SDGsシフト60「価値創造の知・第305夜」:『新ルル3条:「ゴール・ツール・ロール」』

2020年12月23日 SXとDXが日本成長戦略の2本(日本)

 今週、菅総理が『グリーンとデジタル』を日本の成長戦略の二本柱と発表しました。
①グリーン=SDGsトランスフォーメーション(SX)
②デジタル=デジタル・トランスフォーメーション(DX)
 2050脱炭素宣言を通して、やっと日本政府の成長戦略の方向性が決まりました。遅かったですね。
この二つが出そろったのは、今回の「コロナ禍」のおかげといってもいいのではないでしょうか。

・新型コロナは黒船である(第288夜)
・災い転じて福となす(第290夜)

この決定で、多くの産業人に事業創生・地域創生・日本再興の道筋が見えました。

 実は、昨年の9月にそれらを見越したものをパワーポイント1枚にまとめて、添付の資料をコンサルティング仲間に見せました。
「わかる人(20%)」と「わからない人(80%)」にわかれました。

 その反応を見て、「この日本柱の変革はもう近い!」と直観しました。

上記の2トップ(グリーンとデジタル)は、2009年の半ばから実践モードとして顕在化していたのですが、それでも時代の流れを見ている人と見ていない人の差がくっきりとわかる瞬間でした。
地球温暖化、世界的な格差、世界を完全に変えてしまうAI、生物工学等は世界的な問題です。国単位だけで考えていたら、21世紀の問題は解決できません。
SXとDXはグローバルな課題&解決手段です。その課題解決は即『世界』につながります。

 改めて、令和時代は、この2トップが「政治・経済・社会」をけん引していくと宣言します。

 さて、2トップの認識として、
・SX(グリーン)は、「ゴール」であり、DX(デジタル)は「ツール(手段)」。
 この「おおもと」をおさえておくことが『価値創造』には必要です。

 この二つ(SX&DX)を対角線上に組み合わせて、『新しい組み立て』を行っていくことが、成長経営のポイントです。
その「新しい組み立て」こそが「価値創造」の真骨頂です。添付資料を参照されてください。
繰り返しになりますが、先陣グループが「競争」「共創」の実践モードに入っていることが顕在したのが2019年半ばでした。

・チコちゃんではありませんが、「ボーっとしていてはいけません」
いま、世界中が、大競走・大共創の時代に突入しているのです。

 さてさて、ここで未詳倶楽部(第26夜、第119夜)で松岡正剛師匠から学んだことが役立つと思い、お伝えします。

・—「記譜(スコア)の元は、ルール(決めごと)とロール(役割)とツール(道具)」にある。このことを私は「ルル3条」と言っていますが、この3つがたいていは新しいシステムになっていくわけです。—」

 前職パイオニア社でプロデュースした「異業種コラボ・連続ヒット商品創出(第14夜)」は、異業種コラボレーションという新しいルールを「オーディオ業界」にインプットしました。
そうすると、実現のための「ツール(道具)」は、「新しい組み立て、新しい物語」となり、自分や事業の「ロール(役割)」も否応なく大きく変わることを実体験しました。

 是非、皆さんも会社や地域、そして自分自身の「ルル3条」を整理されてみてください。
セミナー等でそれを検討していただくことがありますが、特に「ロール(役割)」が明確になることで、将来の新しい風景や戦略が見える経営者が続出します。

 首記には、『新ルル3条:「ゴール」「ツール」「ロール」』を明示しました。
「ルール」の部分が「ゴール」になっていますが、それは、SDGsそのものに、「ゴール&ルール(ESG)」が示されているからです。
そのゴールと本業を新しく組み合わせ、見極めることで、自社の、自地域の「新しいロール(役割)」が浮き彫りになってきます。
そして、それを実現するための「ツール(手段)」は何か、に目が移るというのが本筋です。
(実際には、「ツール」から入られる経営者が多いのですが、相対的に視野・視座が狭くて同質競争に陥り、事業の拡張や成長が鈍くなりがちです)

つまり、「ゴール」⇒「ロール」⇒「ツール」という『新ルル3条』です。

 これまでの縦割りの業界では、上記の「ツール」からの「見立て・仕立て」が中心でしたが、
「SDGs」は17のゴール(展開目標)がドミノの様につながっているので、横割りの積極的なドミノ目線が必要であり、結果的にそれが大きな『違いの創出』につながります。
そう、2030年のありたい姿、ゴールという一段上から俯瞰する「鳥の目」「新しい全体」「新しい展望」(第36夜)がアドバンテージ(優位)になることがおわかりいただけたでしょうか。
 もちろん、そのありたい姿と現実とのギャップ(溝)を埋める「イノベーション=価値創造」が十分条件になりますが。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

SDGsシフト59「価値創造の知・第304夜」:『トリプルシフト』

2020年12月13日 トリプルシフト

「コロナ禍を通して、企業が生き残るための3つの変革(新ルール)が浮き彫りになりました。---」

というキャッチフレーズで、自分が関わるセミナー等のリーフレットに記すことが多いのですが、

自分の本心は、
・生き残り
・サバイバルandサスティナブル
という言葉はあまり使いたくありません。
 そこには、「悲愴さ」や「寂しさ」がついてまわります。
私たちが求めているのは、変革の先にある「喜びや楽しさ、充実感」ではないでしょうか。
「3つの変革の先の喜びと道筋・心得」をお伝えしたいのですが、リーフレットでは、それが直接響かないところにもどかしさを感じています。

 さて、先日、東洋経済online(11月23日)で
→日本人が即刻捨てるべき「経済大国」という幻想
 という記事がありました。一部を引用します。
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— いま、日本に必要なのは、「日本は経済大国」「日本はものづくり大国」といった幻想から脱却し、生産性を高める産業構造へ変革することだ。
それは、これまでの常識をリセットする、大変革である。コロナ禍で世界が大きく変わりつつある現在、日本は最大の転換期を迎えているといっても過言ではないのだ。—

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 確かに、「経済大国」という名のもとに、長いデフレの中の「ハングリー精神の薄さ」が大問題でした。
「ハングリー」については、第157夜に綴っています。

第157夜(スティーブジョブズ編:Stay hungry.Stay foolish)から引用します。
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—直訳では、「ハングリーであれ、バカであれ」

普通の人はピンときませんね。本質がわからないと表面的なものになってしまいます。

繰り返しますが、頭では、机上では分かりづらいのです。この理解には「禅」の思想、思考と実践知が求められます。
そして、「情熱・覚悟」ゆえの「「痛み、辛さ」そして「喜び」の体験をした人には、直感できるように思います。

自分が意訳すれば、

Stay hungry. =「安泰」でいるな、“不足”を大事にしろ。
Stay foolish. =「良い子」でいるな、“逸脱”を大事にしろ。

となります。

「安泰」「良い子」は「楽(らく)」なのです。試練がないのです。イノベーターではなく、オペレーターなのです。
でも「安泰」「良い子」のままでは、イノベーションのスタートラインにつけません。
 日本の教育は、高い処理能力のオペレーターをつくってきたのですね。そのオペレーターは、AI・ロボットの登場でその場を失ってゆきます。—

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 日本の生命線は、「ハングリー&バリュー・イノベーション」であり、「バリュー・イノベーター」をつくることが肝要です。
それなのに、「安泰オペレーション」ばかりしていて、「ハングリー・イノベーション」に遅れをとりました。

 そこに、今回の各国の「コロナ禍」対応の比較で、政治・経済・社会・地域・医療・教育等々の数々の問題や遅れが白日の下に炙り出されました。
「日本はそんなに遅れていたのか」
黒船来航のような、それが国民の実感でした。

 さてさて、上記の東洋経済記事の「大変革・日本最大の転換期」とは何でしょうか?

それは、突き詰めると、
・SX: SDGsトランスフォーメーション
・DX: デジタルトランスフォーメーション

 という二つのシフトのことであり、それを基盤とした「新産業化」の先取りです。

 そして、SXとDXを統合した「HX:ハーフandハーフ変革(第302夜)」が様々な業種業態で次々に生まれてきています。
(それは、HXと記していますが、『GX:ゴールデン・トランスフォーメーション』と呼んでもいいかもしれません。「SDG」とは、SX・DX・GXのs新結合と表せます)

 それらは、首記の「変革の先にある喜びや楽しさ、充実感」を目指しています。
そこにフォーカスして、「働き甲斐」「働き方改革」「生産性改革」を実現していくのが道筋ではないでしょうか。

 そして、「SX」の17ゴールと「DX」の双方は、単独で存在していられなくて、つながり合い、結び合っている特質があります。
(SXの各ゴールは、密接にリンクしています。そして、DXの本質はボーダーレスになることです)
そのため、単独(スタンドアロン)でやることには限界があります。

 SX・DXはひとりでいられないのです。

参考に、松岡正剛師匠の「千夜千冊・第1125夜:ボランティア」より加筆引用します。
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—金子さんが本書で証していることは、一言でいえば、ボランティア・ネットワークを自分が動くことそのものがもうひとつの情報の特質だったということにある。
—ボランティアという言葉には、もともと志願者とか義勇兵とか篤志家という意味がある。それらはボランティア活動者という主体の意志をあらわしている。なるほどボランティアは主体的である。
けれども、本来のボランティアの意味の奥には”WILL”そのものの動向というものがあり、その”WILL”はじっとしているわけではないのだから、
それらが「つながり」や「かかわり」や「めぐりあい」をおこしたとたん、そこには関係性というものが形成される。

その関係性に結び目をしっかりつけたものがネットワークの正体であって、そのネットワークはもとをただせば何かが自発することで開始された情報の動向そのもののことでもあったのである。
電話線やコンピュータ・ネットワークのルーターばかりがネットワークではない。そこに相互の出会いをもたらし、「もうひとつの情報社会」の潜在性が立ちあらわれて、見えないボランタリー・ネットワークがそこかしこに見えてくること、そのことが金子さんが実感したかったネットワークだったのである。
  大筋、金子さんは本書を通して、こうしたことを”発見”した。ボランティアとは、ボランタリー・ネットワークを自発させる一人ずつのエンジンのことであり、そのように情報を見直すことだったのだ。
ぼくはここから「情報はひとりでいられない」というメッセージを貰った。—

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 「二つの変革『SXとDX』は、“ひとりでいられない”という特質を持っている」

 ということを心に留めておいていただきたいのです。

・「ありたい姿」に、はしごをかける
・「本業の前後」をつなげる
・「異業種」とつながる

 はしごをかけて「ありたい姿」を明確にして、ボーダーレスに次々つながる、結び付ける(=新結合=イノベーション=価値創造)

 そう、「つなぐ、わかる(新しい性質)、かわる」ことの素敵な成長物語が新しい価値やGDPを創っていきます。
次夜は、「そのつなぎ方、結び方」に日本本来の強みがあることを綴りたいと思います。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

SDGsシフト58「価値創造の知・第303夜」:『デジタルトランスフォーメーション』

2020年12月10日 トリプルシフト

 今週のニュースの中心は、「経済対策、事業規模73兆円」にありました。
→新型コロナ対策に加え、企業や省庁の枠を超えてシステムの標準化や互換性を高める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、脱炭素化といった菅政権の看板政策を推進するための事業を盛り込む。8日に閣議決定する。

 財政・税制で、前夜(第302夜)に綴ったトリプルシフト(HX・DX・SX)が勢ぞろいしたようなものです。
① HX:新型コロナ対策
② DX:デジタルトランスフォーメーション
③ SX:脱炭素経済対策:2兆円基金
 上記のSXは、2030年のゴールを提示していて、DXとESGは、それを達成するプロセスとしてみるとわかりやすくなります。

 さて、本夜は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の把え方について綴ります。

 まず、「トランスフォーメーション」とは何でしょうか?
・trans-formation
英語の綴りではtrans-は接頭辞として出てきて、“超えて、…の向こう側、別の状態へ”の意味があります。
英語圏では、trans-を「X」と綴ることで、「デジタルトランスフォーメーション」は、『DX』と使うのだそうです。

 ここで、第295夜」(『Transforming Our World』)では、SDGsの肝に「トランスフォーミング」を記しましたので引用します。
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「SDGs」のおさらいをすると、
SDGsとは、人類の未来を変えるために掲げられた世界共通の目標です。ここには、『2030年に向かうビジョン』があります。
 貧困や不平等や環境破壊・・・、深刻化するさまざまな社会問題を解決しなければ、「地球に未来はない」と世界中の国々が危機感をもって、2015年9月に採択されました。

その採択された文書の表題は、

「Transforming Our World」(私たちの世界を変革する)

⇒これが最も重要な「心得・志」です。

このTransformingは、変革や変容とも訳されます。

⇒人類の未来をよりよいものに変えるために「もう後戻りしない・覚悟する」ということ

よく「Transforming」のイメージを理解してもらう例えとして、
・オタマジャクシがカエルになる
 ・蛹(さなぎ)が蝶になる
 がよく使われます。

質が変わる、形態・状態、生態が変わって、「変態」しています。
 「変態」することで、社会・環境・経済を好転換していくということです。

さて皆さん、これまでの延長線上(10年後)に、会社・地域の成長を描けますか?—

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 そう「変革=トランスフォーメーション=シフト」が、政治・地域創生・事業創生・人財創生の中心になっています。。 

 それでは、「トランスフォーメーション」を3つの切り口(A/B/C)で見ていきます。

A,「DX推進ガイドライン」
 平成30年12月の経産省「DX推進ガイドライン」には、
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

 と記しています。
・DXの目的は、「競争上の優位性を確立すること」
・そのために、「IT技術を活用して、ビジネスモデルや会社の組織を変革すること」
 に要約できます。

B.「デジタルの次は?」
 上記A.は、『ビジネス』をベースとした把え方ですが、
自分自身は、前職パイオニア時代に、

・「デジタルの次は何か?」

というテーマで、20年前の2000年に、その姿を追って把えていました。

・analog→degital→cubital

 それは、弁証法で進化の姿を仮説していたので、それを図解添付します。
DXの本質は、ここにあると断言できます。それを把えているかいないかで、未来を観る目が大きく変わってきます。

その進化図は、第205夜(デジタルから『質量への憧憬』)に綴っているので、そこから引用します。
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その進化の形は、

①アナログ→②デジタル→③キュービタル

と洞察しました。
キュービタルとは、キュービット(量子力学)とデジタルの造語です。

当時のカーナビの将来(車の運転)を検討した時の簡易的な事例では、
①アナログ:実際の運転席で、「次の交差点を右に曲がると六本木」という標識を観て進行先を判断する(=現実の風景)
②デジタル:カーナビのディスプレイの中にあるデジタル情報を見て、「次の交差点を右に曲がると六本木」という判断をする(=デジタルは、ディスプレイの中にいる)
③キュービタル:実際の窓の外の風景(アナログ)を見ながら、空間上にデジタル情報(⇒矢印や3次元の疑似車)が浮かび上がり、アナログとデジタルがインタラクティブに融合する世界。

という具体例です。そのようなカーメディアが10数年後に発売されました。
(自動運転やAIロボットもキュービタルです)
(「グーグルグラス」もその世界を狙っています)—

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 14年前(2006年)には、前職パイオニア社で、どのような未来の広がり(時間と空間の拡張)があるのかを7つの世界で提示して、それをビデオにまとめました。
その世界は、Society5.0をピタリと言い当てていました。

 その具現化が、『Society5.0』です。
日本政府のSDGsアクションプラン3本柱の一つです。
(キュービタルの本質を知っていると見えないものが見えてきます)

経団連では、
→「『Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成(Society 5.0 for SDGs)』こそ、企業が果たすべき役割と考え、2030年に世界で実現できるよう取り組んでいます」
と2017年11月に発表しました。

 「キュービタル」は、デジタルの進化の姿を現したものです。

C.目指すものの進化
 さらに、違った視点からの進化をみてみましょう。

①デジタイゼーション: アナログをデジタルに転換
②デジタライゼーション: ITを活用して既存の価値を高める(技術・新事業) 
③DX:社会生活や企業のあり方を変革すること(社会価値×経済価値)

 というものです。
こうなると、社会課題の実現に向かう「SX」がゴールで、「DX」が手段という意味合いが理解が深まったのではないでしょうか。

 SXとDXは、コインの裏表です。
「人類の未来をよりよいものに変え、ありたい地球・社会・人生にしたい」

 そして、SXとDXは、境界をなくし、ボーダーレスの性質を持っています。
それらを前提にした「在り方・あり様」を想像(イメージ)することが始まりになります。
その未来と現実のギャップを埋めるのが、イノベーションであり価値創造です。

 多くの人を巻き込んで、いまの大ピンチを大チャンスに変えていきましょう。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ