2025年3月24日: 「負の先払い(美輪明宏さん)」
■日本人選手の大活躍
先週、MLB・東京シリーズ(3/18~19)、FIFAワールドカップアジア予選(3/20)の連日3日間の日本選手の活躍に日本中が湧きましたね。
「メジャーリーガー」、「欧州・サーカー所属選手」の両挑戦が花を開いた日々でした。
私たちがこの活躍から学ぶコトは、
・「閉じこもっていては発展しない」
ということです。
翻って、このコラムで綴ってきた「失われた35年」ですが、
まさしく、「閉じこもって発展しなかった」日本ではなかったでしょうか。
その「失われた35年」に将来の「希望の灯り」のヒントを与えてくれたのが彼ら選手たちでした。
「国際競争力ランキング」「収益力ランキング」「赤字国債の常態化」等、「日本衰退」の客観指標から見えるのは、「ニッポン」がつねにリスクと責任を回避し、構造改革の規模やスピードや覚悟が決定的に欠けていることにありました。そして、その責任を回避せずに、リスクに立ち向かう姿勢が不足していたことがまだまだ続いているように見えます。
それが、前夜コラムの『この国は将来、何で食っていくんだろうって思うんだよね』を綴った動機につながります。
首記に活躍した選手たちは「(国内で)維持するコト」よりも、リスクをとって、大荒波の中に挑戦していって、その中で自分を磨き磨かれて、大観衆の前で、勇姿を見せてくれました。
私たちは、これまでの「閉じこもった」
・政治スタイル
・官僚スタイル
・企業スタイル
・地域スタイル
・アカデミー(学問)スタイル
・シニアスタイル
等々から、いいかげん
→「抜け出ましょう」
というメッセージを私たちは感じ取ったトキにしなければなりません。
■ 「禍福は糾える縄の如し」
人生には、誰にでも「ネガティブなコト」「受難」「試練」が待ち受けています。
私の知っている限り、「受難」「マイナス」が人生に立ち現れてこないヒトをこれまで見たことがありません。
ただ、その「受難・苦難」や「マイナス」があるからこそ、下記「ポジティブ」「活路」「革新」が生み出されている「負の美学」(第3夜)や「負の先払い」も併せて見てきました。このコラムでは、その実例をスティーブジョブズ氏(第164~165夜、第320夜)、隈研吾氏(第326夜)、第15代・樂吉左衛門(第330夜)さん等々で綴ってきました。
それは、「禍福は糾える縄の如し」という、『この世の幸不幸は、縄をなう際に二本の藁束をより合わせるように交互に絡み合い、表裏をなしている』という事象を多くの方々が人生で実感・体験してきたことではないでしょうか。
自分自身も、前職パイオニア社で、「オーディオの衰退」「パイオニア社の衰退」(第14夜、第334夜)という「受難・逆境」が35歳前後から降りかかってきたことで、楽なサラリーマン人生を送ることが叶わなくなってしまいました。その時の「受難・苦難・逆境・試練」を「禍福は糾える縄の如し」で、垣根を外し乗り超えてきたことが、現在の仕事やこのコラム執筆につながっています。
その時の教訓は、『閉じこもっていては何も生まれない』ということです。
■「負の先払い」
さて大幸運なことに、松岡師匠の未詳俱楽部や西新宿の舞台練習場等で、美輪明宏さんの演技やお話を何回か体感することに恵まれました。
松岡正剛の千夜千冊・第530夜には、美輪さんの「正負の法則」・「負の先払い」を通して
、「負を買いなさい。先に負をもてばいいじゃないですか。誰にだって負はあるんです。それをちゃんと自分で意識しようじゃないですか」
という素敵な言葉の数々が綴られています。
是非、第530夜全部をご覧いただきたいのですが、その一部を引用します。
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・・・その「負の先払い」について、美輪さんは実に丹念にいろいろの例をおもしろおかしく、ときに夜叉や般若になり、ときに菩薩や明王になって綴っているので、忖度安易に要約すべきではないのだが、ここではあえて意図を汲んだ圧縮をして諸兄諸姉にその入口を指し示すことにする。
これは、神様にこっそり内緒でつくった人生のカンニングペーパーなのである。そのペーパーには、世の中には「正と負」というものがあって、この正負の両方をそれぞれどのように見るか、見立てるかが、その人間の魂の問題のみならず、人生全般を決定的に左右すると書いてある。これが正負の法則だ。・・・
・・・では、どのように? どこで正負の見方を変えるのか。そこで美輪さんは、「前もって負をもちなさい」という画期的な方法を提示する。「そこそこの負を先回りして自分で意識してつくるといいでしょう」というふうに言う。・・・
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私たちは、「受難・苦難」が人生に必ず降りかかってくることを知っています。
その「負・マイナス」を引き受けることを通して「禍福は糾える縄の如し」の持つ深い意味を体感します。
それを体現している大谷翔平選手を見て感動・感激し、一体化しています。
■「一切皆苦(いっさいかいく)」
「一切皆苦」とは、仏教の言葉で「世の中や人生は思い通りにならないものである」という意味です。
「思い通りにはならない」現実から、その中から「ポジティブ」「夢の実現」「情熱」を生み出しているお手本が「大谷翔平選手」です。
彼の名言の一部を紹介します。
・成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみる事の方が大事。
・悔しい経験がないと、嬉しい経験もない
(高校野球の悔しい結果が、世界一のプレーヤーになることにつながります)
・人生が夢をつくるんじゃない。夢が人生をつくるんだ。
・他人がポイって捨てた運を拾っている
・others
「インパクトのある悔しい、苦い経験をする」ことで、「本気」と「夢」を持って人生をつくっている、切り拓いている最高の実例です。
このコラムのビジネス編では、それを自分の悔しい、苦い体験談と幾つかの事例を通して、好循環、イノベーションに向かう流れとして、
・本気(パッション)→本質(ミッション)→本流(イノベーション)
を図解で説明しています。

■ 「未来」からの逆算、「想念」のパワー
学校・企業・自治体の「SDGs研修、講演、経営塾」では、大谷翔平選手が高校時代に作成したといわれている「目標達成シート(マンダラチャート)」をよく取り上げます。
大谷選手の中心テーマは「ドラ1 8球団」です。ドラフト1位指名を8球団から受けるというのが目標でした。
そのために必要と思った8つのテーマが、
①運
②メンタル
③コントロール
④スピード 160km/h
⑤人間性
⑥体づくり
⑦キレ
⑧変化球
です。

是非、国(与野党連携)や経団連が一緒になって、10年後の成長の姿を「マンダラチャート:で本気で描いて、国民に提示して欲しいと思います。
政治家は選挙で選ばれるので、どうしても「既得権益者」のための視野に陥ってしまいます。
地元のことは、都や県や市区町村のほうに任せて、衆議院・参議院の両議院の方たちは、国の成長と安全のことを一義で考えて欲しいと思います。
大谷選手の凄いところは、上記を実現していることです。
・成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみる事の方が大事。
・人生が夢をつくるんじゃない。夢が人生をつくるんだ。
この「心得」「想念のパワー」「実行」が未来を切り拓いていくキーワードです。

未来を描くことの重要性がここにあります。
中学生・高校生のSDGsワークショップでは、「将来の自分、将来の夢」をここの「マンダラチャート」に書いてもらっています。
もう一枚の「SDGs成長シート」には、
・SDGs17の社会課題で取り組みたいコト
・10年後のありたい姿、やっているコト
・一週間で始めること
を記してもらっています。
若い人たちが「花開くきっかけ」になれば幸いです。
■「手遅れにならないとなかなか変われない」
多くの「企業」をご支援してきましたが、だいたい現在の延長線上の3年先の改善計画が書かれています。
それは、「改革」でなく、何とか「現状維持したい」という「改善」モードです。
「維持する」ということは、「右肩下がり経営」になることを意味しています。
まさしく、「失われた35年の縮図」がここにあります。
「閉じこもっていては発展しない」のです。
前夜(第352夜)にも綴りましたが、
「垣根を超えていくこと」
そのために、どうするかという方法は、この「コラム」(第308~351夜)で多くを綴ってきました。
「型通り→型破り→型創り」(第343夜)に自分ゴトとして挑戦してもらうことで、現状を打破して成長した姿を見られるのは格別です。
さて、いま「SDGs・地球沸騰化」という「受難・苦難」が人類を待ち受けています。
そ「受難・苦難」の先見性、想像性、自分ゴト化が求められているのですが、ヒトは「手遅れにならないとなかなか変われない」ということを考えさせられます。
この期に及んで、「閉じこもろうとする」トランプ大統領のパリ協定脱退は「ヒトの世の愚かさ・本性」を感じてます。
ここまで綴ってきて、3年前に気になって購入した本を思い出しました。
それが、次述の「オープンとクローズド」のはざまの戦いです。
■ OPEN:「閉じた」時代を終わらせよう
ヨハン・ノルベリ著「OPEN:~「開く」ことができる人・組織・国家だけが生き残る

目黒・有隣堂店の棚済みで、気になった推薦文を引用します
→山口周:「閉じる」ことを求める人が増えている今、本書が「開く」ための大きな勇気と知性を与えてくれる
→楠木建:オープンな交易、クローズドな部族化、いずれも人間の本性の発露。どちらに傾くのかで体制は決まる
最初に、本の帯の推薦文を加筆引用します。
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コロナ後の世界では、「オープンであること」がかつてないほど重要になる。
開かれたマインドセット、開かれたコミュニケーション、開かれた市場。
「開かれていること」こそが一万年にわたる人類の成功の鍵であり、今日の繁栄と平和の秘訣である。
ノルベリ(著者)は、本書で圧倒的な実例をもとにこのことを証明してみせた。
マット・リドレー推薦 ・・・
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そして、この本のキーワードとなる「『オープンとクローズド』の戦い」を序文から加筆引用します。
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・・・人間は「交易者」である一方で、「部属人」でもある。協力はするがそれは他人を倒すためだ。どちらの属性も人間性の本質的な一部だが、反対方向にヒトを向かわせようとする。
片方は、新しい機会や新しい人間関係、相互に利益のある新しい取引を行うための、「プラスサムのゲーム」を見つけさせてくれる。
もう片方は、人々に「ゼロサムゲーム」に用心しろと伝える。
「ゼロサムゲーム」では、他人が得をするのは、こちらが犠牲になる場合だけだからだ。これは他人をつぶし、取引と移動性を阻止しようという欲望を動かす。
これが「オープンとクローズド」の戦いになる。
これは、ポピュリズム、ナショナリズム、トランプ大統領とイギリスのEU離脱の文脈で大いに議論されたものだ。
これは、二つの違う集団の間での戦いではない。
「グローバル派とナショナリスト」、「自由なエリートと土地に縛られた人々」との戦いでもない。
むしろ、『みんなの心の中で、常に続いている戦い』なのだ。
脅かされると、人は部族の安全性へと逃れたくなり、がっちりと守りを固めたくなる。そうなると、ヒトは従属的になって強い指導者を求めるようになる。・・・
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この著書は、「『オープンとクローズド』の戦い」を提起したの大著ですが、「自由と調和」のバランスの難しさ・ジレンマを考えさせられます。
それは、私たちが「垣根を超えよう」とするときに次々に立ち現れる壁です。いまの「国連」の悩みもそこにあると思っています。
私たちが「閉じこもらないでオープン」に立ち向かう時に知っておくべき「クローズド」との戦いを事前に理解しておくことはとっても大事なことと思います。
同時に、皆さんにお伝えしたいことは「量の変化が質を劇的に変える」という「常識の非常識」(第29夜、第36夜、第310夜)の問題も理解していただければと思っています。
そこには、カモシカや高校進学率の変化を記していますが、「移民流入」の問題も国民の人口の1%未満なのか、30%超なのかで、問題の「質」が大きく変わるということです。
またどこかでお伝えしたいと思います。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ