「異業種コラボ・ヒット商品」がこの図式です。(第14夜)

「伝える」というのは、送り手の情報を受け手が「知った」という状態。「伝わる」というのは、送り手の情報が受け手に響き、共感・共鳴して変わり行動すること。つまり、第8夜『「わかる」ことは「かわる」こと』で記した状態です。

つまり、『新しい関係性が構築されたコト』を意味します。
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推敲で記されている芭蕉の「耳もて俳諧を聞くべからず」「目をもて俳諧を見るべし」
というポリシー・スタイルが凄いというか凄まじいですね。

自分は、前職パイオニア社で、「サウンドスケープ(音風景)」をプロデュースしていました。
風景は目で見るものですが、「耳で風景を観る」という共感覚(第3夜:負・マイナスの美学)を文化にしたい、世間に広めたかったのです。
それは「逆転の見方」であり、「負(余白)の美学」でした。自分(橋本)の理解では、これと同じ日本の方法が枯山水であり、俳句であり、長谷川等伯の「松林図屏風」でした。

「俳句から、現実(実)と心の世界(虚)を負(マイナスの美学)に仕立てていく」

芭蕉からのいい学びがありました。

『虚に居て実にあそぶ』

そこには、負(マイナスの美学)と、AR・VR・AIとの融合、新結合、新文化が浮かんだのでした。

それをアナロジーとして、新価値創造へフィードフォワード(活用・応用・展開)しようと想っています。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
芭蕉山寺