2025年3月18日: 「この国は生き残るために、将来、何で食っていくんだろう」
本夜は、前夜の「リジェネラティブ」に関連した「Well-being」をテーマにしようと思っていましたが、先日のTV放送「ビートたけしのTVタックル」の中で、
・「俺、心配してるのは、この国は将来、何で食っていくんだろうって思うんだよね」
というビートたけしさんの発言があり、その解決方法が上記の「リジェネラティブ」、「Well-being」にズバリ関係してくるので、その発言について思うことを綴りたいと思います。

■ 父と娘の会話
「TVタックルでたけしが『この国は将来、何で食っていくんだろうって思うんだよね』と言ってたけれど、お父さんはどう思っているの?」
と聴いてきたので、
「日本の『産業のパイ、経済のパイを大きくする』ために、ここ10年くらい活動(新価値創造研究所)してきたんだよ。
地球環境でも、国の大借金でも、年金でも、若い人たちの未来が抉(えぐ)られているよね。それを何とかしたいと思ってね」
って言ったら、
「へぇー、知らなかった」
と“のたまり”ました。
自分の想い・活動をパートナーのカミさんは知っていても、娘には伝わっていないことを知り、しばし反省モード、ショックモードに入ってしまいました。
自分は、「日本は失われた三十数年、従来のオペレーション型(鉄道の時代:第225夜)から脱するには、イノベーション型(航海の時代:第333夜、第342夜)の『価値創造』に軸足を移して、『産業のパイ・経済のパイ』を大きくしなければならないと核心・確信して、そのための心得と方法を図解と事例を、多くの企業・自治体・学校等でお伝えしてきたつもりでした」

・娘に伝わっていないということは、いったい何が欠けていたのだろうか?
その「鍵と鍵穴」を洞察しましたが、後方でそれをお伝えします。
■ 「国会・政治家」への憂鬱
・103万円の壁問題
・高校授業料無償化
・ガソリン暫定税率廃止化
いま、上記等が国会の新年度予算審議の中で議論されていますが、一番の根本問題は、将来の成長の姿が描けていないことにあります。
赤字予算を発行しての財源の中で、近視眼的な限られたパイの配分を考えていることの軋みが見えます。
本当は、国会で、与野党で、「国の将来の成長の姿」についての前向きな、イノベーション的な論戦を見たいのです。
この狭い視野に追い打ちをかける様に、トランプ大統領の「グローバル主義の終焉」(第350夜)のこれまでの秩序を変える動きが活発です。
そこに、上述のたけしさんの
・「この国は生き残るために、将来、何で食っていくんだろう」
国民は、企業人、経済界、大学や国会は、「将来の成長の姿」に向けて真正面から取り組んでいく必要があります。
でも残念ながら、多くの国民はそれを政治家・国会に託せるとは思っていないのではないでしょうか。
過去を紐解いてみましょう。
■ アベノミクス
2012年12月始まった第2次安倍政権において、安倍晋三首相(当時)が表明した「3本の矢」を柱とする経済政策がアベノミクスです。
アベノミクスの3本の矢(政策の3本柱)を記します。
①大胆な「金融緩和」、
②機動的な「財政出動」
③民間投資を喚起する「成長戦略」
2012年は「失われた22年目」ですが、やはり「成長戦略」が機能していないことが大きな課題でした。
当時、私は「3本の矢」の中に「成長戦略」があることにたいへん期待していました。
前職パイオニア社の社内研修講師として、「イノベーション成長」というテーマで「成長戦略」をよく紹介していました。
さて、それでは「成長戦略」を推進する「日本経団連」はどのように把えていたのでしょうか。
■ 経団連:成長を牽引する「六つのエンジン」
2014年経団連は、アベノミクスを受けて、いまこそ企業・経済界の出番であるとして、
「日本経済発展の道筋を確立する『六つのエンジン』起動させることが重要である」と発表しました。
以下の「六つのエンジン」です。
(1)グローバル化への対応
(2)イノベーションの加速
(3)国内の新たな需要の発掘(農業の成長産業化等)
(4)人材力の強化(起業家精神、女性活躍等)
(5)成長の基盤の確立(中長期のエネルギー政策)
(6)立地競争力の強化(事業環境の国際的イコールフッティング等)
さてあれから11年が過ぎましたが、みなさん上記「発展の道筋」が実感されていますか?
その進展があれば、上記たけしさんの
・「この国は生き残るために、将来、何で食っていくんだろう」
というワードが多くの共感を持ってニュースになることはなかったのだと思います。
このコラムを綴っている時に、近くにいる「カミさん」にたけしさんのワードを伝えると、
・「トランプ大統領の自動車関税で、自動車産業もぜんぜん安泰でもないし、昔(家電・自動車・半導体)の様な将来の「柱」が見えないので不安」
・「孫たちに、どんな職業が魅力的なのか、伝えるのが難しくない?」
という返答がありました。
■「日本再成長の構図」(第344~345夜)と「ジャポニズム(日本様式)」
「日本再成長の構図」については、[第344~345夜]の2夜にわたって綴ったものを抜粋引用します。
A.半分:社会課題(危機の認識)
1.地球沸騰危機(人類の生命の危機)
2.エネルギー危機(石油に頼れない)
3,人口減少危機(少子高齢)
B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)
1.AI/量子もつれ(キュービタル):本郷バレー
2.IOWN構想(ナチュラル):オーフォトニクス
3.自動ロボット(コントロール)
この選出した[AとB]が「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)の左と右の半分となります。
これを展開し、推し進める方法に下記「C」という方法を入れ込みます。
C.「日本の方法」:「独自のルール」と「メディアミクス」
1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み)

特に、
①「グローバル主義」の終焉(第350夜)
②間違いのない「AI」の進展
③おさまらない「戦争」
は、従来の『秩序』というものを大きく変えるものです。
それらに対処、適応していく柔軟性と将来戦略をもつことはたいへんなのですが、現実から目を背けないで、その本質(第347夜)を把えることが肝要です。
■ 成長を牽引する「六つのエンジン」を読み解く
上記、経団連の「六つのエンジン」を打開する『共通項』は何だと思いますか?
考察されてみてください。
(1)グローバル化への対応
(2)イノベーションの加速
(3)国内の新たな需要の発掘(農業の成長産業化等)
(4)人材力の強化(起業家精神、女性活躍等)
(5)成長の基盤の確立(中長期のエネルギー政策)
(6)立地競争力の強化(事業環境の国際的イコールフッティング等)
その中身を読んでいくとすべて共通項があります。
それを「しる→わかる→かわる」(第334夜、SDGs経営塾・第10回)ことがポイントです。
■ 本夜の鍵:「垣根をダイナミックに超える」
いま、「世界・国家・地域・企業・個人」に求められる最重要キーワードは何でしょうか?
それは、『価値創造とイノベーション』(第309夜)です。
私は、その実現を「自分のミッション(使命)」にしてきました。
持続的・継続的に『価値創造』できれば、「世界・国家・地域・企業・個人」は『成長』します。
でも、それができなければ、『衰退』します。
『イノベーション』は、ヨーゼフ・シュンペーター(経済成長の創案者)の造語です。
イノベーションは、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展することです。
「六つのエンジン」を打開する『共通項』は、
・『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』
にあります。
それは、(1)~(6)すべてにあてはまります。
これが、十分に機能していないのです。
「内側に異質なものを導入して新しくする」には、
・『維持ではなく、垣根を超える』
ことがポイントです。
・国も企業も自治体も個人も「維持(守る)することを優先して、垣根をダイナミックに越えていないコト」が大きな問題・課題です。
垣根を超えてどうするかという方法は、この「コラム」(第308~351夜)で多くを綴ってきました。
特に、「型通り→型破り→型創り」(第343夜)を是非ご覧ください。

国を見れば、省庁の壁、企業であれば部門の壁、いろいろな所に壁があります。
組織や団体には、「維持しよう、守ろう」という意識が強く、それが政治の進展・革新にブレーキをかけてしまっています。
俗にいう「既得権」です。
そのことで、前職パイオニア社のヒット商品緊急開発プロジェクト(第336~337夜)では痛い思いもしましたが、その壁を乗り越えた先には、新しい景色と喜びが見えてきました。もう35年前のことですが、今の日本には「壁」ばかりです。
「縦串」に強い力があるのですが、「横串」を通す力が必要です。
「横串」を通そうとすると「縦串」からの反発があるのです。
国の企業の自治体の「新しい柱」を本気で立てようと思うなら、その壁を乗り越える、「コンテキスト・コンテンツ」と「環境」を創ることが必要です。
それが根本です。
教育界も『維持ではなく、垣根を超える』力の養成に取り組まれてください。
それが、アントレプレナーシップ、スタートアップ人財の発掘に繋がります。
是非、「将来の成長の姿」が描けて横串のできる「外部の力・人財」を活用されることをお薦めします。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ