2026年8月16日 価値創造の奥義・秘訣は「二つでありながら一つ」
[プロローグ]
第381夜(前夜)に、「顕」と「密」のあいだを跳躍し、往還するための知のOSである「顕密思考 ── AI時代の価値創造に向けた認識工学 ──」をお伝えしました。
「顕」と「密」は「二つでありながら一つ」なのです。
これが、「価値創造」の奥義です。
それでは「二つでありながら一つ」が、これからの学校・地域やビジネスの場でどのように力を発揮いくのかを、私が紹介している複数の事例をご覧いただいて、その共通項を体感されてから、最後に「顕密思考」への理解へとつなげてお伝えします。
根幹:「二つでありながら一つ」
A. ビジネスの場:「共感(LOVE)」と「違い(POWER)」
B. SDGsの場:「SDGs17の目標」と「本業」
C. 経営とは?:「あり方」と「やり方」
D. 空海両界曼荼羅図:「慈悲」と「智慧」
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A. ビジネスの場:「共感(LOVE)」と「違い(POWER)」
(「二つでありながら一つ」)
『ビジネスで最も大切なコト』は、「違いを創るコト」と「共感を生み出すコト」を一つに統合し、継続的かつ高いレベルで結合させることです。
これら2つの要素を切り離して考えるのではなく、両立させて高みを目指すことが価値創造の本質です。

【価値創造の本質】
- 違いを創る(差別化):
→他にはない独自のモノやサービス、独自の視点を提供し、競争力を生み出す。 - 共感を生み出す(本質追求):
→無駄な要素を削ぎ落として核心や本質にたどりつき、人々の心やニーズを強く捉える。 - 継続的な結合:
→一度きりではなく、独自の価値と深い共感を連動させながら回し続ける。
つまり、「違いと共感」の新結合です。上図の赤丸が「価値創造の本丸」になります。
[解説]
さて、『違いと共感』です。
最初に『違い』(第 65 夜~第 78 夜参照)ですが、他と違いがなければ、「低い 提供価値」になります。そうなると、顧客の関心・興味が薄れて対価が減り、次 の価値づくり、投資が出来なくなります。継続の維持が危ぶまれてます。
ただ、「総合研究所や技術研究所」でよく見かけることですが、「違い」ばかりに 目を奪われて、それが世の中に、顧客に、本当に役立つのか、共感するのか を見極めないで突っ走り、結局何も成果が出せなかったという数多くの事例を現場で体験してきました。
「研究開発・技術開発」だけが先行して、研究者や技術開発者が、「この研究・ 技術が何かに役立たないかな?」とつくり始めてからプランナーやマーケター に相談することが多々あります。
その理由は、研究開発の前にテーマを相談すると、「市場にそのようなニーズ はない」という声が上がり、そのテーマ自体が潰されることがあるからです。ポ イントは後述する「顧客の『NEXT 共感』」を捉える想像力の有無にあります。
次に、『共感』(第 2 夜、第 63 夜、第 64 夜参照)です。
共感度が低ければ対 価も下がります。現在の市場の短期的な「共感」にだけフォーカスしていると 「違い」への逸脱ができ辛くなります。
「共感」にもグラデーションがあって、慣れ てくると価値が薄れてきます。他との「共感度」に差がなくなれば、図解の左側 の低い「共感」に向かいます。
顧客の「NEXT 共感」を明確にして顧客を捉える 想像力が必要です。(価値創造イニシアティブ:2.他者を愛する「幸せ創造力」 参照) “ドラッカー”が言うように、「企業の目的は、“顧客価値”をつくること(=顧客価 値創造)」にあります。それを維持・継続できなければ、企業は存続できませ ん。
その“顧客価値”をつくることができる、ただ二つの機能が『違いと共感』です。 図解の様に、この二つを“二つでありながら一つ”の高みに持っていくことがポ イントです。
それではもう少し紐解いていきましょう。
この二つの拠り所を説明します。
企業の中において、
『違い』をつくるのは、「技:イノベーティング」で、
『共感』を生み出すのは、「心: マーケティング」です。
*イノベーションの進行形、広がりとして、「イノベーティン グ」という言葉を使用しています。第 32 夜参照) 企業では、「イノベーティング」は、主に研究開発・技術開発部門が担当し、「マ ーケティング」は主にマーケティング部門が担当します。
マーケティングは『心 (Will&Smile)』を扱い、イノベーティングは『技(Skill&Style):新結合』(第 32 夜)が拠り所になります。
下記「新価値創造イニシアティブ(第 77 夜)」のプロセスの中で、ビジネスと創 生で『違いと共感』がどのように活用されているのかを皆様イメージしてみてく ださい。
1.自分を変える:危機意識・情熱力
2.他者を愛する:幸せ想像力
3.余白をつくる:本質創造力
4.舞台をつくる:仕組構想力
5.関係をつくる:伝える力・伝わる力
6.信頼をつくる:巻き込む力・巻き込まれる力
7.成功をつかむ:すぐやる力・やり抜く力

『違い』は、1~7の全ての項目にあり、『共感』も1~7の全てにあります。その 双方が顧客に「伝える・伝わる」&「巻き込む・巻き込まれる」の『「違いと共感」 の物語(Story)』となります。
この二つを別々にしないで、両立することがビジ ネスで最も大切なコトと納得いただけたでしょうか。
「イノベーティング(イノベーション)部門」「マ ーケティング部門」の双方は、上記に向けて逸脱・新結合することが必要です。
さて、その二つの機能(『違いと共感』)を創り・生み出す心得と方法が、『ト リニティ・イノベーション』(第 21 夜)になります。「心得(Will&Smile)と方法 (Skill&Style)」を是非、ご活用ください。
B. SDGsの場:「SDGs17の目標」と「本業」
(「二つでありながら一つ」)
「価値創造の知」において、「愛」と「力」は価値を生み出して持続させるための両輪です。
「愛(慈悲・真善美)」と「力(智慧)」とは、社会課題の解決(愛=LOVE)と事業や変革を推し進める実行力(力=POWER)を対立させず、統合の知恵によって「二つでありながら一つ」として両立させる実践的プロセスです。
下図は、公立私立を問わず、中学・高校で「SDGs」に取り組んでいる活動です。
(私は、SDGsのファシリテーター、ナビゲーターをしてきました)

SDGsは、私たちが「あり続けるため(サステナブル)」に、17の社会課題(Goals)をどう解決(ディベロップメント)するかを考え、「社会性」と「経済性(利益)」を両立(二つでありながら一つ)する思想であり実践です。図の右上の高い点数を目指したいですよね。
学生はこのような学習を学校の授業で体験してきています。
・学生たちは、○○○の社会課題を解決(LOVE)したいが、POWERがない
・社会人は、POWER(能力)の一部を持っているが、LOVE(利他)に向かわない。
この「愛と力」の二つを「両立させること」が、社会にも会社にも自治体にもベストなのです。
下図が、企業・学校・地域でご覧いただいている「SDGs成長」の図解になります。

【愛と力の本質】
- 愛(慈悲・心・志):
- 力(智慧・技・実行):
- 現実を動かし、課題を解決する推進力やスキル。
- 成果を生み出すための具体的な方法論やシステム。
らせん的プロセスによる統合
- 片方だけでは不十分であり、愛(志)と力(方法)を一体化させる。
- 思考と情動を循環させながら、未だ存在しない価値を自ら編集・創造していく。
■ 参考として、「愛」と「力」のSDGs成長経営事例を3つ紹介しますので、理解・納得に役立ててください。
(詳細は「価値創造の知」第364夜に記していますので、関心のある方たちは是非そちらをご覧ください)
1. 本業(佐藤製作所)× SDGs(女性採用、働き甲斐)



2. 本業(北星鉛筆)× SDGs(つくる責任、つかう責任)

3. 本業(旭鉄工)× SDGs(エネルギー、新産業基盤)


C. 経営とは?:「あり方」と「やり方」
(「二つでありながら一つ」)
経営とは、「経(たて)」という縦糸(あり方・being・理念)と、「営(いとなむ)」という横糸(やり方・doing・行動)を組み合わせ、一枚の布のように価値を織りなす営みです。
両者をしっかり編み込むことで、時代に合わせた持続的な価値創造が可能になります。

縦糸(経)の役割
- あり方(Being): 会社の理念、パーパス、大切にする価値観。
- 不変の軸: 時が経っても変わらない企業の原点や伝統。
- 存在意義: なぜこの会社が存在するのかを示す道しるべ。
横糸(営)の役割
- やり方(Doing): 日々の事業活動、戦略、具体的な行動。
- 変化への対応: 時代や市場のニーズに合わせて柔軟に変えていく部分。
- 実行力: 縦糸の理念を現実のカタチにするための営み。
価値創造のポイント
- 経営が行き詰まる時は、横糸の「やり方」が時代に合わなくなっていることが多いのです。
- 変化に対応するためには、ぶれない縦糸の「あり方」に立ち返り、新しい横糸を編み直すことが重要です。
- 詳しくは、新価値創造研究所・コラム「価値創造の知」(第364夜、第367~369夜)に綴っていますので、是非参考にされてください。
コラム第364夜の「新成長を生み出す3つの知」には、旭山動物園のプロセス事例を上げていますので、さらに理解が進むと思います。



D. 空海両界曼荼羅図:「慈悲」と「智慧」
(二つでありながら一つ)
両界曼荼羅図は、空海が伝えた密教の宇宙観や仏たちを絵にしたものです。
【両界曼荼羅の基本構造】
弘法大師空海の真言密教における「両界曼荼羅」は、
- 胎蔵界曼荼羅
→ 原理・可能性・生成・慈悲・内面世界 - 金剛界曼荼羅
→ 構造・知・実践・智慧・外化された働き
この二つの世界を分けつつ、同時に不可分なものとして捉える宇宙観です。


重要なのは、「真理は一つだが、見る次元・働かせる次元が異なる」 という点です。
つまり「両界曼荼羅の本質」は、同じ世界を異なる次元で表現したもので、胎蔵界と金剛界は上下関係ではありません。(「二つでありながら一つ」です)
これって、私が公表してきた上図の「価値創造らせんプロセス体系」と全く同じなので、出逢った時に驚きの連続でした。
・胎蔵界曼荼羅:「気立て→見立て→仕立て」(=人間の内側から駆動する内的な力)
・金剛界曼荼羅:「切実→逸脱→別様」(=価値が生まれる外的プロセス)

再整理: 両界曼荼羅の二つの世界
- 胎蔵界(たいぞうかい):大日如来の慈悲と理(ことわり)の世界。
→価値創造における「気立て・見立て・仕立て」といった内側から駆動する力を象徴します。 - 金剛界(こんごうかい):金剛石のように硬く鋭い大日如来の智慧の世界。
→価値創造における「切実・逸脱・別様」という外的なプロセスや変革の動きに対応します。
価値創造への応用
- 二項対立の統合:社会性と経済性、暗黙知と形式知など、相反する要素を「二つでありながら一つ」として結びつける智慧とします。


顕密思考の往来:言葉や理論(顕)の背景にある体験や身体性(密)を往来することで、AI時代に人間が主体的な問いや価値を創るための思考OSとして活用しています。


新価値創造研究所では、価値創造の知・思考フレームワークにおいて、この曼荼羅の構造が人間の内発的な力と外的なイノベーションプロセスの統合を示すものとして応用しています。
[エピローグ]
上記A.B.Cの「二つでありながら一つ」をご覧いただきましたが、それは、1200年前に弘法大師空海が表現した「両界曼荼羅図」と同じ構造です。
特筆されるのは、弘法大師空海が日本が誇る「イノベーター(=価値創造者)」であったことです。空海は「目に見えない意味を、構造として可視化し、現実世界で機能させる知のあり方」をビジュアル化し、展開し、実践して広めました。
イノベーションとは「胎蔵界で生まれ、金剛界で実装され、再び胎蔵界を更新する循環」です。この循環が止まると、改善止まりか、空理空論になります。
⇒ 日本の産業界で多いのが、金剛界だけによる「改善・模倣・価格競争」です。その多くは、顕在化しているオペレーションに時間をかけて、胎蔵界の「意味・問い・可能性」を突き詰めていないことが原因です。
⇒「両界往復」が「本質的イノベーション」につながります。
■ ワーク例
それでは、ワークとして使う一例を提示します。
Step 1(胎蔵界:慈悲)
- この事業が「救おうとしている苦」は何か?
- それは言葉になっているか?
Step 2(金剛界:智慧)
- その苦は、「どの構造で解消」できるか?
- 技術・制度・体験の設計は?
Step 3(往復)
- 実装して「ズレた感覚」はどこか?
- 問い自体を更新できているか?


◆ 一言でまとめると
イノベーションとは、
・胎蔵界(意味)を忘れず、
・金剛界(構造)に閉じこもらず、
・その往復を続ける「知の修行」である。
空海の両界曼荼羅を「イノベーションの原型構造」 と確信してお伝えしています。
■ 「両界曼荼羅」の現代展開版が「らせんプロセス体系」!
新価値創造研究所は、「両界曼荼羅」を現代に具現化展開しているのが、価値創造の「らせんプロセス体系」及び、「らせんプロセス体系図」とご縁を感じると共に、確信しています。
是非、この「両界曼荼羅」「らせんプロセス体系」を下記の様に活用されてみてください。
例えば、「生命サステナブル」には、SDGsの17の社会課題があります。「AIデジタル」にもたくさんの課題があります。先ず、身の回りの「小さな課題」から挑戦されてください。
・「らせんプロセス体系」×「生命サステナブル」(第366夜)
・「らせんプロセス体系」×「AIデジタル」(第363夜)
・「らせんプロセス体系」×「日本流コネクタブル」(第362夜)
・「らせんプロセス体系」×「課題:○○○○○」
・「らせんプロセス体系」× Others

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