橋本元司の「価値創造の知・第151夜」:『真の企業再生・創生』とは? ⑤一線を超えて、境い目をまぎらかす

2018年5月25日 二つでありながら一つ

右肩下がり、行き詰まりの現状の先に未来はありません。

『真の企業再生・創生』の実行の基盤は、

① 一線を超える
② 境い目をまぎらかす

ことにあります。
従来のやり方・考え方から、「①一線を超える」ことです。
それは、これまで綴ってきた「常識」「執着」「主役」から離れることを意味します。
これまでの成功体験から脱皮することがなかなかできないのですね。

しかし、できないことはありません。

ポイントは、「深い知・高い知・広い知」を持つことです。
深く、高く、大きく観ることで、『次の一手』は必ず観えてきます。

そこに必要なのは、“大局観”と“覚悟”です。
“大局観”があれば、「一線を超える」覚悟ができます。

次が、「②境界をまぎらかす」ことです。
「サナギから蝶」へ脱皮、変態したときに、何かが変わっています。
或は、「サントリー」と「パイオニア」の異業種コラボレーションでできた「ピュアモルトスピーカー」(第18夜、第35夜)では、二つの極の境い目をまぎらかすことで「新しい性質」「新しい命」が備わってきます。

これは、好みの文化に数寄をもちこんだ張本人は村田珠光の言葉「和漢のさかいをまぎらかすこと肝要」「さかい」にこだわらないで、これを融合させなさい、あるいは交ぜなさいという提案に通じます。
佗び茶の祖と呼ばれる村田珠光の言葉「和漢のさかいをまぎらかす」は、唐物と和物の境界を取り払い、調和させることで新たな美をつくることを示したものです。

もともと私たち日本人は、自分たちの持っているリソースを活用して、「さかいをまぎらかして価値創造」することを大得意としているのです。

そして、最も重要なことは、
“①一線を超えて、②境い目をまぎらかす”
①②を別々にせずに、『二つでありながら一つ』(第33夜、第82夜)で把えるスキルです。

その方法を磨くコトが、『真の企業再生・創生』への秘訣です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
境い目

橋本元司の「価値創造の知・第150夜」:『真の企業再生・創生』とは? ④「仕掛け人」と「こなし人」

2018年5月23日 事業は人なり

いつの間にか「150夜」を迎えました。
こつこつと努力することを自分に課しています。

「事業は人なり」と言われるが、これは全くその通りである。どんな経営でも適切な人を得てはじめて発展していくものである。
いかに立派な歴史、伝統を持つ企業でも、その伝統を正しく受けついでいく人を得なければ、だんだんに衰微していってしまう。
経営の組織とか手法とかももちろん大切であるが、それを生かすのはやはり人である。・・・

上記は、事業は人なり/ 松下幸之助 [一日一話]よりの引用・抜粋ですが、

『真の企業再生/創生は人なり』

というのも当てはまると思います。

「大企業」と「ベンチャー企業」のご支援での違いで際立つのが、
「仕掛け型人財」と「こなし型人財」の比率です。

「ベンチャー企業」には、当たり前ですが「仕掛け型人財=仕掛け人」が多く、「こなし型人財=こなし人」が不足しています。
逆に、「大企業」には、「こなし型人財」が多く、「仕掛け型人財」が不足しています。

事業が安定している時は、「オペレーション/マネジメント」の得意な「こなし人」が多くなります。
大量生産・大量消費の時代には、何をすれば良いのかが明確であり、利益を上げるために、改善・効率・正確の処理を重視した「こなし人」が占めていきます。

ところが、時代が激変しています。

レールのある「鉄道の時代」から、レールのない「航海の時代」(第141夜)に移行しています。
何をすれば良いのかが、不確実・不明確になっています。
その原因は「IT」「AIoT」「グローバル」による価値観の変化が底流にあります。

それに呼応して、「ルール(規則)・ツール(手段)・ロール(役割)が大きく変わりました。

当初は、
・リストラクチャリング:企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除
・リエンジニアリング:企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除
で対応してきましたが、それでも溝が埋まらない、先が見えないことが明確になってきました。

つまり、「処理」では対応できない『壁』を乗り超えるためには?
が経営課題になりました。

それで、「改善・効率」<「革新=イノベーション」

が必要であるという認識が高まりました。

そこで、いよいよ必要になってきたのが、
・リオリエンテーション:「進むべき方向」の抜本的見直しを意味

現在、将来と必要な人財は、「イノベーション/イメジメント」の人財です。
それを志向している人財群が、「ベンチャー企業」に向かっています。
「AIoT」「ロボット」「副業」「パラレルキャリア」の時代を牽引する「宝」です。

さて、この「リオリエンテーション」は一見、「こなし人」でも対応できるように見えますがそこが勘違いです。
結論から云えば、「高度処理:こなし」と「革新:仕掛け」とは次元が違うのです。
それを様々な業種業態で体験してきました。

外部人材を使うより前に、企業内で「企業再生・創生プロジェクト」が立ち上げられます。
その時に、「処理」が得意な「良い子」が数人選ばれて検討が行われます。

しかし、だいたいそのプロジェクトは上手くいかないのが実情です。

それは、二つの問題があります。
① 経営陣が「企業再生・創生」のために、どこまで逸脱していいかを明確にできないこと。
・それは、経営陣は「こなし人」が多いコト。
・「企業再生・創生の方性」を示さないこと、示せないこと
・従来のやり方・考え方が通用しないことが分かっているのに、手間暇かかる逸脱を良しとしないこと
小手先でなんとかできないかという想いが経営陣にあること
② 処理が得意な「こなし人」は逸脱が必要な「仕掛け人」ではないこと
・「リストラ」のステージで「仕掛け」が先に辞めていきます。
・自分の業界/地域の狭い領域から、坂本龍馬のように外遊することをさせていない
・「良い子」は、不確かな将来への逸脱が苦手です。
それが、選抜したメンバーの「企業再生・創生」が上手くいかない大きい要因です。

内弁慶の会社はそこで悶々されています。
危機意識が閾値を超えた会社は、「外部人財」の活用へ動きます。

ここでの課題は三つあります。
①経営陣と「革新=イノベーション」の深さ・高さ・領域の共通認識化
②「良い子・こなし人」を「仕掛け人」に転換すること
③「真の企業再生・創生」にむいた「外部人財」を選択すること

「事業再生・創生」は、社内外の「人財=人なり」で決まります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

仕掛け人

橋本元司の「価値創造の知・第149夜」:『真の企業再生・創生』とは? ③オルタナティブ:主役を脇役に

2018年5月22日 自分中心(天動説)から他分中心(地動説へ)

“コモディティー化”とは、市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になることです。

『経営の成長鈍化、行き詰まりの原因』の大きな部分をこのコモディティー化が占めています。

さて、どうしたらいいのでしょうか?

そのために、従来のやり方・考え方を超える『イノベーション:革新』が叫ばれているのです。

さて本夜は、その方法の一つをお伝えします。

それが、今まで「主役」だったものを「脇役」にすること、或は「離れる」ことです。

その「主役=中心」だったものが、「コモディティー化」しているのです。
それに依存していたので、それが「右肩下がり」になることを直視できません。

「自分」中心から「他分」中心に考えたり、行動してみることです。
それは、第137夜(『魅力がなくなるコト』が根本原因 ⑥自分と他分「コペルニクスの地動説」)
に綴っています。

昔の人は、太陽や星が地球のまわりをまわっていると信じていました。(天動説)
宇宙が地球を中心に回っていないように、世の中が自分を中心に回っているわけじゃないコト。

という視点・視座の転換が必要です。

その事例を3つ上げます。

① カラオケ(前職・パイオニア社)
オーディオ業界にとって聖域・中心は、コンテンツをハイファイ(主役)に再生することでした。
しかし、コンテンツからスターの「ボーカル」を引いてしまうこと(=カラオケ)で、一般人が主役となり「新文化」を創りました。
② アルコールフリー
ビールにとって重要なアルコール(主役)を引くことで、「アルコールフリービール」が誕生しました。
「交通事故のない幸せ」という『想い』が様々なハッピーをもたらしました。
③ 枯山水
龍安寺の「枯山水」はご存知ですね。
「水を抜く(引く)ことで、水を感じる」という受け手の感性が主役となる世界です。

それは、送り手(企業)が主役ではなくて、受け手(民衆)が主役になる世界です。

このように、「完全」を目指すのではなくて、「未完全・負完全の完全(美)」が世界を拡げて、新しい文化を創り出します。
日本の「わびさび」「俳句」「茶道」等やスタバの「マニュアルレス」も同じです。

これからの「AIoT」時代も同じです。
①センシング②プロダクティング③インテグレーティング

というプロセスの一気通貫(地動説)の先駆者が覇者になっていく時代です。
その時に、②プロダクティングを主役・中心に据えないことです。
そのことで、もっと大きな世界・ビジネス・顧客と出会い、創造することができます。

製造業であれば、「②プロダクティング」を引いてみるのです。
自分中心(天動説)ではなくて、他分中心(地動説)で物事を観る・構想する・実行することです。

どうすれば、、「他分中心(地動説)」になることができるのでしょうか?
大きくは二つあります。

①自分の業界/地域の狭い領域から、坂本龍馬のように外遊することです。
それを有する「外部の知」を使う手もあります。
②「深い知」(第88夜)、「禅的思考」(第33夜)を習得する
・大切なものを引くこと
・二つでありながら一つ
・色即是空、空即是色

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
オルタナティブ

橋本元司の「価値創造の知・第148夜」:『真の企業再生・創生』とは? ②パイオニアルネッサンス第2弾

2018年5月19日 再考・再興「パイオニアルネッサンス第2弾」

前夜(第147夜)に、パイオニア社長交代発表と「真の企業再生のための3つの切り口」を綴りました。
そして、その中でも「③リオリエンテーション」の重要性を切望しました。
そこでは、前職・パイオニア社を切り口にしていますが、多くの業種業態や地方も同じ状況であることを体験してきました。

 本夜は、「再考・再興」の方法と心得がありますが、「心得」を中心に綴ろうと思います。
それでは、心得の「3つの切り口」から入ります。

①「未来から逃げない」こと
② 眼前の現実が「欠けたモデルである」と共通認識すること
③ 現状から「逸脱」すること

それでは、順を追って記します。
① 「未来から逃げない」こと
時代とマッチングして、過去に最盛があった「経営陣」の方たちから出てくる言葉が時
「昔はよかった」
昔を懐かしむ言葉です。その気持ちはわからないではありません。

自分が若い時、健康であった時を想う気持ちと似ていますね。
「人間」は若返らせることは、いまはできませんが、「経営」は革新することができます。

「現在の延長線上に未来はないこと」

そして、

「未来から逃げないこと」

そうすると、先ず「内側」を変えていくしかない、という気付きや想いが湧き上がります。

「パイオニア・スピリッツ」ですね。

「開拓者精神」に戻り、それを発揮するにはどうしたらいいのだろうか?

「答え」を提示するよりも、このような「問い」を投げかけることがとっても重要なのです。
自分が内省し、「当事者意識」を持つことが始まりです。

② 眼前の現実が「欠けたモデルである」と共通認識すること

それは、第136~137夜に綴りました。
「魅力」がなくなっているということです。

無常迅速ですから、「満月」と思っていたモデルが「欠ける」ことは常態です。
「月」は満ち欠けを繰り返しますが、経営は、勝手に「満ちる」ことはありません。

過去のモデルに戻るのではなく、自分たちの宝物(リソース)を半分組み込みながら、
顧客・社会から喜ばれる「新モデル」に再考・再興するという共通認識が必要です。

重要なのは、「誰」がそれを最初に認識するのか?

ということです。

③ 現状から「逸脱」すること

過去のやり方・考え方を、現在・将来の「真実の基礎」にしてはいけません。
ここでも重要なのは、「問いかけ」です。

・眼前にある過去のやり方・考え方についてあなたは同意しますか?反対しますか?
・あなたはどう思いますか?考えますか?

これが「鍵」です。

それは「価値観」を問いかけることと同じです。

過去のやり方・考え方を超えるということは、「逸脱」することです。
さて、「イノベーション」とは逸脱することです。
ただし、勘違いしてはいけないことがあります。
その逸脱の大元には、顧客・社会を「幸せ」にする“深い知・高い知・広い知”があることです。

それを持って、未来に向かう人たちを「パイオニア・開拓者」と呼びます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
パイオニアルネッサンス

橋本元司の「価値創造の知・第147夜」:『真の企業再生・創生』とは? ①リストラではなく、リ・オリエンテーション

2018年5月17日 「真の企業再生・創生

今週の5月14日(月)に、前職パイオニア社の社長交代の発表がありました。
「また、リストラを繰り返さなければいいのだけれど・・・」というのが本音でした。

・「オーディオ事業」は約30年前の1989年をピークに落ち続けています。
・社運を賭けた「プラズマディスプレイ事業」に失敗しました。
・パイオニア社の進化に必要な「プロSV事業(DJ事業)」を売却しました。
・これから、AI時代(①センシング②プロダクティング③コンサルティングの一気通貫)に向けて、あらゆる業態が新サービス業務に激変します。

1993年の経営会議で、「オーディオ活性委員」「高密度メディア委員」を兼ねた自分が両委員会を統合したある発表をしました。
12年後の“2005年を境にして、「パッケージ系・通信系・放送系」のメディア環境が大きく変わり、当社の「CDメカニズム」を利益の柱とする構造が崩れる。
そのため、2000年までに「次の進化」をまとめる必要がある”
そのシナリオの骨格を提案しました。
そして、先ずその第一弾を「ヒット商品緊急開発プロジェクト」として、異業種コラボレーションによる連続ヒット商品を創出しました。
(詳細は、第14夜:社長直訴そしてヒット商品緊急プロジェクトへ)に綴っています。

2003-2006年に、総合研究所への異動があり、パイオニアの5年後・10年後の将来像(ビジョン)を社内外メンバーでまとめました。
それは、「シナリオプランニング」を分母にしてビジネスチャンスを4象限(シナリオロジック)にまとめ、ビデオ化したものですが、10年後の2017年を殆ど言い当てていました。
2007- には、「プロSV事業(DJ事業)」の5年後、10年後の将来像をシナリオプランニングで監修しました。
(「シナリオプランニング」については、「第15夜:危機意識、不確かな時代を読み解く方法」に綴っています)

何を言いたいのかといえば、社内外のメンバーでまとめた優れた複数の提案があったということです。
そして、重要なことは、それらはすべて「会社再建の方向性」を基盤にしていたことです。

さて、1990年前後に、「真の企業再生のための3つの切り口」を妹尾堅一郎先生が提唱・整理されていましたが、それを加筆引用します。
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「行き詰まりの打破や、新たな成長を目指して、企業再生に取り組む切り口は3つあります。
①リストラクチャリング
「構造」の見直しを意味しますが、企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除するものです。
②リエンジニアリング
「機能」の見直しを意味しますが、企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除するものです。
③リオリエンテーション
「進むべき方向」の抜本的見直しを意味します。
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①②がDeleteに向かうのに対して、③は「我々はどの方向にむかうべきか」
を問うものです。

これは、新しい時代の企業・事業の意味を問うことであります。
・将来に向けて、何のために事業を行っているのか?
・それには、社会に役立つどのような意味があるのか?
・真の顧客価値に根ざしているのか?

それは、企業・事業の原点に立ち戻り、生まれ変わる(創生・再生)ことを意味します。

さて、前職・パイオニア社のことです。
パイオニアは、ずっとずっと「①リストラクチャリング」をしてきました。そして、「ホームオーディオ事業」「プロSV事業(DJ事業)」を売却しました。

「カー・ホーム・DJ」を新結合(第32夜、第111夜)するだけで、「ヒット商品」「新文化」は生まれたのです。残念ですね。

経営は、縦の事業部に権限委譲していますが、経営の真の力は、将来ビジョンをイメージメントして、外部とそれらを横串して新文化を創る「プロデュース能力」です。
それを行うには、「深い知・高い知・広い知」を伴った企業の“ミッション・ビジョン・イノベーション”の明確化が絶対必要なのです。

そう、新しい経営陣には、「①リストラクチャリング」に安易に走るのではなく、“ミッション(錨)・ビジョン(北極星)・イノベーション(羅針盤)”と、真の企業再生・創生「③リオリエンテーション」が求められます。
真正面から取り組んでほしいですね。
それをナビゲート、サポートできる本物の外部パートナーを上手く活用することです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

リ・オリエンテーション

橋本元司の「価値創造の知・第146夜」:『魅力がなくなるコト』が根本原因 ⑮「AI」⇒「生きがい」⇒「やりがい」

2018年5月11日 価値創造ダイアグラム

これから益々、終身雇用と年金制度が崩壊していく時代です。
自分のことを振り返ってみます。前職(パイオニア社)に入社したのが1977年でした。
その時は、暗黙のうちに給料は50歳にむかってだんだんと増えていくというだろう。そして「終身雇用」と「年金制度」も何とかなるだろうと勝手に想っていました。
その生活設計に基づいて、実際に住宅ローンを組み、子育てがありました。高度成長の余韻がある時代でした。

 さて、これからも「50歳」にむかって給料は上がっていく、終身雇用は維持されると思っている人達は少ないと思います。
今は、従来の「ルート」と「ルール」は過去のものになりつつあることが実感できる時代になりました。

その激変の理由の一つが「AI:Artificial Intelligence、人工知能」です。
そして、そのことで、第109夜(農業⇒工業⇒情業⇒脳業の時代)に綴ったように、
①C: Computer=脳(AI)
②C: Communication=神経系(IoT)
③C:Control=手足等(Industry)
という、①AIの進展で、3Cが三位一体として完成に向かっていることが上げられます。
つまり、工業⇒情業⇒脳業へと進化したことです。

この「AIというツール」が誕生して、否応なく進化することで、これまでの「ルール」が変わり、「私たちのロール(役割)」が大きく変わってしまいます。
将来をこの「ルール・ツール・ロール」(第54夜、第80夜)の三位一体で把えて想像してみてください。

さて、「私たちのロール(役割)」はどうなるのでしょうか?明らかに激変しますね。
従来のルーティンワーク(決まった手順で繰り返し行われる定常作業、あるいは日常の仕事)の事務職・ホワイトカラー職は、「AI」に代替される可能性が高いのは自明です。
このような「ルーティンワーク人材」をメインに養成してきたのが、これまでの日本の教育です。

上記、「AI」が「3C(Computer・Communication・Control)」と合体することで、人間が“処理”するより「AI」のほうが得意な領域が増え続けます。『教育維新』が必要なのですね。
その一方で、これは「人口減」が切実になる日本にとっては「朗報」「チャンス」の可能性が大きいのです。
なぜならば、「人口減」問題を「AI」「ロボット」が穴埋めをしてくれます。その先陣を切ろうとする「構想」と「決意」がジャパンに見えないコト、具体的アクションが見えないコトが残念ですね。

そのように激変する時代の中で、「いったい、将来の世の中で、人間がどう役立つのか」ということが切実な問題です。それは、「AI」ができない「人間の価値」をどのように「創造」できるのかということが鍵になります。
つまり、「価値創造」という「価値のイノベーション」が中心になる時代が到来するという共通認識です。

ここでクロスして抑えなくてはならないことが、「ロール(役割)」の奥にある「生きがい」(第145夜)です。
「AI」と「生きがい」という距離があると思われていた二つの横綱を“新結合”してみましょう。

“新結合”とは、「広い知」のことであり、「イノベーション」(第32夜、第75夜)の本質です。
それを活用して“価値創造ダイアグラム”(第40夜、第83~84夜)で図解します。
(このダイアグラムは、前職のヒット商品緊急開発プロジェクトで開発したイノベーションメソッドです。イノベーションの殆どがこのメソッドで説明できます)
両サイドの二つの三角形(「AI」:コンシェルジェーション)」と「生きがい」:モチベーション」)を寄せて、新結合して大三角形を創ります。
下部の交差した小さい三角形が、二つの「共通点」です。それは、“幸せ”ではないでしょうか。
大切なコト(左サイド)は、生きがいに必要な「安心・自由・やりがい」です。
「安心・自由」には仏教的な深い意味があります。
・安心:自分が自分で良かったと思えること
・自由:別のところにあるのではない。もともと自分に備わっている。

「AI」により、人材の価値が大きく変わってしまいます。
残念ながら、これまでの「ルーティンワーク」は役立たないことが明らかになっています。

①「AI」ができないこと:“意志”“情熱”“本気”“志”“使命感”
②「AI」と共創できること
の項目が「AIに使われない」ための本質です。これからの生きる道です。

その双方の「心得と方法」が「価値創造」/「価値のイノベーション」なのです。

そう、中央の赤い枠のダイアモンドが、“価値創造”です。
これが「AI:コンシェルジェーション」と「生きがい:モチベーション」の境界がなくなる将来のコンセプト(=「価値のイノベーション」)になります。
新しい成長・成功の時代の「人財教育」・「経営」の扇の要(かなめ)になります。

従来のやり方・考え方の「オペレーション/マネジメント」から脱皮して、「バリューイノベーション/イメジメント」(第77夜)が牽引する時代なのですが・・・。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
鍵AI生きがい結合

橋本元司の「価値創造の知・第145夜」:『魅力がなくなるコト』が根本原因 ⑭「AI」と「生きがい」との関係

2018年5月9日 AIが苦手なこと

前夜(第144夜)に、「AI」「BI」「CI」を綴っていましたが、
突然に、第52夜の「想い・本気(Will)、方法・本質(Skill)、笑顔・幸せ(Smile)」の“価値創造「ルル3条」”が脳裏に浮かんできました。
それらは、おそらく「AI」には苦手なことであり、人間の「生きがい」に繋がる領域だと想います。
本夜は、上記について綴ってゆきます。

最初に、「シンギュラリティ」から入ります。
ソフトバンクの孫さんが、Pepperくんをお披露目した時に使っていましたね。
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シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人工知能が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるという概念を指します。
それは、人工知能の権威であるレイ・カーツワイル博士により提唱された「未来予測の概念」でもあります。

科学技術の発展により、人工知能(AI)の研究開発が加速することで、我々の暮らしは豊かなものになると考えられています。
一方で、2045年には人工知能は人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達するといわれています。
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「AI」の成果は、あちらこちらで見かけるようになりました。
それは、何かよほどのことがない限り、人間や社会に大きな変革(構造改革、ライフスタイル改革)を及ぼすことになるでしょう。
10年先にも多方面に亘る変化が想像できます。

さて、そのプロセスで立ち現れる「AI」と「人間」の関係を3つの群を記します。
① 人間が、「AI」の下僕、下請けになる。
つまり、「AI」に使われるということです。
② 人間と「AI」が共生する
・「AI」と「顧客」との間で、「人間が仲介する(インターフェイス)」
・「AI」と「人間」が共創する
③ 人間が、「AI」を使いこなす

「生きがい」という観点からは、「③ 人間が、“AI”を使いこなす」が望ましいですね。
「荒海の波に飲み込まれずに、波を乗りこなす」というイメージです。

その様なこれからの「AI」時代に、「生きがい」というテーマが対となって切実にクローズアップされますね。
丁度、現在NHKで「100分で名著:生きがいについて」が放映されています。
その第1回で、「生きがいとは何か」についての問いを、神谷美恵子さん(1914-1979)は著書で4つにまとめられていました
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1.(自分) 自分の生存は何かのため、またはだれかのために必要であるか。
2.(自分)自分固有の生きて行く目標は何か。あるとすれば、それに忠実に生きているか。
3.(社会)以上あるいはその他から判断して自分は生きている資格があるか。
4.(社会)一般に人生というものは生きるのに値するものであるか。(33-34頁)

「生きがい」を感じて生きている人とはどんなタイプか。神谷の答えはこうである。
「自己の生存目標をはっきりと自覚し、自分の生きている必要を確信し、その目標にむかって全力をそそいで歩いているひと―いいかえれば使命感に生きるひとではないであろうか。」(38頁)
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ここに記されている「使命感に生きるひと」というフレーズに釘付けになりました。

・「AI」には“使命感”があるのだろうか?
・“意志”“情熱”“本気”“志”があるのだろうか?

と考えた時に、これが「AI」と「人間」の本質的な違いと直感しました。

これまで、「価値創造の知」連載で綴ってきたのは、
価値創造のプロセスは、「本気⇒本質⇒本流」の様に、

・「本気」:“意志”“情熱”“志”“使命感”

が初めにあることです。
そして、図解の「Will・Skill・Smile」の主体性が「AIをつかいこなす」本丸です。

そして、次の本質には、前夜(第143夜)に繋がる「日本の方法」(禅、わびさび、守破離、間)を組込んだ「深い知・高い知・広い知」が控えています。
これも「AI」ができない苦手なことです。

つまり、これまで「価値創造の知」連載で綴ってきたことは、「AI時代」に必要な“方法・心得・能力”そのものであることでした。
日本人が、「AI」を使いこなすために、“「AI」×「生きがい」×「価値創造の知」×「修教養」×「日本」”が一気通貫でつながることが“解”になると洞察しました。
今の、小学生・中学生・高校生・大学生に迅速に伝えたいですね。

そのために、もう少し中身と構造を整理しなければと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
AIが苦手なこと

橋本元司の「価値創造の知・第144夜」:『魅力がなくなるコト』が根本原因 ⑬「AI」「BI」「CI」って?

2018年5月8日 「CI」:Community Identity、長屋的共同体同一性

メディアでは、下記「AI」「BI」「CI」の論議が盛んです。

1.「AI」:Artificial Intelligence、人工知能
⇒ 人口知能が労働者から職を奪っていく
2.「BI」:Basic Income、最低限所得保証
⇒ 働かなくても、政府は無条件に毎月一定額を国民全員に配る
3.「CI」: ? ?
⇒①Continuous  Improvement、継続的な向上
・非効率性、障害、および無駄の低減で、プロセスの有効性を向上させる
⇒②Collection  Inheritance
・ベーシックインカムの財源は故人の遺産を国家が全額回収して賄う
⇒③Community Identity、長屋的共同体同一性
4.「EI」: ***

・「近い将来に、“AI”“ロボット”が職を奪っていく」
・「賃金格差が是正されない」
・・・
が大前提となっています。

それは、2018年ダボス会議でも話題になりました。

個人的に整理してみると、それらは、
1.「AI」:技術
2.「BI」:経済
3.「CI」:文化

として把えたいところです。

「AI」は間違いなく進展します。
「日本の労働人口職が49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
という記事が踊っています。

不安や恐れおののくのではなくて、
「どうやって次の産業革命を乗り超えて行くのか?」
「どのようなコミュニティが相応しいのか?」
という視座に立って本質的な“ミッションとビジョンとイノベーション”を描くことが不足しています。

それらを踏まえて、『ジャパン』は、次の時代の「教育、経済(経営)、文化」を三位一体で把えることが必要と想います。

それが、欧米と一線を引く、第119夜に綴った「苗代的(なわしろ)思考」です。
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『いま日本に足りぬものは苗代(なわしろ)。グローバリズムの直植えではありません』
苗代とは灌漑によって育成するイネの苗床である。 もともとは種籾(イネの種子、籾殻つきの米粒)を密に播いて発芽させ、田植えができる大きさまで育てるのに用いる狭い田を指した。
「苗代」は日本特有の文化で、苗を直植えしないで仮の場所で育ててから植え換えをする方法です。
「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
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そのような意味合いで、「新コミュニティ」「新文化」の観点から、

3.「CI」:Community Identity、長屋的共同体同一性

を『ジャパン』として選択することが望ましいと考えます。
江戸時代の「長屋コミュニティー」と現在の「シェアリング・リンク・おすそ分け」は相性がいいと思いませんか?
「個人」で立ち向かうではなく、多様な「チーム」としての“共創”です。
勿論、それは「依存ではなく、各人の自立・自律が基盤」となって花開くものです。

温故知新:「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」

元々日本にある「本来」を将来に活かす知恵と方法と物語を集結しましょう。

これまでのやり方、考え方では間尺があわないのですね。

湧きたつ、隆々とした「将来像」を「物語化」することが肝要です。「AI」「BI」「CI」の将来から、「日本の教育」を見渡した時に、ギャップと課題がくっきりと浮き彫りになります。

「将来はもうすでにここにあります」

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
AIBICI

橋本元司の「価値創造の知・第143夜」:『魅力がなくなるコト』が根本原因 ⑫「感情」「思考」「体験」

2018年5月6日 「物質」から「実質」「本質」へ

前夜(第142夜)は、教育の「一途の競争」から「多様の共創」への転換について綴りました。
この「多様」「共創」が不足しているのが課題なのですが、「多様」の中身が重要です。 それは、「中身が薄くなること」ではありません。むしろ、逆です。

それが、「物質」から「実質」「本質」へのシフトです。

対象の「背景」「分母」を豊かにすることです。
そのことについては、第105~107夜に記しました。
「事業創生・地域創生」の為には、『本分』という「分母」を明確にすることが必要です。それは、「事業創生・地域創生」だけではなく、人にも、社会にも、日本も同様です。

「人」「社会」「日本」「地球」の“分母・本分”を考えることが「教育の本分」と言い換えたほうがいいのではないでしょうか。その先に(上に)、「事業創生・地域創生」がみえてくるという順番です。分母が豊かになることで、分子(将来)が豊かになるのですね。

これまで「価値創造の3つの知(深い知・高い知・広い知)」を綴ってきましたが、「深い知」(第87~88夜)が「背景・分母の豊かさ」のことを指しています。
何か(対象)について、その「実質」「本質」を知りたいと思ったときに、素直に自分がそのことについてどう感じるかを探ってみることから始めます。「どう感じるか」という“感情”はなかなか見つからないものです。

しかし、最も深い感情の中に、最も高い“真・善・美”が隠されています。その深い感情をつかむことが“禅的思考”(第48夜)です。大切なものは引くコトで見えてくる(=禅的思考:従来の執着を手放すコト)のです。

そこに、隠れていた“特別な意味”“新しいな意味(目的)”が浮かび上がってきます。その「実質」「本質」「本分」が重要です。

それは難しいと思いますか?
昨日、九品仏浄真寺に行ってきました。そこは壮大な寺院で、9体の阿弥陀如来像や閻魔様、そして枯山水等がありました。
そこで見せる幼児の反応や親に発する問いは驚くべき内容です。
・こんな恐ろしいところに居たくない
・(「枯山水」を見て)海のようだ
・いつもと違う透き通った気持ち
等々

例えれば、最中の皮が無い状態です。
幼児のほうが、“真・善・美”に近いのですね。
そのことが、とっても重要です。

ここで、「実質・本質」を把える重要な3つを提示します。
それは、①「感情」、②「思考」、③「体験」です。

①「感情」
上記の「感情」をつかむことが重要です。
それは、“禅”の「無」と「空」を感じることです。

②「思考」
それは、図解(第86夜)の方法です。
『深い知』に辿り着くためのエクササイズ方法を記していますのでご覧ください。

③「体験」
それは、第136夜(量が質を生む)に記しました。
できるだけ「質」の良い・高い体験をすることです。
その「体験」「経験」をないがしろにしてはいけません。

これからの「AIoT」の時代に必要な「三種の神器」です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
『深い知』=「抽象化能力」演習