橋本元司の「価値創造の知」第342夜:いま時代が一番求めているのは「構想力」である

2025年1月13日: “ 構想力 ”を生み出す “三立て” 
 地球沸騰(地球環境)が止まらず、戦争(社会)も止まりません。
地球人類の「生命」を脅かし、世界及び日本の「政治」「社会」「経済」「環境」の見通しもつき辛いですね。
誰もがこの先の未来がどうなっていくのか明確に見極められず、不安になっています。
そして、地球沸騰、戦争やAIの進展は、個人の力ではどうしようもなく、でもそれらが「私たちの未来の生活や生命」に影響を及ぼしてきます。

・「人生は思う通りになりません」

現代に限らず、先行きが混とんとして、自分や会社や地域が「思い通り」にならない時、そんな時に未来を突破する「構想力」の重要性、緊急性が叫ばれます。

 仏陀は、この世は「苦」であるとしました。
「選ぶ力」(五木寛之著)から、加筆引用します。
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・・・「苦」とは本来、「人生は思う通りにはならないものだ」という自覚にはじまる。
不条理で理不尽なものだからこそ、そこに葛藤が生じる。
 私たちはこの世を、できるだけ思い通りに生きたいと思う。しかし、現実は納得のいかないことばかりである。
そこに生じる苛立ちや絶望を、「苦」と表現するのではないか。・・・
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 現在の閉塞した状況を打開する、打ち破るための大きな力として『構想力』があります。
『構想』とは、“未来をどうしたいか”を組み立て掲げることです。
・いま時代が一番に求めているのは「構想力」です。
・未来に対してどのようにイマジネーションを働かせ、ビジョンを描くことができるのか、心で思い、絵にかいた餅こそが要求されています。
・私たちが「切望」しているのは、「未来への可能性」であり、ビジネスの場で、クライアント先が私に求めているのも、会社や地域の「未来の可能性」です。
・その「未来の可能性」について、クライアント先にそのチャンスを持っていることを伝えると、勇気・元気が出て喜ばれます。
・その「未来の可能性」を引き出すのが「構想力」です。

 いまでも日本経済が落ち込んでいる大きな要因は、「構造的な不況ではなく、構想的不況」の存在にあるのではないでしょうか。
人々の暮らしや世界産業の転換に、「構想的に対応」できていなかった政治や産業界が日本を支配していたことが大きな要因です。
 

 本夜は、この「構想力」について、谷口正和師匠との対談と著作、将棋棋士で十七世名人である「谷川浩司」さんの著作「構想力」等を紐解いて、加筆引用させてもらいながら、その「本質と具体」を最後は私の図解を交えてお伝えしたいと思います。

■ 谷口正和師匠の「構想力」 

 前夜(第341夜)に引き続き、私が前職パイオニア社を早く卒業しようと思い、2010年に谷口正和師匠のところへ訪れたときの「大テーマの一つ」が『構想力』でした。
その後、正和師匠が京都の12人のオピニオンリーダーにインタビュー編集した提言が

「構想の庭」(2017年)

 として上梓されました。

その想いと意気込みを著作の「はじめに」と「おわりに」から加筆引用します。
◆「はじめに」
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 次なる社会そのものに対する「構想力」が今、問われています。
つまり、我々に突き付けられた課題とは「構想設計」です。その課題に取り掛かるため、「着想」をロングレンジで捉え、その思想・哲学を軸足に「未来のありたい姿」が複合的にジャッジできるように、まず高質な情報が大切なスタートになります。
・・・自己は自らの存在を超え、新たな価値と連帯していく潮流があり、それは相対化された価値軸ではなく、往来しながら複合する価値から、さらに絶対的な価値軸の流れを作り出し、新たな気づきの連鎖をもたらします。・・・
・・・この全体を見渡し、俯瞰された視座から発せられたオピニオンの方々の未来を照らす言葉を体感していただきたい。
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オピニオンインタビューのリーダーの方たちは、
・月尾嘉男
・浜野安宏
・水野誠一
・上野千鶴子
・望月照彦
・小宮山宏
・山極寿一
・田中康夫
・嘉田由紀子
・寺島実郎
・遠藤湖州

 上記多くの方々が、谷口正和師匠主宰の「文化経済研究会」のゲストとして登壇され引き合わせていただきました。
当時は40歳代のときでしたが、その視点・視座・見識に触れることが、その後の活動に大いに役立ちました。

◆社会構想
 文中で、正和師匠が熱く語ります。
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・・・私は色々な機会で「構想が日本を救う」と語ってきました。
私自身、未熟ながら構想家を目指す想いがあります。
 事業は「構想」こそ大事です。
・・・一番大切なコトは、「閉塞した社会そのものに風穴を開ける」ということです。
私が今一番訴えたいことは『社会構想』をどう創り上げていくのかということです。

・・・事業を成功させるために必要なのは、事業自体の狭い構想から、「社会を俯瞰できる構想」へと飛翔させることです。・・・

 第308夜から第341夜に、図解や事例を交えて綴ってきたことは『社会構想』が多くを占めます。
そのために、「本業(半分)」と「社会課題(半分)」を「解決飛翔」する「SDGs成長経営コンサルパートナー」を10年間推進してきました。(第312夜:「2+1」)

ちょっとした「改善」「オペレーション」では、時代の波に飲み込まれてしまいます。
是非、行き詰まりを突破する「革新」「イノベーション」に挑戦されてください。

・【切実】⇒【逸脱】⇒【別様】(第322夜)
・【本気】⇒【本質】⇒【本流】

 「切実」という本気の「負のエネルギー」のない方には、本気の「構想」はつくれません。
 たとえれば、「コップの水」が半分になった時に、
A.まだ、半分ある
B.もう半分しかない
 と、全く同じ状態でも「反応」が違いますね。
その「認識」が、企業や地域のご支援では、「決定的な違い」となって現れます。

 それが、よく言われる「茹でガエル現象」です。
(茹でガエルとは、緩やかな環境変化下においては、それに気づかず致命的な状況に陥りやすいという警句。生きたカエルを突然熱湯に入れれば飛び出して逃げるが、水に入れた状態で常温からゆっくり沸騰させると危険を察知できず、そのまま茹でられて死ぬという説話)

◆「おわりに」
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・・・社会に蔓延する近視眼的で、短期単発的な風潮に思考の視座を見失い、将来不安が募る中、この『構想の庭』を通じてオピニオンパーソンの方々にロングインタビューさせていただき、長期的で、広域的な視座に立ち、より本質に迫る着想を賜り、思考のヒントとしてお届けできれば本望です・・・
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 近視眼的、短期単発的ではなく、長期的、広域的な視座に立ってから、現在に逆算することで、新しい一手を打つことができる可能性が高まります。(第333夜)
興味関心の湧かれた方は、是非、この構想力のヒントが満載な「構想の庭」をご覧ください。

■「谷川浩司」さんの「構想力」

 さて、「新しい一手」と記しましたが、将棋棋士で十七世名人である「谷川浩司」さんの「構想力」(2007年)が上梓されました。


加筆引用します。
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 ・・・「構想力」は、先行きの見えない時代の閉塞した状況を打ち破るための大きな力になると私は思うのだ。
なぜなら、将来どうなるかを正確に読み、向かうべき将来像を明確に描いたうえで、それを実現させるための方法や道筋を組み立てることができれば、効率よくものごとを進め、処理することができる。
 そうすれば、競合相手に先んずるだけでなく、市場を開拓できるし、事前にしかるべき手を打っておくことも可能になる。また、たとえ状況が変化したり、最初に構想したようにはならなかったりしても、その状況に即した新たな構想をいち早く練り直すことができれば大きなアドバンテージを得られるはずだ。先が見えにくい時代だからこそ、構想力の強弱が今後ますます問われてくると思うのだ。・・・
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 内容は、
・構想に必要な4要素
・事前の構想が序盤を制する
・真の構想力が問われる中盤
・常識外の構想はどこから得るか
・読みは「デパートの買い物」に同じ
・経験は若さに勝る

◆構想に必要な4要素

 より深く、正しく「構想を組み立てる」ために必要な4つの力を上げています。
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・第1は「知識」
 相手の情報を集め、傾向を知ることは、構想を練るためには絶対に必要だ。対局によってはそれで勝負が決まってしまうケースもあるからだ。
・第2は「正確な状況判断」
 将棋でいえば、形成を正しく判断する力のことである。いま現在、自分がいかなる状況にあるかを正確にジャッジできなくては、つまり構想するための立脚点が間違っていては、深く、正しい構想など組み立てられるわけがない。
・第3は「先を見通す正確な読み」
 自分がこういう行動を起こしたら、状況がどのように推移していくかを正しく見極められる力があれば、それだけ構想力は高まることになる。
・第4は「時間の管理」である。
 なにごとを行うにせよ、時間は無制限にあるわけでなはない。将棋にも対局には持ち時間というものがあり、限られた時間のなかで形勢を判断し、正確に先を読み、最善の指してを選択しなければならない。そのためにはいかに時間を使うか、どれだけ効率的に管理し、配分できるかということが勝負に大きく影響する。・・・
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◆構想力を伸ばす大局観

 大局観を持つことは、構想力を伸ばすという意味で非常に大切なことです。
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 ・・・大局観とは、「未来を見据えたうえで現状を見る」という意味でもある。
将来に対する明確なイメージがあり、先行きがどうなるかを正しく読んだうえで、そのイメージを実現するには、いま何をしておくべきなのか、いかなる決断を下すべきなのか。
 それを判断する力を「大局観」と呼ぶわけだ。なすべきことに優先順位をつけるといってもいいかもしれない。・・・
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◆いくつもの顔を持てばどんな状況でも対応できる

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 前に「知識は多ければ多いほど構想は描きやすい」と書いた。
これは、言い換えれば自分の中に「引き出し」をたくさんもっていなければならないという意味である。こういう人は現状を把握し、先を読んだうえで、数ある選択肢の中から最善の方法を組み立てられる。
 私が対局していちばん怖いと思うのも、
「引き出しをたくさん持っている人」だ。
 そういう人は、何をやってくるかわからない。どういう作戦でくるのかわからない。
これは対局する人間にとって嫌なものだ。・・・
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■新価値創造研究所: 過去の延長上には「未来」がありません

 ここまで、「構想力」「大局観」「引き出し」等について記してきましたが、
後戻りしない変化(=トランスフォーメーション:第302~302夜、第319夜)の未常識時代には、

・過去の延長上には「未来」がない(第133夜、第272夜、第333夜))

 という認識が必要です。
企業の従来の中期計画(3年)策定では、右肩下がり、太刀打ちできない状況が現出しています。

 その時に、従来の中期計画から脱皮する「構想力」の重要性が増しています。
それを「本業(半分)」と「新対象(半分)」の「2+1(ツープラスワン)」(第312~332夜)でお伝えしてきました。

◆新価値創造研究所:シナリオプランニング(第38夜、第111夜、第119夜、第155夜)

 構想力を「図解」で見える化する方法に、「シナリオプランニング」があります。
前職パイオニア社の2000年頃に、米国からJオグリビー氏を招き、直伝をうけました。
「価値創造」において重要なのは未来から現在を見るという視点ですが、その未来の可能性を4象限で表すというものです。

 「見える化」ということで、ご支援先で活用しています。
是非、参考にされてください。

◆構想力を実現する『気立て→見立て→仕立て』(第21夜、第122夜)

 図解の三つの「~立て」は何だと思いますか?
 実は、「気立て(想像力)・見立て(構想力)・仕立て(創造力)」の三つは新価値創造研究所が企業をご支援する時の重要な心得・指標を表しています。


この「三つ」が立たないとご支援はうまくいかないことが多いことを経験してきました。
 特に重要なのが、「リーダー」「経営者」の切実、切望、情熱という「気が立っている」ことにあります。
参加する社員の人たちが「燃える集団」になっていても「リーダー」「経営者」が燃えていない、本気でないといい結果が出なことが多いのです。

 詳細は、「価値創造の知」(第21夜)をご覧いただきたいのですが、本夜はそれを図解します。
この「三つの立て」を先に知る・わかることが、「ゴール・結果」に大きな影響を及ぼします。

 この図でワカルことは、「見立て」「構想力」は単独で生まれるものではないということです。
それは、「2+1(ツープラスワン」(第312夜)です。

・「気立て」→「仕立て」→「見立て」
 →「見立て」は「気立て」と「仕立て」のよい「間(ま)」(第311夜)から生まれてきます。
・「想像力(イマジネーション)」→「創造力(イノベーション)」→「構想力(インテグレーション)」
 →「構想力」は「想像力」と「創造力」のよい「間(ま)」から生まれてきます。

 上記から、「未来の可能性」と「ミッション・ビジョン・イノベーション」(第89夜、第122夜)が見えてきます。

皆様の参考になれば幸いです。

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