2025年1月9日 「定年退職的な発想こそが“元凶”である」
前職パイオニア社を早めに卒業して、2010年に「価値創造で人々を幸せにする研究所」を立ち上げたいと思って、谷口正和師匠のところに相談に行きました。

その時、団塊の世代の正和師匠は、高校時代の同窓生たちが定年退職後に次のステップ、ステージにうまく踏み出さないことに「やきもき」されていました。
同窓生たちは、口々に、
「人生こんなものなのかと思い、寂しい」と語っていた。
正和師匠は仲間たちに言った。
「あなたがやってきたことを生涯の仕事にしたら?
我々はライフスタイルという言葉を知っているじゃないか?」
「・・・人間は、生き方と働き方を分けてはならない」と。
■リスキリング・インタレスティング・バリューイノベーティング
本夜は、不確定な時代を生きる方たちに、永眠された谷口正和師匠の言葉をご紹介することで、
・リスキリング
・インタレスティング
・バリューイノベーティング
という「~ing」(図解)で、少しでも人生や仕事の“気づき”や“ブラッシュアップ”につながればと思って綴ります。
この3つのingは後方で綴ります。
さて、昨夜(第340夜)は「才能」と「匠」を図解と共に綴りました。
その「匠」と、私の相談の時の正和師匠の言葉の数々が、その相談の一年後の「つむぎだす未来」(谷口正和著)に記されていたので加筆引用します。

■高齢者とは体験学習によって磨かれた姿
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・・・日本でも江戸時代までは「匠」という職人芸が尊ばれてきたが、それは定年まで勤め上げたなどというレベルから出てくることではない。生まれてから死ぬまで体験学習を繰り返し、身体に染み付いたものである。体験学習を回数化すると、習慣が体質を形成する。そのため一朝一夕では滅びない。
そのことを逆転的に言えば、高齢になればなるほど集約され、煮詰まり、精度が上がってくる。言ってみれば、高齢者とは体験学習によって磨かれた姿である。
生涯を働く、生涯を生きることによって、社会に貢献しようとした時、人は生涯、他社に対して奉仕と貢献を全うすることができ、その生き様を持って次の世代の弟子たちを育てることができる。まさに伝承であり、伝承のないものに長い価値はないと言っても過言ではないだろう。・・・
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前夜のコラムでお伝えした通り、職人たちだけが「匠」ではありません。
現代には、課題となる「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)が数多くあり、それを課題解決する「才」が求められます。
「才」と「能」の二つを組み合わせ、磨き上げてカタチ、型にするのが「匠」です。その「匠」たちが切望されています。
生涯をかけてつくりあげてきた「才」を「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)と掛け合わせて若い人たちにみせつけたいですね。
■ベンチャーとは、もう一度次のステージに載せ直すコト
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・・・最も人口の多い団塊世代は、60歳を超えたところで団子状態になっているが、彼らはベンチャーを起こすためにそれまでの職を卒業したのだという認識を持って行動しなければならない。
「ベンチャー」とは、新しいことをやるよりも、あなたがこれまでやってきたことをもう一度次のステージに乗せ直すということだ。
生涯編集者、生涯パン職人、生涯ドクター・・・。
あなたは、「生涯をかけて取り組む職業の研究課題」を選び、引き取ったはずである。・・・
・・・こうした流れからすれば、やはり我々は次の活力を創造する担い手にならなければなないだろう。高齢社会となり体験を積んだ人が増えたいま、体験学習の結果生まれてきた「知恵」を使い、未来に対して未解決だった問題を解き、立ち上がって門戸を開くことが大事である。・・・
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■自分の「才」を整理
上記は、2010年に私が前職パイオニア社を早く卒業して羽ばたいていこうと思っていた時の、背中を押してくれる「珠玉の言葉」の一部です。
正和師匠に、「自分の才」をまとめてみるように言われました。
(これらの経験やご縁が、自分の「才」を拓かせてくれました。やはり「動く」ことが肝要に思います。)
・設計、技術企画、技術統括、情報企画、開発企画・・・
・B2B参入体験(B2CとB2Bの二刀流):第314夜
・労働組合の書記長体験:第29夜、第336夜
・社長直轄ヒット商品緊急開発プロジェクトリーダー体験(異業種コラボ):第14夜、第313夜
・未来シナリオプランニング直伝体験(Jオグリビー氏):第155夜
・総合研究所(10年後の未来シナリオ策定):第111夜
・社内外横断による新事業創造プロジェクトリーダー
・価値創造による人財創生塾
・松岡正剛師匠(未詳俱楽部他):第308夜、第337夜
・谷口正和師匠(文化経済研究会):第323夜、第313夜
さてさて、2013年10月に「新価値創造研究所」(第75夜)を立ち上げましたが、
やはり、まだまだ自分が磨かなければないないことが次々に現れました。
人生は「壁」と「殻を破り」「磨き上げる」ことの連続「~ing」です。
その「殻破り」「磨き上げ」を「無我夢中」にできるかどうかが「才能」と「生きがい」に繋がってくるように思います。
■新ステージに向けた「3つのing」
新しいステージにジャンプアップするときに、「3つのing」を意識することで、時代の波に飲み込まれずに、時代の波に乗れるように思います。
それを、前夜の「才(人間の側が持っているもの)」、「能(対象が持っている可能性)」、「匠(才と能の二つを組み合わせる力)」に当てて図解します。
・リスキリング(人間の側:開拓の精神)
・インタレスティング(対象の側:数寄の精神)
・バリューイノベーティング(創造・統合する能力と精神)

モノゴトの見方、考え方が「固定」していると、大変化する「社会・経済・環境」に対応できません。
上記に対応した「柔軟性(横軸)」と「開拓性(縦軸)」をingの状態にしていくことが求められます。
松岡正剛師匠、谷口正和師匠のお二人とも、生涯現役でその背中を見せ続けてくださいました。
少しでも継承していきたいと思います。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ