2026年1月1日:『価値創造工学』とは

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2026年は丙午(ひのえうま)。
「情熱と行動力」を象徴し、
一気に流れを切り拓いていく年とも言われます。
先月、本コラムを第369夜まで綴ってきたせいか、
「価値創造工学」という言葉がスーッと脳裏に
浮かび上がってきました。
その仕組み・体系が、日本の「本来と将来」に
きっと役立つのではないかと想い、
元旦に、みなさまに公開しようと思い立ちました。
新価値創造研究所として12年間活動してきましたが、
前職含め、自分の内側に蓄えてきたものを再編集して、
将来に役立つ「プロセス・型」を外へと拡大・発信し、
前に向かって走らせていく年にしようと思っています。
■ 「価値創造工学」宣言の背景-①
現在の日本企業の多くは、過去の成功体験に基づくハードウェアを中心とした「効率化」や「品質向上」等のオペレーションには長けていましたが、ITに乗り遅れ、生成AIで出遅れて、ソフトウェアやヒューマンウェア(ハートウェア)を組み入れた「別流の新しい価値」を生み出す力(=価値創造)と「未来をにらんで立ち上がる力・気概」の不足が目立ちます。
・課題: 従来の工学は「いかに作るか(How)」に特化しすぎ、結果としてコモディティ化と失われた35年を招きました。(オペレーションの時代)
*受け身に立って未来を予測する時代から、
「あるべき未来とは何か」を考動する時代
*地域・社会において、自らが「預かったもの」や
「ライフワーク」を明確にすることが大切
*他者に「別流の喜びを提供すること」こそが重要な課題
・解決: 令和の時代は、下図の「何のために創るか(①Why)」、「何を創るか(②What)」を「具体化する(③How)」という「ひとつなぎ」を科学し、工学の手法で価値を設計する必要に迫られています。(イノベーションの時代)
*未来の課題を解決するのは、「深い知→高い知→広い知」(第364夜詳細)
*大切なコトは、「時代がもっている可能性」に果敢に挑むコト
*「未来の芽」は、すでに私たちの周りに点滅・明滅しているコト

令和の地球沸騰環境(生命サステナブル)、ビジネス環境(AIデジタル等)等では、「立つ・立ち上がる・自立する・両立する」 という動詞が、これまで以上に経営や事業創発のコア技術になります。
事業が立ち上がる、経営・組織を立て直す、人財が自立する、経済価値と社会価値を両立する、──これらはすべて、価値創造のプロセスをどう設計できるかにかかっています。
価値創造とは、後述する「切実のトリガーが逸脱を呼び、智慧の編集が別様の価値を構築する」という、一種の“立ち上げ工学”です。
■ 「工学」と「価値創造」の共通項は?
私は「理工学部機械工学科」出身で、「工学(エンジニアリング)」の道を歩みましたが、これまで、「工学」と「価値創造」をつなげて考えることはありませんでした。
私のこれまでの現場実践を振り返ると、
①前職パイオニア社(開発・企画の時代):技術開発統括→ヒット商品緊急開発プロジェクトリーダー→研究開発企画→シナリオプランニング開発→新事業開発→パイオニア人財開発→・・・
②現職新価値創造研究所(創生の時代):価値創造開発→事業創生→人財創生→地域創生→・・・
と、次々に「開発・企画・創生の領域・引き出し」が広がり、連結することで、「工学」と「価値創造」の二つが自然とつながってきました。
因みに、現職の新価値創造研究所では「新価値創造」をミッションにして、下記のように定義しています。
・「価値」とは、「人・世の中」に役立つコト
・「創造」とは、未来を先取りするコト
あらためて、上記ミッションは「工学」の起点・目的と同じであることに気づき、認識したときに不思議な驚きと感動がありました。
それでは、「価値創造」と「工学」の二つの共通項を洞察(A.B.C.)したものをご覧ください。
「A.共通項①」:「人の役に立つ」を起点にしている
・工学:技術は自己目的ではなく、社会課題・人間の不便・不具合を解消するためにある。
・価値創造:人々に役立つ(=価値)ことを先取り(創造)する
*どちらも「課題があるから始まる」学問・実践です。
*「切実(なんとかしたい)」という人間の内的な要請が起点。
*「純粋理学や思弁哲学」とは異なり、現場性・当事者性を前提にしています。
「B.共通項②」:正解が最初から存在しない
・工学:「与件・制約・環境条件」の中で、最適解を探索・設計する営み。
・価値創造:「切実→逸脱→別様」というらせんを回しながら、
価値そのものを発見・生成していく。
*探索的・試行錯誤的・プロセス重視という点で、完全に同じ型です。
「C.共通項③」:構想(Design)→実装(Implementation)→更新(Iteration)
これは、後述する「価値創造プロセス体系」の
・別様(構想)
・仕立て(統合・実装)
・共創(創発・社会化)
*「工学の基本プロセス」が美しく重なります。
| 「工学」の基本プロセス | 「価値創造」のプロセス |
| 要求定義 | 切実・気立て |
| 概念設計 | 逸脱・見立て |
| 詳細設計 | 別様・別流 |
| 実装・検証 | 仕立て・統合 |
| 改良・保守 | らせんの循環 |
令和の時代は、前述した「ハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェア」と「新3C(コンピューター、コミュニケーション、コントロール)」(第345夜、第358夜詳細)の二つが進展・結合して、デュアル「三位一体」構造になっています。
それに拍車をかけているのが、「AIデジタル(=キュービタル:第40夜、205夜、303夜、350夜)」「生命サステナブル(第360夜)」ではないでしょうか。
「iPhone」、「AIロボティクス」、「AI自動運転」等をみても時代の流れが急です。
「イノベーション」とは、下図の「自分(たち)の内側に異質(SDGs17の社会課題、AIデジタル、異業種コラボレーション等)なものを導入して新しくする(=新結合)」コトです。
それが、イノベーションの本質であり、価値創造のための極めて重要なアプローチです。
イノベーションこそが、既存の枠組みや同質的な価値観に非連続な変化をもたらし、新たな社会的・経済的価値を生み出す原動力となります。

日本は、ハードウェア特化の「昭和のオペレーション時代」から「令和のイノベーション時代」へのシフトが急です。(第333夜詳細)
その様な時代ならばこそ、多くのメディアで下図の「価値創造(目的)・イノベーション(手段)」(第357夜)が叫ばれていると思いませんか。

「価値創造/イノベーション」を工学の手法で価値設計する必要性から、「価値創造工学」として立ち上げることが私たちの将来に、きっと役立つと確信しています。
さて蛇足ですが、日本文化の「おもてなし」は、「しつらい(ハードウェア)、ふるまい(ソフトウェア)、心遣い(ハートウェア)」という上記同様の「三位一体の構造」(第2夜・第20夜・第93夜)でできています。
この三位一体の「おもてなし」が、その構造と本質価値が広く理解されて、「AIロボティクス」「生成AI」「サステナブル」等にも組み込まれて、一段と脚光を浴びる「文化経済の時代」(第136夜、第362夜)になることも、ここで宣言します。
■ 「価値創造工学」宣言文

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価値創造工学とは、文系・理系を問わず、
「人の役に立つ仕組みを考え、試し、社会に届けるための[心得・思考・実践]の方法論」である。
私たちは、技術や知識を学ぶことそのものを目的としない。
私たちが向き合うのは、
人や世の中(社会・生命環境)が抱える
切実(=なんとかしたい)な「問い」であり、
それを通して、これまでの延長では解決できない
「別流の価値」を創出することである。
価値創造工学は、
人間の切実・逆境・受難を起点に、
既存の枠組みを問い直し、
新しい見立てを構想し、
それを社会の中で機能する価値として
設計し、試し、更新し続けるための
思考と実践の体系である。
私たちは、
正解を早く出すエンジニアではなく、
問い(Why?What?How?)を回し、
更新し続けるエンジニアを育てたい。
失敗を恐れず、
境界を跨(また)ぎ、
気概(根底的な精神性)を持って
逸脱を創造に変え、
他者と協働しながら、
価値を社会に届ける。
価値創造工学とは、
人の「心(気概)と智慧(方法)」の両立を通して、
「人の役に立つとは何か」を問い続け、
その想いをカタチ(型)にする方法と営みである。
◆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◆
■ 「価値創造工学」宣言の背景と構造-②
現代社会は、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と呼ばれ、
従来の「正解を探す」教育だけでは対応が困難です。
「情報編集」から一歩進み、未だ存在しない「価値」を自ら「創造」する能力が不可欠です。
本宣言は、編集工学研究所・松岡正剛先生の「編集工学」を基盤とし、新価値創造研究所の「らせんプロセス体系」を実践的技法として体系化した新領域「価値創造工学」の提唱です。
あらためて、編集工学研究所の松岡正剛師匠は、「編集工学」という独自の分野を提唱し、「物事のつながりや、多様な情報・知識が関わり合って新しい意味を生み出すプロセス」を重視し、実践されてきました。
松岡先生から指南された「編集工学」の思想・方法が、上記宣言の「価値創造工学」という新分野の提唱に繋がっています。
■ 「価値創造工学」の実践的プロセス体系
「価値創造工学」は、下記「3つのプロセス」が「らせん的」に関わりあい、つながりあって「価値を創造する」実践的プロセスです。
1.別(べつ):「切実→逸脱→別様」という「価値」が生まれる外的なプロセス
2.立(たつ):「気立て→見立て→仕立て」という人間の内面から駆動する内的なプロセス
3.結(むつ):「深い知→高い知→広い知」という上記を結ぶインターフェース的な解決プロセス
上記1.2.3.を図解します。
詳細は、第364夜、第368夜、第369夜に綴っています。


■ 「価値創造プロセス体系」全体像
上記の「価値創造らせんプロセス」をシンプルな全体像に図解したものが下図になります。
この図をまとめるきっかけになったのが、弘法大師空海の「両界曼荼羅」です。(第369夜詳細)
右脳の働きである「切実・気概(心)」と左脳の働きである「逸脱・方法(智慧)」が結合した時に、「別流・別様(型・カタチ)」が現れます。
是非、一流人のスポーツ選手(二刀流・大谷翔平、山本由伸等)やプロジェクトX、茶道、書道、華道、文芸、料理等々の成長プロセスに当てはめていただくことで、「切実→逸脱→別様」のらせんプロセス理解が進むように思います。

■ アントレプレナー向け「ワークショップ」
上記、「価値創造プロセス」をベースにして、アントレプレナー向けに「ワークショップ・基礎編」に展開したものが下図になります。
現在は、「立つ」時代です。
・「役に立つ」「両立する」「自立する」・・・
・立志、立身、立国、立社、立地域・・・
「右脳:気立て、気概、本気」と「左脳:見立て、智慧、方法」が両輪・合体して、「実践:仕立て、別流、別様」に向かうことがポイントです。
これからのアントレプレナー、イノベーターに必要なのは、「価値創造の知(理論)」と「実践の知(現場)」の両立です。その両輪を多様な人財が集まって、ワークショップ(わかりやすい演習と実例・ビデオ等)で協働で習得・納得していくことがたいへん有効です。
そこでのワーク演習の前半では、一人一人の「切実(自分ゴト・なんとかしたい)」を深堀して(深い知)、「逸脱(枠を出る・越境する・境界をまたぐ)」するプロセスを実感・体得(高い知)します。
「切実・自分ゴト」という本気(根底的な精神性)が土台にあることで、それに触発された「智慧(3つの知)」が湧出してきます。
参加者(仲間)の「切実(根底的な精神)の多様性」を演習を通して知り、これまでの「境界の外の異質」を探索して、看過できない異質を内部に導入(イノベーション)して、「結ぶ」「構想する」(広い知)ことを通して「別様の価値」と「ライフワーク」が生まれ、新しい成長が始まります。
ご覧の様に「教育的特徴」には、大学の学部横断、企業の社内(組織)横断、自治体の部局横断、産学官連携で実施可能な構成になっています。

■ まとめ
価値創造とは、特別な才能やひらめきから始まるものではありません。
それはまず、目の前の問題・課題を「切実(なんとかしたい→なんとかする)」として引き受けることから始まります。
そして、その切実が心を動かし(気立て)、既存の枠を越え(逸脱)、新しい把え方を与え(見立て)、現実の別様の価値として立ち上げる(仕立て)ことで完成します。
・「学生」にとっては、学びや研究、進路を「自分ゴト」として
立ち上げる思考の型であり、
・「ビジネスパーソン」においては、事業や組織を再生・創発する
ための実践的な編集技法です。
⇒ 価値は「思いつく」ものではなく、「立ち上げる」もの。
⇒重要なコトは、自分たちが素敵だと思うことは他者に頼まずに、自分たちでやってみるということ。そのことへの共感は必ず得られます。
「心と智慧」を往復・両立・合体させながら、「別様・別流」を現実に仕立て、実装していくところに、令和の「価値創造の本質」があります。
上記のワークショップは、学生・ビジネスパーソンに「正解を出す力」ではなく、
不確実な時代に問いを回し続ける「価値創造の力」を育てる内容です。
価値創造は、直線的に成果を出すことではなく、
「切実(自分ゴト)から問いを立て、前提(常識)を疑い、小さく試す(実行する)」
という「らせん」を回すことから生まれます。
上述の前職パイオニア社時代の連続ヒット商品化・新事業創出、及び、現職の新価値創造研究所の多業種業態の伴走ご支援はその連続の思考錯誤と実践でした。
現職の「伴走支援の現場」では、
「らせん」を一回し、二回して磨きをかけることで、
次のワクワク・ナゼナゼの「課題と別様」が立ち現れてきます。
それをまた「らせん」で回すことが
構想と課題解決と実装を引き寄せます。
・「心と智慧(構想)」と「別様と共創(実践)」の両輪が「価値創造工学」です。
本プログラムでは成果物ではなく、
この〈らせんプロセス〉そのものを評価します。
・「変化」は今までと違う思考で始まり、今までとは違う行動から生まれる。
・「成長」のために、心の置き場所とモノゴトの見方のステージを上げる。
・「挑戦」しないことこそが、1番の失敗である。
起業志向に留まらずに、就職・研究・SDGs・事業開発・地域幸福・社会実装まで、
学部横断、社内横断、部局横断、産学官連携で活用できる「基盤教育」として活用していただければと思います。



価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ





















































































































