2025年10月5日:
前夜(第360夜)に、「新ルル三条」を綴りました。
私たちの経済環境、社会環境は大きく変わっています。
「生命サステナブル」「AIデジタル」「人口減少」であり、それは「すでに起こった未来」です。
その変化に適応できなければ、沈んでいきます。
それでも、「石橋を叩いて渡る」「できるなら、変わりたくない」というリーダーが多くいることも事実です。
私たちの未来にとって一番大切な認識は「価値を創る」コトです。
自民党総裁選で、一番聴きたかったことは、
「これからの日本が、どの様な価値をどの様に創出して経済力を持続的に上げるか」
ということでした。
成長の基盤となる「地方創生・事業創生・人財創生」に通底するのは、「価値創造」であるという理解・認識が必要です。
それらに、「価値創造」がなければ、『創生』できないからです。
ただ、多くの方たちが「価値創造」の心得と方法を知りません。
それは、学校・会社・社会で理論立てて教えてもらっていないからです。
◆価値創造とは何か?(第75夜)
新価値創造研究所は、「価値創造」を次の様にわかりやすく定義しています。
・「価値」とは、世の中に役立つこと。
・「創造」とは、未来を先取りすること。
つまり、「価値創造」とは、「世の中に役立つ未来を先取りすること」です。
ピーターFドラッカーは、企業(事業)の目的は、「顧客価値の創造」と云っています。
持続的な「価値創造」ができないと、企業や自治体は右肩下がりになり立ちいかなくなるということです。
大量の赤字国債で支えているということは、「価値創造」「成長」ができていないということをあらわしています。
「日本国」は、「価値創造」できていないので、「失われた35年」を続けています。
さて、「新しい価値」を見つける方法は2種類あります。(第75夜)
一つ目は、不要なものを削いで取り除いて核心に辿りつく方法です。(方法A)
二つ目は、モノやコトを新しく結びつけて革新に辿りつく方法です。
ここには、時間(過去、現在、未来)を結びつける「縦の新結合」(方法B)と、空間で複数のモノ・コトを結びつける「横の新結合」(方法C)があります。
◆「(三位一体)トリニティー・イノベーション」
新しい価値を創造する基本の方法は、この3つの方法(A・B・C)でほとんど網羅できます。
それを新価値創造研究所では、「(三位一体)トリニティー・イノベーション」として取りまとめ、商標登録しました。(第57夜・第67夜:トリニティイノベーション体系)
それをご覧いただければ、『深い知(本来)・高い知(将来)・広い知(縁来)』の三位一体価値創造の構造が見えてきます。それを誰でも習得・体得できるように、分かり易い説明と事例、そして簡単な演習を用意・卒意しています。
この「価値創造」という言葉がここ20年、メディアによく登場します。
それは、日本・自治体・企業等、従来(20世紀型)のやり方・考え方では太刀打ちできなくて、「新価値創造」が求めれれているからです。
上記の様に、企業(事業)の目的・本質は、「顧客価値を創る」ことにあります。今は、改善ではなく「革新・変容」の時です。
繰り返しになりますが、『事業創生・地域創生・人財創生』の本質は、その「新価値創造」にあります。「新価値創造イニシアティブ(シフト)」の時代です。
このセミナーテーマで、これまで多くの場所で講演をさせていただきました。
◆ 「編集ルル三条」
1997年、松岡正剛師匠主宰の未詳俱楽部の場で「編集ルル三条」の指南があり、それが「価値創造」に役立つことを直感しました。
目の前の課題に「編集ルル三条」を掛け合わせると、「新しい知」が立ち上がってきます。
「編集ルル三条」について、松岡正剛師匠の言葉を紹介します。
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「世の中にあるモノやコトには、何事にも「編集ルル三条」があるとアタマに入れてください。
「編集ルル三条」とは、[ルール(規則・決まり)・ロール(役割・役目)・ツール(道具・手段)]の3つをいいます。
編集ルル三条の各要素とは、
・ルール(規則):組織の理念や目標、あるいは具体的な規則など、概念そのものを指します。
・ロール(役割):それぞれの立場の人が果たすべき役割や責任分担を指します。
・ツール(道具):ルールやロールを伝達し、実行するためのあらゆる媒体や道具、メディアを指します。
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新しい価値は、上記の「ルール・ロール・ツール」の各要素を変えてみることで、価値創造が見えてきます。
◆ 参考:異業種コラボレーション(実例:ピュアモルトスピーカー)
私は前職パイオニア社時代に、社長直轄・ヒット商品緊急開発プロジェクトで、約100社と異業種コラボレーションをして、連続ヒット商品を創出(1995年~)しました。
それまで多くの業界で、会社の事業は「スタンドアローン型(単独・孤立)」で行うものであり、「異業種とのコラボレーション」はなされていない時代でした。
1995年の経営会議で、
・ウィスキー(サントリー)×音響(パイオニア)
・ファッション×音響
・インテリア×音響
・お風呂×音響
others
による異業種コラボレーションによるヒット商品創出を提案しました。
つまり、「ルル三条」の「ルール」を変えた提案でした。(第126夜、第165夜詳細)
「異業種コラボレーション」というルール変更で、オーディオ業界のそれまでの価値観である「音質追求」ではなく、「異業種コラボレーションによる新しいライフスタイルの追求」で連続ヒット商品を創出しました。「ルール・常識」を変えたのです。
当時、上級役員からは、「こんなコラボレーションが上手くいくわけないだろう」と役員室に呼ばれ長時間𠮟責されました。
ルールを変えることは、「非常識」にみられることが殆どです。
将来の常識である「未常識」(第29夜、第175夜)に挑戦するには、常識を疑い、常識を超える洞察と胆力が必要になります。
詳細は、第17夜、第18夜、第35夜、第36夜、第83夜、第151夜に綴っています。
後述する「切実→逸脱→別様」という道筋が、次なる成長のポイントです。
このコラムには、イノベーション事例として「iPhone」(第175夜等)を何回か取り上げていますが、「iPhone」がルル三条(ルール・ロール・ツール)をどう変えていったかを参考にされることで、目の前の課題への取組みに役立ちます。
iPhoneは「ルル三条」のすべてを変えたビジネスモデルです。
iPhoneの登場で、世界中がライフスタイルを大きく変えたことは皆さん承知されていると思いますが、その登場により、日本では、ガラケー携帯業界、オーディオ業界、カメラ業界等々、数兆円の産業が蒸発してしまいました。
是非、皆さんの目の前にある「課題」を[ルール・ロール・ツール]の視点から相互補完的、相互規定的に眺めてみてください。
そのことで、企画・課題解決に必要な要素が見えてくるとともに、役割が欠けているとか、道具が足りない、必要なルールないなどの「不足の発見」にもつながってきます。
是非、「編集ルル三条」を試されることをお薦めします。
◆ 「内側に異質を導入して新しくすること」=イノベーション
上記のポイントは、「これまでのあり方/やり方に、異質なものを導入して新しくすること(第309夜、第348夜詳細)」にあります。
それを「イノベーション」といいます。
イノベーションの方法が腑に落ちると、目の前の風景が大きく変わり始めます。
「イノベーション」の本質は、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展することです。それは「『異質なもの』を自分の内部に導入して、一段高い次元での解決策(新バージョン)で成長する」ことにあります。
いま、これまでの「枠」「垣根」をやすやす乗り越えて、新しい価値を創れる「経営戦略・業務プロセス・組織風土とそれを実現する人財」が求められているということです。(第354夜)
日本の地方創生、事業創生に必要なのは、「内側に異質を導入して新しくすること」にあります。
その有効な方法の一つが、「異業種(異種)コラボレーション」です。
意識して、是非、自分にない異質を取り込んでみてください。
いま、その異質の代表キーワードが、「サステナブル」「AIデジタル」「「日本流コネクタブル」(第360夜)です。
そして、それを生み出す、創り出す、使いこなすのは、「人」です。
つまり、異質を組み込んでイノベーションを起こせる「人財創生」が必要です。
新価値創造研究所は、「地方創生・事業創生・人財創生」を三位一体で伴走支援してきました。
◆ 型通り→型破り→型創り(第343夜)
いまのブレークスルー(現状突破)の時代は、現状を打開・打破するために、第308夜から綴ってきた「価値創造」「イノベーション」を駆使できる「逸脱し、殻を破る」「型破り・型創り」の人財が必要です。
それは、従来の「平均主義的人材」ではなく、『逸脱し、別様の構想(=未来をどうしたいか)』を実現できる人財です。
人々が求めているのは、現状を打開する、未来を切り拓く「大谷小平(二刀流)や藤井聡太(将棋×AI)」を代表とする「逸脱」できる「逸材」です。
彼らは、自分の内側に「異質(二刀流、AI等)」を取り入れてブラッシュアップしているのです。(第312夜)
「型通り」ではなく、「型破り」「型創り」の人財、企業、地域をどう創出するのかが、将来の「Well-being」(幸せ)実践/実現のポイントです。
これまで多くの会社や自治体が、経営戦略で西洋式の「型」を使っていますが、ブレークスルーの領域ではその「型」では「違い」が出ません。
「日本流コネクタブル」を活用して、「逸脱」「別様」するかがポイントになります。
①いったい、何に「本気」なのか?(何が「切実」なのか?)の深堀。:本気、情熱
②現状を突破するために、どうなりたいのか?(現状突破とは何か?):逸脱、次の本流
③何が「逸脱の鍵」で、どの様に解決するのか?その資源は、道筋は?:本質、別様
それが、「切実→逸脱→別様」(第333~334夜)です。
◆ 「新成長ルル三条」(第360夜)
上記に「編集ルル三条」を綴ってきました
松岡正剛師匠のその造語に刺激を受けて、前夜に「新成長ルル三条」を上程しました。
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新成長ルル三条: 日本新成長の変革(トランスフォーメーション=X)に不可欠な3大要素
1.気候沸騰⇒「生命・サステナブル」:SX⇒あり続けたい(Outer)
2.量子技術⇒「AI・デジタル」 :AX⇒知能技術活用(I/F)
3.文化経済⇒「日本流コネクタブル」:JX⇒見立て仕立て(Inner)
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上記を展開したのが、下記「第344夜『日本の再成長』の構想・図解」です。
■ 日本再成長の要素(第344夜『日本の再成長』参照してください)
日本再成長の要素を二つ(半分と半分)に分類します。
多くの要素の中から、シナリオプランニング(第15夜、第147)を活用して、日本の再成長と継続に、最も影響を与える明滅する項目をピックアップしました。
A.半分:社会課題(危機の認識)⇒サステナブル
1.地球沸騰危機(人類の生命の危機)
2.エネルギー危機(石油に頼れない)
3,人口減少危機(少子高齢)
B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)⇒AIデジタル
1.AI/量子もつれ(キュービタル):本郷バレー
2.IOWN構想(ナチュラル):オールフォトニクス
3.自動ロボット(コントロール)
この選出した[AとB]が「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)の左と右の半分となります。
これを展開し、推し進める方法に下記「C」という方法を入れ込みます。
C.「日本の方法」:「独自のルール」と「メディアミクス」⇒日本流コネクタブル
1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風等):第149夜、第207夜
5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)
上記は、明治維新から続けてきた「西洋化」から脱却するために、もともと持っていた「日本の方法(知)」であり、現状を打開する「第3の方法」(第324夜)の一部です。
例えば、「1.コードをモード化(日本様式化)する」ですが、
「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
古代から、 日本は外国から「コード」、いわゆる文化や技術の基本要素を取り入れて、それを日本なりの「モード」(「仮置きの文化」や、「苗代」のような小さいエージェントを作る能力)にしていく、様式にしていくということが、たいへん得意な国だったのです。
重要なことは、『外からのコード(基本要素)をそのまま受け取らずに、自分の中で編集してモード(様式)化』していく能力を持っているということです。
◆「地方創生・事業創生・人財創生」
企業・自治体・教育機関は、現在の取り巻く環境・状況に「切実」を感じ、これまでの常識や枠(わく)から「逸脱」して新しい「別様」を創出する『才能・能力』を養成しなければなりません。
その人財養成・創生の実践は、是非小学校・中学校から始めて欲しいと思います。
「AIデジタル」「サステナブル」「日本流コネクタブル」によって、求められる/発揮したい『才能・能力』は大きく変わることはわかっています。
それは、『すでに起こった未来』なのです。
是非、『日本再成長』(第344~345夜)を参考にされてください。
改めて、昨日まで(10/4)の「自民党・総裁選」では、上記の「日本新成長」が議論の中心テーマとなって、日本の経済成長が議論できる場であって欲しかったと思っています。
新しい時代の日本成長モデルを、ここから描いていきましょう。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ