橋本元司の「価値創造の知」第322夜:「なんとかしなければならない!」

2024年11月30日 「強い想い・情熱 (本気)」と「新しい視点・視座 (本質)」

 価値創造の知・第308夜からここまで、『価値創造・イノベーション』の基本構造である「2+1」、「価値創造DG」を図解と事例をお伝えしてきました。
うすうす感じられてきたのではないかと推察しますが、これらの図解を「ものにする」には、テクニックだけでは超えることが困難です。

 ほんとうに大事なのは、

『心のフェーズ』、『ものの見方のフェーズ』を変えることにあります。

  大元にあるのは、

 『なんとかしたい!、なんとかしなければならない!』

 という強い『切実・想い・意志』
を持っていることです。

 つまり、『本気』です。

・アップル社(第321夜):スティーブジョブズ
・旭山動物園(第313夜):坂東元
・佐藤製作所(第314夜):佐藤修哉
・パイオニア社(第318夜):橋本元司

 等の実例で、それをお伝えしてきました。
セミナー、研修、企業ご支援では、更に多業種業態の実例をご覧いただいています。 

・「経営とは変化に対応するコトである」
・それを実現するための強い『切実・意志・覚悟』という『本気・危機意識』があるコトです。

 多くの「企業創生」「地域創生」のご支援をしてきましたが、やはり、壁を乗り超えて「成長・成功」するところは、『本気』のリーダーと燃える集団が立ち上がっていることです。

 逆に、
・今の延長で、まだ何とかなるかもしれない
・何か、新しい道がみつかるかもしれない
 
 といような危機意識の薄いリーダーの「~かもしれない」レベルでのご支援は、乗り越えるいくつかの障壁が必ず出てくるので、「改善レベルの成果」はできても、「改革:イノベーション」には進まないのが実情です。

 数か月、「会社創生プロジェクト」に参加してきたメンバー(社員)は、検討して創り上げた『構想』を「実現したい、やりたい、変わりたい」と目を輝かせているに、やはり変わりたくない、変わることができないトップが「GO」を出さない場面に出くわすことがあります。全メンバーの残念な落胆した顔がいまでも思い起こされます。

 その会社のプロジェクトキックオフで、最初に、経営者と全員に確認したことは、
・「従来の延長線上に未来はないコト」
・「経営とは変化に対応するコト」
 でした。

 前述のように、リーダーの強い「本気・覚悟」「モチベーション(何かをする際の動機づけや目的意識)」のないところにイノベーションは生まれない痛い経験をしてきました。
ただし、「3つの知(本質)」「価値創造DG」の策定途中から、「~かもしれない」から、「やり遂げたい、成し遂げたい」に変わるリーダーの方が多くおられることも申し添えたいと思います。

 ほんとうに大事なコトは、

・『心のフェーズ』 ⇒【本気】
・『ものの見方のフェーズ(視点・視座)』 ⇒【本質:3つの知】
 を変えることにあります。

 上記、本気モードの上で、本質的な
・「新しいものの見方」
・「新しい視点・視座」
 のスキルを持つことが重要です。

A.【切実】⇒【逸脱】⇒【別様】
B.【本気】⇒【本質】⇒【本流】

 【切実】とは、【本気】の元であり、
 【逸脱】から、【本質】を炙り出して、
 【別様】から、【次の本流】が生まれてきます。

 イノベーション/価値創造は、「心のフェーズ」と「ものの見方のフェーズ」を変えることが肝要です。

 参考に、「君たちはどう生きるか」を引用します。
冒頭は、ものの見方をテーマに「コペルニクスの地動説」から始まります。
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・・・君は、コペルニクスの地動説を知っているね。コペルニクスがそれを唱えるまで、昔の人はみんな、太陽や星が地球のまわりをまわっていると、目でみたままに信じていた。
これは、一つは、キリスト教の教会の教えで、地球が宇宙の中心だと信じていたせいでもある。しかしもう一歩突きいって考えると、
「人間というものが、いつでも自分を中心として、ものを見たり考えたりするという性質を持っている」ためなんだ。
・・・
しかし、君も知っているように、この説が唱えはじめられた当時は、どうして、どうしてたいへんな騒ぎだった・・・
今日のように、小学生さえ知っているほど、一般にこの学説が信奉されるまでには、何百年という年月がかかったんだ。
・・・
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「いつでも自分を中心として、ものを見たり考えたりするという性質」として思い出されるのは、
前職(パイオニア社)に勤めていたときに、ある白物家電企業の企画マンと話したことです。

「パイオニアさんが、居間にセパレートオーディオを置いているように、居間に洗濯機をおきたいのです」と。
まるで、洗濯機が宇宙の中心だと信じているようでした。その気持ち、よく判ります。その熱意の目が忘れられません。

そう、私たちは目の前にあるものを「天動説」としてとらえやすいのです。
しかし、会社/地域の魅力が右肩下がりのステージでは、「天動説」から「地動説への視線・視座の転換」が必要なのです。

それは、今の眼前の現実が「欠けたモデル」「途中/中途のモデル」だと思うことです。
第310夜で、それを綴りました。