橋本元司の「価値創造の知」第354夜:「イノベーションと人的資本経営」ー前編

2025年4月2日: 経営戦略と人事戦略の連動

■ スタートアップ、アントレプレナーシップ研修の増加点滅

 前夜は、「閉じこもっていては発展しない」をテーマに綴りました。
「閉じこもり」は一種の鎖国状態のようなもので、現在の高速情報時代には、「閉じこもっていれば」相対的な遅れが顕在化します。
さて、新価値創造研究所には、コロナ禍の3~4年前から「アントレプレナーシップ」、「スタートアップ」というイノベーションご支援の仕事が、高校・地域・企業等、様々な方面から増えてきました。
「公」や「自治体・ビジネス関係者」等の「閉じこもってないで、開国しなければならない」という強い認識の高まりを感じています。

■ 「人的資本の情報開示」と「人的資本経営」の関係

 そして同じころの2022年8月に内閣官房が「人的資本可視化指針」を公表しました。
人的資本可視化指針とは、「人的資本を可視化」するために情報開示がどうあるべきかを明確化したものです。
2023年3月期決算からは上場企業などを対象に「人的資本の情報開示」が義務化されることになりました。

 それは、「ヒト(人材)」を「コスト」としてではなく、
・「人材の『能力・経験・意欲』を最大限引き出すために人財に積極的に投資して、企業成長(企業価値の向上:プロフィット)する」ことを目的としています。

「人的資本の情報開示」とは、企業が「自社の従業員に関する情報」を公表することです。
そして、その情報を活用して「企業価値を向上」させる経営手法が『人的資本経営』です。

その「人的資本経営」が注目される背景には、「企業の競争力を高めるには『人材への投資』が不可欠である」という考え方が中心にあります。
重要な認識は、目的が「企業価値の向上」で、手段が「人的資本経営(図解)」であるということです。

■「オペレーション型人材」から「イノベーション型人財」の時代

 これまでの「オペレーション型」の仕事は、テレビCMでお馴染みの「楽々明細(経理業務)」やレストランの「配膳ロボ」等のように、DX・AI・ロボットにとって代わられます。
企業成長をはかるには、「閉じこもらず(第353夜)、垣根を超える(第352夜)」ための
・「経営戦略」
・「業務プロセス」
・「組織環境」
・「人財戦略」
 が必要になってきます。

 「イノベーション(第309夜、第348夜詳細)」の本質は、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展することです。それは「『異質なもの』を自分の内部に導入して、一段高い次元での解決策(新バージョン)で成長する」ことにあります。
 これまでの「枠」「垣根」をやすやす乗り越えて、新しい価値を創れる「経営戦略・業務プロセス・組織風土とそれを実現する人財」が求められているということです。

■ イノベーション時代(令和)の企業成長のステップ

 つまり、「2023年3月期決算からの公開義務」がきっかけとなって、否応なく、
①どのような経営戦略を土台にして、
②どのような仕組み(組織能力・組織風土、文化)で、
③どのように人財に投資、育成、活用(人財戦略)が活躍につながって、
 それら①②③が有機的に連動して、「企業の成長」を実現する

 という道筋を「有価証券報告書で『公開(オープン)』しなければならない」という時代にシフトしてきたことを意味します。
是非、経営者の方たちは①②③を先送りしないで、自分の中の「灯り」「スイッチ」をONしてください。
その「イノベーションスイッチ」が入らなければ、従業員、新入社員は活躍することができません。
その遅れが、よい人財を獲得することができなくなり、企業の衰退につながります。
迅速な対応が、企業成長につながります。

■ 「人的資本経営」と「人財創生3つの輪(トライアングル)」 

 さて、「人的資本経営」については、第350夜に[これからの「会社創生、地域創生」と「人財創生」]というテーマで、「人財創生3つの輪(トライアングル)」を図解で説明してきました。
人財創生の「できるコト(Can)「するべきコト(Should)」「やりたいコト(Will)」という3つの要素(輪)がありますが、トランプ大統領による「グローバル主義の終焉」(第349夜)に伴って、「社会的課題(Should)」が顕在化してきました。


「社会的課題(Should)」と「本業(Can)」を交り合わせて、「Will(実現したいこと、やりたいコト)」という一段上の価値を創り出す時代であり、その「一段上の価値創造」へのアプローチが、次の成長の源になります。

■令和の時代の「経営人事・ダイアグラム」公開

 令和の時代は、「経営人事領域」で「3つの外圧(Should)」が押し寄せて、「経営(事業)戦略と人事戦略」が本格的に連動するトキを迎えています。
それではここで、企業成長を実現する「経営人事」を体系的図解でコラム公開します。
本体系図解は、2023年から「イノベーションと人的資本経営」というテーマで、研修、講演や企業ご支援でお伝えしてきたものです。

1.「人的資本経営化」:「経営価値向上(人的資本の情報開示義務)」
2.「成長ストーリーの明確化」:「人財獲得競争」
3.「価値創造支援としての人事化」:「デジタル活用」
(上記1.2.3の右側には、その背景を記しています)

 これらが有機的に連動することが重要です。詳細は次夜(後半)に綴ります。
この図を羅針盤にして、「企業価値を向上」「スイッチON」されることをお勧めします。
是非、ご活用ください。

 次夜(後編)は、上記の図解(ダイアグラム)から、更に「人的資本・才能開発」を 2軸(市場価値と時間)で把える方法を図解を通してお伝えします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ