橋本元司の「価値創造の知」第347夜:本質とは何か?洞察力とは何か?

2025年2月12日: 洞察力とは「本質」を見抜く力、見通す力のコト

■「本質」と「洞察」
 「本質」という言葉が、より多くのTV放送等の情報メディアで使われるようになりました。
「これから先がどうなるのか」を読み解くには、表層情報ではなく、もっとその奥にある「深層の根源的なモノを把え、見抜くことが肝要である」というように推察しています。

 私は『本質』を把えるコトが大数寄(第331夜)人間です。
「本質」を把えることができると、モノゴトの動きや流れや未来の常識(未常識)が掴みやすく、視えやすくなることを実感してきました。

 情報過多の時代には、情報の見方や考え方の「要(かなめ)」が何かを見究めることが必要・重要になってきます。
表層の情報に惑わされることなく、根源の「要(かなめ)」となる「本質」を把えることが「価値創造」の出力に大きな影響を及ぼします。
私は、『本質』を深く把えたくて、35歳の時に「瞑想」や「禅」の門を叩きました。
何故ここで、「瞑想」「禅(ZEN)」のことに触れるかというと、それらが物事の「本質」を真正面から把える方法に繋がってくるからです。

 いま、スマホが私たちのライフスタイルに組み込まれ、自分の「目」が外に、外に向かっています。「目」の文化です「目」は自分の外側に向かっています。
「目」を閉じて、雑念をはらい、心を鎮めて、内に内に向かっていく「瞑想」「禅」は「耳」の文化、方法です。「耳」のカタチは、自分の内側に、心に向かっていきますね。
それが、「本質」に向かっていく「道筋」です。

 本夜は、「価値創造の知」の要(かなめ)となる『本質』と『洞察』を綴ります。

■「本質」とは何か?
 「本質」を把えるために反対からみてみましょう。
「本質」の反対は、現象、表象です。木で言えば、「枝葉」です。
・「現象」は、外から見える「外面」「外身」「顕在」です。
 それに対して「本質」は、外から見え辛い『内面』『中身』『潜在』です。

 さて「本質」の「質」とは何でしょうか?
⇒「質」とは、物事が成り立つ「もと(本・元)」として考えられるもの。中身。要(かなめ)。
 もう一つの「本」とは何でしょうか?
⇒「本(元・基)」とは、物事がそれによって成り立つ(大事な)所。それを生ずる初めの部分。

 双方、同じ様なことをいってますが、その「本」と「質」の二つを合わせた「本質」とはいったい何でしょうか?
⇒「本質」とは、「そのものとして欠くことができない、最も大事な根本の性質・要素」と言われています。

 それでは、その「本質」を更に突き詰めていくと何処に行きつくのでしょうか?
⇒「本質」とは、「大元(おおもと)」です。
 (「大元(おおもと)」については後述しますが、「瞑想」「禅(ZEN)」は、「大元(おおもと)」につながることが目的の一つです)

「価値創造の知」においては、
⇒「本質」とは、将来の「本筋」「本流(別流)」をつくる「大元(おおもと)」「源流」になります。

■「瞑想」「禅」と「大元(おおもと)」
 「大元(おおもと)」の領域は第333夜に図解しました。(新価値創造研究所オリジナルです)
 「イノベーションの時代」は、「潜在意識」「空意識」の下部を“探求する”“創(きず)つける”“掘り当てる”ことが求められます。(第332夜)
上述のように、自分は35歳の時にビートルズにも影響を与えた「マハリシ・ヨッギの超越瞑想」の門をご縁によりたたきました。(第6夜、第33夜)
そこに入って驚いたのは、大手の企業経営者が多く集ってことでした。彼らは、「心を空にする」ことで経営の方向性や生き方を見出しているようでした。(空即是色)

そう、そこでは雑念をなくす、私心をなくすことを体得して、大事なコトは何か?そして、大事なものにつながることを体験してきました。
「体性、知性、心性」を澄まし、磨いたことが自分の将来に大きな影響を与えました。

 『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは何だと思いますか?(「禅マインド」から加筆引用)
 座禅の姿勢は、「結跏趺坐(けっかふざ)」という右足と左足を組んでいますね。
この姿勢は、『二つではない、一つでもない』という「二元」性の「一者」性を表わしています。
それは、「二つ」にならないということにあります。
一番大切なコトは、“二つでありながら一つ”ということです。
これまでずっとお伝えしてきた「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)のことです。

 「空・虚・大元(おおもと)」の意識領域で、「あり方・あり様(第333夜)」(⇒核心)とつながると、
それが、ミッション(第89夜・使命:何に命を使うか)になります。
そこから、「新しいやり方」「新しい現実」「ビジョン」(⇒確信)が見えてくる。
それを実行・実践するのが「イノベーション」(⇒革新)という流れです。
 
これが、「核心」→「確信」→「革新」(第332夜)という「イノベーション」の流れです。

 さて、上記の「空・虚・大元(おおもと)」掴む感覚は、お寺(禅宗等)の「坐禅の会」などに参加するのも一つの手です。
「坐禅」「瞑想」を行ずると、最初は「雑念」がいっぱい湧き出てきます。それを次々に「無」にしていくのです。(=空じる、行じる)
「無」というのは、「ナイ」「ナクス」のではなく、「雑念」が湧き出てきたら、心・意識の遠くにはらう、「空じる」のです。
それに慣れて繰り返していると、心の中の雑念である「ポカリスエット」の様な「濁り」が徐々に消えてきて、透明に近くなっていきます。(第235夜)
引いて、引いて、心を澄ませていって、「大元(おおもと)」に辿り着いていくのが初歩の行(ぎょう)です。

■「本質」「大元(おおもと)」の図解

 この説明は言葉ではなかなか伝わりづらい、響きづらいですよね。
そのため、それをビジネスワークショップでは、「観察」を通した「旭山動物園」等の複数の分かりやすい演習で疑似体験していただいてます。(第28夜、第333夜)(SDGs経営塾 第6回)

[左上領域:これまでの現実、常識、目的]
・2000年、動物園の来園者数は右肩下がりでした。
・珍獣、奇獣の「パンダ」や「コアラ」で、何とか来園数を上げる「やり方」でしのいでいましたが、それでも右肩下がりでした。
[下部領域:大元・空・虚]
・ここに、旭山動物園の坂東元・獣医係長(後の園長)が登場します。
・普通の動物の“命の大切さ”を子供たちに伝えたい(=あり方、在り様、未常識)
[右上領域:新しい現実、新しいやり方、新しい目的]
・形態展示から行動展示へ
・SDGs対応

 ここで重要なことは、経営の“あり方(目的)”が変わることで、“やり方(手段)”が変わることです。
それまでの「形態展示」から、「普通の動物の“行動展示”」というやり方に転換しました。
そのことで、右肩下がりの来園者数が急激な右肩上がりになり、旭川市を含めて経済価値(利益)が上昇しました。

 旭山動物園が掲げる永遠のテーマは、「伝えるのは命」です。

そこには、元係長の坂東園長が獣医として“動物の命”の大切さにずっと寄り添ってきたことが込められています。そのテーマによって、これからの時代の主役になる子どもたちが、「動物たちの未来」や「地球と自分たちの未来」を真剣に考える場所になっています。

 この演習に、「価値創造」「成長経営」の大きなヒントがあります。
「経営」の“経”という字は、縦糸のことを表しています。“経”という縦糸(あり方)と“営(いとなむ)”の横糸(やり方、行動)で織物が紡がれます。

経営が行き詰っている時は、それまでの横軸の業界の“やり方”が行き詰っていることが多いものです。是非、そのような時は、先んじて経営の縦軸の“あり方”(目的、道理、大元)に目を向けて、再定義することにトライされてください。

図中の「価値創造」の流れがみえてきたのではないでしょうか。
・行き詰まり → 大元・空・虚 → 新しい成長
・ 切実       逸脱       別様
・ 本気       本質      次の本流

■「洞察」とは何か? 

 前夜に『再成長』の構想」に必要になる3項目を綴りました。
2番目に『洞察』があります。
1.予測:未来がどうなるのか?
2.洞察:未来をどう見通すのか?
3.構想:未来をどうしたいのか?

 「未来の不確実性」に適応した「構想」の出来、不出来に最も大きな影響を与えるのが『洞察』のスキルです。
[1.予測]では、各々の業界情報や、様々なメディアからの「情報発信」等を合理的に理詰めで考える顕在意識の左脳活用が中心になります。
(前職パイオニア社では、2年間本社で調査課の課長も兼務していたので少し得意です)
[2.洞察]は、未来という「不確実の洞」の奥底にあるものを見抜くこと、物事(対象)の本質を見通すコト、見抜くコト、見究めるコトにあり、潜在意識の右脳活用が求められます。(右脳活用に、「瞑想」「禅」が有効です。右脳と左脳が統合・相乗すると出力が大きくなりますね)
[3.構想]は、「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)です。[1.予測]という「方」と、[2.洞察]という「方」が交じり合って、[3.構想(右脳×左脳)]という一つ上のレベルに飛翔(イノベーション)するのです。

 ここでお判りのように[1.予測]領域では、「情報」に大きな差が生まれまないことがわかります。
[2.洞察]のステージで、対象(モノゴト)の『本質』を見通すコト、見抜くコト、見究めるコト、が「価値創出」「構想」に大きな影響を及ぼすことを実務やご支援で経験してきました、
『才能』について第340夜に綴りましたが、対象の[能]にある可能性を、人間側の[才]が引き出すコトをお伝えしました。
本質を見通す、見究める「才能」が『洞察力』です。

 つまり、
⇒『洞察力』とは「本質」を見抜く、見通す力です。

■「3つの洞察力(=3つの知)」

 激変するビジネス環境の中、私たちには新しい時代に適応した発想・構想を生み出すことができる「イノベーティブ・スキル」が求められています。
そのスキルが、
 ①人を読み(Insight)
 ②先を読み(Foresight)
 ③新しい全体を読む(Gestalt)
という「3つの洞察力(=3つの知)」(第89夜、第128夜、第333夜)から発想・構想を生み出す「価値創造技術(エンジニアリング)」です。
その原動力となるのが、上記①②③の「本質」を見抜く、見通す『洞察力』です。

 その価値創造の原動力となる「洞察力」には、3つのベクトルがあります。
つまり、3つの「洞察力」があるということです。
この「3つの洞察力」を習得・駆使していただくのが、人財育成の肝(きも)になります。

 それは、「人間(じんかん)」「時間」「空間」という『間(かん)』・『洞』の中にあります。
「洞察力」は、その3つの『間(かん)』を「表象・現象・る外面」から「見えていない根っこ(根源)、核心、大元」まで見抜いていく力です。
それでは、「人間(じんかん)」「時間」「空間」を紐解きます。

 あらためて、『洞察力』とは、
 ①「人間(じんかん)軸」インサイト(INSIGHT):深く人を読む(最も大切なコトを見抜く):第85~86夜、第89夜
 ②「時間軸」:フォーサイト(FORESIGHT):高く未来を読む(未来に向けた先見性)第87~88夜、第89夜
 ③「空間軸」:ゲシュタルト(GESTALT):広く全体を読む(新しい全体をつくる):第83~84夜、第89夜
という三つの軸にあるそれぞれの「本質」を突き詰めて体系化することです。(第21夜)
すると、「価値創造」のイメージが浮かび上がり、それらが交じり合い選定ができて『構想』が立ってきます。
これが「見立て」(第343夜)です。

 具体的には、図にある様に、従来の既知の常識の領域を『3つの洞察力』で超えて『3つの赤枠』(第89夜)を探求し、ゲットすることにあります。
それは、従来の常識に把われた考え方ややり方を手放し、殻を破って、その先にある「本質」「内面」「赤枠」をつかみとろうと本気になることです。
「価値創造」における「本質」は、通常の常識の枠を超えたところに「潜んでいる」ので、簡単には「姿」を現してくれません。
なので、「切実」「逸脱」が不可欠であることを、何度も繰り返し綴ってきました。

■ミッション・ビジョン・イノベーション(第89夜)

 ビジネスで最も大切なコトは、『本質的な違いと共感』を生み、創ることを第82夜に綴りました。
それから第88夜に亘り『本質的な違い』を生み出す3つの抽象化能力(『深い知』『高い知』『広い知』)について、その構造と方法を明示しました。

それは、従来のやり方、考え方、常識を超える方法です。そして、その方法は、決して特別なものでなく『革新』を起こすために様々に使用されてきた価値創造の『知』です。
ただ、それを構造としてまとめ、トリニティイノベーション体系(第67夜)として、3つの関係性を明確にしました。(第77夜)

 その図解をご覧いただくと直ぐにおわかりいただけると思いますが、赤い枠線(▽・〇・◇)の中が「空白・余白」になっています。そうなんです。課題や対象に向けて、意識的に『空白・余白』を設定することで、そこの中身をしっかり洞察し、イメージングすることになります。

ビジネスの「行き詰まり」というのは、余白(=新しい可能性)が思い浮かばないことです。
でも、クライアントのお話しに耳を傾けていると、「自ら制約を設けてしまって、モノゴトの見方や視座を狭くしてしまっていること。そして、本当はこれまで通りにして、変わりたくないこと」を感じます。

その『制約』や『常識』の殻を丁寧に剥がさせて貰って、下記3つの余白から、新しい補助線を差し上げた時に、そこにはワクワクする視界が広がっていることを認識される喜びを数多く経験しています。

さて、「3つの知」を進める順番なのですが、『深い知(人間軸)』⇒『高い知(時間軸)』⇒『広い知(空間軸)』で行うことをお薦めします。

『深い知』は、事業の再定義につながり、ミッション(使命)を生み出します。自分達が何に「命を使う」のかに関わってきます。当然、ワクワクするものに命を使いたいですよね。それは第85~86夜に綴りましたが、大元(おおもと)に戻ることです(=色即是空)。そのために、違う業種業態の幾つかの納得する分かりやすい事例をお示ししています。禅や瞑想の方法もお伝えします。

 茶、枯山水、わびさび、俳句に代表される、『深い知』へ至る方法は、日本人が本来得意とするものです。是非、自信をもって挑戦してください。
それらのヒント、演習を体験した後に、「自らの課題・問題」のテーマに当てはめると、今までの制約・常識と異なるワクワクの新しい風景が見えてきます。それが、船でいう錨(アンカー)です。

 実際のご支援プロジェクトでは、ここまでで30~40%の到達になります。場合によっては、50~60%を超えることもあります。

 次に、ワクワクする拠り所・錨の元に『高い知』のステップに移ります。
その詳細は、第87~88夜に綴りました。『高い知』のポイントは、「温故知新(故きを温ねて新しきを知る)」です。現在と過去を豊かにすることが将来を豊かにすることに繋がります。それがないままに、未来に向かうおうとするので失敗することが多いのです。

「故き」をどこに設定するのかも重要です。この設定がこちらの腕の見せ所になります。それは課題をお聴きし、現在の変化の元(もと)がどこにあるのかを一緒(デュアル)にして捉え編集するのがコツです。そのために、『深い知』『高い知』の多くの経験が必要です。

プロジェクトでは、『高い知』の、複数の分かりやすい事例を提示し、ビデオも数本見て観察いただき、演習で慣れていただき、自らのテーマ・課題に向かうと目指す将来の姿が見えてきます。これが『ビジョン』となります。

これが、船・航海で例えると、「北極星」を見つけたことになります。そして、『深い知』からの新しい形(世界と世間:第80夜)を見つけることに繋がります。(=空即是色)
私自身が、複数の将来を捉えるのが得意な「シナリオプランニング」のプロでもあるので、これが共有できると、プロジェクトは60~70%は到達したようなものです。
プロジェクトの「バリュー・メンバー」の参加者達の目が輝きます。

上記の『深い知』『高い知』を結ぶ軸が、ビジネスの新機軸になります。ミッションとビジョンがつながります。それをメンバーと一緒に、「シナリオマトリクス」「成長マトリクス」に展開して、其々一枚のシートにまとめます。将来を「見える化」「魅せる化」するのです。

そうすると、将来に向けてやらなければならない自分たちの不足が見えてきます。それを自分たちだけで捉えるのか、パートナーと異業種コラボレーションするのかの見極めが必要になってきます。外部コラボには、いい『ご縁』が必要です。

 ここの詳細は、第83~84夜の『広い知』に綴りました。『深い知』『高い知』と同様に、多くの事例をプロジェクトでご紹介し、これまで紹介してきた大三角形「新しい命・物語」を創る方法と心得をお伝えし、自分達でも扱えるようになってきます。

 前職の異業種コラボの「連続ヒット商品」で培った失敗と成功をお伝えすることも役立つようです。勿論、実行に移す時は、異業種連携のプロですので、実践のコラボレーションのお手伝いもします。この「広い知」が、新しい市場・文化・スタイルを創る「イノベーション(新結合)」です。

これまでの3つの余白を埋めることで、「ミッション」「ビジョン」「イノベーション」が三位一体でつながります。経営戦略の基盤が出来上がります。

 さてさて、本夜は「イノベーション実践」の秘訣をいつもより長く綴ってしまいました。
是非、ご活用ください。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ