橋本元司の「価値創造の知・第100夜」:100夜記念

2017年12月30日:100夜記念

2016年12月6日に想い立って、「価値創造の知・第1夜:生産性を上げるクリエイティブ&イノベーティブ」を『コラム』として綴りました。

1.私のミッション:新価値創造研究所のホームページ「新価値創造で多くの人を幸せにしたい」
2.実践知:前職(パイオニア社)及び、独立後の「事業創生・地域創生・人財創生」の実践知を多くの方達にお伝えしたい
3.恩返し①:ぜんぜん足元にも及ばないのですが、松岡正剛師匠の『千夜千冊』(写真)の「擬」で師匠にご恩返しをしたい
4.恩返し②:谷口正和師匠の数々の助言、及び、師匠主宰「文化経済研究会」で長年得た本質を皆さんにお伝えしたい
5.出版:自分の『本』を出したいという気持ちがありながらなかなか着手できないでいたので、自分の背中を押したい
という『願望』から連載を始めました。

 最初は気負わずに、自分がその時に想っていること、気になるコト、看過できないコトを徒然に記していきました。
当初、コラムの枕詞(テーマ名)はなかったのですが、「第8夜:『知』の本質」に進んだ時に、『価値創造の知』という主題が突然浮かびました。
それからは、それをベースにして、前職(パイオニア社)時代の「ヒット商品開発・シナリオプランニングによる事業開発・事業創出プロジェクト・人材開発等々」の失敗や成功、そして、独立してからの多業種・多業態にまたがる「実践知」を絡めながら記していきました。

そのうちに、
①「3つの知」(「深い知」・「高い知」・「広い知」)というトリニティイノベーションを一枚の関係図にまとめてみよう:第56~57夜
②「日本流」価値創造と欧米流価値創造の融合:第47夜
③「価値創造(事業創生・地域創生)の秘訣(現状を革新する7つの力)」を一気通貫でまとめてみよう:第59夜
④「ビジネスで最も大切なコト」を図解しよう:第82夜
⑤「価値共創」の進化を時系列でまとめてみよう:第101夜

と別々のユニットやピースを繋ぎ、嵌め合わせることで「新しい世界と世間」が現出してきました。
それらを、ご支援している会社・地域・団体にお伝えすることで、新しい事例や刺激が戻ってきて、シナジーの強いインストラクションになりました。
これは、当初まったく想定していない嬉しい展開でした。

思えば、自分が独立(58歳:新価値創造研究所)する時になって、これまでの
①100社との異業種コラボレーション:前職ヒット商品緊急開発プロジェクト(プロジェクトリーダー):第14夜
②100社の企業訪問:永田仁先輩の「企業訪問フォーラム」(日本マーケティング協会主催):第23夜
③200社のセミナー:谷口正和師匠主宰「文化経済研究会」「エコロジー研究会」等 :第24夜
④20年に亘る『格別・別格の一流人』との出会い:松岡正剛師匠主宰「未詳倶楽部」「連塾」「椿座」等 :第26夜
⑤前職(パイオニア社)の組合書記長時代の経験とネットワーク :第13夜
等々

で体験してきた様々なモノゴトが、ジグソーパズルの様に一つにまとまったのでした。
それは、自分にとっては非常に不思議な感覚でした。
失敗や悔しいことも数多く体験してきましたが、「人生には無駄な経験などなに一つない」という言葉をその時に初めて実感しました。

さて自分の中では、これまでいただいてきた『知』、創出した『知』を世の中にほんの少ししかお返しできていないという気持ちです。
これからもますます「新価値創造」の磨きとインストラクションに精進してゆきたいと気持ちを新たにしています。

本年はこれで「仕事納め」にします。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

価値創造の知から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

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価値創造の秘訣

新価値創造イニシアティブ

橋本元司の「価値創造の知・第99夜」 価値共創5.0

2017年12月27日 顧客共創と産官学連携

本夜は、いよいよ「価値共創5.0」です。それを図解しました。
「価値共創4.0」は、民間中心の実践が多いのですが、「価値共創5.0」は
① 産官学連携
② 顧客連携・住民協働
の二つが融合していることが特徴です。

 ①の産官学連携の実践は日本のあちらこちらにありますが、①②の融合した「価値共創5.0」はほとんど見られません。
②については自治体では、人口減少・地域衰退で、「住民協働・官民協働」が急で、自分も住民協働をご支援していますが、住民よりも自治体の方の意識・スキル改革と仕組みづくりが必要です。

それは、従来からの「上意下達の世界」が中心で、「横串・絆の世間」の舞台・物語をなかなかつくれないからです。
もう一歩踏み込んでいえば、いきなり①②融合の課題解決が望まれていても、その基礎(価値共創1.0~価値共創4.0)ができていないことにあります。
そのために、ご支援では、下記の様に「急がば回れ」が必要なのです。

1.価値共創1.0:企業間連携
2.価値共創2.0:①企業・自治体と②顧客・住民との連携
3.価値共創3.0:①企業・自治体同士の連携と②顧客・住民との連携
4.価値共創4.0:①企業・自治体同士の連携と②顧客・住民同士の連携

詳細は、価値創造の知・第94~98夜をご覧ください。
そして、「価値共創5.0」です。

私の知見で、この取り組みに一番近いのが、長野県飯田市の牧野光朗市長の実践です。
2016年2月に、東京ミッドタウンで、牧野市長の講演を聴く機会に恵まれ、そのお話しを伺い講演後にいろいろ質問させていただきました。

ご興味・関心のある方は、
『円卓の地域主義』
~共創の場づくりから生まれる善い地域とは~
第4章
10万人規模の地方都市から地域を学ぶ皆さんへのメッセージ
1.すべては当事者意識から始まる
2.衰退した当事者意識
3.右肩下がりの時代を当事者意識が救う
4.当事者意識を欧州に学ぶ(補完性の原理)
5.善い地域をつくる
①個人の当事者意識を高める
②地域共同体の当事者意識を高める
6.「善い地域」の最適規模の考察
7.飯田モデルを通した「善い地域」の展望
8.当事者意識と「円卓の地域主義」
①「円卓」への意識付け
②「円卓」から共創の場へ

を是非お読みください。
「当事者意識」「想い」「善い地域」「円卓」「共創の場」のキーワードでその世界と世間が目に浮かびませんか?
これは、第60夜( 現状を革新する「7つの力」)と同じです。
丁度講演を聴いたのが、地方の「再生エネルギー」関連企業のご支援をしていた時でしたので、地域と連携した「将来シナリオ」の事業構想が一気にでき上がりました。
それは、自分の中に「価値共創1.0~4.0」の実践があったからです。

ビジネスの原理原則は、「生活者(顧客)が求める価値を提供できない企業・自治体は生存できない」ということです。
いま、何が売れているのでしょうか?
物ですか、情報ですか、サービスですか。
結論から云うと、売れているのは、『関係』です。つまり、「人間関係」です。
前述(第97~98夜)の「ハーレーダビッドソンジャパン」・「クラブツーリズム」「クックパッド」の内側(インナー)に入ってしまえば、そこに待っているのは「信頼」「感動」であり、気持ちがつながることで、モノやサービスが売れてゆきます。「クックパッド」では、その集まったビッグデータを編集することで大きな収益を生んでいます。
つまり、判断の軸が「関係」「信頼」「感動」にあります。

そのための『場づくり(舞台づくり)』が重要です。
その『場』『舞台』を創るためには、「ミッション(深い知)」と「ビジョン(高い知)」が分母として必要です。それから、「価値共創1.0~5.0」に向かうのです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

価値共創5.0

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橋本元司の「価値創造の知・第98夜」:価値共創4.0 『砂の民、泥の民』

2017年12月25日 クックパッドと「新価値創造イニシアティブ」

本夜は、価値共創シリーズの「価値共創4.0」を綴ります。その考え方のベースは、前夜(第97夜)に図解しました。
価値共創3.0と価値共創4.0はどこが違うのでしょうか?
それは、図の左側の「顧客領域」に顧客同士の共創があるのです。(第97夜)

 「価値共創4.0」の別格・代表格が、「クックパッド」です。
カスタマー達がどんどん集まり、喜んで共創・交歓する「プラットフォーム(舞台)」が用意されています。
誰に強制されたわけでもなく、「毎日の料理を楽しみにする」「創作の料理レシピの投稿する」ために、膨大なレシピと投稿による相互コミュニケーションだけでなく、
料理の伝承ネットワークが食卓の意思決定メディアとなっています。

それは、「ソフトウエアとしてのレシピで生活インフラを確立」して、クックパッドの準社員の様に
・活用
・収集
・編集
・投稿
・評価
していきます。

そして、「クックパッド」はそのビッグデータ情報を使って、B2B(マーケティング支援事業等)による「大収益の柱」を創っています。

その根底にあったのは何でしょうか?
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クックパッドのミッションは「毎日の料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やす」です。佐野社長(創業者)が、地球を見渡したときに食糧問題、エネルギー、水、とにかく色々なことが変化している中で「僕たちが変えていかないと世の中まずいぞ」という危機意識が彼の中にありました。
例えば原子力エネルギー、「あれはよいことなのか」と「なぜ」を20回くらい繰り返すとどこかで行詰まるのです。でも彼が一つだけ確信を持てたことが「料理が楽しくなると間違いなく笑顔は増えるよね」。どんな側面から見ても「なぜ」を30回、40回繰り返しても、誰かが不幸になるとか、破綻することはなかったのです。
世の中で料理を楽しみにすることだけの会社が1社くらいあってもいいのではないかということで、クックパッドという会社はスタートしました。
われわれのゴールは「すべての家庭のあらゆるシーンで料理が楽しみになるきっかけを提供する」です。すべての家庭というのは、全世界の家庭です。・・・
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「若い女性は、料理が嫌いなわけではない。料理の作り方、楽しみ方がわからないだけだ。」という本質の見立てがあり、
それをソーシャルメディアを駆使して「家庭に楽しみを創る、顧客共創・交換のプラットフォーム(舞台)、及び、料理の伝承の解決」を仕立てました。そして、全世界に展開して隆々とされています。

顧客は「社員」ではありません。「クックパッド」は顧客に囲まれているのです。
ただ、それだけではビジネスになりません。是非、ビジネスモデルをご覧ください。そして、そのモデルを「自分の会社・地域・団体」にそれを当てはめた時にどのような世界が拓けるのかをイメージしてみてください。

さて、ここで『砂の民、泥の民』の話をします。
キリスト教、イスラム教が発祥した場所は、砂漠です。砂漠では、どの方向に進むのかを間違えると「命」に直結します。なので、そこではリーダー(独裁者)を決めて、強いリーダーシップを発揮して早く行動します。
ところが、森や土の多い地域の日本やアジアはどうでしょうか?大雨や災害に遭遇した時に、すぐ動くのではなく、あちらこちらの様子をみて、協議しながらモノゴトを決めていきます。これが「土の民・森の民・泥の民」です。

ここで、欧米(縦型)と日本(横型)のリーダーシップや「民の価値観」の違いがわかるように思います。
もともと、日本は「横型やチームワーク、世間」が得意なのです。上記の価値共創4.0の世界は、「日本」に向いているとは思いませんか?
それは、この「価値創造の知」シリーズで「新価値創造イニシアティブ」(第77夜)にそのエッセンスを記してきました。「ミッション(深い知)」「ビジョン(高い知)」に導かれて、「価値共創4.0(広い知)」は明滅するのです。

是非、あらゆる企業・地域・業態で挑戦を!
次夜は、「価値共創5.0」を綴ります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

価値共創4.0マスター

クックパッドビジネスモデル

橋本元司の「価値創造の知・第97夜」 価値共創とクラブ財

2017年12月23日 顧客参加とクラブ財

前職(パイオニア社)では、『より多くの人と感動を』を企業理念としていました。
「開拓者」として、「これまでなかった感動を国境を越えてさまざまな人々と分かち合いたい」という想いが込められています。私はビジョン策定の委員でもありました。

 さて、パイオニア社が大切にすることは『感動』です。多くの企業や団体が「感動主義」を標榜しています。私は、感動のその先の本質的な違いを生み出すコトを模索していました。
感動は「心」に直結しているのです。人間は「心」で「つながり」をつくる生き物なので、人間は、「物語」を介在させないことにはつながり合うことができません。
物語とは、新しい現実を受け入れる形にしていく働きです。
自分の中では、B2Cの会社が「モノづくり」で閉じて(CLOSE)いては駄目だ、「モノがたり」と「モノづくり」を合わせた「オープンな感動・感激・感謝」の世界づくりに傾注していきました。

ここで自分を後押しする3つの体験を綴ります。
1.「クラブ財」
2004年に経団連会館(JTB主催)であるシンポジウムのパネラーになりました。その時パネラーでご一緒したのが、ハーレーダビッドソン・ジャパンの奥井社長でした。
ハーレーダビッドソンジャパンは、
①「乗る」:ハーレーでゆったりと旅をする
②「創る」:世界に一台しかない、自分だけのハーレー
③「集う」:気の合う仲間とツーリング(Look,Sound,Feel)
ポイントは、「モノづくり」(用意)は当たり前として、クラブ財としての「モノがたり」(卒意)とユーザーの「参加帰属意識」を重視していることです。

クラブ財について、松岡正剛師匠は「おもてなしの源流」の中で、次の様に語っています。
「クラブ財は長いあいだ、日本のおもてなしの裏に存在していました。これからの企業は、大量生産・大量消費だけを追求するのではなく、クラブ財を創ってそれを市場に展開する仕組みを考えた方がいい。・・・」

2.顧客参加による「一大組織の誕生」
クラブツーリズムで旅をされたことはありませんか?
2008年に、永田仁さんの「企業訪問フォーラム」で、廣告社・黒川様から「『感動』マーケティングのアプローチ」をプレゼンされました。その中で「クラブツーリズム」の特徴をまとめられていました。
①旅のテーマ性⇒旅の価値化を行う
②「仲間縁」を提供する
③「顧客参加」
④クラブなメディアである
⑤ビジネスと社会貢献活動との調和

お客が添乗員になったり、企画参加する仕組みがあります。そのような「顧客参加」から「仲間縁」までの仕組みを創られ、「仲間が広がる、旅が深まる」を実践しています。
ここにも顧客参加の「クラブ財」があります。

3.「顧客を囲い込む」のではなく、「顧客に囲まれる」
2009年に谷口正和師匠主催・文化経済研究会に「クックパッド」の副社長がプレゼンされました。
今のように成長する前の時でしたが、そのお話を伺い、この顧客参加と情報収集・編集のビジネスモデルに感動しました。

早速翌週に、目黒白金台にあったクックパッドの本社を訪問しました。
その打ち合わせで、クックパッドのビジネスモデルを異業種の「パイオニア社」に編集して組み込めば、新しい感動・新産業になると確信しました。

そして、それは「クックパッド社」と「パイオニア社」の異業種コラボレーションにもつながる話で、それを「クックパッド社」に提案したところ、とてもいい反応がありました。
ただ、この企画提案は残念ながら実現しませんでした。

私なりに、価値創造4.0の基盤となるビジネスモデルを図解します。
一番重要なのは、STARTとして、「顧客価値の本質」を捉え明確にすることです。それがないと先に進めません。
それを基盤にして、顧客が準社員の様に存在して、「クックパッド」は顧客に囲まれています。その集まった情報の編集による「お宝」とサプライチェーン外の連携・提携が重要です。

顧客は、『素敵なドラマ・ストーリー・舞台』があれば、参加したい!評価されたい!のです。

やはり、クックパッド社は思った通りにビッグになりました。まだまだ伸びしろがありますね。このビジネスモデルの先にあるものを、是非みなさんイメージされてください。

 

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
顧客との共創・交歓

素敵なドラマ

橋本元司の「価値創造の知・第96夜」:価値共創3.0「Wellness Office」プロジェクト

2017年12月22日 価値共創3.0 ネスカフェアンバサダー

「ネスカフェアンバサダー」ってご存知でしょうか?
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あなたの職場に笑顔とくつろぎの場所を! アンバサダーになって職場に笑顔を届けよう!
ネスカフェアンバサダーの意味を訳すと「ネスカフェ大使」という意味になります。つまりは、ネスカフェのコーヒーを宣伝する大使ということです。このネスカフェアンバサダーになると、ネスレの人気のコーヒーマシンの「ネスカフェ バリスタ」が無料で借りれるというサービスです。
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 それをきっかけにしながら、2014年9月に「Wellness Office」プロジェクトが始動しました。
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オフィスにコーヒーを提供する「ネスカフェ アンバサダー」プログラムを展開するネスレ。働きながらカラダとココロの健康づくりを提案する「Workcise(ワークサイズ)」を展開するイトーキが手を組み、新たな視点で企業価値を高める提案を継続的に発信していく中長期的なプロジェクト。これにより、新たなチャネルづくりを図っていく。
具体的には、ネスレのコーヒーマシーンを設置するスペースで、働く人々がリラックスしながら、会話や打ち合わせができるように、イトーキがテーブルをデザイン・設計。テーブルは、設置スペーシに合わせ選べるよう、デザインは「大」「小」2種類を用意(テーブル代は、ネスレ負担)。
入手方法や条件は、「ネスカフェ アンバサダー」プログラムとセットで、イトーキの販売網を通じて各オフィスへ案内し、会員登録することで、無償提供される。
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上記は、
①顧客との創発:ネスカフェアンバサダー
②企業のコラボ:ネスレ日本×イトーキ
という①②の合体です。

新価値創造研究所は、それを『価値共創3.0』と呼びます。
その位置づけは、『価値共創5.0』まで綴った時に一枚シートに見える化します。

顧客は、喫煙所ではない
・自分の職場に笑顔とくつろぎの場所
・メールに頼らない社員間のコミュニケーション
・働きながらカラダとココロの健康づくり
等の経験やそこからの提案をして、ネスレはそれをリソースとしてフィードフォワードするという創発の仕組みです。
重要なのは、「顧客」が『準社員』のような位置づけにあることです。それは、給料も支払われずに、そして嫌々でなく「創発」までしてくれることです。
そして、それをベースに更に価値を高めるために、企業側が業務連携することです。
結果、心地よい職場環境が更新していきます。

第94夜・価値共創2.0(『地域共生・共鳴:工場オープン』)との違いは、図の右側の企業が、企業同士でコラボレーションしているということです。
一段進化しているのですね。
このような、顧客が「準社員」のように『創発』している企業・団体が伸張しているのです。
それが、「顧客を囲い込む」から「顧客に囲まれる」(第20夜)という時代認識です。

どの様な企業・団体がそれを実践しているのでしょうか。世界中にたくさんあります。
「バリュー研修・バリュー・プロジェクト」では、多業種・多業態の事例をお伝えしています。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

価値共創3.0
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ネスレ②

橋本元司の「価値創造の知・第95夜」:『攻めの経営!:工場オープン②』

2017年12月21日『攻めの経営!:浜野製作所』

前夜(第94夜)は、産廃業者から「リーディング・リサイクル業者」へ進化した「石坂産業」をご紹介しました。本夜は、石坂産業同様に、工場をオープンして「中小企業の星」と云われる『浜野製作所』を綴ります。
是非、「浜野製作所」ホームページ:http://hamano-products.co.jp/
をご覧いただき、工場見学にも行かれてください。「百聞は一見に如かず」です。

『設計力*加工技術*おもてなしの心』でお客様の“こんなものがほしい”をカタチにいたします。お任せください!

浜野プロジェクトでは、
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浜野製作所では、産学官連携による新しい事業への進出、地域の工場資源を活用した環境・社会貢献活動、将来のものづくりを担う子供たちへの体験学習、デザイナーとの異業種コラボレーションなど、従来の下請け仕事をこなす町工場のイメージを超えた様々なプロジェクトを展開しています。
こうした活動を通じ、プロジェクト単位での収益化はもちろんのこと、従業員教育や採用、メディア発信による企業PR、新規取引先の開拓、従業員満足度・モチベーションの向上など副次的なメリットも期待しています。日本国内における中小企業のものづくりが縮小していく中で、将来的には浜野製作所から新しい町工場のビジネスモデルを創出し、日本の製造業の発展に少しでも貢献していきたいと考えています。
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この会社も石坂産業と同じく、絶体絶命を乗り越えた会社です。
特徴は、「横(地域)のつながり・連携」からの進化を更に継続(産学官連携)していることです。「オープン(公開)」することで、情報の受発信されています。社長が広告塔の役割も担われています。

最初の訪問は、昨年6月にクライアントの皆さまと工場見学に伺いました。小雨が降る中、「おもてなしの心」で、玄関でお出迎えがあり、1時間半の詳しい説明とその後に、工場の全工程を見せて頂きました。

全従業員の方達が、「おもてなし心」「スピード・実行・継続」をキーワードに笑顔が溢れる攻めの経営をされています。町工場の「廃材」を「配財」に変える配財プロジェクト、プロが使う機械・道具でホンモノ工作体験ができる「アウトオブキッザニア」、そして、 ものづくりスタートアップインキュベーション「Garage Sumida」ではワクワクドキドキの種が育っていました!!
是非、隆々とした『中小企業の北極星』になって欲しいと思います。

この会社には、「価値創造の知」で記してきた「深い知」「高い知」「広い知」が全て埋め込まれています。

「クライアント会社」によって訪問時の反応は様々ですが、ここの体験で「オープン(公開)」することを決意する会社があります。下請けという縦串の世界から、独立という横串の世間(第80夜 世界と世間)という『別様の可能性』への船出です。

自社をオープンになることで、業界・業態をまたぎ、いろいろな接合部や偶有性(共接的なコンティンジェンシー)から新しい可能性(本質的な違い)が生まれます。
大変なのですが、是非多くの中小企業が、浜野製作所・石坂産業を参考(『擬』)にしていただいて、会社を地域を日本を隆々にしてもらいたいですね。

順番は逆なのですが、自分の会社をオープンにすることを決めてから、その為には、どのような価値を創造するか、本質的な違いを生むのかを考えてみる方法もあります。余白を設定してからの逆算です。(第89夜:「本質的な違いを生み出す3つの抽象化能力))
そこに「おもてなしの心」を入れることで、今までにない風景・イメージが湧き出てきたりします。

価値創造の知から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
浜野製作所①
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橋本元司の「価値創造の知・第94夜」 価値共創2.0;『地域共生・共鳴:工場オープン』

2017年12月21日 『石坂産業:価値共創と社員重視』

前夜(第93夜)では、「企業・団体と顧客の重なり合う領域を大きくして、顧客と価値共創する型」をご案内しました。
製造業であれば、先ず『オープン(公開):①しつらい』することを綴りました。

 本夜は、実際の事例を図とともにご紹介したいと思います。
皆さん、「石坂産業」をご存知でしょうか。昨年の夏に、「カンブリア宮殿」で紹介されました。以前から、石坂産業をウォッチングしていましたが、それを機に、工場見学兼「クヌギの森」に行ってきました。

かつて産廃業者として、住民から反対運動が巻き起こり絶体絶命の埼玉県の石坂産業でしたが、会社を立て直し、カブトムシやメダカ、ホタルなどの生き物と触れ合える、夏休みに家族で行きたくなる里山テーマパークを創られていました。
毎日、各地から産廃を山積みにしたトラックが行列を作る石坂産業。分別すれば再資源化できるが、その手間を惜しめばゴミとして埋め立てられるしかない産業廃棄物を石坂産業では95%減量化・リサイクルし、資源に変えています。リサイクル企業への大変革です。
その再資源化のプロセスを「工場見学」で見られます。たくさんの方達が予約してこられます。

隣接する「クヌギの森」では、大人二人でしかも時間外にも関わらず、ミニSLに乗せて頂き、スタッフの女性は雨が降り出すと走ってきて傘を貸して下さいました。
社員の方全員が、本当の意味での「おもてなし」企業でした!是非、「三富今昔村」の自然の豊かさを堪能しにでかけられたらと思います。交流の場、イベント会場やサイクリングターミナルとして。おいしい地産地消の食事も楽しめます。

そう、産廃業者から先進的リサイクル企業に変身しました。
①地域と共生
②子どものリサイクル教育
③自慢できる女性社員の就職先

地域住民・社会との接点は「従業員」です。
その従業員の方達の挨拶、表情、おもてなしが私たちの心を温かくしてくれました。

①しつらい:工場見学
②ふるまい:リサイクルプロセス
③心づかい:従業員のもてなし

いっぺんで石坂産業のファンになりました。楽しさ(ファン)がファンをつくるのです。
これは、第64夜に綴った「人が集まる会社:社員重視@7つの力」そのものです。

「経営品質」というワードをご存知でしょうか。「卓越した経営」を目指す姿として、4つの基本理念を上げています。経営の革新にとても役立つツールです。(私は、このJQAAの改革支援部運営委員も務めています)

「経営品質において、社員はすべての基盤」です。
最近、メディアでは、
・人手不足
・離職率のアップ
がよく取り上げられますが、
・いったいどうしたらいいのか?
・原因は何だろうか?
から対処していく経営者の姿を見かけますが、だいたいうまくいきません。

それは、『問い』の立て方が良くないのです。
三方よし(八方よし)の会社群は、
・業界で、地域で、日本で、一番働きたい会社を創るには?
から入るのが正解です。

それが実現した時の社員の笑顔を想像してみてください。
それを実行するのみです。従来の「効率」ではない、一見無駄に見える「効用・効能」が求められます。
それが、ES(社員満足)の笑顔想像力です。

そうすると、下記の幾つかの革新が必要になってきます。
① トップの変化:社員への感謝、社員・関係者とのパートナー共創意識
⇒ 社員を機械の部品のようにみないで、自由闊達な文化と組織風土にする。社員のやりがい、独創性を尊重する。

② 社員意識の変化:目的・社会貢献・価値ポジションの明確化
いったい社会のどこに価値創造して、貢献しているか、目指す姿を明確化して仕事にやりがい・生きがいを持つ。

③ 仕組みの変化:業界で、地域で、日本で、一番働きたい会社を創るために、仕組を変える。
それは、従来の「管理型」「効率型」からの離別です。「個人個人を認めるためのコミュニケーション・学習」、結果としての「主体性」等です。

そのようにして、「価値共創」が実現してゆきます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

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社員重視石坂産業

橋本元司の「価値創造の知・第93夜: 『主客一体』

2017年12月20日 顧客価値共創の基礎

前夜(第92夜)は、「実践的仮想企業間連携/業務提携」の種づくりの方法を綴りました。
本夜は、それを更に進めて「顧客との価値共創」の基礎をお伝えします。

 ここで重要なキーワード、イメージは『主客一体』です。
「OMOTENASHI Nippon」から、それを引用します。
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おもてなしに大切な主客の相互性. 茶道では茶事を主催する亭主は、入念な準備のもと客を招きます。招かれた客は、亭主の意図を汲み取り、その場にふさわしい振る舞いをし、感謝を示すことが求められるそうです。
つまり招く側と招かれた側があわさり、主客が一体になることにより気持ちの良い空間を創り上げるのです。この「主客の相互性」は「主客一体」とも言い換えられるでしょう。・・・
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西洋のホスト(主人)とゲスト(客人)の関係は、従来の「メーカー(作る人)と消費者(使う人)の関係」に似ていてそこにはある一線があります。
茶会では、「私(もてなす側)が何か(気持ち、芸)を差し出すから、あなた(もてなされる側、客)も何かを差し出して」という関係が、日本の「おもてなしの場」にはあります。
この「主客が一線を越えた相互性」が「主客一体」です。

この様な関係がビジネスで象徴的に見られるのが、私が大数寄な「クックパッド」、「クラブツーリズム」です。
その内容は他の夜に綴りますが、顧客から継続的に「感動・感激・感謝」される「主客一体」事業を、どうぞ自分の事業にあてはめてじっくりと検討されることをお薦めします。

添付図がそのイメージです。どこかで見たような図ですね。
「第90夜:使える実践的仮想企業間提携」では、その両サイドには、企業や団体を置きました。今までにない、本質的な違いを生み出すために活用しました。
今回は、左サイドに「顧客」がいます。いよいよ実践モードになります。

現在の顧客は、
「素敵なドラマや舞台があれば、積極的にに参加しますよ」
と言っています。そう、今の顧客は従来の消費者ではないのです。

そのような『舞台・場』を創って隆々とされているのが、前述の「クックパッド」「クラブツーリズム」です。お父さんたちにイメージしやすい事例が、「ハーレーダビッドソン ジャパン」です。
それは、「顧客の囲い込み」から「顧客から囲まれる」時代の先駆者たちです。そのエッセンスは「第20夜」に綴っていますので、興味関心のある方は是非ご覧ください。

さて、図の「広い知・感動ダイアグラム」(第83~84夜)はこれまで何回もその使い方をご案内してきたので説明は省きます。
事業のポイントは、両サイドからの重なる領域を大きくすることで、「顧客・社会のしあわせ」を高めることです。そこに「黄色の領域の『新価値共創領域』」が見えてきます。
どうすれば、重なる領域を大きくすることができるのでしょうか?
そこに必要な心得と方法が、『おもてなし』(第2夜)です。
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「おもてなし」は下記3つでできています。

①しつらい:茶室の和のしつらい。
②ふるまい:作法。ふるまうこと。
③心づかい:あれこれと気を配ること

それを価値創造ビジネスに当てはめてみると、
①しつらい=ハードウェア
②ふるまい=ソフトウェア(メニュー・プログラム等)
③心づかい=ハートウェア(ヒューマンウェア))
の三位一体となります。

私達のビジネスは、

『モノ → コト → ヒト』

を三位一体でプロデュースする時代になっています・・・
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メーカーであれば、「オープン①しつらい」にすることです。でもそれだけでは、先に進めません。三位一体ですね。
次夜からは、その辺りの「顧客との共生・共鳴・共創」に触れていきます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
顧客との価値共創・主客一体

顧客共創三位一体

橋本元司の「価値創造の知・第92夜」:企業間連携/業務提携への用意・卒意

2017年12月19日 企業間連携/業務提携への用意:「要素・機能・属性」

明珍火箸・明珍風鈴をご存知ですか?
兵庫県姫路市の明珍家は、平安時代から続く甲冑師の家系ですが、現在はその鍛造の技術を進化させ、シャリンと澄んだ音の火箸風鈴などを制作しています。
時代の変化により、「甲冑」の仕事は激減し、また、明珍「火箸」の受注も減りました。経営危機です。その鍛造技術の火箸から、世界のミュージシャンが愛用する響きを持つ3~5万円の「火箸風鈴」が生まれました。

 「どこに新しい事業の元(もと)があるのか」を知っておくことが「次の柱づくり」「企業間連携・業務提携」や「コンサルティング」には肝要です。
それを見つけ出す優れた方法があります。それが「プランニング編集術(松岡正剛監修:第26夜)」にある「要素・機能・属性」です。
自分の会社・団体の「要素・機能・属性」を考えることで、その対象の持つ特徴を検出することができます。是非、トライすることをお薦めします。

①「要素」=対象を構成する部品、パーツ、部分
物理的に分解したり腑分けしたりできるかどうかは、問題ではない。部分を指摘することができれば、「要素」である。
②「機能」=対象が提供する価値や効能
場合によっては可能性ととらえてもいい。人々がそれを何のために、どんなふうに使っているか。どんな使い道があり得るか。
③「属性」=対象の性能・性質・特徴。
そのモノのもっている姿かたちや、様子に関することがら。 形態やデザインなどもここに入る。

上記「明珍火箸」の「音の響き」に着目することで、新しい事業が芽吹きました。そのような意味で、事前に「要素・機能・属性」を事前に整理しておいたり、その情報をオープンにすることが企業間連携や業務提携には有効であることがおわかりいただけるかと思います。
他社・他団体が自分たちのどの対象に着目するかはわかりません。前職でパイオニアとサントリー様の異業種コラボレーションでは、ウィスキーの樽材『ピュアモルトスピーカー』(第14夜)をプロデュースしました。
サントリー様は、まさか自分たちのウィスキー樽が響きの優れたスピーカーのキャビネットになるとは思わなかったでしょう。創発することで「偶有性(コンティンジェンシー:Contingency)」(第19夜、第54夜、第80夜)が次々に出現します。

そのため、事業創生・地域創生の「バリュー・イノベーション・プロジェクト」では、必ず「要素・機能・属性」を全員に書き出してもらいます。自分たちでは当たり前だと思っていることが、外部の目からは優れた技術や仕組みであったりします。全員でやると一人では気づかない特徴が次々に出てきてそれだけで盛り上がったりします。
特に重要なのが、②「機能」です。いったいどんな可能性があるのか、どのような使い道があるのかということです。これは「新しい目的」をつくる(第28夜)ことと同じです。明珍本舗は「火箸風鈴」という新しい使い道を見出しました。

そして、もう一つ重要なのが、第90~91夜に記した、「想い、夢、妄想」です。それには、ミッション(深い知)とビジョン(高い知)が大きな役割を果たします。

用意したその二つを持って、お互いが「異業種との実践的仮想企業間連携/業務提携(卒意)」に望むのです。
成功の確率がグーンと高くなること、間違いなし!

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
要素・機能・属性
明珍本舗

橋本元司の「価値創造の知・第91夜」: 使える「実践的仮想連携シート」

2017年12月18日 実践的仮想連携シート:「2+1」

前夜(第90夜)に引き続き、企業間連携具体化のきっかけをつくる「実践的仮想連携シート」をご紹介します。
播磨国際協議会セミナーでも使用した「広い知・感動ダイアグラム」と原理は同じ「2+1(ツープラスワン)」という松岡正剛師匠の情報編集術です。
詳細の考え方は、「第57夜『本来・将来・縁来』」にありますが再度記します。

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僕はまず一対の情報というものが「分かる」ということにとって大きくて、私たちがふだん意識せずに使っている抽象概念などでも、父母から始まって、夫婦、浄土と穢土、天国と地獄、善と悪、生と死、黒と白、いろいろなものがまず一対になっている。そこに第3の要素が加わると必ず次の思考が生まれるのだろうと思います。
たとえば、「おかあさんとカレーライス」というのが一対ですね。問題はそれだけだと好き嫌いで終わるので、それに一つのことを加えて、誰かに伝えましょう、というふうにやるんです。
「おかあさんとカレーライス」に「買い物」を入れるか、「弟」を入れるか、いろいろ変わったときに何かが見えるんじゃないでしょうか。それは変化の多様性なんです。
簡単に言ってしまえば、二つのものが目の前にあって、そこにもうひとつ加わると何か別のものが生まれるということです。(出展「情報編集力」)
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協議会セミナーでは、会員企業同士の一対をお引き合わせします。
そこに何を加えると素敵な物語が生まれるのかを実際に検討していただくのです。
それは『触媒』といってもいいかもしれません。その『触媒』によって、新しい化合物が生まれてきます。

身近な例では『料理』があります。買ってきた食材はそのまま置いておいても勝手に料理にはなりません。そこで、皆さんには料理人になっていただきます。
食材はそのままでは食材のままですが、料理人が調理をすることで料理に変化します。どのように混ぜたらいいのか、何を加えたらいいのか、それを『想い』から引き出します。

PREPARE(用意)⇒ PERFORMANCE(料理)⇒ PROMOTION(配膳)

この3つの『P』を一気通貫で意識することが重要です。
ここに、新しい事業・産業を生み出すヒントがあります。『問い』の立て方次第で「事業創生・地域創生」につながります。

さて「2+1」ですが、そこの「もう一つ」に、「海外展開」「スマホ」「インバウンド」「教育」「東京オリンピック」「AIoT・ロボット」「再生可能エネルギー」等々、気になることを入れてみます。
それも一社だけで考えるのではないのです。様々な時と場所で経験を積んできた、私たち価値創造コンサルもいるのです。
すぐに、いままでの常識の枠、制約の壁を吹き飛ばします。イメージの中で新しい化合物、物語が生まれ、そのうちに、リアリティを持って輝き出します。

そうやって、連続ヒット商品、未来シナリオ、事業支援・地域支援の結果を出してきました。

幾つかの「2+1」サンプルを載せますので参考にしていただけると幸甚です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
171206②2+1演習

2+1サンプル①

2+1サンプル②