2025年11月14日:「「AIに職を奪われるのではない。AIを使いこなす誰かに職を奪われるのだ」
「新成長ルル三条」を第360~361夜に綴りましたが、その中の技術である「2.量子技術⇒「AI・デジタル」を読み解きます。
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新成長ルル三条: 日本新成長の変革(トランスフォーメーション=X)に不可欠な3大要素
1.気候沸騰⇒「生命・サステナブル」:SX⇒あり続けたい(Outer)
2.量子技術⇒「AI・デジタル」 :AX⇒知能技術活用(I/F)
3.文化経済⇒「日本流コネクタブル」:JX⇒見立て仕立て(Inner)
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「生成AI、AIデジタル」ついては、既に第358~359夜で、その背景と関わり方を綴りました。
本夜は、そのポイントを要約してから、昨年末「ChatGPT」が「リーズニング(reasoning)」という『論理的な思考や推論』ができるようになったことで、これからの私たちのライフスタイルやビジネス環境を大きく変えることをお伝えしたいと思います。
そして、「生成AI成長経営」を最後に図解します。
■ 「AIデジタル」のコンセプトワード
「デジタル」の次は何でしょうか?
それは、その未来を考える前に過去を見ることが必要です。つまり、「温故知新」です。
・「アナログ→デジタル→キュービタル」
それは、量子技術(quantum technology)を駆使して、「アナログ(現実世界)」と「デジタル(サイバー世界)」が両立した世界です。
(「キュービタル」とは、キュービット(量子力学)とデジタルの造語です)

既に現実となった「自動運転」や「AIロボット」は、それまで閉じ込められたサイバー空間と現実世界が統合してきた序章です、
製造現場で使われてる「クロスリアリティ(XR)」は、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といった技術の総称ですが、
・『現実世界と仮想世界を融合した空間』
を創出する技術です。
製造業においては、このクロスリアリティー技術が製品開発、生産プロセス、研修、保守・点検など、幅広い分野で活用されており、業務効率化やコスト削減、作業品質の向上に貢献しています。
さて、メディアに目を転じると、「故人と、故人の声で会話ができる」「戦争で使われているドローン兵器」のように、私たちの生活や社会に入り込んできています。

「キュービタル世界」が少し実感できたでしょうか。
日本は「課題先進国」ですが、その「キュービタル技術」をそれぞれの課題解決(人材不足、医療介護現場、物流等々)に向かわせることが、「生産性向上」「新事業開発」「地域開発」「日本新成長」につながってきます。
■ AIが「推論(リーズニング)」を獲得
2024年末に、「ChatGPT」が 「論理的な思考や推論(=リーズニング)」ができるようになりました、
それは、これまでの単に知識を検索・再生するだけでなく、『情報の関係性を理解し、新しい結論を導く能力を持つ』という意味です。
ChatGPTのようなLLM(大規模言語モデル)が 「推論(reasoning)」を本格的に行えるようになると、これまでの単に知識を検索・再生するだけでなく、『情報の関係性を理解し、新しい結論を導く能力を持つ』ことで、ビジネスには単なる自動化以上の“質的な変化”が生まれます。
それは、「情報や事実を基に、結論に至るまでの筋道を立てて考えるプロセス」を指し、人間だけでなく、AIが高度な問題を解決するための能力としても使われるようになります。
・「知識」⇒「知恵」
への大ジャンプです。
第358~359夜でお伝えしてきたのが、
大きな時代の流れ(『農業→工業→情業→脳業→幸業』)の中で、
A.「AIエージェント」=頭脳労働を代替
B,「AIロボティクス」=肉体労働を代替
という上記A,Bの「AIエージェント(=AI社員)」・「AIロボティクス」の積極的活用で、明治維新の武士という存在が消えていった時と同じ状況が発生すること
を綴ってきました。
以下に、代表的な事象や効果を体系的に上げます。
- 高度な意思決定の自動化
・従来は人間の判断が必要だった業務まで、AIが一貫して判断できるようになります
⇒これにより、中間管理職レベルの判断の一部が自動化されます - 複雑な“原因–結果”の説明が可能になる
・AIが推論できるということは、結論だけでなく根拠の説明、シナリオ比較ができるということです。
⇒これにより、AIが「ブラックボックスな答えだけ出す存在」から、“考え方を共有するパートナー”に変わります - 仕様書・戦略・企画などの知的生産がグレードアップ
・理由づけができるため、抽象度の高い業務の質が大幅に上がります
⇒「あるべき構造」を推論しながら文書を作るため、人間の“シニアレベル”の仕事を下支えできます - 業務の“暗黙知”を形式知化できる
・熟練者のノウハウを抽象化し、ルールや判断基準としてAIが学習・実践できるようになります
⇒•ベテラン営業、熟練エンジニア、プロマネ等のスキル、知恵をAIが推論し、新人が即座に利用可能になり、組織内の知識流通が“量的”ではなく“質的”に変わります - マルチステップ作業の自動遂行
・推論能力は、「手順を考える力」を意味します
⇒「タスクをどう進めるか」を理解できるため、人間の補助ではなく“仮想社員(AIエージェント)”のように動けるようになります - 部門横断の調停・整理が可能になる
・推論能力は「矛盾点の検出」や「整合性の調整」も強化します
⇒組織全体の“認知負荷の削減”につながります - “人 × AI” のチームの生産性が爆発的に向上
・推論とは「文脈理解・過程理解・意図理解」でもあります
⇒•指示の不足点、改善案を逆提案、不整合等を指摘しより良い判断材料を提示できるようになり、人間の作業が指数関数的に加速します 以上を「小まとめ」すると、
『推論がもたらす最大の価値』は、単なる自動化ではなく、
“知的労働のレイヤー自体が変わる”という点にあります。
•作業 → 自動化
•判断 → 半自動化
•説明・構造化 → AIが主体
•企画・推論 → 共同思考
AI は「実行者」から「思考パートナー」「準意思決定主体」へ変わるということです。
AIが推論を獲得することによるインパクトを実感できたでしょうか?
■ 主な「推論(リーズニング)」
「ChatGPTが推論(リーズニング)できる」というのは、単に知識を検索・再生するだけでなく、情報の関係性を理解し、新しい結論を導く能力を持つという意味です。
以下で、主なリーズニングの種類・例・影響を簡潔に整理して説明します。
1.演繹的推論(Deductive reasoning)
・一般原則から個別の結論を導く
例:「すべての人間は死ぬ」+「ソクラテスは人間」→「ソクラテスは死ぬ」
2,帰納的推論(Inductive reasoning)
・具体的事例から一般的ルールを導く
例:何度もA社のキャンペーン成功例を分析 → 「A社の顧客は割引に強く反応する」と結論
3,アブダクティブ推論(Abductive reasoning)
・不完全な情報から最もありそうな説明を推測する
例:売上が急減→「季節要因か広告停止か?」と仮説を立てる
4,類推的推論(Analogical reasoning)
・類似したケースから洞察を得る
例:「Netflixの成功モデル」→「自社のサブスク戦略に応用できるのでは?」
5.因果推論(Causal reasoning)
・原因と結果の関係を分析する
例:広告クリック率上昇 → 「新しいクリエイティブの影響」と推定
6.道徳的・価値判断推論(Ethical reasoning)
・行動の妥当性や影響を考慮する
例;「AIで採用判断するのは公平か?」といった倫理的判断
本コラム「価値創造の知」では、「価値創造/イノベーション」について、その構造と実例を数多く綴ってきました。上記の「3,アブダクティブ推論」「4,類推的推論」を身につけることが有効であることを下記でお伝えします。
■ 参考:「3,アブダクティブ推論」と「価値創造/イノベーション」の関係
『アブダクション(アブダクティブ推論)』は、既存の枠組みや論理では説明できない状況に直面した際、新しい世界や領域からアイデアを「誘拐 (abduct)」してくるような創造的なプロセスであり、特に以下のような点で価値創造に貢献します。
・イノベーションの源泉: 既存の知見を組み合わせたり、異なる分野の概念を取り入れたりすることで、新しいビジネスモデルや製品の着想につながります。
・顧客ニーズの発見: 顧客の行動という「結果」から、その背後にある真のニーズや欲求という「原因(仮説)」を推測し、新しい経験価値を提供する製品・サービスを生み出すことができます。
・構想力の強化: 新しいアイデアやビジョンを構想する能力(構想力)の基盤となる思考法として重要視されています。
松岡正剛師匠は、「『アブダクション(アブダクティブ推論)』を以下のように説明しています。
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1,アブダクションは「われわれが直接に観察したこととは違う種類の何ものか」を推論できるということです。残念ながら帰納法には「違う種類のもの」は入りません。似たものばかりが集まってくる。けれどもアブダクションは「違うもの」を引き込むことができる。ここがとても重要なところです。
2.アブダクションは「われわれにとってしばしば直接には観察不可能な何ものか」を仮説できるという特色があります。いまだに例示されたことのない仮説的な命題や事例を想定することができるのです。これは哲学や社会学がこれまで前提にしてきた概念で言うと、いわば「ないもの」さえ推論のプロセスにもちこむことができるということで、きわめて大胆な特色になります。ぼくが気に入っているのは、ここなんですね。
このような驚くべき特徴は、アブダクションには例外性や意外性をとりこめる「飛躍」(leap)があるということを示します。・・・
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⇒イノベーションは、「価値創造のリープ/ジャンプ」(第338夜、第345夜)です。
価値創造の本筋は『切実→逸脱→別様』(第309夜、第333~334夜詳細)であり、『逸脱』して『別様』につなげる最の有効な推論(思考)が「アブダクション(アブダクティブ推論)になります。

■ 「推論(リーズニング)」の具体的な応用・効果
上記の主な「推論」の効果を上げてみると、
1.ライフスタイル
・事例:健康データから生活改善の仮説を立てる
・事例:家計簿から無駄遣いの原因を推論
⇒効果:自己理解が深まり、意思決定が合理的になる
2.教育/学習
・事例、学習者の誤答パターンから苦手分野を推定
・事例、最適な学習順序を提案
⇒効果:効率的な学びと習熟の加速
3.経営戦略
・事例:市場変化の要因分析
・事例:他業界の成功事例からの戦略類推
⇒効果;仮説構築力・意思決定力の強化
4.創造/企画
・事例:類似分野から新しいアイデアを抽出
⇒効果:イノベーションの質とスピードが向上
5,マーケティング
・事例:顧客データから購入動機を推定
・事例:キャンペーン効果の因果分析
⇒ROIの最大化、戦略の精緻化
以上、ChatGPTの推論がもたらす影響を「小まとめ」すると、
•思考の補助輪として、論理構築・仮説生成・判断支援を高速化。
•○○人間の創造性と組み合わせることで「知的パートナー」になる。
•結果的に、時間短縮・精度向上・新しい洞察の発見につながる
上記はほんの一例ですが、多業種業態で「AI改革」が進展するということがおわかりいただけたと思います。
その入口となるのが、前述した
A.「AIエージェント」=頭脳労働を代替
B,「AIロボティクス」=肉体労働を代替
になります。

■ 「生成AI成長経営」図解
『推論(リーズニング)』を手に入れた「AIデジタル」についてご案内してきましたが、日本はアメリカ、中国から2周遅れていると言われています。
「会社」「自治体」「教育機関」は、これまでの「様子見」では立ちいかないことがおわかりいただけると幸いです。
そして、既にアメリカでは「起こった未来」ですが、「AIデジタル」による失業者が生まれてきています。
ここでのメッセージは、
⇒「AIに職を奪われるのではない。AIを使いこなす誰かに職を奪われるのだ」
ということです。
・工業(MT):産業革命→人に変わる「機械」革命
・情業(IT):パソコン、インターネット革命
・脳業(AI):AI革命
第358~359を引用します。、
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・・・本年の「AI博覧会 Summer 2025」(8月)では、
『AIという超優秀な社員が、従来の働き手にとって代わっていく未来』が多くの職種でリアルに感じられました。
実際、そうなると思います。
アメリカの大学卒が、「上記AI社員」と比較されて就職難になっている、というニュースが届きましたが、これは他人事ではありません。
ホワイトカラーは勿論のこと、AIロボティクスで、ブルーカラーも同様です。(将来の移民政策にも大きな影響を及ぼすと洞察します)
■「AI維新の時代」に
明治維新に、武士という存在が時代の波に消えていったように、私たちには「劇的で大きな変化」が待ち受けています。
いま、日本や私たちに必要なのは、「仕事が無くなる」ことだけに右往左往するのではなく、その先に向けて、価値創造を起こし、素敵なライフスタイル、ワクワクするビジネススタイルが立ち上げることを、想像・創造・構想して、双方を両立させる力です。(これに対応するコンセプトと体系的な社長教育、社員教育、自治体教育、学校教育等々が必要不可欠です)・・・
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このピンチ(切実)をチャンス(逸脱・別様)に変えるための『覚悟(心の置き方)』と『戦略(ものの見方』のステージを上げる必要があります。
それを先取りすることが「新継続力」になります。
「生成AI]は、
・AIエージェント
・AIロボティクス
・AI・・・
・AIドラえもん
・AI空海
と進展していくと洞察します。
是非、「Well-being」を目指して、「本業(半分)」×「生成AI(半分)」から、[一(いち)」となる「価値創造/新継続力」を生み出してください。
再度お伝えします。
⇒「AIに職を奪われるのではない。AIを使いこなす誰かに職を奪われるのだ」

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ