橋本元司の「価値創造の知」第327夜:中川政七商店「日本の伝統工芸を元気にする!」

2024年12月6日 「どうありたいかを徹底的に追求し、強いビジョンをみつけ、熱を持って語る」

2011年11月の第56回文化経済研究会(谷口正和師匠主宰)に中川淳氏(株式会社中川政七商店 十三代代表取締役社長)が登壇されました。
テーマは、「経営をデザインする、ブランディング」

私の家族の女性陣が立ち寄る「好きなお店」です。

 株式会社中川政七商店)は、享保元年(1716年)に現在の奈良県で創業されました。
生活雑貨工芸品の製造小売業。2009年から工芸メーカーへのコンサルティング業も行っています。
「日本の工芸を元気にする!」を目的にして、「工芸品に関わる他のメーカーや産地が補助金に頼らずに黒字経営化し、経済的な自立や工芸メーカーとしての物作りの誇りを取り戻す」ことを目標に掲げています。

 前夜(隈研吾氏)との共通点は、
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① どうありたいかを徹底的に追求し、
② 強いビジョンをみつけ、
③ 熱を持って語る
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 ことにあります。
まさに、『価値創造の心得・セオリー』そのものです。

 もう、13年前の文化経済研究会の講演でしたが、『不易流行』(第34夜、第245夜)を実践されていました。
(不易流行の『不易』とは、時を越えて不変の真理をさし、『流行』とは時代や環境の変化によって革新されていく法則のことです。
不易と流行とは、一見、矛盾しているように感じますが、これらは根本において結びついているものであると言います。)
 研究会受講のあと、私も「中川政七商店」を見かけると、自然に店舗の中に足が向いてしまいます。

 さて、講演の『肝(キモ)』となる一部をお伝えします。

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■何を、いかに正しく、伝えるか

・・・「自分起点とは、どうありたいかの追求ではないか」と思っています。
 会社として、経営トップとして、自分がどうありたいかを掘り下げていくこと。そしてその伝えるべきことをいかに正しく伝えるか、その作業がブランディングだと思います。
どうありたいかを会社レベルで言い換えると“ビジョン”であり、ブランドレベルで言うと“コンセプト”です。軽い気持ちの“張りぼてのビジョン”は要りません。

 例えばよくあるのが「地球環境に優しく」。企業の業績が傾いたときに、1番先に切られるところです。ビジョンは会社の一番上に掲げ、それに対してすべての事業活動を向けていくもの。そして個人的な“思い”からくるものでないといけないのではないか。
 どうありたいかを追求していく「自己欲求」「社会性」「熱を持って語れる」、この3つを満たすものでないと、社内外に伝えていけません。

 中川政七商店のビジョンは「日本の伝統工芸を元気にする!」

 2006年から掲げて行動しています。これが腹に落ちるまで、悶々とした時期が3~4年はありました。うちの会社は300年間に伝わる家訓やビジョンが一切何もないのです。会社に入社して、売上を上げて、それなりにやってきましたが、それ以上にやる意味を見い出せず、自分のモチベーションをかき立てるものがなかった時期がありました。

 「何ができるのか、何をやらないといけないのか、自分たちの使命は何か。」

やっとたどりついたのが

『日本の伝統工芸を元気にする!』。

 社会性はあると思うし、自分のやれること・やりたいことでもあるし、社内外に熱を持って伝えることできる。すべての事業活動をこれに向けてやっていこう、と。逆に言えば、これに向かわないものはやらない。これが判断基準として見えるようになり、経営はやりやすくなり、会社もよくなったと思います。・・・

 ものづくりには多くの方々に協力していただいていますが、毎年2~3軒と廃業の挨拶に来られます。何とかしたいと「日本の伝統工芸を元気にする!」と掲げて、仕入れ業態を立ち上げ、その人たちのものを買うことで支えましたが限界があります。
ではどうするか。直接的に経営に関わり改善していくしかないのでは、と思い至り、 2009年に「業界特化型の経営コンサル」を始めました。
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 「経営」のバージョンアップです。
いったい、どういう想いを抱えて、どのような方向性を見つけられたのかという、そのプロセスに着目してください。

 是非、「2+1」をご覧いただき、自社の『価値創造』を想像・創造されてください。


このような経営者の「2+1」をいっぱい見ること、洞察すること、検討することで、皆様の中に潜んでいる「経営力」「自分起点」が磨かれていきます。
私は、この文化経済研究会でそれを浴び続けました。ww

 「価値創造の知」のこれまでの図解には、『判断基準』、『成長経営』のヒントが詰まっています。
是非、その『知』の数々を読み取られて、将来のお役に立てれば幸いです。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ