橋本元司の「価値創造の知」第365夜:『価値の高い仕事は何か』を考え抜く

2025年11月28日:価値の高い『あてど(当て所)』を突き詰めて考える

 前夜では、「価値」を生み出す「3つの知」の体系をお伝えしてきました。
重要な観点は、
①「価値創造」の答えは、「3つの知」の余白にあるコト
②その「余白を見つける共通の手法」は、これまでの「常識、枠、境界」をまたぐ、越えるコト(=卵の殻を破ること)
③それら「三つの余白」を突き詰めて答えを出すコト
 にあります。

■ 『あてど(当て所)』」を突き詰める
 それらを踏まえて本夜は「価値創造の『あてど(当て所)』」に注力して案内したいと思います。
「あてど」という言葉のもともとの意味は、
・「そこ(的:まと)をねらって矢などを命中させる」
・「刀などを当てる所、当てようとする場所」
 のことですが、転じて、
⇒「物事をするにあたって、目あて・目的とするところ」
 をいうようになりました。

 さて、「価値創造による成長経営」を遂行するにあたって、目の前の局面のどこ(Where,What)を「あてど(当て所)」にするかで、結果は大きく変わってきますね。
それでは、下図(「イシューから始めよ」加筆引用)」をご覧ください。


 この図は、
横軸が、「課題解決の必要性の高さ(度合い)」
縦軸が、「課題の解決レベルの高さ(度合い)」

 で、簡易的に4つの箱(A.B.C.Ð)に分けています。

 さて、「皆さんの仕事やテーマは、どこにプロット(観測値を点でグラフに描き入れる)されますか? その仕事の「本来と将来」を考えて、書き入れてください。
 という演習を下記ワークショップの出だしのタイミングで行うことが多くなってきました。
・企業、自治体の「成長経営」ご支援
・起業(アントレプレナーシップ、スタートアップ)の研修、講演
・「発想・構想・実装」の研修、講演

 やはり価値のある「あてど(当て所)」は、右上B(価値の高い仕事)の象限(箱)ですよね。
 課題解決の必要性が高く、解決レベルが高いものを両立できれば、世の中(社会)から喜ばれ、評価され、顧客からの対価が大きくなります。結果的に、地域や企業が『成長』する一丁目一番地の象限(箱)です。

 若い人たちも右上の仕事を早期から携わることで、やる気や生きがい、対価、そして人生が変わってくるのは容易に想像できます。
そうであれば、このB箱(領域)の「価値(バリュー)の高い仕事は何か」を時間をかけてでも突き詰めることがとっても重要なのが分かります。このことに賢明な「外部の知」を活用することも有益です。(第2創業、第3創業の時に呼ばれることが多いです)

 そのワークショップから、皆さんの「プロット分布」から見えてくるのが、「A箱(領域)」のプロットが多いことと「C箱(領域)」のプロットが少ないことです。
経験上、この「A箱」ルートから「B箱」に移行することは余ほどのことがなければありません。それは、もともと「課題解決の必要性」の弱い(低い)ことが底流にあるからです。

 挑戦するのは、「C箱」から「B箱」に移行するルートです。その時に重要なのが、将来の「B箱(価値の高い仕事)」が何かをしっかりと突き詰めておくことで、その準備、溜めとして「C箱」で磨きをかけることです。
 そして、その時に役立つのが、前夜(第364夜)に詳細と事例を綴った「3つの知」です。
「3つの知」を突き詰めると、これまでの機能や常識とは異なる別流の意味(深い知)、将来像(高い知)、ワンランク上の価値(広い知)が生まれてくることを後述します。

 この「C箱」から「B箱」に自動的に移行している最適事例が、下記の「SDGsシフト経営」です。その「本来と将来」が自分の中でイメージできたため、10年前の2015年から、新価値創造研究所は、イノベーションによる「SDGsシフト経営」の伴走支援に舵をきりました。

■ 「SDGsシフト経営」とは、「B箱(領域)」経営!
  対象課題を「深く読み、高く読み、広く読む」こと(=3つの知)で、「B箱」の将来の姿が浮かびあがってきます。その姿(価値)を持って、下図の様に、現在に還ってくる、逆算して展開することがポイントです。

 SDGsとは、「必要性」が高く、迅速に実現して欲しい「17の社会課題」が選択されています。
つまり、「SDGs経営」にシフトすることはとても「意味のあるコト」「大切なコト」であり、それは「B箱(領域)」経営そのものです。

 それを、ボランティア活動やSDGsウォッシュ(企業が実態が伴わないにもかかわらず、あたかもSDGsに熱心に取り組んでいるように見せかけること)にしないで、企業、自治体は、「本業×SDGs社会課題」を両立して対価(利益)を持続的に創出することが『成長の源』です。
 これまで「SDGs成長経営」に深く関わってきましたが、周りを見渡すと、多くの企業が「C箱(領域)」でとどまっていて、「SDGsウォッシュ」のままなのが残念です。
 どう解決するかは、「SDGs経営の多くの図解と事例」(第281夜、SDGs 経営塾:全 10 回コラム詳細)で、実例と共にお伝えしてきましたのでそちらを参考にされてください。
https://www.kiraboshi-consul.co.jp/column/sdgs_vol2/

  前夜にも紹介しましたが、上図の逆算について中学生、高校生、大学生、社会人が納得されるコンテンツが、「大谷翔平選手の高校時代に目標達成シート」(下図)です。「なりたい姿からの逆算」が現在を変えていくのが実感できます。
 上記「目標達成シート(マンダラチャート)を自分ゴト(会社・地域)としてワクワクと検討され、そこを埋めて隆々とした姿、状況をイメージすることを通して、「C箱」から「B箱」にルートが容易になります。
 各研修、セミナー、ご支援プロジェクトでは、皆さんにシート作成に挑戦していただいています。効果絶大です。

■ 『成長経営』は、B箱「価値の高い仕事」から得られる
 B箱「価値の高い仕事」は、二つの要素(軸)でできています。
その二つの要素をしっかり認識して両立することが『成長経営』につながります。
それでは、その要素を確認していきます。
① 横軸「必要性の高さ」=大切なコト、意味のあるコト ⇒「深い知」
② 縦軸「解決レベルの高さ」=解決スキル ⇒「高い知」・「広い知」

 ①の横軸「必要性の高さ」は、「心の領域」です。
それは、下図の「大切なコト、意味のあるコト」「meaning」です。
第364夜でお伝えした「3つの知」の中の「深い知」を突き詰めるコトです。
そして、「新しい現実」という高い価値が生まれてきます。


 ②の縦軸「解決レベルの高さ」は、「解決スキル」の領域です。
第364夜でお伝えした「3つの知」の中の「高い知」「広い知」を突き詰めるコトです。
・「高い知」は、上記「深い知」を基盤として、「将来、何を目指すか」を突き詰めます。
 ⇒ それは、過去と現在をから「未来」を豊かにする方法です(=温故知新)
・「広い知」は、上記「深い知」と「高い知」を「具現化する方法」を突き詰めます。
 ⇒ それは、異質な二つを掛け合わせて一つ上のレベルの価値を創出(=主客一体)
上記「高い知」と「広い知」に共通するのは、
下記の様に、二つのものを両立させることです。
・「高い知」:過去と現在(時間軸)
 事例: 過去(寺子屋、よろづや、炭焼き等)
・「広い知」:異質な二つ(空間軸) 
 事例:本業×SDGs社会課題、本業×AIデジタル

■「A箱」のアウトプットをキッチリ出すのに必要なコト

 上記を踏まえて、本当に「大事なコト」をお伝えします。
 それは、
・心の領域: 切実、本気、自分ゴト、志、おおもと(深い知)
・モノゴトの見方の領域: 時間軸(高い知)、空間軸(広い知)
 という皆さんの内側にある二つの領域「心」と「モノゴトの見方」のステージ、フェーズを変える、上げるコトにあります。
 もう一歩踏み込んで言えば、「心の領域(大切なコト、意味のあるコト)」のレベルを上げる(志、本気)ことができれば、「モノゴトの見方」は必ず追随してきます。
 あなたの「心」のスイッチは他の誰からも入れられず、「あなた」しかONできません。
ただ、「高い知」「広い知」を習得することで、「深い知」のスイッチが入った経営者もおられたことを申し添えます。

 最後に、「価値の高い仕事」を突き詰めると「価値の高い人生」に繋がってきます。
その高みに変容する皆さんの声、表情、姿を現場で目撃するのが大数寄です。

そして、ここから「事業創生、地域創生、人財創生」の物語が始まります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ