橋本元司の「価値創造の知・第235夜」:松下幸之助のことば「素直な心」⑦

2019年7月5日 「真善美」

前夜(第235夜)では、「経営理念を明確に持つ」を綴りましたが、そこに必要なスキルは
「WHY:深い何故」
でした。

 それは、禅(ZEN)や瞑想の世界に通じています。
自分は35歳の時に、ビートルズにも影響を与えた「マハリシ・ヨッギの超越瞑想」の門をご縁によりたたきました。(第6夜)
そこに入って驚いたのは、大手の企業経営者が多いことでした。彼らは、「心を空にする」ことで経営の方向性や生き方を見出しているようでした。(空即是色)

そう、そこでは雑念をなくす、私心をなくすことを体得して、大事なコトは何か?そして、大事なものにつながることを体験してきました。
その体性、知性、心性を澄まし、磨いたことが自分の将来に大きな影響を与えました。

さて、上記の「深い何故(WHY)」は、その術(スベ)がまるまる一緒なのです。
そして、それは「素直な心」へとつながってきます。

それでは、ここで松下幸之助のことば「素直な心」を引用します。

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『素直な心』

素直な心とはどういう心であるのかといいますと、それな単に人に逆らわず従順であるということだけではありません。
むしろ本当に意味の素直さというものは、力強く、積極的な内容を持つものだと思います。

つまり、素直な心とは、私心なくくもりのない心というか、一つのことにとらわれずに、物事をあるがままに見ようとする心といえるでしょう。
そういう心からは、物事の実相をつかむ力も生まれてくるのではないかと思うのです。

だから素直な心というものは、真理をつかむ働きのある心だと思います。物事の真実を見きわめて、それに適応していく心だと思うのです。

出典「素直な心になるために」
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「素直な心」とは、
・一つのことにとらわれずに、物事をあるがままに見ようとする心
・真理をつかむ働きのある心
・物事の真実を見きわめて、それに適応していく心

是非、多くの方達に体得して欲しいと思っています。経営者には必須です。

自分は仕事上、上記を体得している経営者や同朋との会話や議論がありますが、その時には疲れがありません。迅速に結論が出てきます。

さてさて、「価値創造の知」の3本柱の一つである『深い知』(第85~86夜)は上記の「大切なモノゴト」を掴み取る方法です。
それは、執着や先入観といったものを取り払う「問い」の立て方が重要になります。(第85夜)

そのイメージをお伝えすると、ペットボトルのポカリスエットがナチュラルウォーターに見えるようになることです。
執着、先入観という濁りを、「無(ム):=遠ざけるコト(第177夜)」にすることで、どんどん透明にしていくことです。
その奥底に、真実を含む「真善美」が必ず観えてきます。
それが前夜の「経営理念」に直結します。

それに、松下幸之助さんの云う「素直な心」が重要な働きをします。
そこには、「本気」と「覚悟」が必要です。

それに連なる「価値創造の深い知」はイノベーションの元になる「新しい目的(第28夜)」「新しい意味(第130夜)」をも生み出す優れものです。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ
松下幸之助ことば⑦

橋本元司の「価値創造の知・第234夜」:松下幸之助のことば「経営理念を明確に持つ」⑥

2019年7月4日 「ミッション→ビジョン→イノベーション」

「栄枯盛衰」とは、人や国家、企業などが盛んになったり、衰えたりすることを意味する言葉です。
栄えたり衰えたりを繰り返す人の世のはかなさをいう時によく使われます。

 前夜にも綴りましたが、先週、前職・パイオニア社が950人のリストラを行いました。
1993年と2005年の二回、自分がパイオニア社の大きな危機を感じて、経営会議で提言を行いました。
それは従来の延長上のやり方、在り方では危ない、持たないということ。そのための方向転換をまとめたものでした。

栄枯盛衰の真っ只中でそのような思考や革新実践をしたことが、いまの自分の貴重な土台になっています。
まさに、「人間万事塞翁が馬(「何かが起こった時、一見幸福でも後の災いに、一見災いでも後の幸福になることがある。人間の幸不幸は解らないものである)」ですね。

現在、「行き詰まり」を感じられている会社は多くあります。
ご支援先では、
『これまでの延長線上には未来がない』
ということを共通認識するところが出発点になります。

その時に重要なことは、
・HOW:「どうやったらいいのか?」
という手段からいったん離れていただくことです。

・WHY:「深いなぜ?」
という思考から独自の「意味(新しい目的)」を見つけることです。
そこに前夜(第233夜)に綴った「再継続のための新しいコア」があります。

それが凝縮されたのが行き詰まりを超える「新しい経営理念」です。
本夜は、その「経営理念」について松下幸之助さんの言葉を引用します。

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『経営理念を明確に持つ』

創業者の求められる資質なり条件というものは、統率力とか決断力、先見性や実行力、さらには責任感など、いろいろあげられましょうが、なかでもきわめて重要なのが、しっかりとした経営理念を持つことだと思います。

「自分の会社は何のために存在しているのか」
そして、
「この会社をどういう方向に進め、どのような姿にしていくのか」
というような企業の基本的在り方についての考え、それが私のいう経営理念ですが、そういうものを明確に持つことが非常に大事で、そうしてこそ初めて、いまあげたようなさまざまな要件も、生きてくるのではないかと思うのです。

出典「松下幸之助・経営の真髄」
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上記を編集すると、
ミッション:「自分の会社は何のために存在しているのか」
ビジョン: 「この会社をどういう方向に進め、どのような姿にしていくのか」

ここには深い「なぜ」と「構想力」が求められます。
ここを真剣に考えて実行にうつす企業とそうでない企業には大きな差が着きます。
それは、「人」についても同様です。

上記を航海に例えれば、
ミッション=船の錨
ビジョン=北極星
となります。
そして、その後に上記に基づいた「イノベーション(革新)」が続きます。

つまり、「ミッション→ビジョン→イノベーション」です。
それがないまま、「どうやって?」に入ってしまうことで方向の定まらない表層の内容になってしまうのです。

さて、ミッション・ビジョンの「深いなぜ」を見つけるには秘訣・コツ(要領、ポイント、要点)があります。
それをしっかり体得することが「ワンピース(ひとつなぎの大秘宝)」につながります。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

松下幸之助ことば⑥

橋本元司の「価値創造の知・第233夜」:松下幸之助のことば「物をつくる前に人をつくる」⑤

2019年7月3日 『新しいコアをリボーンする』

中小企業をご支援するときには、「次の一手」を検討する前段において、関係者全員でそれを実行に移すための「思考の土台、構想」を共有することを大切にしています。
急がば回れで、その認識があるか否かでその後の取り組みや成長が大きく変わることを経験しています。
そのようなステージにレベルが上がったときは、全社員が燃える集団に変わってきているのですが、経営者の方達がそこで心から気づくことを「松下幸之助のことば」からお伝えします。

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『物をつくる前に人をつくる』

私は、ずっと以前でしたが、当時の年若き社員に、得意先から
「松下電器は何をつくるところか」
と尋ねられたならば、
「松下電器は人をつくるところでございます。あわせて電気製品をつくっております」と、
こういうことを申せと言ったことがあります。

その当時、私は事業は人にあり、人をまず養成しなければならない、人間として成長しない人を持つ事業は成功する物ではない、ということを感じており、ついそういう言葉が出たわけですが、そういう空気は当時の社員に浸透し、それが技術、資力、信用の貧弱さにもかかわらず、どこよりも会社を力強く進展させる大きな原動力となったと思うのです。
出典「松下幸之助一日一話」
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このようなトップをいただく社員の方達は幸せ者ですね。
社員を歯車の一部品として扱われたら、成長の芽が摘まれてしまいます。

それは、「子どもの成長の芽を摘む親、伸ばす親」と同じ構図です。
・すべての子どもには大きな可能性があり、伸びる力を持っている、秘めている
・そのことを信じて、適切に接することで成長の芽を引き出していく
・そして、日々発芽のチャンスを用意・卒意する

それが前提です。そのようなマインドの有無で将来が変わってきます。
社員も全く一緒なのです。

先週、前職・パイオニア社のリストラ(950人)が発表されました。多くの後輩からメールが届きました。
才能があるのに、持っている能力の三分の一、五分の一、あるいはそれ以下の能力しか発揮できない状況が続いていました。多くの仲間が卒業しました。

ビジネスの成長の最大の軸足は、「継続力」です。
その本質は『継続とはコア(核)をキープする』ということであります。
そのコアがキープできないことで、右肩下がりに陥り、リストラにつながります。

必要なのは、『新しいコアをリボーンする』こと。
ここを創り上げることで、社会への「新しい価値、使命、貢献の道筋」が観えてきます。
その舞台をつくり、社員をオンステージにあげることが経営者に与えられた役割です。

そのことで、人は能力をフル活用して輝きを取り戻します。

特に、「舞台をつくる人」への人づくり、活躍のステージづくりが前もって重要です。
それがあれば、多くの社員は「舞台に上り、能力を発揮」するのです。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

松下幸之助⑤