2026年3月10日 「問い」が「価値創造」の源 流である
---------- 「問い創造工学」の二つの要諦 は、 1.「問い創造工学」 とは、「まだ出現していない価値を創出する可能性へのアクセス」 であり、 2.「問い創造工学」 とは、「価値創造工学」(第370夜詳細) を成立させるための最重要かつ最上流の基盤(OS) である。 ---------- ■「問い創造工学」宣言(第372夜)の超要約
1. 価値創造の出発点は「答え」ではなく「問い」
社会や人が抱える切実な問題や違和感 から価値創造は始まる。
既存の知識や技術で答えを探すのではなく、「何を問うべきか」を見つけることが最も重要 。
→ つまり、良い答えより「良い問い」が価値創造の源泉。
2. 問いは「Why → What → How」の循環 で深まる
価値創造の思考は次の問いの循環で進む。
Why(なぜ) 本質的な意味や背景を問い直す
What(何を) 新しい価値の姿や方向を定義する
How(どうやって) 実装・仕組み・方法を設計する
この問いを繰り返し更新することで新しい価値が生まれる。
3. 問いは「人間の切実さ」から生まれる
問い創造の起点は次のような状況。
人の困りごと
社会の矛盾
逆境や受難
「このままでいいのか」という違和感
この切実さを深く理解することが価値創造の原点 。
4. 問いを通じて既存の枠組みを超える
問い創造の役割は
を問い直し、別流の価値(新しい見立て)を生むこと 。
5. 育てたい人材像
目指す人材は
正解を早く出す人 ではなく
問いを生み、問いを更新し続ける人
つまり「問いを回すエンジニア、イノベーター」 。
まとめ(超要約)
「問い創造工学」とは
人や社会の切実な問題から 「なぜ」「何を」「どうやって」を問い続け、 既存の枠を越えた「別流・別様の価値」を構想・実装するための思考と実践の方法論。
--------- ■ (参考) 大学生向け:実践「問い創造工学体系」の歩き方 皆さん、新しい価値を生むため の「問い」 とは、常識という壁の向こう側にある「まだ見ぬ未来」へ手を伸ばすためのチケット です。この図は、そのチケットを手に入れてから、実際に未来を形にするまでの「心の動き」と「行動」 を表しています。1. 受動的な「心の揺れ」 から始まる(A・B) 価値創造のスタートは、意外にも「受動的」なものです。 日々の生活の中で感じる「えっ?(驚き)」や「なんか嫌だな(違和感)」という心の揺れ を大切にしてください。それが、外側の世界への切実心 や、内側への好奇心 に変わったとき、あなたは「なぜ?」という疑問を抱きます。これが、自分と世界との間にある「未知の扉」 の前に立った瞬間です。
(学生向け)解説: 「数寄」とは、「好き、漉き、透き・・・」という、世の中の平均ではない「偏り、こだわり、型破り、不足、未完、執着・・」を好むこと、つまり「好きこそものの上手なれ」の究極の形です。自分の問いに対して、損得抜きで「なぜ?」「もっと知りたい!」と深掘りし続けること。それが結果として、これまでにない価値創造・新ライフスタイル・新技術・大発見につながる自分の内なる能動の「研究開発」の道です。
2. 能動的な「探求と問い」へ(C・D) 扉の前に立ったら、次は自ら動く「能動的」なフェーズ です。 常識(既知)にとらわれず、別のやり方・あり方(別流)を探る探求 を始めましょう。そこで自分なりの「仮説」や「信念」が固まったとき、ただの疑問は、強い情熱・意志を伴う「問い」 へと進化します。この「問い」こそが、まだ出現していない「別様の可能性」へのアクセスパス になるのです。
3. 「3つの知」(第364夜参照)で価値を形にする(価値創造) 磨き上げた「問い」を手にしたら、最後はそれを社会に実装(仕立てる)段階です。 下記「3つの知(赤枠の空白)」のそれぞれの余白を埋めることで別流の世界 が立ち上がってきます。
深い知 (Why?): あなたにとって最も大切なコトは?(志・ミッション)
高い知 (What?): それが実現した未来はどんな景色か?(方向・ビジョン)
広い知 (How?): 自分(たち)の内側に「異質な何か」を導入してワンランク上になっているか?(実装・イノベーション)
■ なぜ、「問い創造工学」か? 後述する、本格化してきたAX(AIトランスフォーメーション)時代を背景にして、人間に求められる能力・才能は、「価値創造力(目的)=イノベーション力(手段)」 とその基盤(OS)となる 「問い創造力」 習得・獲得に シフト することは間違いありません。これが、核心であり確信です。 (* 「X」で表わす「トランスフォーメーション」とは、「後戻りしない変化」のコト) ここ三か月ほど、「価値創造工学」 のセミナー・研修・ワークショップを、「大学(学生・教職員)、企業、自治体」で演習と対話を繰り返してきましたが、想像以上の高い共感と反応・評価をいただきました。 そうした中、自分の中で「価値創造」の基盤(OS)として、価値の方向性 を決める「問い創造」領域のプロセス、メソッドの体系化の重要性・必要性が立ち上がってきました。 そこで、「問い創造工学」 の構造と体系を、文系理系を問わず、「工学の手法」 で「設計・プロセス化・図解化」 して、いち早く日本の皆様にお届けすることを思い立ちました。 今、日本人にとって重要なことは、このAX時代の変わり目の大ピンチを大チャンスに変えるために、その変化の本質を把えて、「価値創造」と「問い創造」 双方の 構造と思考を結合・統合して、先取り・先行・展開することにあります。 それでは、「価値創造工学」の最重要かつ最上流の基盤(OS) としての「問い創造工学」 を世界で初めて 明らかにしていきます。
■ 「価値創造工学」と「問い創造工学」の関係 は? ⇒ 「手段」としての価値創造 と、「目的」を定める問い創造 上記二つの「新しい工学」の関係 は、情報の「図(分子)」と「地(分母)」にあたります。 最も重要なことは、下図の本質的でインパクトのある「価値創造」(図・分子)の出力 には、本質的・構造的な「問い創造」(地・分母・最上流の基盤)が欠かせない ことです。 ⇒ 理解を深めていただくために、最後方に「三つの事例」を 用意しています。
師匠の松岡正剛は、情報や知識の編集を考えるときに、しばしば「地(ground)」と「図(figure)」の指南がありました。 この「地と図」の関係を自在に動かすことができるようになると、「問い」の深み、高み、広み が拡張して、「問い創造工学」の上級者に向かいます。A. 「図」とは、=目に見える情報・主題 ・今まさに注目されている内容 ・テーマ、主張、ストーリー ・表に現れている情報 つまり、人が意識的に見ている情報 です。B.「地」とは=背景・文脈・知識のネットワーク 一方の地は、図を成立させている背景全体です。 ・文脈 ・前提 ・歴史、関連知識 つまり、表に出ていないが、意味を支えている情報の場 です。
本夜のテーマにおいては、「価値創造」が「図(手段・別流・出力)」 で、「問い創造」が「地(目的・源流・入力)」 にあたります。 「問い」 がなければ「価値」 は迷走し、単なる既存の改善(カイゼン)に留まってしまいます。優れた価値創造には、既存の枠組みを疑う「問いの質」 が不可欠であり、 真のイノベーション(価値創造)を起こすためには、その手前にある「問い」を設計する工学的なアプローチ が不可欠です。
概念 役割 基本的視点 問い創造工学 基盤・エンジン・源流 「何を成すべきか」 を定義する。これがないと、どれだけ技術があっても無価値なものが生まれる。価値創造工学 実装・アウトプット・別流 「どう実現するか 」 を形にする。問いによって定義された価値を、実際に社会へ届ける。
■ 「問い創造工学」が必要とされる3つの背景(要約) それでは、「問い創造工学」が求められる3つの背景 をお伝えします。 俯瞰すれば、 2024年末に生成AIが自己学習能力(推論)を獲得 したことによる大変容(X:トランスフォーメーション)の時代が到来したことが起因です。
1. 「正解」のコモディティ化(正規分布の終焉) AIは、既存事業や既存人財を「根こそぎ自動化代替する組織変容力」 と、AI自身が「自動的・自律的に進歩させる自己変容力 」を持つ大きな自動変容ツールです。 これまでの論理的に導き出される「正解 」はAIやITですぐに共有され、もはや差別化要因になりません。 ①AIエージェント(ポスト・ホワイトカラー) ②AIロボティクス(ポスト・ブルーカラー) への代替がそれを現実化して、加速していきます。 2.本質的な「問い」が、人間側の これからの「競争力の源泉」 ⇒ 問う力、対話力(=プロンプト力) が 武器になる 時代 「正解」のコモディティ化の中、今後求められるのは、AIに何をやらせるかを定義できる人間 です。 「プロンプト」 とは、AIに与える「指令文」ですが、これは単なる命令ではなく、「問い」の構造設計 そのものです。 ・どんな切り口で情報を整理させるか? ・何を前提に答えさせるか? ・どの抽象度で出力させるか? これは単なるスキルではなく、「思考能力」と「構造化力」の複合体 です。 (「日本経済AI成長戦略」加筆引用) これからは、「どう創るか(How)」ではなく「何を問うべきか(Why、What)」 という本質的な「問い」 が、人間としての『競争力の源泉』 となります。
3.「問い」による価値の再定義:M字型(未常識)への移行(シフト) ⇒ これからの人財教育は、「オペレーション型」から「イノベーション型」へ 従来の「工学」は「いかに作るか(How)」 に特化しすぎ、結果としてコモディティ化と失われた35年を招きました。(オペレーションの時代) 令和の時代は、「何のために創るか(①Why) 」、「何を創るか(②What) 」を前提にして「具体化する(③How) 」という「ひとつなぎ」 を科学し、 工学の手法 で価値を設計 する必要に迫られています。(イノベーションの時代) 下図の様に、これまで日本が得意だった、正確で速く効率的に解決する「オペレーション型」(左図) の正規分布曲線の価値観が「常識」でしたが、それらの領域は、上記「AIエージェント」や「AIロボティクス」で代替できるという新常識 がはっきりしてきました。 これからは、独自の視点で「本質的な問い」 を立て、価値観の両極(M字型 :未常識のユニークな本質 )を掘り起こすことが、新しい価値(イノベーション)の創造 につながります。その掘り起こすメソッドがこのコラムでお伝えしてきた「3つの知」(第364夜詳細) です。 いま、「イノベーション型人財教育」シフトに日本人は迅速に気づき、次の一手に進むことが肝要です。 (本夜のコラムは、そのことを速く、強く、広く伝えることも目的にしています)
昨今のニュースでも ・アマゾンはAI導入を背景に全従業員の約2%に当たる3万人の人員削減を発表 ・大手コンサルティングファームでは、AIの台頭による業務代替やクライアントのコンサル離れにより、数千人規模の減員や再編が進んでいる ・みずほFGが事務職5000人削減へ。事務センターにAI本格導入、配置転換進め集客力強化 ・・・ が伝えられました。 このニュースに「心の揺れ(自分と世界のズレ)」 が発生しないで、「他人事」 と思う人はアブナイ です。 学生、企業人、行政人等、上記「価値創造/問い創造」 に向かう人は、迅速に「自分ゴト」 になる知性・感性・脳性が必要です。 「AX時代」にこれからの人間に求められる能力は、右図の「価値創造(=イノベーション)」領域にシフト することが納得いただけたら幸いです。■ 小まとめ 「問い創造工学」の二つの要諦 である A.「まだ出現していない価値」 の可能性へのアクセス」 B.これまでの延長線上ではない「別流の価値創造」 は、正規分布曲線のセンター(=常識)から離れたM字領域(未常識) にあるコト。 その領域の本質的な「価値を生み出す」基盤が「問い創造能力」 になります。■ 「問い創造工学」の「問い」の領域とは? ⇒ 「検索の知」から「手続きの知」 へ
本コラムで扱う「問い創造」の「問い」 とは、 ・明日の天気は? ・日経平均株価は? ・ここから「鎌倉駅」までの電車のルートは? ・「鎌倉駅周辺の」観光名所は? ・paypayの残高は? 等々での会話やスマホ(グーグル検索やAI)への「検索の問い(知)」 ではありません。 いま、「検索の知」 の領域は、AIの独壇場になることがはっきり実感できるようになりました。 これから、人間の側に重要な「知」は、情報をただの知識として蓄えるのではなく、それらを「編集(つなぐ・変える・再構成する)」して「新しい知や未常識」を創り出す「手続きの知」 になります。
■ 「問い創造工学体系」 図解
それでは、上記を踏まえて「価値創造工学」の基盤(OS)となる「問い創造工学」体系 を図解します。 第370夜に提唱した「価値創造工学」 は、文系・理系を問わず、「人の役に立つ仕組み を考え、試し、社会に届けるための[心得・思考・実践 ]の方法論 」です。 同様に、「価値創造工学」の基盤となる「問い創造工学」 も同様に、文系・理系を問わず、「人の役に立つ仕組み を考え、試し、社会に届けるための[心得・思考・実践 ]の方法論 」です。 そのプロセス・構造・体系を展開・図解したのが下記になります。
別様の価値を「生み出す(Output:別流)」ためには、 ---------A.心の揺れ(驚き・違和感) ⇒「内面の常識」と「外側の世界」とのズレの発生 ・常識や既知の枠組み(既存のアルゴリズム)の外側にある「驚き・違和感」をキャッチする段階。 これがAIにはできない「切実心(なんとかしたい)」の起点となります。 B.疑問(Why・疑念) ⇒内面に向かう「好奇心」と外側に向かう「切実心」 ①「負」「不思議」の感情を観察する: 怒り、切実、はてな?といった感情が動く瞬間を捉えます。 ②「当たり前」を疑う: 「業界の常識だから」「昔からこうだから」と見過ごされている 不合理を、あえて「なぜ?」と見つめ直します。 C.探求(未知・探求) ⇒「外側の世界(過去・現在・未来)をどうどうとらえるか」という客観的な認識 ⇒「志(自分はどんな世界を作りたいか)」という主観的な想い ① 事実の深掘り(Fact Finding) ② 背景の洞察(Context Analysis) ③ 本質的な問いへの変換(Reframing) ・「真善美(内側)」を問う研究開発的なアプローチと、 「別流(外側)」を目指す事業開発的なアプローチが交差する段階。 ここで「守破離」による既存知からの脱却が起こります。 ・「どうすれば効率化できるか?」という「解くための問い」ではなく、 「そもそも、これが必要な目的(本質)は何だったか?」 という問いに変換します。 例:「効率的なハンコのリレーはどうすればいいか?」ではなく、 「確認と責任の所在を担保する、全く新しい方法は何か?」 と問い直します。 D.問い(仮説・信念) ⇒ 内面に向かう「数寄(ミッション)」 と外側に向かう「道標(ビジョン)」 ⇒「数寄」と「道標(ビジョン)」がシンクロ (二つ以上の物事が同期・同調) ⇒「別流」に向かう「3つの知」 (第364夜詳細) ① 道標(みちしるべ):事業開発的なアプローチ →一言で言うと: 「世界をどう変えるか?」という社会への実装 → 自分の立てた問いを、社会をより良くするための「進むべき方向(道標)」として掲げることです。 ビジネスやサービスを通じて、多くの人を巻き込み、具体的に世の中の不条理を解消していく「事業開発」の道です。 ② 数寄(すき):研究開発的なアプローチ →一言で言うと: 「真理・大元(おおもと)はどうなっているのか?」という本質の探究 。 →これは、「真理や色即是空(第6夜、第122夜)を探究するスペシャリスト」 を目指す方向です。 上記「D」が、「問い」を仮説と信念まで磨き上げる段階。 これが最強の「プロンプト」となり、AIを「再設計(トランスフォーム)」するための 強力な指令となります。
フェーズ テーマ 学習内容(ワークショップ例) A. 心の揺れ 「感性・心性」の解凍 常識の中に潜む「違和感」・「ズレ」を言語化する。AIには検知できない「人間の内面・内発」 をリスト化する。 B. 疑問 「Why・疑念」の深掘り なぜその違和感があるのか?「切実心・好奇心」 を起点に、課題の本質を抽出する。 C. 探求/探究 「別流」の探索 「守破離」と「真善美」を往復し、AIが提案する「最適解」ではない「別流の解決策 」を練る。 D. 問い 「志・信念」の構造化 磨き上げた問いを、最強の「プロンプト(経営の設計図)」 へと変換する。
コラム第364夜の「新成長を生み出す3つの知」 に旭山動物園のプロセス事例を上げていますので、それをご覧いただけると、さらに理解が進むと思います。 他に、3つの事例を後方に用意していますのでご覧ください。
それでは、上記を土台にして、「問い創造工学」を宣言します。 ■ 『問い創造工学』宣言
--------- 問い創造工学 とは、 文系・理系を問わず、「 価値創造の起点となる『問い』 を設計し、構造化し、 磨き上げるための[思考・対話・設計]の基盤(OS) である」
私たちは、単なる情報の処理や正解の検索を目的としない。 私たちが向き合うのは、 日常に潜む「切実」「不条理」や「驚き」「違和感」の中に、 潜み隠れた本質的な「問い」の種 であり、 それを通して、AI(AX)時代における人間の「競争力の源泉」や「真善美」を再構築 することである。
問い創造工学は、 価値創造工学を駆動させるための「地(文脈・前提)」であり、 既存の「当たり前・常識」を疑い、「何を問うべきか」 という上位の設計図を描き、 複雑な事象をどの切り口、どの抽象度で把えるかを 構造化し、言語化し続けるための知性 ・感性・脳性の体系 である 。
私たちは、 効率よく「解」を出すオペレーターではなく、 「問い」の構造そのものを設計し、自らの内なる「了解(常識)」と、 激変する外側の世界との「ズレ(心の揺れ)」を見逃さず、既知と未知が踵(きびす)を接する境界 から その人ならではの「問いのタネ」を引き出し、 価値のベクトルを定めるイノベーター(再構築者)を育てたい 。「問う」とは、自分という「未知」を起動することであり、 それは、外から新しい知識や技術を詰め込むことではない。 ふとした瞬間に生まれる「なぜ?」や「おかしいな」という、 あなただけの切実・好奇心の現場を、逃さずにつかまえること。
「問い」を立てるプロセスは、 あなたの内側に眠ったまま、まだ一度も使われていない「潜在的な力」 を呼び覚ますプロセスです。
誰かが決めた正解をなぞるのではなく、 あなた自身の内部からしか生まれてこない「唯一無二の視点」に自覚的になる こと。 それこそが「問う」ことの真意 であり、未来の価値を生み出す ための、 最も新しく、最も本質的なアプローチ です 問い創造工学とは、 人の「心の置き方(精神)」と「モノの見方(思考)」のフェーズ を変え、 その両立を通して、人々に役立つ価値が生まれる ための「土壌(OS)」を耕す方法と営み です。 ---------
■ 「問い創造」の理解・実行に向けた事例集 下記の「3つの事例」を用意しました。 ワークショップでは、多くの事例と演習を通して習得していただきますが、 下記エッセンスから、「問い創造」を自分ゴトとして把えていただければ幸いです。
◆事例紹介A.実践「ピュアモルトスピーカー」(第35夜、第126夜、第340夜詳細) ⇒前職パイオニア時代、私がプロデュースした連続ヒット商品「ピュアモルトスピーカー」等を使って説明します。[現状]:コモディティ化と赤字という「切実」 1990年代初頭、パイオニア社のオーディオ事業は「コモディティ化」の限界に直面してました。A. 「心の揺れ(驚き、不安、違和感)」: 1992年、国内ホームオーディオ事業が赤字転落。 「HiFiを核とした良いものを作れば大丈夫」という技術中心のこれまでの常識が崩れました。B. 「疑問(疑念): 「なぜ赤字になったのか? それは続くのか?」 ⇒「オーディオ活性化委員」「超高密度メディア委員」に選出されるC. 「探索(別流、探求)」(1993年): ⇒社長直轄の「ヒット商品緊急開発プロジェクト立ち上げ」を直訴 C-1. 別流 :機能的な製品を売る時代から、下図の個人の生活様式(ライフスタイル)に 寄り添い、新たな価値体験(Smile, Style, Story)を提供する時代
⇒ 探求:時代背景(1993年作成) と「楽音心理」の進化形(ハッピープログラム)
D-1.「問い」①: ・「次のパイオニア」の流儀(別流)を創るには? →「エレクトロニクス業」から「エンタテインメント業」へ →「ハードウェア×ハートウェア」 ・個人の生活様式(ライフスタイル)に寄り添うオーディオは? →「テクニカルポイント×アーティスティックポイント」の新結合 ・それを実現する「異業種コラボレーション」の可能性は? →「社内横断型」から「社外ネットワーク型」へ →「ウィスキー」「ファッション」「インテリア」「家具」等々
D-2. 「問い」②:オーディオ事業の未来の洞察(非常識と未常識) ⇒ 1993年、超高密度メディア(SDカード、メモリスティック等)と放送系、通信系の進化を洞察した結果、12年後の2005年に大きな変化がくることが洞察できました。 そう、予測した通り、2005年からアップル社スティーブジョブズの「iPad」「iPhone」が、携帯事業、オーディオ事業、カメラ事業等を直撃して、国内産業の数兆円が蒸発しました。
追記: 前職では、未だ現れていない「未常識(別様)の可能性」を数回提案してきましたが、これまでの成功体験・常識に照らし合わせた経営陣の多くからは、「理解できない」、「それが自分(たち)の既得権を犯してくる」と判断すると、「拒否」や「受け入れがたい」という反応が返ってきます。 → 「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」 そこの「たいへん 」を何回か、潜り抜け、乗り越えたり、挫折もしてきましたが、その壁が結果的に「企画内容」と「自分(たち)の能力」を引き上げてくれます。 ただ、時代を切り拓く「価値創造者(イノベーター、アントレプレナー、研究者)」たちのご支援に行きますが、彼らの悩みは、「未常識」への「拒否」や「無理解」にあります。(もちろん、タイミングもあります) しかし、上述したように、イマを生きる私たちは、AR時代の大変化を切り拓いていく精神、時代を動かす精神と知恵 をもって挑戦することがこれから更に求められてきます。 この「価値創造工学」、「問い創造工学」の心得とメソッド が、それらを打ち破る強い「ツールとロール」に役立つことを確信しています。
それでは、時代を大きく切り拓き「スマホ文化」を創造した、自分と同年生まれの「スティーブジョブズ」の事例を次に取り上げます。◆事例紹介B.「iPhone」 (第 83夜、第159~165夜詳細) ⇒「問い創造工学」から「価値創造工学」へのプロセス
〜iPhoneの事例に見る「あり方の問い」への転換〜 従来の多くの企業が陥っていたのは、下図右側にある「よくある思考プロセス」 です。 これは「売上・利益」を目的とし、そのための「解決策(やり方)」を模索するもの(=改善)」でしたが、結果として機能の同質化(コモディティ化)を招き、行き詰まりを見せることになります。(山口周「ニュータイプの時代」加筆引用)
対して、ジョブズのiPhoneのプロセスは、「気立て→見立て→仕立て」 (第367~368夜詳細)そのものであり、思考の起点を「あり方の問い」 へとシフトさせたものでした。
1. 気立て:現状の不条理と「ありたい姿」のギャップ
思考の起点は「どう売るか」ではなく、現状に対する「切実な不条理」 と、真善美に基づく「ありたい姿」 の間に生じるギャップです。
現状の不条理: ①当時は、携帯電話、カメラ、iPod、ボイスレコーダー等の情報機器を別々に持ち歩いていました。 ②当時の携帯電話は、物理ボタンが画面を占領し、アプリごとに最適化できない「不自由さ」に満ちていました。
ありたい姿(志): ジョブズが掲げたのは「売れる製品」ではなく、「創造的な人々の知性を増進する道具を届けたい」 という強烈な「あり方(Being)」の確信でした。
2. 見立て:本質的な「問い」への変換(問い創造工学)
ここで、図にある「Why(深い知)」 と「What(高い知)」 による問いの再定義が行われます。
従来の問い(やり方): ・「携帯電話、カメラ、iPod、ボイスレコーダーの機器を別々に持ち歩くことは常識?」 ・「どうすればキーボードを使いやすくして、他社より売れるか?」(コモディティ化への道)
本質的な問い(あり方): ・「電話・カメラ・音楽等の機器とコンテンツをシームレスにできないか? 」 ・「なぜ、知性を拡張する道具が、固定されたハードウェアに縛られているのか?」
問いの再定義: この「あり方の問い」が、既存の「電話」という概念を破壊し、「別流の可能性(シームレスな体験、全面液晶による無限のインターフェース)」 という北極星を導き出しました。
3. 仕立て:価値の具現化(価値創造工学)
「問い」によって導かれた「ありたい姿」を、具体的な技術や仕組みで「仕立て(How:広い知)」ます。
実装: 「iOS」、「 マルチタッチ」、「エコシステム」を統合し、解決策を具現化。
価値創造: その結果として生み出された「別様の価値」が、「スマホ文化」 を創り、後追い的に「売上・利益」という結果をもたらしました。
◆「3つの知」による統合整理 「問い創造工学」体系図にある「問い」の構造を、「3つの知」(第364夜)で整理すると以下のようになります。
深い知(Why): 「あり方の問い」 。個人の内面にある「真善美」や「志」から、不条理を打破する動機を汲み取る。(第85夜、第364夜詳細)
高い知(What): 「ありたい姿」 。既存の枠組みを外れ(逸脱)、未来における「別流の可能性」を構想するビジョン。(第87~88夜、第364夜詳細)
広い知(How): 「解決策の構築」 。問いを解決するために、多様な技術や手法を新結合させる知性。(第83~84夜、第364夜詳細)
結論:思考プロセスの転換
iPhoneの成功は、 ① 単なる「やり方」の改善ではなく、思考プロセスそのものを「売上(出口)」から「問い(入口)」へと逆転させたこと ②「現状(不条理・既知)」と「ありたい姿(志・未知)」のギャップを直視し、「なぜ、何のためにそれをするのか」(創造的な人々の知性を増進する道具を届けたい!)という上位概念の問い を立てること。 にありました。
この「問い創造」 こそが、多くの日本産業のコモディティ化の泥沼を抜け出し、真の価値を創造するための唯一のエンジンとなります。 下図で説明しますが、「経営」の「経」とは「縦糸」を表しています。「営」とは、「営み」です。「あり方(縦糸・道理)」と「やり方(横糸・営み)」を編むことで経営は成り立っています。 いま、日本の多くの企業が[横軸のやり方(HOW)」でコモディティ化して行き詰っています。必要なことは、[縦軸のあり方(道理・WHY)]を探求・発見することです。 それについては、前述のコラム第364夜の「新成長を生み出す3つの知」 に旭山動物園のプロセス事例(深い知)に詳細を綴っていますので、関心のある方は是非ご覧ください。
◆事例紹介C:覚えきれない「パスワード」 の切実 Q. 増えるカードやアプリで、溢れる「パスワード」作成・管理でぜんぜんスマートになっていない。 この不条理を「本質的な問い」に変換してみる
「事実」の深掘り(Fact Finding) まずは、現状の何が「不条理」なのかを分解します。 現状: 安全のために「複雑にしろ」「使い回すな」と言われる。 矛盾: 人間の記憶力には限界があるのに、システム側は「人間が記憶すること」を前提に設計されている。 結果: パスワードを忘れて再発行を繰り返したり、結局メモに書いて貼ったりという、本末転倒な(セキュリティを下げて利便性を損なう)行動が起きている。
「背景」の洞察(Context Analysis) なぜこの不条理が放置されているのでしょうか? システムの都合: 「本人であることの証明」を、システム側が最も安価で管理しやすい「秘密の文字列の照合」に依存し続けているからです。 責任の転嫁: 「忘れるほうが悪い」「管理できないほうが悪い」という、ユーザーへの責任転嫁が設計の根底にあります。
本質的な「問い」への変換(Reframing) ここからが「問い創造」の本番です。問いの抽象度を上げ、枠組みを変えます。①改善の問い(従来) : 「どうすればパスワードを忘れずに管理できるか?」 これでは「パスワード管理アプリ」などの既存の解決策しか出てきません。②本質的な問い: 「そもそも、なぜ『記憶』という不確かなものを、個人の証明(アイデンティティ)の鍵に使わなければならないのか?」 さらに視点を変えると、以下のような問いも生まれます。・関係性の問い: 「『私は私である』ということを、証明(Proof)するのではなく、環境が自然に認知(Recognition)する状態を作るにはどうすればいいか?」・存在の問い: 「デジタル社会において、鍵(パスワード)を持たずに、信頼という扉を開け続ける仕組みとは何か?」
価値創造へのヒント(仕立て) 「記憶に頼らないアイデンティティの認知」 という問いを立てると、解決策はパスワード管理の枠を超え始めます。 ・生体認証の先: 指紋や顔だけでなく、歩き方、タイピングのリズム、生活圏のログなど、その人特有の「振る舞い」で常時認証される世界。・分散型ID: 企業ごとに鍵を作るのではなく、自分が自分の鍵そのものになる仕組み。 [ワークアウトのまとめ(案)] この不条理から導き出された「本質的な問い」は? ⇒「『覚えること』から人間を解放しつつ、どうすれば『自分であること』を社会に証明し続けられるか?」 * この「問い」を立てることで、単なる「便利な管理ツール」ではなく、「認証という概念そのものを消し去るサービス」という新しい価値創造の地平が見えてこないか? * 「覚える必要がない世界」という問いの先に、どんな未来のサービスがあったら、あなたは「これこそスマートだ!」と感じるのか? -------------------
■ 次夜、次次夜について 次夜(第373夜)と次次夜(第374夜)は、本夜の「問い創造工学」と「価値創造工学」の間を橋渡し に最も有効な手法(思想)としての「シナリオプランニング」 について綴っていきます。
■ 追記 ・「変化」は今までと違う思考 で始まり、今までとは違う行動 から生まれる。 ・「成長」のために、心の置き方(場所) とモノゴトの見方 のステージを上げる 。・「挑戦」しないことこそが、1番の失敗である。
上記を、起業志向 に留まらずに、就職・研究・SDGs・事業開発・地域幸福・社会実装 まで、学部横断、社内横断、部局横断 、産学官連携 で活用できる「基盤教育」 として活用していただければと思います。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ