2024年11月12日 「間(MA」をしる
イノベーションとは、「既存の組み合わせ」によってできる新しい全体(魅力・価値)です。(第308~310夜)
イノベーションを挑戦することによって、企業人、行政人や学生にとって最も有益なことは、
「既存の組み合わせで、自分オリジナルの思考や考えを持つことができること、そして、その成果に自信を持てること」
にあります。ここ重要です。
(アントレプレナーシップ養成やスタートアップ講座でも必ずお伝えしています)
さて、日本人は、既存の二つのもの(第310夜:半分と半分)を両方活かすという特性、センスがあります。
それが、「間(MA」です。
「間(MA」は、落語、映画、会話、勝負事(剣道、野球、相撲等)、茶道、書道、華道、建築(桂離宮)、等々に深く広く関わっています。
目的を「イノベーション」とした時に、その実現手段(方法)がこの「間(MA」です。
これから、「間(MA」の奥にある方法を取り出し、「新しい関係性を発見する」ための入り口から綴っていきます。
改めて「間(MA」とは何でしょうか?
普段の言葉の中で、いっぱい使われていますね。
間際
間違い
間合い
間抜け
間延び
床の間
間かいい
間にまに
間仕切り
間が持てない
間を合わせる
間を置く
間を欠く
あっという間
時間
空間
人間(関係)
等々
私たちは、人生・世間(せけん)でたくさんの「間(MA)」に遭遇します。
前夜(第310夜)の「一対、新しい全体」でできる『さまざまな場』が『間(MA)』です。
ここで、松岡正剛師匠の講義を引用します。
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「間」は日本独特の観念です。ただ、古代初期の日本では
「ま」には「間」ではなく、「真」の文字が充てられていました。
真理・真言・真剣・真相・・・
その「真」のコンセプトは「二」を意味していて、それも
一の次の序数としての二ではなく、一と一が両側から寄ってきて
つくりあげる合一としての「二」を象徴していたそうです。
「真」を成立させるもともとの「一」は「片」と呼ばれていて
この片が別の片と組み合わさって「真」になろうとする。
「二」である「真」はその内側に2つの「片」を含んでいるのです。
それなら片方と片方を取り出してみたらどうなるか。
その取り出した片方と片方を暫定的に置いておいた状態、
それこそが「間」なのです。・・・
・・・日本人にとって、「間」というのは、本当は
「あいだ」という意味じゃないんですね。、
AとBがあって、ふつうはこの二つの間が
「間」というふうに考えられているんだけれども、
実際は、AとBを取り巻く空間が「間」なわけです。・・・
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参考に、松岡正剛著「間(MA)の本」をアップします。ww

それでは、日本の「間(MA)」を形作った『一対』の例を見ていきましょう。
モノとコト
神と仏(神仏習合)
天皇と将軍
公家と武家
アハレとアッパレ
冥と顕
浄土と穢土
善と悪
ウツとウツロ
空(クウ)と色(シキ)
男と女
能と狂言
てり(照り)とむくり(起り)
平仮名と片仮名
記号(コード)と様式(モード)
等々
本来の日本の方法は、一対(二つ)のものを両方活かす(デュアルスタンダード)ことだったので、日本人と「間(MA)」とのつきあい、相性は抜群なのです。
どちらかを選択するのではなく、両方を活かすことを『2項同体』といいます。この把え方が肝要です。
松岡正剛師匠は、いろいろな現場(未詳俱楽部)や視座によって、「間(MA」の奥にある秘密を紐解いて提示してくれましたが、
その一つとして、「バロック(二つの焦点=楕円)で見る」、「デュアルに見る」という方法が私に深く響きました。
真円は「ルネッサンス」、楕円は「バロック」。
二つの焦点があることで、動的になりますね。(バロック時代です)
それでは、私(橋本)のバロック(二つの焦点)への気づきとプロジェクトの具体的展開をお伝えします。
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1989年をピークとして、ホームオーディオ業界は衰退の道を辿り始めました。
1993年、「どうしたらオーディオ事業を活性化できるか」という委員となって熟慮していたところ、
「フィギアスケート大会」の夜のTV放送を見て、閃きが起こりました。
そこでは、フィギアスケートの「ルール(得点)の改正」を説明がありました。、
「以前は、テクニカルポイント(技術点)が良ければ、金メダルをとれたのですが、今は、アーティスティックポイント(芸術点)との合算になり、その両方がよくなければ金メダルがとれない」旨の過去の映像を絡めながらの解説でした。
その時に、そのルール変更を「オーディオ事業」に当てはめてみました。
「オーディオ事業」も、テクニカルポイント(ハイファイ:忠実再生)で成長してきたのですが、既にコモディティ化(商品同士の価値に差がなくなる状態)して、賃金の安い東南アジアに生産移転にシフトしていました。
ここで、「フィギアスケート」の様に、「アーティスティックポイント(半分)」を合算する商品化をするとどうなるのか、魅力のある新しい全体(事業)ができないかという仮説を検討しました。

1994年、新しい2軸から新しい3象限を想定して、経営会議に提案しました。(将来ホームオーディオの3つの進化形も提示しました)

新社長のゴーサインが出ましたが、複数の役員から大反対の声が上がりました。
その方たちは、新しい半分(アーティスティックポイント)は、とても成功するとは思えなかったのです。
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結果的に、100社位と異業種コラボレーション[第1弾は、サントリー(半分)とパイオニア(半分)]して、メディアにも大きく取り上げられて、逆境の中、連続のヒット商品にすることができました。

さてさて、「経営における現在の看過できない変化、課題は何でしょうか?」
経営者の方々に、セミナーやご支援先で質問すると、その項目がいっぱいでてきます。
そこから、『一対』を見つける心得と方法をお話します。
ただ、「新しい全体(価値)」を創るには、「一対」を見つけただけではうまくいきません。
そこには、「『2+1(ツープラスワン)』という情報編集力」が必要になってきます。
それは次夜(第312夜)に綴ります。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ