橋本元司の「価値創造の知・第232夜」:松下幸之助のことば「企業は社会の公器」④

2019年5月17日 「価値」とは「社会に役立つコト」

「道」「人」について引用してきましたが、それ続いて「企業」についての大切な言葉を「実践経営哲学」から引用します。

--------

『企業は社会の公器』

一般に、企業の目的は利益の追求にあると言われる。たしかに利益は健全な事業経営を行う上で欠かすことができない。しかし、それ自体が究極の目的かというと、そうではない。

根本はその事業を通じて共同生活の向上をはかることであって、その根本の使命を遂行していく上で利益が大切になってくるのである。

そういう意味で、事業経営は本質的には私の事ではなく、公事であり、企業は社会の公器なのである。

だから、たとえ個人企業であろうと、私の立場で考えるのではなく、常に共同生活にプラスになるかマイナスになるかという観点からものを考え、判断しなければならないと思う。

-------

「利益は手段であって、究極の目的ではない」ということを言っているのだと思います。

ビジネスとは何でしょうか?(写真参照)

それは、『顧客に「価値」を提供して、顧客から「対価」をいただくコト』です。
「価値」とは「社会に役立つコト」です。
顧客に「価値」を提供できなくなると、右肩下がりになり倒産にむかいます。
前職・パイオニア社も上記ができなくなって、リストラを繰り返して上場廃止にむかいました。

ピータードラッカーは、著書「マネジメント」の中で、
『企業の目的は。顧客価値を創ることである』
と綴っています。

松下幸之助は、「根本」「根源」という言葉をよく使います。
実用的なノウハウは一過性のもので盛衰があり長期的には役立ちません。根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくことを松下幸之助さんは実践されていました。

フォッサマグナの様な激変の曲がり角の時代には、上記の根源的な知を身につけ思考の土台を作る必要を痛感します。
その様な意味で、不祥事の多い時代に、いま多くの経営者に求められるのは

『企業は社会の公器』

という認識と実践と思います。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
松下幸之助ことば④

橋本元司の「価値創造の知・第231夜」:松下幸之助のことば「事業は人なり」③

2019年5月16日 これからの時代に『適切な人』

本夜は、「道」「熱意が道を切りひらく」に続く松下幸之助のことばを「実践経営哲学」より引用します。

-------

『事業は人なり』

“事業は人なり”といわれるが、これはまったくそのとおりである。どんな経営でも適切な人を得てはじめて発展していくものである。

いかに立派な歴史、伝統を持つ企業でも、その伝統を受け継いでいく人を得なければ、だんだんに衰微していってしまう。経営の組織とか手法とかもちろん大切であるが、それを生かすのはやはり人である。

どんなに完備した組織をつくり、新しい手法を導入してみても、それを生かす人を得なければ、成果もあがらず、したがって企業の使命も果たしていくことができない。

企業が社会に貢献しつつ、みずからも隆々と発展していけるかどうかは、一にかかって人にあるともいえる。

-------

“事業は人なり”とはまったくそのとおりだと思います。

それはそのとおりなのですが、レールの上を走れば良かった20世紀後半の鉄道の時代と違って、激変する21世紀の航海の時代には、上記の企業が社会に貢献しつつ、みずからも隆々と発展して『舵を切る』ことのできる『人』が必要とされています。

ところがその様な人財を据えないことで、ここ数年、特に大企業の衰退や倒産を目の当たりにすることが顕著になっています。それは「人災」です。

言うことをきく可愛い「イエスマン」や鉄道の時代の「オペレーター」を新社長におくことで「革新・再興」ができないことによる悲哀が目立ちます。

その様な「人」は、オペレーションについては判断できても、舵を切る「イノベーション」についての判断がとても弱いのです。その様な経営陣を上にいただくと、再興・新成長の提案を通すことは極端に難しくなり、悪循環の道にはまり込んでいきます。

そこには、「革新性」「成長性」「生産性」が大きくからんできます。まさに、『事業は人なり』です。

社会や未来をみないで、上ばかりみている真面目な「平目人」達を私たちは、「良い子」と名付けていました。経営陣や経営戦略・経営企画が「良い子」ばかりだと危ういと思ってください。

どうしたらいいのでしょうか?

松下幸之助の言う、これからの時代に『適切な人』をよく把えること、据えることにあると思います。

そして、それに迅速に応えなくてはならない「日本の教育の大課題」でもあります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
松下幸之助ことば③

橋本元司の「価値創造の知・第230夜」:松下幸之助のことば「熱意が道をきりひらく」②

2019年5月15日 自らハシゴをつくること

本夜は、前夜の「道」に深く関連する松下幸之助のことば②です。

『熱意が道を切りひらく』

早速、「社員稼業」より引用します。

-------

『熱意が道を切りひらく』

私は今までたくさんの人に働いてもらっておりますが、なるほど偉い人、というとおかしいが、ほんとうに間に合うという人は熱心です。熱意のある人です。

早く言えば、この二階に上りたい、なんとかして上りたいという熱意のある人は、ハシゴを考えましょう。
非常に熱意のある人は、どうしたら上れるのか、ということでハシゴを考える。
この二階に上ってみたいなあ、というくらいの人ではハシゴは考えられません。
おれの唯一の目的は二階に上ることだ、という熱意のある人であればハシゴを考えると思います。

仕事の上の熱意がなかったらお豆腐みたいなものです。人間はなんといっても熱意です。皆さんの習った技術、知識というものも熱意があればぐんぐん生きて決ます。

-------

上記テーマについてこの「価値創造の知」連載では、

・第44夜: 危機意識・情熱・本気
・第45夜: 自らハシゴを創る&リオリエンテーション
・第61夜:(前編)1.自分事力@7つの力
・第62夜:(後編)1.自分事力@7つの力

に綴っています。

第44夜を編集しますので、参考になれば幸甚です。

-------

—人口減少社会、AIot社会で人々の価値観や市場そのものがが激変する中で、如何に事業を創生するか、地域を創生するか、ということが喫緊の課題となっています。

企業や自治体をご支援する時に、トップが「本当に本気で強い危機感を持たれているいるのかどうか」が最大のポイントになることを痛感しています。。そのような本気の当事者意識を持っているトップやメンバーがプロジェクトに参加しているかどうかが成否の鍵を握ります。いいプランも実践もそれがなければ間に合いません。

トップに、「他(他社や他地域)も同じだ。リストラでまだ何とかなる、国が手が差し伸べてくれる」等というぬるい意識があるときは、だいたい上手くいきません。それは、従来のやり方や考え方で進めるほうが面倒がなく「楽」だからです。けれど、そのままの延長では、惨な方向に向かう数々で溢れています。

現在のやり方、考え方の、延長線上に未来はありません。その重いツケは、次世代の若い人達に向かいます。

そう、「事業創生、地域創生」のスタートで肝要なのは危機感の共有であり熱意です。創生に向かって変化対応の意志のある「企業・自治体」だけが道を切り拓いていることを痛感しています。

強い危機感・熱意があれば、従来のやり方・考え方に固執することなく、顧客・市場の今と未来に真摯に向かいあうことができます。そして、そこから顧客・市場との双方向のコミュニケーションが始まります。

成功のポイントは、先ずこれまでの対象の中心にあるやり方・考え方から意識的に離れることです。それは「守破離」(第5夜)です。

変革・進化は、通常「中心」から起こすのは難しく、「周縁」から音連れるからです。外部が必要なのはその視点・視座を持っているからです。「中心」にはこれまでの制約や言い訳があるから変革できないのです。ここがジレンマであり大きな問題です。周縁や未常識から観るメガネと熱意があれば乗り越える道が必ずみつかります。

常識の枠を外すと、対象の将来成長に向けた「鍵と鍵穴」が見えてきます。これまで業種の違うベンチャー企業をいくつかご支援してきましたが、彼らの鍵穴を見つけるスピードは迅速です。危機感・熱意があり本気モードだからです。—

-------

「事業創生・地域創生」の道筋は、

・本気(パッション)⇒本質(ミッション)⇒次の本流(アクション)

にあります。

次の本流を切り拓くには、最初に、『本気・熱意・当事者意識』が必要なのです。

『熱意が道を切りひらく』 とは上記を引き寄せ、手繰り寄せるためのはじめの大きな一歩を言っているのではないでしょうか。
これまで綴ってきたことで皆様ももうお気づきのことと思いますが、「事業創生・地域創生」の前には「人財創生」が必要なのです。

・自分が変わること
・自らハシゴをつくること

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
松下幸之助ことば②

橋本元司の「価値創造の知・第229夜」:松下幸之助のことば「道」

2019年5月14日 休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる

今年3月の中旬に、「チーム創発」のメンバーで関西圏ツアーに出遊しました。
2日目、3日目は、大阪パナソニックミュージアム(大阪)、PHP研究所(京都)を訪問しました。

「チーム創発」のメンバーの一人が、松下幸之助のエバンジェリスト(伝道師)第一期生ということがあり、その真髄と多くの学びを得られた素敵な旅となました。

それまでの自分の松下幸之助氏のイメージは、「経営の達人」が占めていたのですが、

・モノゴトの根源に身をおいている道(タオ)の人(第177夜・老子の知)

であることに気づかされ、「商術ではなく、商道からの本質」を学ぶことができました。

本夜から、そこにある「知」を言葉足らずですみませんが、そのエッセンスの複数をお伝えすることで、皆様に何かのお役にたてれば幸甚です。

最初のワードは、「道」です。
大阪パナソニックミュージアム(大阪)の入り口(写真参考)に足を踏み入れるとそれが目に飛び込んできます。
それでは引用(出典『道をひらく』)します。

---------
「道」

自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。どんな道かは知らないが、他の人には歩めない。自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。坦々とした時のあれば、かきわけかきわけ汗する時もある。

この道が果たしてよいのか悪いのか、思案にあまる時もあろう。なぐさめを求めたく時もあろう。しかし、所詮はこの道しかないのではないか。

あきらめろと言うのではない。いま立っているこの道、いま歩んでいるこの道、ともかくもこの道を休まずに歩むことである。自分だけしか歩めない大事な道ではないか。自分だけに与えられているかけがえのないこの道ではないか。

他人の道に心をうばわれ、思案にくれて立ちすくんでいても、道はすこしもひらけない。道をひらくためには、まず歩まねばならなぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。

それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。深い喜びも生まれてくる。
ーーーーーーーーー

冒頭に、「チーム創発」を記しました。
会社を退職や早期退職した「志のあるメンバー」が集まって、この変化の時代に、会社や地域の右腕となって、再興・成長のご支援を通して社会に役立つことを目的としています。

「人生100年の時代」「少子高齢社会」「AIot・ロボット社会」等は、従来の延長線上に未来がありません。
それを企業の現場で体験・実践・革新してきたメンバーが共創・革新に並走します。

・思案にくれて立ちすくんでいても、道はすこしもひらけない。

退職して「年金リタイア」するだけでは、若い人達から「嫌老」に見える時代になります。「リボーン」するのが、令和の時代の基準です。
さて、ビジネスの現場では、従来のマーケティング・マネジメントだけでは太刀打ちできなくなっています。

激変に対応するには、イノベーション・イメジメント(構想)のwillとskillが必要です。そこに新たな道が拓けてきます。
「商術」というテクニックではなく、「商道」という深い知が源、根源となって将来が拓けてきます。

もうとっくに単なるアドバイザーのご支援の時代は終わりました。
水先案内人としてのナビゲーター、パートナーが求められているのを実感してきました。

・道をひらくためには、まず歩まねばならなぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。

不易流行で歩みます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
松下幸之助ことば①

橋本元司の「価値創造の知・第228夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」⑥「要約と敷衍(ふえん)」

2019年4月12日 ヘーゲルの弁証法

「未来をどう読むのか」というのが、「価値創造の知」第2法則(第二の矢:高い知)です。そこでの重要な方法が「ヘーゲルの弁証法」(第27夜、第87夜、第176夜)です。それを活用して、首記の「要約と敷衍(ふえん)」を行ったり来たりという繰り返しから新しい価値、新しい現実というものが洞察できます。写真の「知の巨人」「知の怪人」の二人はその別格の使い手であります。

それは普段から皆さんもきっと無意識のうちにされていることなのですが、「従来の常識を破る」という意識や熱意があるのか、覚悟があるのかということでアウトプットや人生が変わってきます。

それでは、「要約と敷衍」、「弁証法」を絡めながら、「知の操縦法」を加筆引用して、「価値創造の知」綴っていきます。

---------

—ヘーゲルの考え方は、「対立と矛盾」を弁証法で乗り越えていきます。(物のありようや関係を考えることによって問題を解決できるのが「矛盾」)

なにか相手と意見を異にした場合、自分には「対立」に見えているものが、相手には「矛盾」に見えているかもしれず、どのポイントでズレているのかを弁証法的に発展させて明らかにしていくことで、何らかの合意点が得られるかもしれません。援用することで物事を解決していくヒントが得られます。

弁証法的な訓練をしていくうえで重要になるのが「敷衍」というやり方です。物事をサマライズする「要約」の逆で、意味を広げていき、例などを挙げて説明することです。「敷衍」するには、かならず、どの部分が重要かを見極める要約の訓練が必要になります。

「要約」と「敷衍」は本来セットですが、私たちは要約には慣れていても、敷衍にはなじみがありません。この要約と敷衍が上手なのが、池上彰さんです。

学術的な用語や難しい世界情勢を、一般に理解できる説明をするので、池上さんのテレビの視聴率は高いし、本も売れるのです。こういう技術を身につけておけば、会社や学校であの人の話はおもしろい、わかりやすいと言われるようになります。

どうやって身につければよいかというと、要約したものを見て、もとを復元していけばいいのです。—

---------

この後に事例を紹介されているのですが、ここでは「要約」を簡単に記されていますが、TOYOTAのナゼナゼ分析の様に、深く深く本質を捉えることが重要です。何をどこまで要約したか、本質に迫れるかによって、「敷衍」も変わってきます。

「色即是空 空即是色」(第6夜)の「空」をどうとらえるかによって、「空即是色」のほうの「色=新しい現実}が変わってくるからです。ここ、とっても重要です。

弁証法は、自分の中で対話をしていくので、そこで要約することもあれば、敷衍していくこともあります。変幻自在にものごとを動かし、生成していくので、自分と相いれない意見が相手でも、途中で反論せずに、どういう理屈なのかをとらえて、わからないことがあったときは、話者に質問するのです。

相手が何を言っているのかを理解するための質問だから、

・ここがわかりづらいですが、こういう意味でしょうか
・具体例は~でしょうか

というように迎合的な質問をするのです。

—「反証」して、それに対して再反論して、というように批判的な論点を踏まえたうえで、自分なりにこの問題についての結論を出すのが、正反合の「合」のプロセスなのです。

会社・地域の中で、上記の「批判的な論点」を許さない雰囲気、環境があることが多いのですが、そのことによって、会社・地域が生成発展することを阻んでいることがよくあります。自分も前職やご支援先で多く経験してきました。将来を創れるか、ドボンして飲み込まれるかの分水嶺です。

特に、「AI・IoT・5G」が出揃った変化の本質を把えること、そして、「次の一手」を早く速く打つことが重要です。

危機の時代に、業界、自社を「深い知・高い知・広い知」で観れることが先決です。

上記の「正反合」を活用した「本来と将来の螺旋的発展物語」で多くの会社をご支援してきました。多くの方達(特に未来を生きる若い人達)に「深い知・高い知・広い知」を身につけていただきたいです。

そのためにも、「要約と敷衍」の能力を不断に磨かれることをお薦めします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優06

橋本元司の「価値創造の知・第227夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」⑤「理性による分析では表せないもの」

2019年4月10日 大切なものは目にみえません

第78夜で、「創発とは?」について綴りました。それは、「価値創造」の肝(きも)となるキーワードです。

「創発」(emergence)とは、「部分の単純な挙動が全体の高度な秩序を生み出す」というプロセスで、言葉を変えれば、「個の自発性が全体の秩序を生み出す」というプロセスです。

前職パイオニア社での異業種コラボレーションによる連続「ヒット商品」創出(第13夜、第14夜)は、まさに「創発」でした。それは、第78夜に詳細を記していますが、

「新オーディオ・オルタナティブビジョン」の元に、全てを異業種コラボレーションの創発により、足し算では到底発現しない『新しい性質』『新しい物語・ライフスタイル・文化』を紡ぎ出してヒット商品になりました。

“人間”を事例にすると、人間の要素をバラバラに分解すると、目、鼻、耳、脳、心臓、手、足、神経・・・となりますが、それらが集まることで、“命”が生まれます。それと同じ構図です。

『新価値創造研究所』は、多くの方達のより良き将来と幸せを目的にして「新しい性質、新しいライフスタイル、新しい文化、新しい命」づくりを皆さまと創発で実践してきました。

本夜は、上記とクロスする内容を「佐藤優: 知の操縦法 」より加筆引用します。

---------

— 解剖学では、心臓、腎臓、筋肉といった部分だけを議論しても、人間がどういうものかわかりません。

ところが、哲学では、「存在とは何か」、「概念とは何か」といったいろいろなカテゴリーの知見を寄せ集めることで全体が分かる、となっています。

これはカントの系譜の考え方なのですが、それに対して批判的な意見が述べられています。

「体系知」についての考えにも通じているのですが、部分と全体との関係において、全体が有機体として機能していないといけないという発想が、ヘーゲルにはあります。従って要素ごとに分けていく工学的な解析にも批判的でした。

たとえば、光をプリズムによって7つに分けるというような解析をすると、トータルな「光」から抜け落ちてしまうものが必ずあって、同じように理性による分析には抜け落ちるところがあると、ヘーゲルは考えるのです。—

---------

「命」というものは目にみえません。価値創造というのは、新しい「命」が生まれるのと似ています。私自身は、「ヒット商品」をプロデュースするときに、「二つの間に生まれる目に見えない命・文化」というものをいつも意識していました。

佐藤優さんは次の様に語っています。

--------

目に見えるものだけではなく、目にみえないものを把えることができるかが重要です。見えるものは個別の問題にしか当てはめることができず、思考に制限が出てしまいます。

目に見えないもの、いわばメタ的なものを把えることができるかどうかにより思考の幅が広くなります。—

---------

大切なものは目にみえません。そして、「メタ的なものを把えることができるかどうか」により思考の幅が広くなります。

星の王子さま サン・テグジュペリの名言に、
「いちばんたいせつなことは、心で見なくてはよく見えない」とあります。
そう、価値創造には、「心で見る力」を身につける必要があるのです。(第63夜)

ここが価値創造の難しいトコロ(負)なのですが、一番魅力的なトコロ(正)でもあるのです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優05

橋本元司の「価値創造の知・第226夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」④「現実の出来事を見るために古典を読む」

2019年4月8日 古典を読むことで観えることが多くある

第176夜に、古典「ヘーゲルの知」を綴りました。
きっかけは、昨年10月の仙台方面の「知の旅」への出遊でした。松岡正剛師匠が亭主の「知の倶楽部」(第26夜)です。
「佐藤優さん」というとびきりのゲストが来られて、「知の巨人」と「知の怪人」が語り合う2日間の秘密倶楽部は、間違いなく格別・別格の時空間でした。

師匠は、「松岡正剛の千夜千冊」において、すでに1700夜を超えていますが、その松岡師匠へ「知の旅」の終盤で相談をしました。

その相談とは、この連載中の「価値創造の知」のことです。

「価値創造の知の執筆で壁にぶち当たることがある」

という悩み事でした。

師匠から迅速な回答がありました。それは、

「古典を読むことで観えることが多くあるものだ」

という助言でした。

(それから、内外の『古典』に踏み入り、そこからの多くの気づきを綴ってきて今に続いています)

さて、その「知の倶楽部」では、佐藤さんから「知(インテリジェンス)の使い方」の徹底指南がありました。
佐藤さんの著書である「知の操縦法」を読むと、後半の多くが、古典ヘーゲルの知「精神現象学」に割かれているのでした。
その一部を加筆引用します。

--------

なぜヘーゲルのように難しくて、資格や語学みたく人生に直接的に役立たない面倒くさい本を読み解いていかなければならないのかと思う人もいるかもしれません。

しかし『ヘーゲルのような古典こそ現実の出来事を具体的に見ていくうえで役に立つ』のです。

すでに述べましたが『実用的なノウハウは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、長期的には役立ちません。

根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』が求められています。

逆に云えば、実際に役立つところまで落とし込むことができないのならば、ヘーゲルを読む意味がありません。---

---------

ポイントは、

・『実用的なノウハウは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、長期的には役立ちません。根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』が求められているコト。

・『ヘーゲルのような古典こそ現実の出来事を具体的に見ていくうえで役に立つ』

にあります。

若い時にそれを云われても、おそらく頭には響かず、今になると「肚にストンと落ちる」のです。
特に、自分のように、「新価値創造」をミッションとしている身としては尚更です。
上記には、何回か『役に立つ』という言葉が出てきますが、

『価値=役に立つこと』

なのです。

それは、第75夜(価値創造とは何か)に記しています。
・「価値」とは、世の中に役立つこと。
・「創造」とは、未来を先取りすること。
・「価値がない」とは、世の中に役だたないということ

特に、前夜に綴った

・「鉄道の時代(第141夜、第150夜)から「航海の時代(第156夜)」

・「農業⇒工業⇒情業⇒脳業の時代」(第109夜)

の様に、大きく時代が変化する時(=現在)には、それまでの実用的なノウハウでは使える用途が限られるので、その様な断片的な知識をいくら身につけても、役立たないということです。そこで役立つのは「根源的な知」です。

どう使うのかということですが、自分の使い方は、「色即是空 空即是色」(第85夜、第6夜)です。
(「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。
そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です)

空=大元=真心=根源の知

という「源」を豊かにすることで、新しい現実に向き合うことができるようになります。それは「温故知新」です。

『根源的な知を身につけ思考の土台を作り、実際に役に立つところまで落とし込んでいくこと』

皆さんも「古典」に触れるコトをお薦めします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優04.jpg

橋本元司の「価値創造の知・第225夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」③「問題は、能力はないけれどやる気がある人」

2019年4月1日 「オペレーションからイノベーション」へ

4月に入りました。今朝の通勤電車には「新人」が初々しい顔をして乗り込んできます。船出ですね。

そして、元号が変わりましたね。『令和(れいわ)』でした。

万葉集からの編集で、「日本古来の本来の良さを以って、将来につなげよう」という想いをそこから感じました。
ニュースをみながら、「新元号」というのは、国民全体に『心機一転』を促す、誘う大きなパワーを持っているように感じました。

過去のことを棚卸しして、これまでの延長線上にではなく、何かの節目で「切り替える」というのはとても意味のあることです。

さて、とっても残念ながら先週に、前職・パイオニア社が上場廃止になりました。「倒産」もそうなのですが殆どが「人災」です。

本夜は、パイオニア社を事例にあげながら、多くの会社・地域が「心機一転、将来をどう切り拓くか」「どう切り替えるか」ということと絡めて綴ろうと思います。

その中心となる「負」や「行き詰まり」を乗り越えるための原因やヒントが、昨年10月の松岡正剛師匠主宰「未詳倶楽部」の特別ゲストであり「知の怪人」とも呼ばれる「佐藤優」さんの話がありましたのでそれを記します。

佐藤優さんは、日本の外交官でもありました。『知』と連関する「能力とやる気」についてのパートで、4つの分類をされたところから始まりました。

① 能力があり、やる気がある人
② 能力があるけれど、やる気が無い人
③ 能力はないけれど、やる気がある人
④ 能力がなく、やる気が無い人

佐藤さんから、「一番問題のある人は誰だと思いますか?何番でしょうか?」という問いがありました。

皆さんは、どう思われますか?考えてみてください。

その時、自分の中では、前職・パイオニア社のトップを含む役員の顔がすぐに振り分けられました。そして、すぐに分かりました。
多くの人は②「能力があるけれど、やる気が無い人」を選びますがそれは間違いです。 答えは、③「能力はないけれど、やる気がある人」です。

「外交」でこれをやられると取り返しのつかないこと、後始末が大変なコトになりますね。

会社や地域でも同じです。そのような人が権限を持つと、「とてもやっかいな人」になるのです。それが、事業や研究所や会社をも衰退の道に導きます。

問題は、その人たちは、敷かれているレールの上で、もうやることが分かっている過去の「成長」のステージ(鉄道の時代:第141夜、第150夜))では能力を発揮した「オペレーター&マネージャー」なのです。

しかし、成熟から衰退に向かうステージで、「次の柱」や「新しい本流(オルタナティブ・第148夜)」に舵を切る、乗り出す「航海の時代:第156夜」の「価値創造イノベーション&イメジメント」にはまったく不向きなのでした。

そう、それは違う能力なのです。いまは「航海の時代(イノベーション)」なのに、「鉄道の時代(オペレーション)」の能力では太刀打ちできません。

「過去の能力(オペレーション)で以って将来も切り拓けるだろう」と重要部門のリーダーに選出される。そして、その能力でやる気を発揮してしまうことが・・・。

それが失われた15年でした。

振り返ると、「パイオニア」という会社は、節目節目で「とびきりの外部からの知」を取り入れていました。①「とびきりの能力があり、やる気がある人」を迎え入れる。それで成長・成功してきた会社です。松本望創始者もそれを実践する器量の大きい方でした。

さて、行き詰まりを打破する方策について第45夜、第147夜に綴りました。

--------
「行き詰まりの打破や、新たな成長を目指して、企業再生に取り組む切り口は3つあります。
①リストラクチャリング
「構造」の見直しを意味しますが、企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除するものです。
②リエンジニアリング
「機能」の見直しを意味しますが、企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除するものです。
③リオリエンテーション
「進むべき方向」の見直しを意味します。
---------

①②がDeleteに向かうのに対して、③は「我々はどの方向にむかうべきか」
を問うものです。

2000年以降、自分や自分の部署は、③リオリエンテーションの「新しいパイオニア」の準備と実際の提案をしてきましたが、パイオニア社が選択したのは、①リストラクチャリング、②リエンジニアリングでした。そのため、自分は早期退職という卒業に向かいました。

さてさて、上記の体験の中で「イノベーション&イメジメント」を磨く努力と新提案、そして、創造型人財開発・育成を重ねてきたことで、その後の自分の進路や使命に大きな影響を与えました。

『人間万事塞翁が馬』ですね。

・第13夜: 倒産
・第75夜: 価値創造とは何か?
・第172夜: なぜ、倒産?

それは、自分の中の反面教師として、今の仕事の土台になっています。何事も無駄はないのですね。

パイオニア社は、上場廃止にはなりましたが、前夜・前々夜に綴った「時代を先取りした大きな新物語」を構想・実践できれば、『復活』はありえます。
社員の「悲しい顔」を笑顔にしましょう。

誰が、それを「価値創造イノベーション&ナビゲーション」できるかにかかっています。結局「人・構想」です。

さてさて、現在、多くの会社や地域が同じような場面に遭遇しています。その現場にいます。
先ず、大企業が率先しましょう。やはり、影響力が大きいのを実感しています。

そのためにも、「③能力はないけれど、やる気がある人」ではなく、「①能力があり、やる気があり、大きい物語を構想できる人」をリーダーに選ぶコトが必要です。

本日の新元号『令和』を契機として、私たちの将来(会社・地域・日本)を隆々とするために、ご一緒に「リオリエンテーション」に向かいましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優03

橋本元司の「価値創造の知・第224夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」②体系知と大きな物語

2019年3月31日 『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)づくり』

前夜(第223夜)は、「体系知と物語」の輪郭を綴りました。

本夜は前夜に引き続き、「知の操縦法 」(佐藤優著)を引用して、混迷する世界をとらえるために、「物語」と「価値創造」について記そうと思います。

---------

—百科事典を読んで知識を体系的に身に付けることで、「知識の枠組み」を知ることができるのです。

重要なのは、あくまで体系的でなければいけないということです。非科学的だけれど合理的な議論に対しては、体系的からの反論をしなければなりません。

例えば、「自分の子どもが感染症にかかってしまった、これは誰かが呪いをかけているに違いない」というような主張は、それ自体では筋が通っていて合理的ですが、他分野との連関からみるとナンセンスです。

個別の枠内にいると見えないことが、複数の枠-体系知があれば見えてくるのです。

---------

混迷する現代は、縦串の「業界」という世界の枠組みが壊れています。

それは、「情業」「脳業」と「新ライフスタイル」という世間の横串で、新しい枠組みが創られているからです。

それ故に、「単独の枠内」や「個別の枠内」にいると世間がみえないのです。

自分ゴトになりますが、その様なことを30年前に敏感に感じて、業界を超える枠組みや「異業種コラボレーション」に挑戦してきました。

さて、現在はどうでしょうか?

様々な業界や地域が、そして日本自体が「単独の枠内(鎖国)」でのうのうとしていることができなくなりました。「複数の枠-体系知」を持つことがマストなのです。

そして、そこには「複数の枠を超えたシームレスな物語」が必要になってきます。

再び、「知の操縦法 」を加筆引用します。

---------

—通史として、きちんとした物語の歴史を作らないと、最近の書店の歴史書コーナーのように、箸にも棒にも掛からない言説が市場で流通してしまう。

『人間は物語を作る動物なので、大きな物語を作ることをしなくなったら、粗悪な物語が流通するようになってしまいます』

だからこそいま、『知』の土台作りをしていかなければならないのです。—

--------

成熟から衰退期に向かっている会社や地域のご支援に伺う時に、

①「未来を変える」ことに重点を置く
②「現在の枠組み」の革新に重点を置く
③「現在の枠組み」を改善することに重点を置く

の様に、トップのスタンスはだいたい上記の3つに分かれます。

③「現在の枠組み」を改善すること、ではもう間に合わないことがほとんどなのですね。
それでも、①②に向かうことに、TOPの躊躇があります。

ポイントは、『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)』を創るコト。そして、それに向けて規模に合った挑戦を積み重ねて、実績をつくる。

上記をトップと社員が共通認識して、ベクトルを一つにして邁進する。

『粗悪ではない、良質でシームレスな大きな物語(本来と将来)づくり』

には、新しい時代の「体系知」「知の型」が求められます。そして、ここにコンサルタントの出来、不出来があります。

まだまだ多くのコンサルタントが「古い体系知=粗悪な物語」を使っています。それが、コンサルタントのレベルを落としています。

この「良質な物語」から、新価値が創造されます。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
佐藤優02

橋本元司の「価値創造の知・第223夜」:「佐藤優: 知の操縦法 」①

2019年3月30日 体系知とは大きな物語である

第217~222夜に亘り、「イチロー引退会見」と「価値創造」の関係について綴ってきましたが、その内容は心に突き刺さり、読めば読むほど、根源的で哲学的なのでした。

そして、それを読み解く時に思い浮かんだのが、昨年10月に未詳?楽部の特別ゲストであった「佐藤優」さんの混迷する世界をとらえるための『知の使い方』でした。

そこで一冊の著書『知の操縦法』から引用加筆させて貰って、「価値創造」との関係を綴っていこうと思います。

---------

◆体系知とは大きな物語である

ヘーゲルの哲学体系を示した「エンチュロクロペディー」は、円環をなしている「知の体系」という意味で、通常、百科事典と訳します。ある時代のある時点での知を輪切りにし、基盤を示すことが重要だ、とヘーゲルは考えていました。

『ヘーゲルの哲学体系』とは体系知のことですが、別の言い方でいうと、「大きな物語としての哲学や世界観」という考え方です。

ポストモダン以降は、小さな差異が強調されましたが、これを追求していくと、小さな差異からどうやって価値を生み出していけばよいのかという話になり、貨幣に転換されてしまいます。

いま、東大法学部を卒業しても、一昔前みたいに官僚にもならなければ司法試験も受けず、投資銀行に行ったり、デイトレーダーになったりしますが、エリートが自分の能力を「社会において何をなすべきか」ではなく、いかに金銭を稼げるかという方向に発揮するようになったのは、ポストモダンがいきついた必然だと思います。—

--------

20世紀後半のビジネスは、成長から成熟に向かい、決められたレールの上で、「小さな差異」で価値を生み出している時代でした、1990年前後から成熟から衰退に向かい始めました。成熟の延長線上に「未来」はありません。

21世紀の日本では、「人口減少と人工知能」が大きな要素となり、

「オペレーション&マネジメント」<「イノベーション&イメジメント(構想)」

が肝要な時代になりました。

「オペレーション&マネジメント」では、「小さな差異」では太刀打ちできずに、「大きな物語」が求人軸となります。

その「大きな物語」は、受験勉強や今の大学・大学院からは生まれてきません。明治以降の「知の型」が支配していてそこから脱皮できていません。

--------------------
人間は「心」で「つながり」をつくる生き物なので、
人間は、「物語」を介在させないことにはつながり合うことができません。
物語とは、新しい現実を受け入れる形にしていく働きです。(第54夜)
--------------------

新しい現実を受け入れるには、新しい世界と世間に対応した「大きな物語」が必要なのです。もう、その「物語」は明滅しています。

新価値創造研究所も「体系知」(第57夜)と「物語」を明確にして活動しています。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
IMG_4068