橋本元司の「価値創造の知・第261夜」:SDGs(持続可能な開発目標)⑯『企業人/大人の意識改革』

2019年9月29日 SDGs・日本企業の現場

グレタさんの地球の温暖化対応怒りの国連スピーチ(第259夜)は、大人への意識改革を促すものでした。
彼女の魂の叫びが、「地球・人類はターニングポイントにある」という一人一人のマインドセットを突きつけました。

さて目を転じて、「日本企業の現場」はどうでしょうか。
実は、現場に行くと、大企業で「利益起点」(第260夜)に軸足を置いていて、SDGsの「課題起点」には届いていないところが多いのです。
SDGsへのアプローチでは、CSR(企業の社会的責任)としての取組みで体裁を整えているのが現状です。
挑戦的な中小企業の方たちの方が情熱と本気ではリードしています。

先週半ばに、SDGs関連のカンファレンスで登壇された大手のCEOの方たちが、自社の取組みを図解で説明されていました。
そこでは、CSRとSDGs17のゴールを結び付けて整理されていたのですが、
「いろいろやっています」という表面的なレベルに感じてしまいました。
一緒に同席した友人にそれを聴いたら、「自分もまったく同じ印象だ」と云っていました。

彼と話して不足を感じたのは、大企業の「本気と社会に対するコミットメント(お約束)」でした。
私たちが大企業に望んでいるのは、2030年に向けた「SDGsの明確な目標&お約束」です。
「大きな宣言」をして欲しいのです。

「構想」が不足しているように感じています。
新価値創造研究所が定義する「構想」は、

・事象の本質を見極めて、理想の姿を描くこと

です。

上記カンファレンスのプレゼでは、本業とのかかわりの中で、「事象の本質」と「理想の姿」が明確に伝わってこなかったのです。
企業の構想と社会へのコミットメントが成長・成功の前提なのです。

先ず、「利益起点」から「本気の課題起点」へ視点・軸足を動かすことです。
課題解決を先取りすれば、利益はあとからついてきます。

社長が変わらなければ、会社は変わりません。社長が変われば、力が結集されます。
社会課題に本気で対応する、挑戦することが求められています。

ここで、

・「企業は、社会を変革するプラットフォーム(舞台)である」

というフレーズがトップの心に響いたら将来の可能性が高まります。

さてそれを受けて次夜は、「SDGs取組みの5ステップ(基本編)」の

・4.「新しい舞台」を構築する

に進もうと思います。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGs意識改革

橋本元司の「価値創造の知・第260夜」:SDGs(持続可能な開発目標)⑮『How SDGs?』

2019年9月28日 SDGsの大きな目標を宣言すること

ちょうど今から二年前に、NHK・クロースアップ現代で「ESG投資」の特集がありました。
少し長くなってしまうのですが、SDGsと深い関係があるので、そのプロローグを引用します。
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—世界各国で広がる環境破壊や、労働者を酷使する人権問題。これらを防ごうと急拡大しているのが「ESG投資」だ。
「環境・社会・ガバナンス」に力を入れる企業への投資が急増する一方で、「十分に配慮していない」と見なされた企業からは資金が引き揚げられ、厳しい対応を迫られるという。
3年後の東京五輪を前に、世界の投資家がいま、日本企業への監視を強化。2500兆円を超えた「ESG投資」の最前線を追う。—

(ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。
投資するために企業の価値を測る材料として、これまではキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報が主に使われてきました。
それに加え、非財務情報であるESG要素を考慮する投資を「ESG投資」といいます)

—世界的なうねりに企業は、どう対応すればいいのか。日本で開かれるESG投資のセミナーには、多くの企業関係者が押し寄せています。
「ここに投資家とあります。彼らがものすごい勢いで、いま働きかけています。企業を見る目っていうのは、単なる売上高、そういうものの規模の経済だけではない。
社会に対して、どのような負の影響を皆さんの会社が、どこで及ぼしているのかというのを見ていかなきゃいけない。」—

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上記のESG投資の拡大や政府・経団連等によるSDGs達成に向けた取組みを推進する機運の高まりがあり、大企業を中心に自社の経営にSDGsを取り込む動きが急になっています。
しかしながら、SDGs達成に向けた中小企業の取り組みは多くないのが現状です。その中小企業の方たちが、SDGsを取り組まないと時代において行かれてしまう危惧を綴ります。

添付スキーム図は、SDGs関係のカンファレンスによく登場される「SMBCグループ」のものを引用しています。
◆ How SDGs?(どのようにSDGsに取り組むのか?)
①お客様のSDGsへの取組みを金融面からサポート
→持続可能な事業に向けた金融支援
②お客様のSDGsへの取組みに伴走
→持続可能な事業実現に向けた伴走

という方針が出されています。

SDGs融資を利用するには、SDGs達成につながる自社(各企業)の取組について経営計画書を作成し、借入期間中には、経営計画の達成に向けて、各種情報提供等のサービス提供を受けられる。また、保証料の一部について東京都から補助が受けられます。

そこでは、
・SDGs経営計画提出
・融資判断、サポート
・評価基準のアップデートとデータ管理
のステップになります。

重要なことは、「SDGs」に取り組まない中小企業は融資が受けられなくなるという認識です。
いま、「SDGs達成」とは、各企業の「成長経営戦略」に直結しているのです。

展開上では、、
・「SDGsの大きな目標を宣言する」
・その将来の目標から現在をみて、そのギャップを埋めていく(=バックキャスト)
ことが求められます。

それは、SDGsの目的である「2030年のあるべき姿に向かっていくこと」につながります。
そして、革新的な取組みを先取りができれば、「企業成長につながる」ということです。

その実現にむけてリーダーは
①イノベーション
②レギュレーション
③キャピタリゼーション
をしっかり把える必要があるのです。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGs銀行

橋本元司の「価値創造の知・第259夜」:SDGs(持続可能な開発目標)⑭『How dare you (よくもそんなことを・・)』

2019年9月27日 「利益起点」から「課題起点」へ

本年5~7月に、自分が関わる「SDGs」関係の会合が頻繁になり、8月2日から「SDGs」のコラムを綴り始めました。
その「SDGs(持続可能な開発目標)」をテーマにした本連載も⑭になりました。
2015年から「SDGs」に着目していたのですが、去年の中頃から潮目が「アクション(実践)」のモードに切り変わってきたことを実感しています。
そんな折に、下記のグレタさんの国連スピーチ(地球の温暖化対応への怒り)がありました。
これで、世界は全面ギアチェンジに入ります。

9月23日、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)はニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席し、地球温暖化に本気で取り組んでいない世界のリーダー達を叱責しました。
連日メディアで取り上げられているので、皆さんその内容はご存じだと思います。それを前提として、SDGsとの関係でその本質を綴ります。
それでは、グレタさんのスピーチの一部を引用します。

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—多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。全ての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。

それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!

30年以上にわたって、科学ははっきりと示してきました。それに目をそむけて、ここにやって来て、自分たちはやるべきことをやっていると、どうして言えるのでしょうか。必要とされている政治や解決策はどこにも見当たりません。—

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このスピーチへの反応の違いは、

『危機意識・当事者意識』

の本気度の違いにあります。それが怒りとなって多くの人々の魂をゆさぶりました。

地球環境の変動(地球温暖化等)で、人類は崖っぷちを歩いていること。
彼女はそれを「私たちは大量絶滅の始まりにいます」と表現しています。

そのリスクを「私たちや私たちの子供の世代に任せっきり」にしていると。
そして、「私たちは、結果とともに生きなければいけないのです」と。

今の大人たちは、大量絶滅から逃げ切れるかもしれないが、彼女たち若者には他人ゴトではありません。

それを本当に自分ゴトにして把えて行動しているのかどうか。
今回のグレタさんの国連スピーチで、SDGs取り組みのギアチェンジのターニングポイントとなることが直観できます。

第253夜に、「SDGs取組みの5ステップ(基本編)」を紹介しました。
改めて記載します。

1.「新しい常識」を深堀する
2.「新しい感動」を想像する
3.「新しい結合」を着想する
4.「新しい舞台」を構築する
5.「新しい価値」を創造する

1.「新しい常識」、2.「新しい感動」の前提条件(土台)は、

・当事者意識/危機意識はありますか?
・本気ですか?
から始まります。

新価値創造研究所は、現状を革新する「価値創造・7つの力」を第60夜にまとめています。
1.自分事力
2.幸せ想像力
3.本質創造力
4.仕組構想力
5.伝える力
6.巻き込む力
7.やり抜く力

その最初は、「1.自分事力(=危機意識・当事者意識・情熱)」です。

「SDGs取り組み」の大元(おおもと)に求められるのは、『自分事力』です。
それがないと、そのあとに続く2~7には届かないことが明らかです。

これまでの日本企業の多くは、「利益起点」でした。
・余裕ができたらやるよ。
・それで利益が出せるの?

「SDGs」も社会的責任(CSR)やコミュニケーションツールの活用という表面的な取り組みが殆どでした。
「SDGs」取り組みに求められるのは、『課題起点』です。

取り組む「課題」を明確にして、それを社会に「発信」「宣言」して果敢に「挑戦」していく。
今回の「気候非常事態宣言」をターニングポイントとして、世界は『アクション(行動)モード』に切り替わりました。
小泉進次郎環境大臣(第257夜)には追い風です。

さて、『アクション(行動)』に切り替わらなくては生き残れない理由を次夜に綴ります。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGsグレタ

橋本元司の「価値創造の知・第258夜」:SDGs(持続可能な開発目標)⑬『3.「新しい結合」を着想する Ⅱ』

2019年9月17日 マザーハウスの山口恵理子社長

前夜(第257夜)を受けて、前々夜(第256夜)の補足として、『3.「新しい結合」を着想する Ⅱ』を綴りたくなってしまいました。

自分が講座や研修で取り上げる先進的でインクトのある幾つかの「事例」をご紹介することで、皆様の理解が進むことが多いので、その一例、特例をご案内します。

それは、(株)マザーハウスの山口恵理子社長です。
最初にお会いしたのは、4年前の文化経済研究会(谷口正和師匠主宰)でした。会社(マザーハウス)としては導入から成長期にしっかり入ったタイミングに思いました。
その後の成長は素晴らしく、現在では途上国5か国に生産拠点、世界に直営店38店舗、13年連続売り上げ増を実現されています。

2015年12月のセミナーのイントロの一部を引用します。
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—途上国に生産部門を設け、販売は先進国で行うというビジネスモデルです。24歳のときに起業しました。会社のミッションは「途上国から世界に通用するブランドをつくる」です。当時、アジアの最貧国だったバングラデシュで思ったことがきっかけです。この理念を持つまでは会社を起業することも、バッグを作ることも私の中にはありませんでした。でも10年続け、自分が心から思い、根底に流れていることが自分を救ってくれたなと思います。
その原点としては、小学校のときにいじめられて学校に行けなかったころから、私は学校や教育に興味を持っていました。大学4年生のときにワシントンの国際機関で、少しだけ援助に携わる機会がありました。そのときにお金が実際に現地にどのくらい届いているのか疑問を持ち、実際に行ってみようと思いました。「アジア 最も貧しい国」と検索し、当時「バングラデシュ」と出たので、バングラデシュの大学院に2年間通いました。やはり日本の大学を卒業して、現地の大学院に行くのはとても勇気のいる決断でした。でも私にとっては現場で何が起きているのか、そして何より何のために働くのか、腑に落ちなくて就職活動もできず、ここで何かを見つけて帰ろうと思っていました。しかしテロやデモ、洪水、非常事態宣言の発令など、旅行で行くのとは違う厳しい現実がありました。悪いことばかりではなく、バングラデシュの人々の生きる力に魅力も感じました。政治が不安定な中、ビジネスの世界はどんなかと思い、現地の三井物産でアルバイトさせてもらいました。
たくさんの工場を回り、私の目に飛び込んできたのが、ジュート(黄麻)という麻でした。ジュートだけはインドよりも生産できることを彼らは誇りにしていました。それまでの私は絶望感から「帰りたい。でも何も見つかっていない」と、ずっと悩みを抱えていました。そんなときに誇れるものがあることがとても新鮮で、すぐにジュートの工場に行きました。—

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24歳で起業したときから掲げてこられた言葉は、
「「途上国から世界に通用するブランドをつくる」でした。
①「途上国」と「世界」
②「途上国から」と「ブランドをつくる」
上記は、それぞれ相反する、二つのものを組み合わせています。

ここで、今年8月に山口代表が上梓された「サードウェイ」から引用します。

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—もともと、対立軸にはさまれているブランドだ。
そのミッションを掲げながらものづくりを必死で続けてきた道のりの中で、「中間地点を探るだけでは不十分だ」と何度も何度も、涙し、苦しんできた。

直面する問題、反発、軋轢、格差、それらを乗り越えて一歩先に進むとき、私にとっての「最適解」は「中間地点」ではなかった。

常にこころがけてきたことは、
「かけ離れたものだからこそ、組み合わせてみよう。離れていた二つが出会ったことをむしろ喜び、形にしてみよう。これまで隔たりがあった溝を埋めて、新しい地をつくろう」
つまり、バランスを取るのではなく、新しい創造をする思考だ。—

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いかがでしょうか。
SDGs取り組み事例としては、格別の内容です。
「SDGsの17のゴール」はその多くが相反する組み合わせです。
そこには、「価値創造」のヒントが満載です。その考え方、取り組みを自分の対象事業に置換されてみてください。
是非、「サードウェイ(第3の道のつくり方)」をご覧いただくことをお奨めします。
さて、前夜(第257夜)では、「SDGs取組み」は環境省だけでは無理で経済産業省、復興省、財務省、文部科学省等々の横串の連携がマストということを綴りました。
これらを横串する「プロデューサー及びその機能」が必要なのです。これは「横をまたいだ結合」です。

わかりやすい例を第80夜(世界と世間)から引用します。
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—「20年前の通産省の廊下の話(出典:田坂広志「これから市場戦略はどう変わるのか」)」が浮かび上がりました。
通産省の廊下の部屋の前の部局の看板には、「鉄鋼課」「繊維課」「産業機械課」「自動車課」「電子機器課」・・・が並びますが、期待されている産業は何だったのでしょうか?
当時のニーズは、「環境産業」「シニア産業」「教育産業」「Eコマース産業」であり、それぞれ、
・快適な環境に住みたい
・豊かな老後を過ごしたい
・子供に楽しく学ばせたい
・手軽にショッピングがしたい
といった生活者の「ニーズ」を中心として形成される「ニーズ型産業」なのでした。

それは、決して「鉄鋼課」「産業機械課」等の『縦串』では対応できません。世の中の将来を洞察して、『横串』でなければ実現できません。
そんな時代に、「横串でできる事業の型(ビジネスモデル)」を実現したくて、23年前に社長に直訴して創ったのが、「ヒット商品緊急開発プロジェクト(第14夜)」でした。

「縦串」と「横串」の構図は、今でも根強くあって、「ビジネス4.0、ビジネス5.0」というのは、横串でなければ対応できません。そこには、一気通貫で横串する構想力・プロデュース能力が求められます。縦串の中にいては世界と世間が見えないので、外部の力を活用する時代です。
上記の「世界」と「世間」で云えば、「世界」は縦串(1~2割)で、「世間」は横串(2~9割)です。世界と世間の間(ま)となる『継ぎ目』をどう編集するかにかかっています。私たち(新価値創造研究所)はそこを仕事にしています。—

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上記の「通産省の廊下」は、いまでも行政や会社のあちらこちらに現存しています。それを「縦串化」「サイロ化」と呼んでいますが、横の連携を阻むのですね。
「SDGs17のゴール」を観てみましょう。それらはすべて「ニーズを中心として形成された『ニーズ型テーマ』」なのです。
『ニーズ型テーマ』であると認識すると、そのニーズに強い情熱があるかが重要になります。従来の縦串とは違うやり方、考え方であり、多くの壁や試練が待ち受けているので、それをやりきる継続的な情熱をもっていなければゴールにたどり着くことができません。

本夜は、「(株)マザーハウス」「通産省の廊下」を取り上げました。
通底するのは、「『新しい結合』を着想する」にあります。あらゆるところで、着想・展開・実現するのには、「新しい結合」が不可欠なのです。
ただ、その奥にはどんな困難にも負けない「情熱」と、幸せになってもらいたい「感動物語」があることを添えておきます。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGs⑬

橋本元司の「価値創造の知・第257夜」:SDGs(持続可能な開発目標)⑫『小泉進次郎 新環境大臣』

2019年9月12日 環境と成長の好循環

昨日(9/11)の内閣改造で、小泉進次郎衆議院議員が新環境大臣に任命されました。
これまで主題のSDGs(持続可能な開発目標)を11夜綴ってきましたが、小泉進次郎氏が環境大臣になったことで「日本の将来の飛躍」の可能性が高くなったように思います。
まず、昨日の会見のエッセンスを二つ(AとB)にまとめたので引用します。

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—安倍総理からは
①地球温暖化対策
②海洋プラスチックゴミ対策の推進
③復興の更なる加速化
という課題の結果を出すことを期待されている。

A.私(小泉進次郎)はSDGS大臣である。
G20合意 海洋プラスチックゴミ対策など、日本がまさにこの分野では世界に売っていける、これこそ日本でしかできない世界に対する貢献ができる分野だと思う。
海外への発信、国内では国民運動にしていかないといけない課題がいっぱいあるので環境省イコール社会変革担当省という想いがある。
また、いまSDGsのバッジをつけているが、環境省こそがSDGS省である、私はSDGS大臣、そういった風に進んで行くように取り組みを進めていきたい。

B.SDGsは、イノベーションなくしては達成はありえない。
大変野心的な環境問題、地球温暖化対策というのは、イノベーションなくしては達成はありえません。
なので、いまさまざま、環境省の中で、イノベーションの後押しをしているので、次々にイノベーションが、生まれてきて日本こそが新たな脱炭素社会、そして環境問題に取り組むことが、経済や雇用を悪影響を及ぼすことではなくて、それこそがビジネスチャンスを生むのだと、
まさに環境と成長の好循環をESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。今日、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まってきています)の投資の更なる日本への投資の呼び込みを、含めてやっていきたいと思う。—

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整理すると、
・SDGs(環境問題等)を解決するのは、経済にとって負(マイナス)なのではなくて、正(プラス)と把える。
・SDGsの達成には、イノベーション(新結合)が必須であり、それこそがビジネスチャンスを生み、経済と雇用の良循環につながる。
・環境と成長の好循環をESGの投資の更なる日本への投資の呼び込みで長期的な成長をはかりたい

という表明です。
これを達成するには、環境省だけでは無理ですね。
経済産業省、復興省、財務省、文部科学省等々の横串の連携がマストです。
前夜(第256夜)に綴った『3.「新しい結合」を着想する』そのものです。

SDGsを梃(てこ)にして、イノベーション・成長・再興をはかる、というシナリオです。
そこには、東日本大震災の復興ともつながり、日本再興への道筋が目に浮かびます。
不足(マイナス)を新結合(イノベーション)で、経済成長と雇用促進の良循環を実現する。

新価値創造研究所は、小泉進次郎 新環境大臣を全面的に応援します。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGs12

橋本元司の「価値創造の知・第256夜」:SDGs(持続可能な開発目標)⑪『3.「新しい結合」を着想する』

2019年9月11日 『新結合ダイアグラム』

いよいよ『3.「新しい結合」を着想する』のステージですが、ここからは「具体化・具現化のモード」になってきます。
そのための「基礎」「心得」を先に綴ります。後々に効いてきます。

それではご案内します。
『SDGs』を1ランク上の視点から観ると
・それは、「3つのエコロジー」(第9夜)という哲学・思想を「17のゴール」にまとめ、具体化しようとしたもの

として把えること。
そのことで、SDGs取組みの全体像(SDGsの本来と将来)が浮かび上がってきます。

その中身は、
「人間は下記3つの世界(エコゾフィー)の中に生きている」という認識の元に、
①地球環境   :物の公害
②人間社会環境 :社会の公害(テロ、離婚等)
③心の環境    :ストレス
これを別々に切り離すのではなく、三位一体で直視して展開すること。
上記の①②③を『生態系』と見なすことです。

上記の「三位一体で直視して展開すること」をそのまま納得していただくことがポイントになります。
その理由として、会社/地域の「SDGs」取組みの数多くをみてきましたが、「SDGsの17のゴール」のどれか一つを単独でやり通すことには限界があることを痛感してきました。
「SDGs17のゴール」それぞれが独立しているのではなく、つながり・関係の中にあるという認識です。

単独としてではなく、
・急がば回れ
なのです。

それは共生(エコロジー)そのものなので、「つながり」の中で次々に「つながり合う」ことで、他にない「新しい価値創造(=新しい感動・化合物)」が生まれます。
「つながり合う生態系」を創るところと創らないところでは、その魅力・価値に大きな差ができます。
観光地でも一箇所だけでなく、3箇所を用意することで魅力的な『物語』が生まれ、『面』のシナジーが生まれます。

点・線から面に展開する。
私自身(橋本)が、前職・パイオニア社で異業種コラボレーションによる「ヒット商品」(第14夜、第78夜)でプロデュースした内容と全く同じ構図です。

サントリーとパイオニアが異業種コラボレーションした実例をあげます。
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—そして、もう一つ重要なのが、“物語”です。
上記、“ピュアモルトスピーカー”の物語は、“樽物語”でした。(第18夜)
「100年の樹齢の水楢をウィスキー樽に使い、まだ木としては50年使えるその材が魅力的な響きを持ったスピーカーに生まれ変わる」という物語に多くの顧客が共感されました。
“モノづくりとモノがたり”の新結合が人々に幸せをもたらします。—

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それらの図解は、第39夜(一人ではできない「命&物語」を創出する)、第40夜(新しい時代の価値観は?)の『新結合ダイアグラム』で明らかにしているので、興味関心のある方は是非ごらんください。

さてさて、
・「1.「新しい常識」を深堀する」で、業界や自分自身のこれまでのやり方、考え方の殻を取り払う
・「2.「新しい感動」を想像する」で、多くの人たちと共有したい感動する物語を想い描いてみる

1.2.では、「知性・心性」が重要な働きをしていることがわかりますね。
「大切なこと」は目に見えないのです。そこには、素直・実直な情熱・当事者意識が必要です。

「感動する物語」がイメージできてくるということは、「将来の構想」「将来の価値」の輪郭が見えてきたということです。
その構想・価値を実現するには、、自分たちに『不足』があることが明らかになってきます。「不足」を埋めるのが、新結合であり、コラボレーションです。
その不足ををチャンスと把えるか、悲観するかで結果が変わるのは自明です。

ここで重要なことは、「従来の会社/地域のやり方・考え方の重心が移る」ことです。

従来から抜け出て、『重心が移る』という認識の有無がその後の展開、結果に大きな影響を与えます。
「将来の確信」がなければ「重心」は移りません。「重心」が移らないということは本気でないこと、覚悟がないことを意味しています。
「相撲」「柔道」「剣道」でいえば、下半身を鍛えないまま上半身だけのテクニックで相手にのぞむようなものです。

そのためにも、次のステップ(3.4.5.)に進むために、上記1.2.を充実することが肝要なのです。

さて、「SDGs」を把えるときに下記二つの軸をイメージすると整理しやすくなります。

・縦軸:革新(ちがい、現状を超える)
・横軸:結合(つなげる、横串を通す)

1.「新しい常識」、2.「新しい感動」は、『縦軸:革新(現状を超える、突破する)』に包摂する「違い」です。
その「将来の構想」を実現には、前述しましたが単独ではできません。

上記で触れた様に、
①SDGsには、「17のゴール」がありますが、それぞれが独立しているのではなく、密接なつながり・関係があること
②実現・展開するためには、様々な場面で、『コラボレーション・アライアンス』が必要なこと

構想から感動物語を創り、重心を移し、新しい結合から実行に移す。

・感性→心性→知性→体性

という流れです。

そこに、会社/地域の「新しい価値&将来」が生まれてきます。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGs⑪

橋本元司の「価値創造の知・第255夜」:SDGs(持続可能な開発目標)⑩『2.「新しい感動」を想像する』

2019年9月4日 「感動する物語」

前夜(第254夜)は、SDGsに取り組みステップの第1『「新しい常識」を深堀する』を綴りました。
本夜は、第2のステップ『「新しい感動」を想像する』です。

さて、前夜『1.「新しい常識」を深堀する』の中で、「未常識と非常識」(第29夜)をお伝えしました。
自分が「未常識」という言葉を初めて意識したのは、前職・パイオニア社時代の1992年の経営会議の時です。もう27年も前ですね。

「未常識と非常識」には、大きな違いがあります。自分の実体験を第29夜に綴りましたが、人々の喜び、共感が想像されているかいないかがポイントです。
数年前、テレビのCMによく流れていたのが、DNPさんの「未来のあたりまえをつくる」(2015年8月)がありました。これが「未常識」の事例です。
たいへん参考になるので、一部を引用します。

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~社会課題の解決につながる新しい価値の創出に向けて~

DNPはいま、「未来のあたりまえを作る。」ことを目指しています。
「未来のあたりまえ」とは、企業や生活者、社会の課題を解決する製品やサービスを開発して、
それらが私たち一人ひとりの身近に、あたりまえに存在するようにしていくこと――。
そしてその実現に向けては、どのような「未来」になるのかではなく、
どのような「未来」にしたいのかというビジョンを持ち、そのために解決すべき課題を明らかにし、
DNPが主体となって多くのパートナーとともに挑戦し続けていく必要があります。
例えば、高度情報化社会、超高齢社会へとすでに変化しているなかで、持続可能な社会、
多様性を認め合う社会の実現が求められています。望まれる社会に生きる人々に寄り添うことで、
“大切な情報を守りながらコミュニケーションを深めたい”、“安心できる食生活を続けていきたい”、
“環境に対する負荷を減らしたい”、“教育の充実と知恵の継承によって次世代を育てていきたい”、
“医療の進歩と普及のなかで健康な暮らしを続けたい”、“安全な生活空間で心地よく暮らしていきたい”、
そんな「あたりまえ」を望む声が聞こえてきます。
私たちDNPは、自分たちの、そしてパートナーの強みを組み合わせて、
そのような要望に先んじて、効果的な解決策を示していきたいと考えています。—

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そして、DNPさんは「4つの成長領域」を具体的に設定されていました。
①「知とコミュニケーション」
②「食とヘルスケア」
③「環境とエネルギー」
④「暮らしとモビリティ」

さあ、ここからが本題です。
それは、「未来のあたりまえ(=未常識・新常識)」には「新しい物語(=新しい感動)」が必要だということです。

その体験を綴ります。
自分が39歳(25年前)の時に、次期社長に直訴して、「ヒット商品緊急開発プロジェクト」を任されました。
経営会議では、従来オーディオの行き詰まりを打開する「新しい切り口(=新しい常識)」と「新しい物語(=新しい感動)」を提案しました。

「新しい物語(=新しい感動)」がないと、「新しい切り口(=新しい常識)」が納得されないのですね。

第57夜(『本来・将来・縁来』)にも記していますが、
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人間は「心」で「つながり」をつくる生き物なので、
人間は、「物語」を介在させないことにはつながり合うことができません。
物語とは、新しい現実を受け入れる形にしていく働きです。(第54夜)
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人に、新しい現実を受け入れていただくためには「物語」が必要です。つまらない「物語」では理解・納得してもらえませんね。

どうしても「感動する物語」が肝要なのです。

でも無理やり「感動する話」をでっち上げる必要はありません。
もう、自分の中に想像する「感動」を取り出し、磨きあげればいいのです。
(自分の中に感動がなければ先に進めませんね)
そのような意味で「感動」する感性と「絶対に実現できる」という心性(信念)が絶対に必要です。

「感動する」ということは「自分の心に響く」ことです。
「感動」を伝えるということは、「心が響きあう」ということです。

自分にとって、とってもラッキーだったことは、前職・パイオニア社の企業理念が

・「より多くの人と感動を」

だったことです。それは創業の精神を表しています。
全社の新ビジョン策定委員にもなり、『感動』の求心軸にして、「パイオニアの本来と将来」を深く高く広く洞察しました。

そう、「感動とは何か?」
ということを脳性・知性・体性から考え、実践してきました。
『感動』を「手段」としてではなく、「目的」「価値」「意味」として把えることがポイントです。

さて、実際の「ヒット商品緊急開発プロジェクト」ではどうだったのでしょう。
「新しい切り口(=新しい常識)」と「新しい物語(=新しい感動)」を提示したのですが、これまでの常識に固まっている役員の人たちの反応は鈍いものでした。

料理で言えば、メニューで見る「絵・画像」(バーチャル)では全く判断できなくて、口の前まで試作品という料理(リアル)を持っていって、やっと反応するという状況でした。

そうなんです。「新しい切り口(=新しい常識)」と「新しい物語(=新しい感動)」の大元がなければ始まらないのですが、それだけでは前に進めないことが多いことがフツウです。
それは、前職・パイオニア社に限ったことではありません。多くの業種・業態(中小企業・大企業)と地域をご支援してきましたがどこも一緒なのです。

さてさて、SDGsには、「17のゴールと169のターゲット」があります。
是非、前夜・本夜の「新しい切り口(=新しい常識)」と「新しい物語(=新しい感動)」という視点で把えてみてください。

是非、多くの方たちがチャレンジして開眼されることを楽しみにしています。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGs⑩

橋本元司の「価値創造の知・第254夜」:SDGs(持続可能な開発目標)⑨『1.「新しい常識」を深堀する』

2019年9月3日 エゴロジー(経済) vs エコロジー(共生)

職業柄あちらこちらの地域や会社を巡りますが、現場を自分の目で見て「他地域/他社にはない『豊かな価値』が存在しているコト」をお伝えすると驚いた顔をされることが多いのですね。
その環境の中にずっといると「それが当たり前のものと脳が認識していて、価値になるとは思わない」という認識のズレがあります。
何もないところから「里山の葉っぱや花を収穫し、料理の“つま”として出荷する『葉っぱビジネス』」で脚光を浴びた徳島市上勝町「いろどり」は、町に新しい産業を築き、高齢者に生きがいを取り戻されました。

松岡正剛師匠主宰の未詳倶楽部でお会いしたエバレットブラウン氏は、「現代のフェロノサ」と言われていますが、そこで披露されたコンテンツと共にお話しされた「本来の日本の豊かさ」の深い洞察と見識には驚嘆しました。
そう、私たちは目の前のことに追われ、その風景を当たり前のものとして「脳」が認識していて、「本当に大切なこと」「価値のあるもの」に気が付かないのです。

2003年ベストセラー『バカの壁』(養老 孟司著)を読まれましたでしょうか?
私たち人間は自分にとって興味のある情報しか見ようとせず、かつニュースなどの情報を鵜呑みにして「わかったつもり」になっている人が多いと養老氏は指摘します。
『前提となる常識』についてスタンスが異なることに気づかず、「わかっている」と思い込んでいるのだと喝破します。
自分を含めて、この「わかっている」という思い込みには注意が必要なのです。

私たちは「当たり前と思い込んでいること」「前提となる常識」について“疑い”を持つことが必要です。
「地球温暖化」に対するアメリカ・トランプ大統領の「パリ協定離脱」、いま話題になっている「プラスチックごみ」等、様々な場面で

エゴロジー(経済) vs エコロジー(共生)

が対立しているように見えます。

私たちは、『経済』が発展しないとブーメランのようにわが身に降りかかってくると思うと身構えてしまうのです。
これまで安くて利用しやすく重宝されていた「プラスチック」は「マイナスチック」になっているのです。

SDGsと私たちの付き合い方は、

「エコノミーとエコロジー」のWinWinの視点が長続きする秘訣です。

それを実現するためには、
A.3つのエコロジー(思想・哲学)
B.価値のイノベーション(技術・実践)
C.できない理由を探さない(大義・信念)
が必要になります。

A.「3つのエコロジー」(第9夜、第252夜)
「人間は下記3つの世界(エコゾフィー)の中に生きている。
①地球環境   :物の公害
②人間社会環境 :社会の公害(テロ、離婚等)
③心の環境    :ストレス
これを別々に切り離すのではなく、三位一体で直視して展開すること」

B.「価値のイノベーション」(第32夜、第111夜)
ノベーションとは、技術の分野に留まらない「一見、関係なさそうな事柄を結びつける思考」がその本質にあります。
それは、『「モノやコト」が新しく結びつき、それが新しい価値として社会的に受け入れられて、経済が発展した状態のコト』と定義されます。
SDGsで求められるのは、「モノ・コト・ヒト三位一体づくり」を分母にした『新結合(neue Kombination)による革新』です。

C.「できない理由を探さない」(第55夜)
何か「これは」と思うものをやろうとするとき、人は二つの壁にぶちあたる。それは、自分の能力的な壁と環境の壁である。
できない理由を押さえて、あえてやってみれば何とかなるということを信じられるかどうかは、その人の覚悟次第であるが、この覚悟によって世に云う「運命」も変え得るということを覚えておいてほしい。

上記の3つを「脳と心と身体」にお伝えすると目を輝かせる方たちがいます。
「どうしていいのかわからない」と諦めていた視線が、挑戦する視座に変貌してきます。

そこで、『1.「新しい常識」を深堀する』モードにスタンバイとなります。

さてさて、第29夜に「未常識と非常識」を綴りました。
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「常識」とは分析不可能なものであり、また明治になってできた言葉です。小林秀雄によれば、徳川時代には「常見」といったそうです。[反対語は断見(だんけん)]
常見(コモン・センス)の「センス」は「識」よりも「見」に近い。私達は確かに「常見」の世界に生きていて、「常見」で世の中、世界を見ている。
ただ、「見」は必ずしも「識」ではない。視点を違えて別の見方をすれば、「常見」とは違う面が見える。このさまざまな「見」を総合して判断を下せば、そこにははじめて「真の常識」が成り立つであろう。
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「視点の変え方」については、この「価値創造の知」シリーズのあちらこちらで多くを綴ってきました。
第29夜の事例を二つほど記します。
1. 量の変化が質を変える
→・「量」が、一定の水準を超えると、「質」が、劇的に変化する(第10夜、第11夜、複雑系)
2.「二者択一以外」の道
・「矛盾」とは、発展の原動力“矛盾の止揚”である(第15夜、第17夜、第18夜)

そこには、「新しい常識」へのエッセンスがあります。
興味関心のある方は、是非ご覧ください。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
SDGs⑨