2025年1月24日: 「3C(Computer、Communication、Control)」と「C.日本の方法」
前夜の「『日本の再成長』を構想・図解する」は腑に落ちたでしょうか。
どうしてそれらを選択した背景や考え方がわからないと納得できませんよね。

本夜は、下記2点を重点に補足します。
一つ目は、「B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)」の1.2.3.を選んだ理由
⇒ B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)
1.AI/量子もつれ(キュービタル):本郷バレー
2.IOWN構想(ナチュラル):オールフォトニクス
3.自動ロボット(コントロール)
二つ目は、[C.「日本の方法」の背景と具体]です。
■「B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)」の1.2.3.を選んだ理由
日本の再成長の最も大きな原動力となるのは、「テクノロジー」です。
「農業社会→工業社会→情報社会→脳業社会」と時代は、積み重なり、進展してきています。
「情報社会→脳業社会」が、産業のコアとなり、それが「新農業」「新工業」(第N次産業等)へと影響を与えます。
そこでは、3C(Computer、Communication、Control)というものを考えていく必要があります。
→「人間を最も人間らしく遇する道は、その介在をなくすことができない仕事だけを人間に残して,機械にできることはすべて機械にやらせることである」
それを私は、1980年代の28歳と時に、オムロン創業者・立石一真氏から学びました。
オムロン社が開発した「自動改札機」を初めて見た大感動を思い出します。
それでは、オムロン「We are Shaping the Future!私たちが手繰り寄せる未来ストーリー」より加筆引用します。
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・・・立石一真氏は、技術面の洞察力で言えば情報化社会がくると予見し、コンピューターの前進ともいえるロジック回路と制御装置を組み合わせたオートメーション技術に早くから取り組み、自動改札機、自動販売機やATMを真っ先に開発している。その先には3C(Communication, Computer, Control)が重要だと考え、コンピュータの世界へ本格的に乗り出しました。
自動制御技術にフィードバックの機能を与えたものがオートメーションであり,そのオートメーションとコンピュータを組み合わせたものがサイバネーションです。このサイバーネーションに、通信(コミュニケーション)技術が加わることで、3Cとも称される技術を融合した電子制御技術が誕生し、社会の情報化が推進されていきます。・・・
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私の理解では、3C(Computer,Communication, Control)を人間の機能で表すと、
・①Computer:「脳」
・②Communication:「神経・通信」
・③Control:「手足」
になります。
■令和時代の「3C」で最適化社会を創る
工業社会時代は、“③Control:「手足」”が中心でしたが、
現在は、“②Communication:「神経・通信」”、“①Computer:「脳」”が大きく進展したのはご存じの通りです。
それを科学技術の言葉で表すと、
①Computer:「脳」→ AI、量子もつれ
②Communication:「神経・通信」 → “IOWN 6G”
③Control:「手足・ロボット」
(②による産業の進化を参考に添付します)


となります。「脳業時代」はこの「3C」が原動力となり、新しい産業や生活が芽吹いてくると洞察します。
日本は、「3C」を三位一体にして、優位性と継続性を創れるかどうかが肝(きも)になります。
そして、上記の「B]と前夜の[AとC]の三つを大胆に交錯させて、どのように「最適な三位一体」にするかが、「日本成長の鍵」を握ると思います。
■参考:オムロンが洞察する「情報化、最適化を経て自律社会へと向かう未来」
https://www.omron.com/jp/ja/edge-link/news/229.html
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・・・VUCAの時代と言われ、なかなか先の見えにくい現在ですが、社会全体の大きな傾向としては、これまでの工業・情報化社会における豊かさの象徴であったモノやお金を重視して経済成長こそが正義とみなされた時期を過ぎ、「こころ中心」の「最適化社会」へと移行しつつあると捉えられています。
その先には、2025年を目処に「自律社会」が訪れるとされ、工業・情報化社会の問題点として挙げられていた、一極集中型の社会構造や地域格差、コミュニティの崩壊なども、新たな価値観のもとで解決に向かう見込みです。SNSにおける承認欲求の高まりや、シェアリングエコノミーの普及、循環型で永続的に再生・再利用を行うサーキュラーエコノミーへの関心も、そうした新しい価値観を象徴しており、集団での価値の共有や体験を重視すると共に、自分らしい生き方を自ら実現させて生きる歓びを享受できる成熟した社会環境の実現が期待されています。

一真は、サイニック理論が示すように、近未来デザインを起点として今なすべきことを考えるバックキャスト型の発想で社会課題を解決し、世の中をより良い社会へ変えていくための礎を築きました。オムロンは、VUCAの時代にあっても、一真から引き継いだサイニック理論を経営の羅針盤として、あるべき未来を考え、よりよい社会の実現へとつなげていくための挑戦を今も続けているのです。・・・
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■ C.「日本の方法」の背景と具体
上記[B:テクノロジー(明滅している予兆)群]は、先進国でしのぎを削った競争をしています。
そこに、西洋式とは異なる視点や方法、つまり、「日本の方法の知」を注入することで、「違いのある価値創造」を創出したいという「構想」です。
1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風、ヘタウマ等):第149夜、第207夜
5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)

世界がフラット化する中で、どこに他との「違い」を見出すのかが重要になります。
訪日外国人観光客が大幅に増えていますが、
・いったい、日本の何に、何処に、「関心」や「数寄」があるのでしょうか?
それを分類したものの上位が、上記1~6になります。
人々のライフスタイルや価値観を変えた具体的な事例を上げてみます。
・ソニーの「ウォークマン」
・TOTOの「ウォシュレット」
・日本アニメ
・おもてなし
・ゲーム、サブカルチャー
・食文化、回転寿司
・禅、茶道、武道
・・・
これらは、「日本文化」に根付いたものです。
その「根っこ」が何かを上記1~6にまとめましたが、
・C.「根っこ」を咀嚼する
・A.社会課題とつなげてみる
・B.上記を先端テクノロジーにつなげる
という道筋が「成長へのプロセス」になります。
■コードをモード化(日本様式化)する:第119夜
「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
漢字(コード)をそのまま直輸入しないで、平仮名やカタカナという日本のモード(様式)に変換する方法です、
古代から、 日本は外国から「コード」、いわゆる文化や技術の基本要素を取り入れて、それを日本なりの「モード」にしていく、様式にしていくということが、たいへん得意な国だったのです。
未詳俱楽部で、松岡正剛師匠が提案していたのが、
「苗代(なわしろ)的思考」でした。
『いま日本に足りぬものは苗代(なわしろ)。グローバリズムの直植えではありません』
苗代(なわしろ、なえしろ)とは何でしょうか?
苗代とは灌漑によって育成するイネの苗床である。 もともとは種籾(イネの種子、籾殻つきの米粒)を密に播いて発芽させ、田植えができる大きさまで育てるのに用いる狭い田を指した。
「苗代」は日本特有の文化で、苗を直植えしないで仮の場所で育ててから植え換えをする方法です。
是非、「苗代」のようなエージェントを作る能力を活用してもらいたいと思います。
■「テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)」、「泥の民」
アニミズム(animism)とは、人間以外の生物を含む、木や石など、すべての物のなかに魂が宿っているという思想や信仰のこと。
それは日本に古くから存在する、「神道」、「八百万の神」の考え方と共通するものがあります。
日本特有の宗教である神道は、万物には神が宿るという考えがベースで、自然には神が宿ると考えられてきており、これは自然界に霊魂が宿るとするアニミズムの思想ととてもよく似ています。
ここで『砂の民、泥の民』の話をします。(第98夜)
キリスト教、イスラム教が発祥した場所は、砂漠です。砂漠では、どの方向に進むのかを間違えると「命」に直結します。なので、そこではリーダー(独裁者)を決めて、強いリーダーシップを発揮して早く行動します。
ところが、森や土の多い地域の日本やアジアはどうでしょうか?大雨や災害に遭遇した時に、すぐ動くのではなく、あちらこちらの様子をみて、協議しながらモノゴトを決めていきます。これが「土の民・森の民・泥の民」です。日本は、「チームワーク」が得意なのです。
ここで、欧米(縦型)と日本(横型)のリーダーシップや「民の価値観」の違いがわかるように思います。
「アニミズム(animism)」、「八百万の神」の価値観をお伝えしましたが、日本文化の「根っこ」に息づいています。
ロボットやキャラクターに名前を付けたり、TOYOTAがクルマのバンパーをピカピカに磨いたり、「異質」がそこかしこにあります。
■デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
松岡正剛師匠はデュアルスタンダードの考え方を提唱しています。
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・・・ワングローバルスタンダードではなく、2つの価値を行ったり来たりするような、矛盾を残した仕組みがあっていい。その行ったり来たりに慣れるために、エディティングをしなさいと言っています。
そもそも日本の知はデュアルなものなんです。たとえば「いい加減」という言葉。「お前はいい加減なやつだ」とも言うし、「いい塩加減ですね」と褒め言葉にもなる。「結構」は、「素晴らしいですね」の意味で使うこともあれば、「もう結構です」と断る言葉でもある。これは、言葉の持つコンセプトが変化しているわけではなくて、文脈を成立させるための分岐点がいっぱいあるということです。
この「行ったり来たり」(リバース)があるところが、西洋とは違う日本的価値観のひとつです。まずはこれを意識して、西洋知とデュアルな状態を目指すべきだと思っています。
双対するものはたくさんあります。日本で言えば、天皇と将軍、公家と武家、金閣と銀閣、奢りと侘び・寂びとか、バロックで言えばマクロコスモスとミクロコスモスとか。デュアルな見方が身につくと、物事のプロセスを構造的に捉えられるようになると思います。・・・
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西洋の一神教と、日本の多神教(八百万の神)では、価値観の土台に違いがあります。
「日本の知」と「西洋の知」をデュアルスタンダードで把えていくと新しい「価値創造」と遭遇します。
それは、「Third Way:第3の道の作り方」(第324夜参照)につながります。
●「途上国」と「世界」
「途上国から」と「ブランドをつくる」
それぞれ相反する二つのモノを組み合わせています・(=「2+1」)
●「大量生産」と「手仕事」
→手仕事を“効率的”にやるには?
●「社会性とビジネス」
●「デザインと経営」
●「個人と組織」
●「グローバルとローカル」
■まとめ
まだ、C.の4~6を説明できていませんが、第144夜や第149夜、第207夜をご覧いただければと思います。
以上、補足説明にはまだまだ不足していますが、「3C(Computer、Communication、Control)」と「C.日本の方法」を簡潔に補足しました。
さて、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギー(再エネ)の拡大は必要不可欠です。再エネのさらなる導入のために、注目を集めているのが「ペロブスカイト太陽電池」があります。これも是非、
1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風、ヘタウマ等):第149夜、第207夜
5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)
の視点で編集していただきたいと思います。
最後に、上記「3C」と「おもてなし」(第2夜、第4夜)を紐づけます。
何か見えてくるものがあれば幸いです。

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