橋本元司の「価値創造の知」第343夜:型通り→型破り→型創り

2025年1月18日: “ 未来の人財 ”を創る基盤について

 前夜では、「現在の閉塞した状況を打開し、打ち破り、未来を切り拓くために、時代が一番に求めているのは『構想力』である」
ということを図解(気立て→仕立て→見立て)とともにお伝えしました。

 『構想』とは、“未来をどうしたいか”にあります。
その「構想力」は、「本気(気立て:半分)」と「次の本流(仕立て:半分)」という前後(ビフォーアフター)によって成立します。
つまり、ずっとお伝えしてきた「2+1(ツープラスワン」(第312夜)の構造です。
「構想」のところだけを切り出しても、前段の「切実や情熱・本気」と後段の「別様と次の本流の姿」がないと「絵に描いた餅」になってしまいます。
そのために、本当に必要なことは、
・『構想(=未来をどうしたいか)』ができるためには、「自分自身を更新する」
 ことにあります。
それが、企業ご支援の最初にお伝えすることです。

①いったい、何に「本気」なのか?(何が「切実」なのか?)の深堀。:本気、情熱
②現状を突破するために、どうなりたいのか?(現状突破とは何か?):逸脱、次の本流
③何が「逸脱の鍵」で、どの様に解決するのか?その資源は、道筋は?:本質、別様

 注記ですが、この①②③の対象に、「改善」「改良」は含まれていないことをお伝えします。
現在の閉塞した状況を打開する、打ち破るには、「改善」「改良」では間に合いません。
それに注力しているあいだに、手遅れになっている現場を数多く見てきました。
いまは、「価値創造」「イノベーション」という「改革」「革新」が求められるのです。
「価値創造・イノベーション」の本質や方法を知らない経営者が多いことも課題です。

■「鉄道の時代」からの脱却

  明治維新から、欧米に「追いつき追い越せ」というスローガンのもとに、日本は成長してきました。
そこには「お手本」があったので、それを速く、安く、丁寧に、大量に製造販売して成長したのが、20世紀後半の日本でした。
鉄道のように、レールがあって、行き先が分かっていて、そこに如何に速く効率的にやるかという「オペレーション」の時代でした。
それを分業してやってきました。


 企業の大小を問わず、いまの高齢の経営者や経営幹部の方たちの多くが、その「オペレーション」の得意な方たちです。
それは、正解(お手本)のあるものを、言われた通りに、早く、速く、正確にこなせるような「教育」と「人材」からなっていました。
 時代が大きく変わっても、これまでの価値観の「枠」の中で、従来の「改善」「改良」に傾注・注力することで、1990年から日本の産業力は衰退していきました。
 さて目を転じて、「お手本」があって、オペレーションの役目を担って、相対的に安い賃金で成長してきたのが、中国やアジア諸国です。
そのことで、「空洞化」が進んでしまったのが先進国であり日本です。

 私自身も、日本製造業の空洞化を推進した当事者でした。
1996年、前職パイオニア社のヒット商品緊急開発プロジェクトプロデュースのオーディオ生産(ホームオーディオ、ポータブルオーディオ)で、パイオニア社として初めて、香港経由で「中国(東莞)」でOEM生産しました。(第14夜、第126夜)
 当時の東莞は、日本の賃金の六十分の一(1/60)でした。
私も現場(東莞工場)に何回か足を運びましたが、日本と同じ「生産技術・製造技術」で造るので、品質に大きな差はありません。
 その「製造原価」で日本で造ろうと思ったら、極論すると製造現場(埼玉の所沢工場、山形の天童工場等)の社員の給料を1/60にしなければなりません。
これが日本産業を苦しめる「空洞化」の始まりでした。

 1/60のコストで製造原価を下げると同時に、インテリア業界、ファッション業界との異業種コラボによる価値をつけることで、
・オーディオ「ハッピーチューン」シリーズ
・ポータブルオーディオ「ループマスター」シリーズ
 は、大ヒットとなりました。

 その後、生産現場は賃金の安い「タイ」や「ベトナム」にシフトしていき、それらの国は成長していきました。
さて、お分かりの通り「空洞化」が起きた時から、「鉄道の時代」を成功の価値観にしてきた「政治・経済界」「教育界」「産業界」の抜本的見直しが必要でした。
それが、「航海の時代」の戦略です。

■「航海の時代」

 「鉄道の時代」の次に現れたのが「航海の時代」です。
 それは、失われた30年を取り戻し、本格的に『構想(=未来をどうしたいか)』を掲げて、新たな転換のためにギアチェンジを図り、行動・実践する時代です。
・そこは、「陸」ではないので「レール」がありません。そして、海路には大きな変動要素があります。
・低賃金から脱するために、「賃金」を高くするために「高い価値」を生み出さなければなりません。
・お手本がないので、何のために、どこに、何を目指して行くのかは自分で考え、決めなければならない時代です。
・我々はまだ、「半分」である、途上である。異質の「半分」を見つけて、革新・変革する時代です。(第312夜)
・①気立て:航海にあたり、何を大切にするのか? 何を「船の錨」にするか?という心の「拠り所」「ミッション」の明確化です。(=Why?)
・②見立て:そして、これまでの殻を破り、枠を出て、何を目指すのか?目指す方向はどこか?という「ビジョン」の明確化です。(=What?)
・③仕立て:それでは、その「ミッション」と「ビジョン」をどう具体化するのかというが、「イノベーション」の明確化です。(=How?)

 という項目の「本筋・道筋」の認識と航海するための「羅針盤」が必要になってきます。
上記実現のために、「ご支援プロジェクト」では、ここの「ドック」にはいっていただき「羅針盤」を策定します。

 その具体的な事例は第314~330夜に、そして、日本の大きな転換と成長については下記(「AI、DX、GX、や17の社会課題(=SDGs)」の戦略的取り込み等)に綴っているのでご覧ください。(セミナーや研修では、多くの事例を紹介しています)

■基本的考え方

 『構想(=未来をどうしたいか)』のポイントは、
・従来の延長上の「型通り」(紋切り型・金太郎飴)では、「未来がない」という認識を持つ(=切実)
・(自分は)今はまだ「途上」である。「未完」「半分」であるという認識(第312夜)
・従来とは違う、(自分が)気になる「別(another)」「異質」を探求する(第332夜)
・つまり、これまでの「枠」を出る、「殻」を破ることを決意をする(逸脱:第330夜)
・それは、これまでの「言われた通りのこと」をやることからの脱却・脱皮です
・つまり、「型破り」です。
・そして、本業(One:半分)と異質・別物(Another:半分)をつなげて、交り合わせる(ーイノベーション)
・そこに、「新しい化合物」、「別様」が閃きから生まれる
・それが、「型創り」です。

→「逸脱」「別様」に向かうので、通常の(西洋式の)経営戦略でよく使われる「3C」「SWOT分析」等はあまり役にたたないのが現実です。

■型通り→型破り→型創り

 『構想(=未来をどうしたいか)』と『新しい成長』の道筋を整理すると、

・「型通り→型破り→型創り」

 になります。
(実際の企業ご支援でも、選抜チームを組む場合には、必ず「女性」「型破りっぽい人材」を選んでいただくことをお願いしています。
やはり、実際に「変革の起動」になってくれるのは、その方たちです)

 これを「2+1」の図に表します。
ご覧いただいてわかるように、それは「守破離」とリンクしています。

“守破離”(第5夜、第88夜、第330夜)とは、
守って破って離れる、のではない。
守破離は、
①守って型に着き、
②破って型へ出て、
③離れて型を生む。

 これが、「航海の時代」の『型の進化』です。
「鉄道の時代」の「型」で行き詰っている「企業」「地域」の多くは、①の「守」(型通り)に留まっていて、②の「破」(型破り、殻破り)に進まないのです。
①「守」のステージの中(領域)で何とかしようとしているで、不足のもう「半分」となる「AI、DX、GX、や17の社会課題(=SDGs)」等の異質を自分の中にモード変更して取り込もうとされません。(第330夜、第332夜)
 挑戦しないことで、企業、地域の将来が更に「不確実」「不確定」の景色になっていくという「悪循環」です。

 是非、前述の第314~330夜の事例や、一昨年に、全国の地銀向けに、上記のエッセンスをまとめた小冊子(3万冊)を執筆しましたので参考にされてください。

■ブレークスルー時代の「教育」の変革

 さて、「鉄道の時代」と「航海の時代」では、求められる『人財』『経営者』が違うことがおわかりいただけたと思います。
キャッチアップの時代では、ゴールが分かっていますから、しっかりと「オペレーション」できる人材が必要でした。そのような教育がずっと続いていました。
 いまのブレークスルーの時代は、現状を打開・打破するために、第308夜から綴ってきた「価値創造」「イノベーション」という「逸脱し、殻を破る」「型破り・型創り」の人財が必要です。
つまり、『構想(=未来をどうしたいか)』をできる人財です。
 それは、従来の「平均主義的人材」ではないことはお分かりいただけたと思います。
人々が求めているのは、現状を打開する、未来を切り拓く「大谷翔平(二刀流)や藤井聡太(将棋×AI)」等の「逸脱」できる「逸材」です。
 不足のもう「半分」を取り入れてブラッシュアップしているのです。(第312夜)

「型通り」ではなく、「型破り」「型創り」の人財、企業、地域をどう創出するのかが、将来の「Well-being」のポイントです。
(ビジネス戦略では西洋式の「型」を使っていますが、ブレークスルーの領域ではその「型」では「違い」が出ません。それをどう「逸脱」「別様」するかがポイントになります。それは次夜に綴ろうと思います)

①いったい、何に「本気」なのか?(何が「切実」なのか?)の深堀。:本気、情熱
②現状を突破するために、どうなりたいのか?(現状突破とは何か?):逸脱、次の本流
③何が「逸脱の鍵」で、どの様に解決するのか?その資源は、道筋は?:本質、別様

 私の周りの東大・早大・慶大等の卒業生や関係者に聴くと、やっと学生の半分近くが「大企業」から、「ベンチャー」「スタートアップ」「価値創造」に向かっていくようになりました。
とってもいい流れです。教育の「中身」「体系」と先生の「中身」「質」を迅速に、大きく変革していかなければなりません。

 それは、私たちの未来の「Well-being」のためです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ