橋本元司の「価値創造の知」第359夜:IT革命からAI革命へ

2025年9月18日: 『時代の波に飲み込まれずに、時代の波に乗っていけるか』

■ 前夜(第358夜)のまとめ&追記(生成AIの二つの代替)

 前夜は、大きな時代の流れ(『農業→工業→情業→脳業→幸業』)の中で、
①「AIエージェント」=頭脳労働を代替
②「AIロボティクス」=肉体労働を代替
③上記①②の「AIエージェント(=AI社員)」・「AIロボティクス」の積極的活用で、明治維新の武士という存在が消えていったことと同じ状況が発生すること
 を綴ってきました。

■ 大局でみれば、生成AI導入は「日本の課題である人手不足」にラッキー

 日本は人口減少の影響で「人手不足」と言われています。
そのため、様々な場面・場所で「働き手」の募集が行われています。
それを大局的にみれば、「AIエージェント」「AIロボティクス」の迅速導入により、これまでの仕事の「人手不足」を解消できます。
それは逆説的に、「人口減少」の国は、「AI」登場・代替がラッキーな救いになるということです。
 ただ過渡期においては、もうアメリカでは「起こった未来」ですが、失業者が生まれてきています。
ここでのメッセージは、
 →「AIに職を奪われるのではない。AIを使いこなす誰かに職を奪われているのだ」

■「AX(AIトランスフォーメーション)」:後もどりしない変化
 「AX」は、「AIトランスフォーメーション」の略で、AI(人工知能)を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革し、企業の生産性向上や競争力強化を目指す、後戻りしない変化・取組みを指します。
 これまで、
・「DX(デジタルトランスフォーメーション)
・「SX(サステナブル・トランスフォーメーション)」
・「GX(グリーントランスフォーメーション」
 という言葉を企業・自治体・学校の研修・セミナー・伴走支援でよくお伝えしてきましたが、ここに「AX」が追加されました。

■参考引用: 2020年12月23日 SXとDXが日本成長戦略の2本(日本)柱

 2020年12月、菅総理が『グリーンとデジタル』を日本の成長戦略の二本柱と発表しました。(第305夜)
①グリーン=SDGsトランスフォーメーション(SX/GX)
②デジタル=デジタル・トランスフォーメーション(DX)
 2050脱炭素宣言を通して、やっと日本政府の成長戦略の方向性が決まりました。遅かったですね。
この二つが出そろったのは、「コロナ禍」のおかげといってもいいのではないでしょうか。

 「X」というのは「トランスフォーメーション」の略で、
・後戻りしない変化、変容 のことをいいます。
 服を着替えるのは、「チェンジング」といいますが、「オタマジャクシが蛙になる」、「サナギが蝶になる」ような後戻りできない変化を「トランスフォーミング」と云います。
後戻りしない変化(X)の波に乗るか、波に飲み込まれるか、トップリーダーのセンス、手腕、力量が問われています。

■「AIエージェント(AI社員)」による生産性向上

 日本は長らく、「海外と比べて生産性が低い」ということを言われ続けていました。
この「生産性の低さ」が、生成AI導入によって解消される「チャンス到来」です。
 IT革命で下遅れて、DX導入を推進してきましたが、これまでなかなかできなかったことが「AIエージェント」と「AIロボティクス」の導入と活用によって解決するという道筋が見えます。
 そうすると、「AIエージェント/ロボティクス」を導入できたところと、導入しないとことでは、当然、差がついてきます。
 ただ、AIはDX領域の中の特区であり、DX導入ができていない企業が、迅速にAI導入できるかどうかは難しいところがあります。
これから、あらゆる場面で、否応なく「AI導入(ホップ)・活用(ステップ)・新成長(ジャンプ)」が不可欠の時代に突入しています。

 基本的視点は、「人間を最も人間らしく遇する道は、その介在をなくすことができない仕事だけを人間に残して,機械(AI)にできることはすべて機械(AI)にやらせることである」(第345夜、第358夜:オムロン創業者・立石一真氏 加筆引用)
「機械(AI)にできることは、機械(AI)に任せて、機械(AI)ができないことを人間が遂行するということです。
ここにきても、「様子見をしていて、動かない政治家、企業経営者や自治体リーダー、教育機関」は問題があります。
 重要なことは、この「生成AI」という手段を活用した「上位の目的は何か」ということを想像・創造して取組むことが重要です。
後述します。

■「競争」から「共生」へ

 いまのビジネス界や社会では、「AI」を「競争」に活用する流れが急です。
① 競争するビジネスの宿命(AIエージェント/AIロボティクス代替)
② 戦争が続く人間欲望社会(AI兵器の活用)
③ 上記①②による地球生態系の破壊

 私たちは、迅速なタイミングで、「生成AIを、いったい何につかうのか」というコンセンサスが必要です。
上記①②③を見れば、「AI」を「破壊」ではなく、「共生」に活用することが求められます。
 それが、
 『AI共生アライメント』(新価値創造研究所の造語)
(補足説明:「AIアライメント」とは、AIが利用者である人類の価値観や倫理観に沿って適切に行動することを保証するためにはどうしたら良いかという議論や研究のこと)
 
 その理解のために、「3つのエコロジー」を記します。

■ 「3つのエコロジー」第9夜、第277夜から引用

 ・・・この「価値創造の知」では『三つのエコロジー』を、2016年の第9夜という早い段階で取り上げています。そこでも記しましたが、「三つのエコロジー(1991年初版)」フェリックス・ガタリ著は、自分の人生に大きな影響を与えてくれました。
この本は、30年くらい前の1991年の初版を熟読したのですが、フェリックス・ガタリ氏の先見性に驚くとともに、そこで警告してきた「地球危機・人類危機」を一部の人を除いて、人々(政治・国連)はずっと放置してきたことを残念に思っていました。
・・・第9夜『三つのエコロジー』から少し加筆引用します。
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—従来のエコロジー運動がいわゆる「環境問題」(自然環境を中心とした)に限定されてきたことに疑問や不満を感じ、それだけでは現代世界の全面的危機に対処しえないとして、「環境のエコロジー」に加うるに、「社会のエコロジー」と「精神(心)のエコロジー」の三位一体理論を提唱する。

自分(橋本)の理解・編集では、
「人間は下記3つの世界(エコゾフィー)の中に生きている。
①地球環境   :物の公害(地球危機、気候危機)
②人間社会環境 :社会の公害(戦争、離婚等)
③心の環境    :心の公害(ストレス、ハラスメント等)

人間は上記の3つの世界(環境)に包まれていることを実感・納得するところから始まります。上記の①②③は切り離すことはできません。
強いて言えば、人間の精神・意識が①②に強く向かわなければ、変革にむかわなければ地球も社会・会社も個人も立ちいかなくなることが自明です。
 さて、2015年9月の国連総会で、193ヵ国全会一致で採択されたのは、
⇒「Transforming Our World(我々の世界を変革する)」
:持続可能な開発のための2030アジェンダ
が正式文書になります。
 それは、一人一人の精神・意識が、「わかる⇒かわる⇒実行する」(第8夜、第32夜、第70夜)にステップアップに向かわせたいツールであり、17の目標(ゴール)がSDGsです。
そのためSDGsは、地球危機・人類危機を謳いながら、社会・人間の課題からビジネスにも踏み込んでいるのです。
ビジネス(利益)と公益を結び付けなければ、解決に向かわないことを経験してきたからです。・・・
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 「エコロジー」とは「共生」のことです。
 上記の「3つのエコロジー」と「AI」を統合することが、喫緊の重点課題と思っています。

■ そして、「ウェルビーイング(Well-being)」の時代へ

 「ill-being」(イルビーイング)とは、健康や幸福、繁栄などの状態が欠如している状態、つまり「不調」「不幸」「貧困」などを指す言葉です。
その対義語が「well-being」です。
 [Well-being]とは、「私たちの将来の心身の健康、繁栄、幸せの持続的な状態」です。
 それは、「Transforming Our World(我々の世界を変革する)」の上位目的です。

 それは、「3つのエコロジー」の認識と実践で形づくられていきます。

 先日、デジタル庁の「地域幸福度(Well-being)活用指標」ファシリテーターの資格をとりました。
「AI」と「Well-being」の新結合にワクワクしています。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ