橋本元司の「価値創造の知」第360夜:「地域幸福度(Well-being)指標活用」と「事業創生(新ルル三条)」

2025年10月3日: 『生命サステナブル・AIデジタル・日本流コネクタブル』の統合

 本夜は、一昨日「地域幸福度(Well-being)指標活用ファシリテーター」に登録(登録番号:WB07018)されたこともあり、「A.地方創生(Well-being)」と「B.事業創生(新ルル三条)」を組み合わせた内容をお伝えしたいと思います。
 この「A.地方創生(目的:何のために)」と「B.事業創生(手段:どのようにして)」はコインの裏表です。
その目的と手段を何回も行き来(リバース)して検討することで、変革・改革する姿が浮かび上がってきます。

後述しますが、
1.目的:日本のこれまでのまちづくりでは、『街全体の目指す価値観の明示が不十分』であり、目的や取り組みも十分に整合はされていないことにあったコト
2.手段:変革と成長に不可欠な『3大要素の洞察・実装』が、「地方創生・事業創生・人財創生」に不足しているコト
 の二つが大きな課題です。
 この二つの課題解決について順番に綴っていきます。

◆「地域幸福度(Well-being)指標活用ファシリテーター」登録
 前夜(第359夜)に、「デジタル庁の「地域幸福度(Well-being)活用指標」ファシリテーター」の資格取得について綴りました。
そして昨日、「デジタル庁の地域幸福度活用指標ファシリテーター」として登録されました。私の登録番号は[WB07018]です。
https://well-being.murc.jp/facilitator/WellbeingFacilitatorList.html

 地域幸福度活用指標とは、と
⇒市民の「暮らしやすさ」と「幸福感(Well-being)」
 を客観的なデータと主観的なアンケート調査の結果から数値化し、可視化する指標です。
 デジタル庁が推進する「デジタル田園都市国家構想」において、
①「心豊かな暮らし」
②「持続可能な環境・社会・経済」
の実現に向けた取り組みを支援するための共通言語として活用されており、まちづくりの企画・立案や、多様な関係者の連携強化に役立てられています。

 背景には、これまでのまちづくりでは、街全体の目指す価値観の明示が不十分であり、目的や取り組みも十分に整合はされていないことにありました。
地域のWell-beingの向上にあたり、指標を利用することで、『価値観や目的をすり合わせ、それぞれの取り組みの円滑な連携を図ること』ができるようになることを狙いにしています。
出典:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/dai7/shiryou5-1.pdf

 「暮らしやすさ(客観)」 と「幸福感(主観)」を数値化・可視化することで、共通感覚・共通言語を共有して、その地域の街づくりの企画立案や、いろんな立場の人たちがつながるきっかけをつくることが可能になってきます。

◆ 日本新成長の変革(トランスフォーメーション=X)に不可欠な3大要素(新ルル三条)

 前夜(第359夜)にも綴りましたが、後戻りしない変化をトランスフォーメーション(X)といいます。
あらゆる場面で、日本新成長を構想する時に、服を着替える様な「チャンジング」ではなく、蛹が蝶になるような後戻りしない「トランスフォーミング」を検討・洞察・実装することが肝要な時代です。

 新価値創造研究所が考えるその「3大要素(トランスフォーメーション)」を記します。
1.「生命・サステナブル」:SX⇒あり続けたい(Outer)
2.「AI・デジタル」  :AX⇒知能技術活用(I/F)
3.「日本流コネクタブル」:JX⇒見たて・仕立て(Inner)

 これまでの財・アセット(経済的価値のあらゆるものすへて)と上記の「1~3」を組合わせて新しい化合物(=イノベーション)を創ることが、日本の「価値創造」の本流です。

1,「生命サステナブル」
 地球沸騰が切実なものとして、人類を襲っています。
キーワードは、『あり続けたい』。
 気温が、破滅的な50度C、60度Cに近づいています。
この「生命サステナブル=あり続けたい」は、2015年、150を超える国連加盟国首脳が参加した「国連持続可能な開発サミット」で採択となった国際社会共通の「持続可能な開発目標」のことです。
 私は上記に賛同して、2015年から「企業創生、地方創生、人財創生」を伴走支援、講演をしてきました。
この「価値創造の知」コラムでは、「本業×SDGs」について多くの心得と方法と実例を記してきました。
これから5年で、さらに切実なコトになるのは間違いありません。
 ポイントは、「社会価値(社会課題解決)と経済価値(利益)」の両立(イノベーション)にあります。
その架け橋になるのが、「価値創造」です。

2.「AIデジタル」
 「AI革命」です。
 前夜、前前夜(第358~359夜)に、記してきましたのでご覧ください。
好むと好まざるとにかかわらず、「AI革命」が大きく、世の中(世界)をライフスタイル(世間)を変えていきます。
失われた30年の大きな原因は、「本業×IT」のシフトができていなかったことです。
いまだに、FAXを使っていることが、その象徴です。
 「AIデジタル」は、米国・中国から2周遅れの状況です。

 そして、ここに「AIデジタル」のトランスフォーメーション(X)が本格化してきました。
ここで、「AIシフト」ができなければ、失われた30年を繰り返すことになります。
ポイントは、「AIはドラえもん化(智慧×慈悲)」するということです。
『空海』の二つの曼荼羅図(智慧×慈悲)に学ぶことが肝要になります。

3.「日本流コネクタブル」(ジャパネスク・トランスフォーメーション)
 上記1.2.は、これからの人類の「光と影」を映し出しています。
いずれにしても、「切実」が目の前に現れて、取り組まなければならない「2トップのX(トランスフォーメーション)」になります。
そのピンチをチャンスに変えることができるかが、日本の経済成長に大きな影響を及ぼします。

 さて、上記の1.2.は、世界のどの国も取り組まなければなりません。
そして、だんだんコモディティ化(一般化)していきます。
その前に、どのようなフィルターをかけて、価値のある化合物(イノベーション)を創るのかが重要になります。
その方法を、松岡正剛師匠は、「苗代的思考(第119夜)」と表現をしました。

 第119夜から加筆引用します。
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本夜お伝えしたいキーワードは、「苗代(なわしろ)的思考」と「コードとモード」です。

 ・・・「苗代(なわしろ)的思考」ですが、今の日本、これからの日本、そして、あらゆる会社や地域に有効です。

 『いま日本に足りぬものは苗代(なわしろ)であり、グローバリズムの直植えではありません』

 さて、苗代(なわしろ、なえしろ)とは何でしょうか?
苗代とは灌漑によって育成するイネの苗床である。 もともとは種籾(イネの種子、籾殻つきの米粒)を密に播いて発芽させ、田植えができる大きさまで育てるのに用いる狭い田を指した。
「苗代」は日本特有の文化で、苗を直植えしないで仮の場所で育ててから植え換えをする方法です。


 「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
古代から、 日本は外国から「コード」、いわゆる文化や技術の基本要素を取り入れて、それを日本なりの「モード」にしていく、様式にしていくということが、たいへん得意な国だったのです。
・・・重要なことは、『外からのコード(基本要素)をそのまま受け取らずに、自分の中で編集してモード(様式)化』していくことが肝要である。・・・
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 松岡正剛師匠からは、未詳俱楽部(第17夜、26夜、119夜、136夜)というプライベート倶楽部で、「日本流」「日本の方法」「手続きの知」等を、20年に亘る『格別・別格の一流人』との出会いを通して体感し、学ばせてもらいました。
 松岡正剛師匠の「日本という方法」「日本流」「日本力」「匠の流儀」「別日本で、いい。」「空海」という別格の本がありますので参考にしていただければと思います。

・知
・縁
・一対
・間(ま)
・守破離
・数寄
・余白
・日本流
・おもてなし
・苗代思考
・無常迅速
・別様
・虚実
・バロック
・フラジャイル
・イメージメント
・連想
・コードとモード
・鍵と鍵穴
 等々の「視点・視座」や「型」を、一流の現場(未詳俱楽部)を通して、直伝で授かってきました。

 
 上記、「1.生命サステナブル(SX)」と「3.日本流コネクタブル(JX)」の化合物、連携、組合せ(イノベーション)については、このコラムで多くを綴ってきました。
次に、「2.AIデジタル(AX)」と「3,日本流コネクタブル(JX)」の組合せ(イノベーション)についても、キュービタル(第40夜、205夜、350夜)というキーワードを使ってお伝えしてきました。

 さてさて、これからですが、上記1~3のSX・AX・JXを新結合(イノベーション)した価値創造を進めていこうと思います。
それが、日本成長の核心・確信・革新です。
3つのトランスフォーメーション(SX/AX/JX)の語尾(サステナブル・デジタル・コネクタブル)の「ル」をまとめて、「新ルル三条」と命名しました。
この様なネーミング編集の重要性も松岡正剛師匠から学びました。

◆「地方創生」・「事業創生」・「人財創生」を融合・統合・組織化

 「地域幸福度(Well-being)指標活用」の苗代的思考として、「新ルル三条」は不可欠なトランスフォーメーションと確信しています。
そして、「地方創生」には「事業創生」「人財創生」が不可欠です。
「新ルル三条」は、「地方創生・事業創生・人財創生」のすべてに必要不可欠です。

 上記を、新価値創造研究所の特徴として推進していきたいと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第359夜:IT革命からAI革命へ

2025年9月18日: 『時代の波に飲み込まれずに、時代の波に乗っていけるか』

■ 前夜(第358夜)のまとめ&追記(生成AIの二つの代替)

 前夜は、大きな時代の流れ(『農業→工業→情業→脳業→幸業』)の中で、
①「AIエージェント」=頭脳労働を代替
②「AIロボティクス」=肉体労働を代替
③上記①②の「AIエージェント(=AI社員)」・「AIロボティクス」の積極的活用で、明治維新の武士という存在が消えていったことと同じ状況が発生すること
 を綴ってきました。

■ 大局でみれば、生成AI導入は「日本の課題である人手不足」にラッキー

 日本は人口減少の影響で「人手不足」と言われています。
そのため、様々な場面・場所で「働き手」の募集が行われています。
それを大局的にみれば、「AIエージェント」「AIロボティクス」の迅速導入により、これまでの仕事の「人手不足」を解消できます。
それは逆説的に、「人口減少」の国は、「AI」登場・代替がラッキーな救いになるということです。
 ただ過渡期においては、もうアメリカでは「起こった未来」ですが、失業者が生まれてきています。
ここでのメッセージは、
 →「AIに職を奪われるのではない。AIを使いこなす誰かに職を奪われているのだ」

■「AX(AIトランスフォーメーション)」:後もどりしない変化
 「AX」は、「AIトランスフォーメーション」の略で、AI(人工知能)を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革し、企業の生産性向上や競争力強化を目指す、後戻りしない変化・取組みを指します。
 これまで、
・「DX(デジタルトランスフォーメーション)
・「SX(サステナブル・トランスフォーメーション)」
・「GX(グリーントランスフォーメーション」
 という言葉を企業・自治体・学校の研修・セミナー・伴走支援でよくお伝えしてきましたが、ここに「AX」が追加されました。

■参考引用: 2020年12月23日 SXとDXが日本成長戦略の2本(日本)柱

 2020年12月、菅総理が『グリーンとデジタル』を日本の成長戦略の二本柱と発表しました。(第305夜)
①グリーン=SDGsトランスフォーメーション(SX/GX)
②デジタル=デジタル・トランスフォーメーション(DX)
 2050脱炭素宣言を通して、やっと日本政府の成長戦略の方向性が決まりました。遅かったですね。
この二つが出そろったのは、「コロナ禍」のおかげといってもいいのではないでしょうか。

 「X」というのは「トランスフォーメーション」の略で、
・後戻りしない変化、変容 のことをいいます。
 服を着替えるのは、「チェンジング」といいますが、「オタマジャクシが蛙になる」、「サナギが蝶になる」ような後戻りできない変化を「トランスフォーミング」と云います。
後戻りしない変化(X)の波に乗るか、波に飲み込まれるか、トップリーダーのセンス、手腕、力量が問われています。

■「AIエージェント(AI社員)」による生産性向上

 日本は長らく、「海外と比べて生産性が低い」ということを言われ続けていました。
この「生産性の低さ」が、生成AI導入によって解消される「チャンス到来」です。
 IT革命で下遅れて、DX導入を推進してきましたが、これまでなかなかできなかったことが「AIエージェント」と「AIロボティクス」の導入と活用によって解決するという道筋が見えます。
 そうすると、「AIエージェント/ロボティクス」を導入できたところと、導入しないとことでは、当然、差がついてきます。
 ただ、AIはDX領域の中の特区であり、DX導入ができていない企業が、迅速にAI導入できるかどうかは難しいところがあります。
これから、あらゆる場面で、否応なく「AI導入(ホップ)・活用(ステップ)・新成長(ジャンプ)」が不可欠の時代に突入しています。

 基本的視点は、「人間を最も人間らしく遇する道は、その介在をなくすことができない仕事だけを人間に残して,機械(AI)にできることはすべて機械(AI)にやらせることである」(第345夜、第358夜:オムロン創業者・立石一真氏 加筆引用)
「機械(AI)にできることは、機械(AI)に任せて、機械(AI)ができないことを人間が遂行するということです。
ここにきても、「様子見をしていて、動かない政治家、企業経営者や自治体リーダー、教育機関」は問題があります。
 重要なことは、この「生成AI」という手段を活用した「上位の目的は何か」ということを想像・創造して取組むことが重要です。
後述します。

■「競争」から「共生」へ

 いまのビジネス界や社会では、「AI」を「競争」に活用する流れが急です。
① 競争するビジネスの宿命(AIエージェント/AIロボティクス代替)
② 戦争が続く人間欲望社会(AI兵器の活用)
③ 上記①②による地球生態系の破壊

 私たちは、迅速なタイミングで、「生成AIを、いったい何につかうのか」というコンセンサスが必要です。
上記①②③を見れば、「AI」を「破壊」ではなく、「共生」に活用することが求められます。
 それが、
 『AI共生アライメント』(新価値創造研究所の造語)
(補足説明:「AIアライメント」とは、AIが利用者である人類の価値観や倫理観に沿って適切に行動することを保証するためにはどうしたら良いかという議論や研究のこと)
 
 その理解のために、「3つのエコロジー」を記します。

■ 「3つのエコロジー」第9夜、第277夜から引用

 ・・・この「価値創造の知」では『三つのエコロジー』を、2016年の第9夜という早い段階で取り上げています。そこでも記しましたが、「三つのエコロジー(1991年初版)」フェリックス・ガタリ著は、自分の人生に大きな影響を与えてくれました。
この本は、30年くらい前の1991年の初版を熟読したのですが、フェリックス・ガタリ氏の先見性に驚くとともに、そこで警告してきた「地球危機・人類危機」を一部の人を除いて、人々(政治・国連)はずっと放置してきたことを残念に思っていました。
・・・第9夜『三つのエコロジー』から少し加筆引用します。
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—従来のエコロジー運動がいわゆる「環境問題」(自然環境を中心とした)に限定されてきたことに疑問や不満を感じ、それだけでは現代世界の全面的危機に対処しえないとして、「環境のエコロジー」に加うるに、「社会のエコロジー」と「精神(心)のエコロジー」の三位一体理論を提唱する。

自分(橋本)の理解・編集では、
「人間は下記3つの世界(エコゾフィー)の中に生きている。
①地球環境   :物の公害(地球危機、気候危機)
②人間社会環境 :社会の公害(戦争、離婚等)
③心の環境    :心の公害(ストレス、ハラスメント等)

人間は上記の3つの世界(環境)に包まれていることを実感・納得するところから始まります。上記の①②③は切り離すことはできません。
強いて言えば、人間の精神・意識が①②に強く向かわなければ、変革にむかわなければ地球も社会・会社も個人も立ちいかなくなることが自明です。
 さて、2015年9月の国連総会で、193ヵ国全会一致で採択されたのは、
⇒「Transforming Our World(我々の世界を変革する)」
:持続可能な開発のための2030アジェンダ
が正式文書になります。
 それは、一人一人の精神・意識が、「わかる⇒かわる⇒実行する」(第8夜、第32夜、第70夜)にステップアップに向かわせたいツールであり、17の目標(ゴール)がSDGsです。
そのためSDGsは、地球危機・人類危機を謳いながら、社会・人間の課題からビジネスにも踏み込んでいるのです。
ビジネス(利益)と公益を結び付けなければ、解決に向かわないことを経験してきたからです。・・・
---------
 「エコロジー」とは「共生」のことです。
 上記の「3つのエコロジー」と「AI」を統合することが、喫緊の重点課題と思っています。

■ そして、「ウェルビーイング(Well-being)」の時代へ

 「ill-being」(イルビーイング)とは、健康や幸福、繁栄などの状態が欠如している状態、つまり「不調」「不幸」「貧困」などを指す言葉です。
その対義語が「well-being」です。
 [Well-being]とは、「私たちの将来の心身の健康、繁栄、幸せの持続的な状態」です。
 それは、「Transforming Our World(我々の世界を変革する)」の上位目的です。

 それは、「3つのエコロジー」の認識と実践で形づくられていきます。

 先日、デジタル庁の「地域幸福度(Well-being)活用指標」ファシリテーターの資格をとりました。
「AI」と「Well-being」の新結合にワクワクしています。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第358夜:脳業の時代「生成AIのビジネス実装」

2025年8月29日: 生成AIはチャットレベルを超えて、業務プロセス刷新の局面へ

■『農業→工業→情業→脳業→幸業→・・・』

 一昨日、有楽町の「東京国際フォーラム Summer2025」に行ってきました。
そこでは、生成AIはチャットレベルを超えて。「生成AIのビジネス実装」の段階に入ってきていることを実感します。
この出来事を感慨深く見ていました。

 それについて、「価値創造の知」コラムの第300夜(2020年8月)から引用します。
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 ・・・さてさて「記念の300夜」なので、10年先の2030年も踏まえながら、自分がどのように時代を洞察しているのかの筋を披露します。
[時代の流れ]
・貞業→農業→工業→情業→脳業→興業(幸業)→浄業→
上記は、28年前の前職パイオニア社の経営会議(1992年)で、これからの時代の流れを自分が発表したものです。
時代は、工業(製造)の時代から、工業が進化した情業(2005年~)にシフトして、その先には、脳業(AI)の時代(第109夜、第209夜)がくるというものです。
その「情業の時代」に適応した会社に変容しましょうというという基本的な考えと具体策を提案しました。・・・

 ・・・その後、シナリオプランニングの第一人者のJ・オグルビー氏を東京・目黒本社に招聘し、直伝のもと、将来洞察と具体策に磨きをかけました。(第15夜、第86夜、第126夜)
時代の流れを俯瞰すると、現在は「AI」が牽引する『脳業』の時代です。
と同時に、工業時代・情業時代・欲望の資本主義に傷ついた地球環境・社会環境を取り戻す『SDGs』の時代でもあります。
マクロ(世界)でとらえれば、(添付図のように)『SDGs×脳業』の両輪を融合させた『価値創造』がこれからの本筋(メインストリーム)になることは間違いありません。
ミクロ(世間)については、どこかで綴ろうと思います。そのキーワードは『匠』です。
[時代をけん引するトライアングル]
(図のように)このステージでは、
・力 技術:Computation
・愛 環境:Environmentation
・知 価値:Value Innovation
の3つの調和が肝要であることがわかります。
自分は、それらへの挑戦・調和を『SDGsシフト』と名付けました。
これまで「54夜」の連載で、その「心得と方法」を綴ってきました。
これから、マクロでみると産業や生活は、2030年に向かって、この『SDGs×脳業×価値』が新機軸、求心軸になって動いていくと妄想・確信しています。
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 前職パイオニア時代の1992年には、「脳業(AIデジタル)」の時代がくることが洞察できていました。
(*その時の洞察よりも、AIが人間の知能を凌駕する「技術的特異点」が10年前倒しになっています)

■『日本の再成長』を構想・図解:第345夜引用

 日本の再成長の最も大きな原動力となるのは、「テクノロジー」です。
「農業社会→工業社会→情報社会→脳業社会」と時代は、積み重なり、進展してきています。

 「情報社会→脳業社会」が、産業のコアとなり、それが「新農業」「新工業」(第N次産業等)へと影響を与えます。
 そこでは、3C(Computer、Communication、Control)というものを考えていく必要があります。

→「人間を最も人間らしく遇する道は、その介在をなくすことができない仕事だけを人間に残して,機械にできることはすべて機械にやらせることである」
 (オムロン創業者・立石一真氏 引用)

3C(Computer,Communication, Control)を人間の機能で表すと、
・①Computer:「脳」
・②Communication:「神経・通信」
・③Control:「手足」
 になります。

■令和時代の「3C」で最適化社会を創る::第345夜引用

 工業社会時代は、“③Control:「手足」”が中心でしたが、
現在は、“②Communication:「神経・通信」”、“①Computer:「脳」”が大きく進展したのはご存じの通りです。

それを科学技術の言葉で表すと、
①Computer:「脳」→ AI、量子もつれ
②Communication:「神経・通信」 → “IOWN 6G”
③Control:「手足・ロボット」 →AIロボティクス

 「脳業時代」はこの「3C」が原動力となり、新しい産業や生活が芽吹いてくると洞察します。
日本は、「3C」を三位一体にして、優位性と継続性を創れるかどうかが肝(きも)になります。
そして、上記の「B]と前(第344夜)の[AとC]の三つを大胆に交錯させて、どのように「最適な三位一体」にするかが、「日本成長の鍵」を握ると思います。

■そして、生成AIのビジネス実装へ
 上記、「工業→情業→脳業」の情業時代では、インターネット、スマホ、クラウドがなくてはならないインフラになっていますが、「生成AI」が必要不可欠なインフラになることは間違いありません。気になるのは、「大企業」の取組みの遅さです。大企業が率先して活用すれば、中堅・中小企業も取組むのです。
 「情業時代」に、ITビジネス対応で後れをとって、経済停滞(失われた35年)に陥った轍を踏んではいけません。「まだ様子を伺っている」経営陣は退陣をお薦めします。
 さて、今回の「AI博覧会 Summer 2025」では、
『AIという超優秀な社員が、従来の働き手にとって代わっていく未来』が多くの職種でリアルに感じられました。
 実際、そうなると思います。
 アメリカの大学卒が、「上記AI社員」と比較されて就職難になっている、というニュースが届きましたが、これは他人事ではありません。
ホワイトカラーは勿論のこと、AIロボティクスで、ブルーカラーも同様です。(将来の移民政策にも影響を及ぼすと洞察します)

■「AI維新の時代」に
 明治維新に、武士という存在が時代の波に消えていったように、私たちには「劇的で大きな変化」が待ち受けています。
いま、日本や私たちに必要なのは、「仕事が無くなる」ことだけに右往左往するのではなく、その先に向けて、価値創造を起こし、素敵なライフスタイル、ワクワクするビジネススタイルが立ち上げることを、想像・創造・構想して、双方を両立させる力です。(これに対応するコンセプトと体系的な社長教育、社員教育、自治体教育、学校教育等々が必要不可欠です)
 価値創造の兆し・予兆は、現在のあちらこちらに点滅・明滅しています。

 『時代の波に飲み込まれずに、時代の波に乗っていけるか』を深く高く広く洞察しましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第357夜:「アントレプレナー→イノベーション→スタートアップ」

2025年6月12日: 「気立て→見立て→仕立て」

■「失われた35年」への処方箋1990年初頭の「バブル崩壊」により、日本は「失われた35年」を持続しています。
そのことで、
・年金問題
・人口減少問題
・IT/AI分野の遅れ
 等々、
 それらは、若者から見たら、自分(たち)の「未来が抉られている」ように見えるでしょう。

 いま、上記に対応する、日本に最も求められている唯一の解決手段は『経済成長』です。
そして、「経済成長」の『源・おおもと』は、“価値創造”であり、実現する方法が“イノベーション”です。
(*“価値創造”が目的であり、“イノベーション”が手段・方法です)

 国会の論議、選挙で最優先されるのは、「経済成長」構想と実装なのに、「本格的な議論・構想・実装」には程遠いのが現状です。
その処方箋について本コラムでは繰り返し記してきましたが、大きくは日本社会全体が「オペレーション型体質」から「イノベーション型体質」(第333~334夜、第354~355夜)に移行できていないことが一番のポイントです。
(教える側に「イノベーション型人財」が極端に不足していることがボトルネックになっています)
 それを待っているわけにはいかないので、学校教育を含めて、先ず[5%]の人たちを「価値創造/イノベーション」人財に迅速に転換・創生することが求められます。

■日本政府「スタートアップ育成5か年計画」(2022年)

 2022年1月の岸田総理の「スタートアップ創出元年」宣言を受けて、同年11月に、今後5年間の「官民によるスタートアップ集中支援の全体像」をとりまとめ。人材、資金、オープンイノベーションを計画の柱として位置付け、網羅的に課題を整理していますので、関心のある方は、是非そちらをご覧ください。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/su-portal/index.html

 文部科学省も経済産業省も力が入ってきましたね。
 上記計画が発表され、補助金も含めて、“起業/スタートアップ/アントレプレナーシップ”に少なからず火が灯り、2023年には、「スタートアップ/アントレプレナー」関係の書籍がビジネス書の中央に並ぶようになりました。
 それでは、「スタートアップ/アントレプレナー」を整理してみます。

■ 「アントレプレナーシップ」と「イノベーション」→「スタートアップ」

 『アントレプレナー』は、新しい事業やサービスを生み出す「起業家」や「事業家」を意味します。
特に、ゼロから事業を立ち上げ、新しい価値を創造する人や、起業家精神を持つ人を指すことが多くみられます。
そして、『アントレプレナーシップ』とは、上記の「新しい事業やサービスを生み出すための精神的な姿勢や能力」を云います。

 一方、『イノベーション』という提唱者であるJ.シュンペーターは、「イノベーションとは、“モノやコト”が新しく結びつき、それが新しい価値として社会的に受け入れられて、経済が発展した状態のコト」と定義しています。
(*イノベーションとその本質を『新結合(New Combination)』と表しています)

・『アントレプレナーシップ』とは、「困難や変化に立ち向かい、新たな価値(新しい事業やサービス)を生み出していく精神や姿勢のコト」
・『イノベーション』とは、『「モノやコト」が新しく結びつき、それが新しい価値として社会的に受け入れられて、経済が発展した状態のコト」
 補足:『イノベーション』は、ヨーゼフ・シュンペーター(経済成長の創案者)の造語であり、イノベーションとは『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展するコトです。
(*「技術革新」は、イノベーションの一部という認識が必要です)

 つまり、上記二つは「新しい事業やサービスを生み出すコト=『創業』」が共通項であり、
・新しい価値を生み出す『ヒト・姿勢』に着目しているのが、「アントレプレナー」
・新しい価値を生み出す『方法・革新』に着目しているのが、「イノベーション」
 という認識です。
 
■アントレプレナーシップとスタートアップの関係

 次に、アントレプレナーシップとスタートアップの関係ですが、「アントレプレナーシップ」が「スタートアップ(起業)の創出や成長」を牽引する重要な役割を持っています。具体的には、アントレプレナーシップは起業家精神、つまり、新しい事業や価値を生み出すための挑戦的な姿勢を指し、スタートアップはそうした精神を持つ人々によって創出され
 つまり、アントレプレナーシップはスタートアップの基盤です。

 新しいコトに挑戦するには、次々に「壁」「抵抗」が立ってきますので、それを乗り超える強い「意欲」・「熱量」が必要になります。
その強い「意欲」・「熱量」が壁を乗り超えたり、トンネルに穴を開ける突破力になります。
そして、新しいコトは、一人では成し遂げることができないので、人を巻き込むことが必要になります。
人を巻き込む求心力(この指とまれ)になるのが「意欲」・「熱量」の大きさです。

■「アントレプレナーシップ」→「イノベーション」→「スタートアップ」

 この様に整理すると見えてくるものがあります。
・「精神」→「方法」→「実践」
 の流れに当てはめると
・「A.アントレプレナーシップ(精神)」→「B.イノベーション(方法)」→「C.スタートアップ(実践)」
 になります。

 多くの「アントレプレナー/スタートアップ」書籍に不足しているのが、上記A.とC.をつなぐ(橋渡しする)方法・手段が総花的で体系的になっていないことにあります。

■『A.気立て』→『B.見立て』→『C.仕立て』

『A.気立て』(強い「意欲」・「熱量」)があっても、構想的な『B.見立て』(対象テーマの本質や解決する「智慧」「方法」と「体系」)がないと、創造的な『C.仕立て』につながらないことを体験し、多くの案件に携わってきました。
 これが第342夜に綴った『気立て(想像力)・見立て(構想力)・仕立て(創造力)』です。

この図でワカルことは、「見立て」「構想力」は単独で生まれるものではないということです。
それは、「2+1(ツープラスワン」(第312夜)です。
・「気立て」→「仕立て」→「見立て」
 →「見立て」は「気立て」と「仕立て」のよい「間(ま)」(第311夜)から生まれてきます。
・「想像力(イマジネーション)」→「創造力(イノベーション)」→「構想力(インテグレーション)」
 →「構想力」は「想像力」と「創造力」のよい「間(ま)」から生まれてきます。

 上記から、「未来の可能性」と「ミッション・ビジョン・イノベーション」(第89夜、第122夜)が見えてきます。
 是非、アントレプレナー/スタートアップ人財を目指す方たちは、上記、「想像力」「構想力」「創造力」を体系的に習得されてください。
皆様の参考になれば幸いです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第356夜:「イノベーションと人的資本経営」ー続編

2025年6月3日: 「分け入れば思わぬ道もある」

 本夜は「イノベーションと人的資本経営」の続編です。
これまでの「前編・後編」の整理・おさらい(振り返り)から入り、その参考になる具体例をアップしますので、皆さまの理解の一助になればと思います。

■【概要】「イノベーションと人的資本経営(前編・後編)」のおさらい
【前編のポイント】
人的資本経営が注目される理由や背景について
● なぜ人的資本が注目されているのか?
企業の競争力を高めるには「人材への投資」が不可欠、という考えが広まっている。
目的は「企業価値の向上」、その手段として「人的資本経営」がある。
● 変化のきっかけ
2023年3月期決算から、人的資本に関する情報の開示が義務化。
 ①経営戦略の土台(どんなビジョンか)
 ②組織の仕組み(企業文化や風土)
 ③人材戦略(どう育てて、活かしているか)
→ これら3つを有機的に組み合わせて「成長する企業像」を見せることが求められている。
● 時代の変化
今は「経営戦略」と「人事戦略」が密接に連動する時代(令和の新常識)。
外部からの圧力(3つの“should”)もあり、危機をチャンスに変えるには、構造的な理解が必要。
その構造を示す「図解(ダイアグラム)」を紹介しました。

【後編のポイント】
変化の時代における人的資本・キャリア戦略
● 新たな図解(2軸:市場価値 × 時間)で人的資本を捉える
社員の才能やスキルを「市場でどれだけ価値があるか」「それがどれだけ持続するか」で見る視点。
● 適応すべき社会の3つの変化
 ・経営環境の変動
 ・雇用の流動化(終身雇用の終わり)
 ・デジタル化・AIの普及
→ これらの変化に対応するには、次の3つの連動が重要:
 ①柔軟な人的資本経営
 ②将来を見据えた成長戦略
 ③自律的なキャリア形成

【応用編】人事部の新たな役割とは?
● 「人事部」から「価値創造支援部」へ
従来の「労務管理中心の人事部」ではなく、
「経営戦略の実現に向けて価値を生む」部門になる必要がある。

● 新たな人事部の使命
・経営戦略を理解し、社内で人材育成の仕組みを整える
・社外に向けては、自社の成長ビジョンを発信し、共感する人材を引きつける
・成長意欲ある人材に、育成環境や仕組みをしっかり伝える

● 現実とのギャップ
多くの企業では、この理想の「人事部」と現状にはまだ大きな差がある

【まとめ】
人的資本経営とは、「人材を単なるコストではなく、未来への投資」と捉える新しい考え方です。
その実現には、企業戦略と人事戦略の連携が不可欠であり、人事部門には“価値を生む組織”としての進化が求められています。

■ 重要ポイント
 ここで一番大切なポイントは、「自分ゴト(SDGs経営塾 第4回)」として捉えられるかどうかにあります。

 「人的資本に関する情報の開示」が 2023年3月期の決算から、義務化されました。
そのため、「やらなきゃいけないから仕方なくやる」といった受け身の姿勢になりがちですが、
これをチャンスと捉えて、前向きに取組んでいただくことが成長につながっていきます。
しかし、経営トップ自身が受け身であれば、それがすぐに社員に伝わり、「価値創造」や「企業(事業)の成長」の可能性は著しく低くなります。

・「これは自分(たち)の課題だ」と本気で取り組めるか、
・そして、「やる気(ファイティングスピリット)」をもって取り組めるか
・トップが、課題解決のための戦略を明示できるかどうか、
上記を乗り超える意志の有無が成功のカギになります。

 本夜は、実際に取組みを進めている金融機関「イノベーションと人的資本経営」の事例・図解をご紹介しますので、是非先行事例の参考にされてください。
■ ひろぎんグループ(広島銀行)の取組みと展開
 多様な金融機関とご縁があり、ビジュアル上のお付き合いをしてきましたが、その多くが従来の延長上のやり方(事業モデル)には限界があることを痛感して、業態を再構築されています。
 その様な中、「ひろぎんグループの先行性、取組み・仕組み、展開」は秀逸に見えます。

 前夜(第355夜)に、「経営戦略の見直し:2軸(市場価値と時間)」を綴りましたが、「ひろぎんグループ」は、右手(既存事業)と左手(戦略事業)が両方使える「両利きの経営(第314夜、SDGs経営塾・第10回)」を明示して展開されていることが判ります。
・ ビジュアル化とそれに基づいた先見性・革新性・実践性
・ 何よりもそれを「打ち出せる人財」がいること、そして経営が承認・バックアップしていることがとっても重要です。

 具体的には、お客さまとのリレーションの最前線にいる営業店が金融以外のお客さまの課題・ニーズを掴み、把握した情報を正確かつ的確にそれぞれの事業会社につなぐ。
 そして事業会社はそれぞれ、専門性を活かして、課題解決・ニーズを踏まえたソリューションを提案していく。
 そして、それらが循環してスパイラルアップしていく。

 その取組みは、
・お客様目線の獲得(深く読む)
・1ランク上からの俯瞰目線(高く読む)
・異質と専門性を活かした課題解決(広く読む)
 につながります。(第89夜、第128夜、第333夜)

 そして、重要なことは、
・『分け入れば思わぬ道もある』
 ということです。
思いもよらない「偶有性・チャンス」が飛び込んでくるのです。

そのことで、様々なイノベーションチャンスの到来と人財創生(人的資本経営)が同時に図れることは、経験上間違いありません。

● 「人の能力やスキル」に応じた研修カリキュラム

 さて、ひろぎんホールディングス・経営管理部 人事総務グループ人材開発室の平山 剛寛室長は、これからのビジネスを担う「自律型人材育成の鍵と方向性」について、次のように話されています。
1.「どのような能力を有する人財がどこにどれぐらいいるか、あるべき姿に向けてどの能力やスキルを伸ばす必要があるかを考えることが“人財育成の鍵”」
2.今後の人財育成の方向性について、、
 ①1点目は、求められる知識やスキルがより専門化・多様化してきますので、個々人にパーソナライズされた学びが必要
 ②一方で、世の中の変化のスピードも速いので、せっかく得た知識・スキルが陳腐化することも容易に想定されることから、
  「土台となる人間力をしっかり鍛え、環境変化に適応できる人財を育成していきたい」
と話されています。 

● ひろぎんグループの「人財育成体系」について

 ひろぎんグループの人財育成体系は、「経営理念の実現に向けた人財戦略」を起点とし、経営理念や中期計画と育成体系が連動するように設計。
さまざまな外部環境変化を踏まえ、従業員エンゲージメントを土台に、個人と組織の両面から自律的なキャリア形成、自己啓発があり、OJTを中心とした育成体系と、それに連動する形でOff-JTを構成されています。

 上記の様に、ひろぎんグループは「これからのビジネスを担う自律型人財を創生する」ための様々な仕組み、取組みを用意・展開されています。
 いまは、情報時代ですから、是非「ひろぎんグループの企業戦略と連動した人事戦略」等を収集して、自社に合うように編集されてみてください。

 きっと、皆さまの「価値創造」と「成長」に役立つと想って紹介しています。
 
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第355夜:「イノベーションと人的資本経営」ー後編

2025年4月6日: 「自立・自律・自強」

■ プロローグ

 先週半ばに大事件が発生しました。
トランプ大統領の「相互関税」の発表・衝撃により、全世界レベルで『経済・ビジネスの前提条件』が変わります。
前提条件が変わるということは、言葉を変えると、
・「拠り所が変わる」
・「土台が変わる」
・「土俵が変わる」
 ということです。
そのことで私たちは、これまでの
・「アメリカ市場への依存体質」
・「国際分業体制(各国が得意とする商品を生産して輸出し合う経済連携の仕組み」
 等々から、否応なく『自立・自律・自強』に向かう覚悟と知恵と行動が必要となってきます。

この「価値創造の知」コラムでは、上記に対応するかのように、

・第350夜: これからの「会社創生・地域創生」と「人財創生」
・第351夜:「サスティナブル」の一歩先を行く「リジェネラティブ」へ
・第352夜:「維持ではなく、垣根を超える」
・第353夜:「閉じこもっていては発展しない」
・第354夜:「イノベーションと人的資本経営」前編
 を綴ってきました。

 そう、日本経済界、日本産業界は今回の大事が起きる前から、「失われた35年」に対応する必要がありました。
 
⇒「禍福は糾える縄の如し(第292夜、第348夜)」
幸福と不幸は表裏一体で、かわるがわる来るものだ。

 私たちは、今回の大事件発生を「ピンチはチャンス」に変えるいい機会だとポジティブに把え、「再成長」に向かうターニングポイントにしていく必要があります。
アメリカ、ロシア、中国の3つの大国は、「過去の栄光を『取り戻す』コト」を掲げて国際社会に混乱を起こしていますが、
私たちに必要なのは、「取り戻す」ことではなく、『未来を創り出すコト』にあります。
 それはちょうど、前夜からの「イノベーションと人的資本経営」について理解するグッドタイミングの「事例」となります。

■ トランプ流「相互関税」の波紋

 あらためて、トランプ大統領の「相互関税」の発表で「これまで想定していた前提条件」が大きく崩れてしまい、「経営戦略」を見直さなければならない企業が続出する可能性があります。

⇒「相互関税」発動→(上流からの)発注量減少→事業の縮小→これまでの延長線上の事業の見直し
 という流れがすぐに頭をよぎります。

 早速、トランプ流「相互関税」発表の翌日のWBS(ワールドビジネスサテライト)放送では、中小企業の「(株)極東精機製作所の鈴木亮介社長」のコメントを紹介していました。
そこでは、
①ビジネスモデルの見直しが必要。(第107夜、第142夜、第350夜)
②下請け体質から抜け出すために、自分たちでモノを考える。(第314夜、第345夜)
③(下請けから抜け出すために)一般消費者向けに注力する。(→両利きの経営:第335夜、第348夜)
 という「これまでのやり方と『別様の可能性』」に踏み出さざるを得ない「切実」を物語っていました。

■ 『別様の可能性』:「下請けから脱皮したい、抜け出したい」

 さて、新価値創造研究所には、この「相互関税」発動の3~4年ほど前から
・「これまでのビジネスモデルでは将来がない。下請けから脱皮したい、抜け出したい」(第314夜)
という切実な中小企業経営者からの依頼が急増していました。

・発注先の経営が右肩下がり
・度重なるコストダウン要求への嫌気
・自社の将来成長の見通しが立たない、展望が開けない
・近年政府が謳う賃上げに対応できない
 等々です。
 今回の問題に衝撃が走ったのは、日本産業界の最後の柱(1本柱)である「自動車産業」に火がついたことにあります。
(ただ、この自動車産業も「クルマのiPhone化」「EV化」等の前提条件が変わることにより、ビジネスモデルの見直しが急でした)
「日本の再成長」については、第334~335夜、第349~350夜に綴っています。

 先ず、これまでの「やり方」では埒が明かず、「前提・土台」・「あり方」(第321夜、第333夜)から見直すという認識が肝要です。
 この時代の大きな変わり目には、昭和時代の「オペレーション型」から、価値を向上する「イノベーションの型(第333~334夜)」への迅速な転換が求められています。
そのための「心得」「体系的方法」「実例」をこのコラムでは繰り返し綴ってきました。

■ 「経営戦略の見直し」:「市場価値軸(横軸)」と「時間(縦軸)」という2軸

 上記の様に、これまでの「経営の前提条件」が変われば、当然、「経営戦略」の見直しが必要になってきます。
そこでは、「市場価値軸(横軸)」と「時間(縦軸)」という2軸のもとに、図のように4つの象限(世界)が現れます。

 上記、「(株)極東精機製作所の鈴木亮介社長」は、右側の「動的経営」に舵を切ろうとしているのです。
それは、左側の「静的経営」を無しにするのではなく、新しい「動的経営・戦略事業」への可能性に挑戦する「二刀流経営」です。
これをビジネスの場では、右手(既存事業)と左手(戦略事業)が両方使える「両利きの経営(第314夜、SDGs経営塾・第10回)」といいます。

 前述のように、3~4年ほど前から
・「これまでのビジネスモデルでは将来がない。下請けから脱皮したい、抜け出したい」(第314夜)
という切実な中小企業経営者からの依頼がありました。

・切実→逸脱→別様(第333~334夜)

 という次の本流のための道筋です。

 その先駆者、先達者が挑戦・実現してきた多くの先取り実例をこのコラムで綴ってきました。
たいへんなのですが、早く速い「決断・覚悟」と「逸脱・別様」が功を奏します。それは後述します。

 ただ、ここでも右側の「静的経営」に留まる企業経営者が多いのあれば、「失われた35年」のように、日本の経済界・産業界がまた遅れることは間違いありません。

・「ピンチはチャンス」 「禍を転じて福と為す」(第290夜)
・「閉じこもらず、垣根を超えてジャンプしましょう」(第330夜、第352夜、第353夜)

次夜に綴りますが、新しい領域に踏み込もうとする時に『偶有性・別様の可能性(コンティンジェンシー)』が生まれてくることを先にお伝えします。

■ 「イノベーションと人的資本経営」

 上記の図解「経営戦略の見直し」では、「現在の状態(as is)」から、「3つの展開(上、右、斜め上)」があります。

その展開・挑戦に、「静的イノベーション、動的イノベーション」の出番があります。
繰り返しになりますが、挑戦することで昭和の「オペレーション型」から、令和の「イノベーション型」への移行が進みます。

 「経営戦略の見直し」があれば、それにともなって、当然「人事戦略」も連動します。
左側の「静的経営」であれは、従来の延長線でやるのでしょう。ただ、早晩その先の新展開は困難になっていくことが洞察されます。
 
 次に、これから移行が増加する右側の「動的経営」であれば、当然「人事戦略・人的資本経営(第354夜)」は「経営戦略」に連動した『経営人事』に移行します。

■ 「経営人事・ダイアグラム」

 それでは、前夜に提示した「経営人事・ダイアグラム」をご覧ください。


前編では、令和の時代が「経営人事領域」で「経営(事業)戦略と人事戦略」が本格的に連動するトキである背景と、「3つの外圧(should)」を有機的に統合して、ピンチをチャンスに変えるための「構造図」をお伝えしました。
 
 トランプ流「相互関税」は、「経営戦略の見直し」を促し、その『切実な』課題・問題を解決に導く「新・経営戦略」に基づいた「新・人事戦略」(「3つの外圧(should)」を有機的に統合)を策定する必要があります。

 「3つの外圧(should)」は、下記3つの要素です。
1.「企業価値の向上」を目的とした「自社の人的資本経営」
2.「人財獲得」の武器となる「自社の成長ストーリー」
3.「人財情報の深さ・高さ・広さ」を可視化する「デジタルAI」

 上記の「3つの外圧」を有機的に統合する「新・経営人事体系図」を解説します。
A.図の左側は、「企業(事業)のパーパス」と「成長戦略ストーリー」という「自社の『将来の姿』」の情報公開です。
 ⇒ 3年後の中期計画(改善)があっても、企業価値向上の「将来の姿=成長戦略ストーリー」を描けていない企業が多いのが問題です。
 ⇒ 「パーパス、ありたい姿、成長ストーリー」を描く方法は、このコラム全般に、その方法と実例を綴っています。
B.図の右側は、左側の「将来の姿」を実現するための「個人と組織の能力開発」の道筋です。
 ⇒ 上記「成長戦略ストーリー」が描けていないと、企業説明会、就活イベントや転職フェアや社内従業員に向けた魅力的なキャリアプランを提示できません。
 ⇒ 「才能」(第340夜):「才」と「能」を結びつけて、「匠=イノベーター」への道筋を歩んでもらうことが企業価値向上につながります。
C.図の下側は、上記「パーパス(目的)」と「能力開発(手段)」を両立するための「土壌づくり」です。
 ⇒ 上記A.B.が定まると、「学習と成長」領域の「投資:土壌づくり」の枠組みが見えてきます。
 ⇒ 「デジタルAI」によって、「人財情報の深さ・高さ・広さ」を画期的に可視化することができます。

■ 「経営人事」戦略の見直し:「市場価値軸(横軸)」と「時間(縦軸)」という2軸

 それでは、上記「経営戦略の見直し:2軸」(図解)に連動した「『経営人事』戦略の見直し:人的資本・才能開発の2軸」を図解します。


「経営戦略の見直し」で、図の左上象限、右下象限、右上象限のどこの象限を目指すのかで、「経営人事」戦略が変わることはお分かりと思います。
 
 多くの企業が、社内で通用する「左側の人事戦略」を運用しています。
そのため、社内用の「狭いキャリア自律」対応の取組みになっています。
しかし、上記の「経営変動化」「雇用の流動化」「デジタルAI化」等により、
・変動に対応した「人的資本経営」
・変動に対応した「成長ストーリー」
・変動に対応した「ダイナミックなキャリア自律」
 が求められています。

 つまり、
1.「人的資本経営化」:「経営価値向上(人的資本の情報開示義務)」
2.「成長ストーリーの明確化」:「人財獲得競争」
3.「価値創造支援としての人事化」:「デジタル活用」
 これらが有機的に連動することが重要になっています。
これに向かって、顔晴って頑張っている企業、地域を応援しています。

■エピローグ

 いま、私たちには上記「変動」等に対応した「変革」が求められています。
「先見性」「目的性」「革新性」に向かわず、立ち止まってしまったことが、世界のイノベーションランキングの中で日本が圧倒的に遅れた大きなファクターです。
繰り返しになりますが、
・第346夜:「中堅・中小企業」のためのReビジネス(再成長)と具体事例
・第352夜:「維持ではなく、垣根を超える」
・第353夜:「閉じこもっていては発展しない」

 それは、「失われ35年」を更に続けないために・・・。
 
 次夜は、「イノベーションと人的資本経営」ー続編 として、その事例を綴ろうと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第354夜:「イノベーションと人的資本経営」ー前編

2025年4月2日: 経営戦略と人事戦略の連動

■ スタートアップ、アントレプレナーシップ研修の増加点滅

 前夜は、「閉じこもっていては発展しない」をテーマに綴りました。
「閉じこもり」は一種の鎖国状態のようなもので、現在の高速情報時代には、「閉じこもっていれば」相対的な遅れが顕在化します。
さて、新価値創造研究所には、コロナ禍の3~4年前から「アントレプレナーシップ」、「スタートアップ」というイノベーションご支援の仕事が、高校・地域・企業等、様々な方面から増えてきました。
「公」や「自治体・ビジネス関係者」等の「閉じこもってないで、開国しなければならない」という強い認識の高まりを感じています。

■ 「人的資本の情報開示」と「人的資本経営」の関係

 そして同じころの2022年8月に内閣官房が「人的資本可視化指針」を公表しました。
人的資本可視化指針とは、「人的資本を可視化」するために情報開示がどうあるべきかを明確化したものです。
2023年3月期決算からは上場企業などを対象に「人的資本の情報開示」が義務化されることになりました。

 それは、「ヒト(人材)」を「コスト」としてではなく、
・「人材の『能力・経験・意欲』を最大限引き出すために人財に積極的に投資して、企業成長(企業価値の向上:プロフィット)する」ことを目的としています。

「人的資本の情報開示」とは、企業が「自社の従業員に関する情報」を公表することです。
そして、その情報を活用して「企業価値を向上」させる経営手法が『人的資本経営』です。

その「人的資本経営」が注目される背景には、「企業の競争力を高めるには『人材への投資』が不可欠である」という考え方が中心にあります。
重要な認識は、目的が「企業価値の向上」で、手段が「人的資本経営(図解)」であるということです。

■「オペレーション型人材」から「イノベーション型人財」の時代

 これまでの「オペレーション型」の仕事は、テレビCMでお馴染みの「楽々明細(経理業務)」やレストランの「配膳ロボ」等のように、DX・AI・ロボットにとって代わられます。
企業成長をはかるには、「閉じこもらず(第353夜)、垣根を超える(第352夜)」ための
・「経営戦略」
・「業務プロセス」
・「組織環境」
・「人財戦略」
 が必要になってきます。

 「イノベーション(第309夜、第348夜詳細)」の本質は、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展することです。それは「『異質なもの』を自分の内部に導入して、一段高い次元での解決策(新バージョン)で成長する」ことにあります。
 これまでの「枠」「垣根」をやすやす乗り越えて、新しい価値を創れる「経営戦略・業務プロセス・組織風土とそれを実現する人財」が求められているということです。

■ イノベーション時代(令和)の企業成長のステップ

 つまり、「2023年3月期決算からの公開義務」がきっかけとなって、否応なく、
①どのような経営戦略を土台にして、
②どのような仕組み(組織能力・組織風土、文化)で、
③どのように人財に投資、育成、活用(人財戦略)が活躍につながって、
 それら①②③が有機的に連動して、「企業の成長」を実現する

 という道筋を「有価証券報告書で『公開(オープン)』しなければならない」という時代にシフトしてきたことを意味します。
是非、経営者の方たちは①②③を先送りしないで、自分の中の「灯り」「スイッチ」をONしてください。
その「イノベーションスイッチ」が入らなければ、従業員、新入社員は活躍することができません。
その遅れが、よい人財を獲得することができなくなり、企業の衰退につながります。
迅速な対応が、企業成長につながります。

■ 「人的資本経営」と「人財創生3つの輪(トライアングル)」 

 さて、「人的資本経営」については、第350夜に[これからの「会社創生、地域創生」と「人財創生」]というテーマで、「人財創生3つの輪(トライアングル)」を図解で説明してきました。
人財創生の「できるコト(Can)「するべきコト(Should)」「やりたいコト(Will)」という3つの要素(輪)がありますが、トランプ大統領による「グローバル主義の終焉」(第349夜)に伴って、「社会的課題(Should)」が顕在化してきました。


「社会的課題(Should)」と「本業(Can)」を交り合わせて、「Will(実現したいこと、やりたいコト)」という一段上の価値を創り出す時代であり、その「一段上の価値創造」へのアプローチが、次の成長の源になります。

■令和の時代の「経営人事・ダイアグラム」公開

 令和の時代は、「経営人事領域」で「3つの外圧(Should)」が押し寄せて、「経営(事業)戦略と人事戦略」が本格的に連動するトキを迎えています。
それではここで、企業成長を実現する「経営人事」を体系的図解でコラム公開します。
本体系図解は、2023年から「イノベーションと人的資本経営」というテーマで、研修、講演や企業ご支援でお伝えしてきたものです。

1.「人的資本経営化」:「経営価値向上(人的資本の情報開示義務)」
2.「成長ストーリーの明確化」:「人財獲得競争」
3.「価値創造支援としての人事化」:「デジタル活用」
(上記1.2.3の右側には、その背景を記しています)

 これらが有機的に連動することが重要です。詳細は次夜(後半)に綴ります。
この図を羅針盤にして、「企業価値を向上」「スイッチON」されることをお勧めします。
是非、ご活用ください。

 次夜(後編)は、上記の図解(ダイアグラム)から、更に「人的資本・才能開発」を 2軸(市場価値と時間)で把える方法を図解を通してお伝えします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第353夜:「閉じこもっていては発展しない」

2025年3月24日: 「負の先払い(美輪明宏さん)」

■日本人選手の大活躍

 先週、MLB・東京シリーズ(3/18~19)、FIFAワールドカップアジア予選(3/20)の連日3日間の日本選手の活躍に日本中が湧きましたね。
「メジャーリーガー」、「欧州・サーカー所属選手」の両挑戦が花を開いた日々でした。
 私たちがこの活躍から学ぶコトは、

・「閉じこもっていては発展しない」

 ということです。
翻って、このコラムで綴ってきた「失われた35年」ですが、
まさしく、「閉じこもって発展しなかった」日本ではなかったでしょうか。
 その「失われた35年」に将来の「希望の灯り」のヒントを与えてくれたのが彼ら選手たちでした。

 「国際競争力ランキング」「収益力ランキング」「赤字国債の常態化」等、「日本衰退」の客観指標から見えるのは、「ニッポン」がつねにリスクと責任を回避し、構造改革の規模やスピードや覚悟が決定的に欠けていることにありました。そして、その責任を回避せずに、リスクに立ち向かう姿勢が不足していたことがまだまだ続いているように見えます。
それが、前夜コラムの『この国は将来、何で食っていくんだろうって思うんだよね』を綴った動機につながります。

 首記に活躍した選手たちは「(国内で)維持するコト」よりも、リスクをとって、大荒波の中に挑戦していって、その中で自分を磨き磨かれて、大観衆の前で、勇姿を見せてくれました。
私たちは、これまでの「閉じこもった」
・政治スタイル
・官僚スタイル
・企業スタイル
・地域スタイル
・アカデミー(学問)スタイル
・シニアスタイル
 等々から、いいかげん
→「抜け出ましょう」
 というメッセージを私たちは感じ取ったトキにしなければなりません。

■ 「禍福は糾える縄の如し」

 人生には、誰にでも「ネガティブなコト」「受難」「試練」が待ち受けています。
私の知っている限り、「受難」「マイナス」が人生に立ち現れてこないヒトをこれまで見たことがありません。
 ただ、その「受難・苦難」や「マイナス」があるからこそ、下記「ポジティブ」「活路」「革新」が生み出されている「負の美学」(第3夜)や「負の先払い」も併せて見てきました。このコラムでは、その実例をスティーブジョブズ氏(第164~165夜、第320夜)、隈研吾氏(第326夜)、第15代・樂吉左衛門(第330夜)さん等々で綴ってきました。

 それは、「禍福は糾える縄の如し」という、『この世の幸不幸は、縄をなう際に二本の藁束をより合わせるように交互に絡み合い、表裏をなしている』という事象を多くの方々が人生で実感・体験してきたことではないでしょうか。
 自分自身も、前職パイオニア社で、「オーディオの衰退」「パイオニア社の衰退」(第14夜、第334夜)という「受難・逆境」が35歳前後から降りかかってきたことで、楽なサラリーマン人生を送ることが叶わなくなってしまいました。その時の「受難・苦難・逆境・試練」を「禍福は糾える縄の如し」で、垣根を外し乗り超えてきたことが、現在の仕事やこのコラム執筆につながっています。
 その時の教訓は、『閉じこもっていては何も生まれない』ということです。

■「負の先払い」

 さて大幸運なことに、松岡師匠の未詳俱楽部や西新宿の舞台練習場等で、美輪明宏さんの演技やお話を何回か体感することに恵まれました。
松岡正剛の千夜千冊・第530夜には、美輪さんの「正負の法則」・「負の先払い」を通して
、「負を買いなさい。先に負をもてばいいじゃないですか。誰にだって負はあるんです。それをちゃんと自分で意識しようじゃないですか」
という素敵な言葉の数々が綴られています。
 是非、第530夜全部をご覧いただきたいのですが、その一部を引用します。
---------
・・・その「負の先払い」について、美輪さんは実に丹念にいろいろの例をおもしろおかしく、ときに夜叉や般若になり、ときに菩薩や明王になって綴っているので、忖度安易に要約すべきではないのだが、ここではあえて意図を汲んだ圧縮をして諸兄諸姉にその入口を指し示すことにする。
 これは、神様にこっそり内緒でつくった人生のカンニングペーパーなのである。そのペーパーには、世の中には「正と負」というものがあって、この正負の両方をそれぞれどのように見るか、見立てるかが、その人間の魂の問題のみならず、人生全般を決定的に左右すると書いてある。これが正負の法則だ。・・・

・・・では、どのように? どこで正負の見方を変えるのか。そこで美輪さんは、「前もって負をもちなさい」という画期的な方法を提示する。「そこそこの負を先回りして自分で意識してつくるといいでしょう」というふうに言う。・・・
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 私たちは、「受難・苦難」が人生に必ず降りかかってくることを知っています。
その「負・マイナス」を引き受けることを通して「禍福は糾える縄の如し」の持つ深い意味を体感します。

 それを体現している大谷翔平選手を見て感動・感激し、一体化しています。

■「一切皆苦(いっさいかいく)」
 
 「一切皆苦」とは、仏教の言葉で「世の中や人生は思い通りにならないものである」という意味です。
「思い通りにはならない」現実から、その中から「ポジティブ」「夢の実現」「情熱」を生み出しているお手本が「大谷翔平選手」です。

彼の名言の一部を紹介します。
・成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみる事の方が大事。
・悔しい経験がないと、嬉しい経験もない
(高校野球の悔しい結果が、世界一のプレーヤーになることにつながります)
・人生が夢をつくるんじゃない。夢が人生をつくるんだ。
・他人がポイって捨てた運を拾っている
・others

 「インパクトのある悔しい、苦い経験をする」ことで、「本気」と「夢」を持って人生をつくっている、切り拓いている最高の実例です。
 
 このコラムのビジネス編では、それを自分の悔しい、苦い体験談と幾つかの事例を通して、好循環、イノベーションに向かう流れとして、
・本気(パッション)→本質(ミッション)→本流(イノベーション)
 を図解で説明しています。

 
■ 「未来」からの逆算、「想念」のパワー

 学校・企業・自治体の「SDGs研修、講演、経営塾」では、大谷翔平選手が高校時代に作成したといわれている「目標達成シート(マンダラチャート)」をよく取り上げます。
大谷選手の中心テーマは「ドラ1 8球団」です。ドラフト1位指名を8球団から受けるというのが目標でした。
 そのために必要と思った8つのテーマが、
①運
②メンタル
③コントロール
④スピード 160km/h
⑤人間性
⑥体づくり
⑦キレ
⑧変化球
 です。

 是非、国(与野党連携)や経団連が一緒になって、10年後の成長の姿を「マンダラチャート:で本気で描いて、国民に提示して欲しいと思います。
政治家は選挙で選ばれるので、どうしても「既得権益者」のための視野に陥ってしまいます。
地元のことは、都や県や市区町村のほうに任せて、衆議院・参議院の両議院の方たちは、国の成長と安全のことを一義で考えて欲しいと思います。

 大谷選手の凄いところは、上記を実現していることです。
・成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみる事の方が大事。
・人生が夢をつくるんじゃない。夢が人生をつくるんだ。

 この「心得」「想念のパワー」「実行」が未来を切り拓いていくキーワードです。

 未来を描くことの重要性がここにあります。
中学生・高校生のSDGsワークショップでは、「将来の自分、将来の夢」をここの「マンダラチャート」に書いてもらっています。
もう一枚の「SDGs成長シート」には、
・SDGs17の社会課題で取り組みたいコト
・10年後のありたい姿、やっているコト
・一週間で始めること
 を記してもらっています。
若い人たちが「花開くきっかけ」になれば幸いです。

■「手遅れにならないとなかなか変われない」

 多くの「企業」をご支援してきましたが、だいたい現在の延長線上の3年先の改善計画が書かれています。
それは、「改革」でなく、何とか「現状維持したい」という「改善」モードです。
「維持する」ということは、「右肩下がり経営」になることを意味しています。
 まさしく、「失われた35年の縮図」がここにあります。

 「閉じこもっていては発展しない」のです。

 前夜(第352夜)にも綴りましたが、
 「垣根を超えていくこと」
そのために、どうするかという方法は、この「コラム」(第308~351夜)で多くを綴ってきました。
「型通り→型破り→型創り」(第343夜)に自分ゴトとして挑戦してもらうことで、現状を打破して成長した姿を見られるのは格別です。

 さて、いま「SDGs・地球沸騰化」という「受難・苦難」が人類を待ち受けています。
そ「受難・苦難」の先見性、想像性、自分ゴト化が求められているのですが、ヒトは「手遅れにならないとなかなか変われない」ということを考えさせられます。
この期に及んで、「閉じこもろうとする」トランプ大統領のパリ協定脱退は「ヒトの世の愚かさ・本性」を感じてます。
ここまで綴ってきて、3年前に気になって購入した本を思い出しました。
それが、次述の「オープンとクローズド」のはざまの戦いです。

■ OPEN:「閉じた」時代を終わらせよう
 
 ヨハン・ノルベリ著「OPEN:~「開く」ことができる人・組織・国家だけが生き残る

 目黒・有隣堂店の棚済みで、気になった推薦文を引用します
→山口周:「閉じる」ことを求める人が増えている今、本書が「開く」ための大きな勇気と知性を与えてくれる
→楠木建:オープンな交易、クローズドな部族化、いずれも人間の本性の発露。どちらに傾くのかで体制は決まる

 最初に、本の帯の推薦文を加筆引用します。
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 コロナ後の世界では、「オープンであること」がかつてないほど重要になる。
開かれたマインドセット、開かれたコミュニケーション、開かれた市場。
「開かれていること」こそが一万年にわたる人類の成功の鍵であり、今日の繁栄と平和の秘訣である。
ノルベリ(著者)は、本書で圧倒的な実例をもとにこのことを証明してみせた。
マット・リドレー推薦 ・・・
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 そして、この本のキーワードとなる「『オープンとクローズド』の戦い」を序文から加筆引用します。
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・・・人間は「交易者」である一方で、「部属人」でもある。協力はするがそれは他人を倒すためだ。どちらの属性も人間性の本質的な一部だが、反対方向にヒトを向かわせようとする。
 片方は、新しい機会や新しい人間関係、相互に利益のある新しい取引を行うための、「プラスサムのゲーム」を見つけさせてくれる。
もう片方は、人々に「ゼロサムゲーム」に用心しろと伝える。
「ゼロサムゲーム」では、他人が得をするのは、こちらが犠牲になる場合だけだからだ。これは他人をつぶし、取引と移動性を阻止しようという欲望を動かす。
 これが「オープンとクローズド」の戦いになる。
これは、ポピュリズム、ナショナリズム、トランプ大統領とイギリスのEU離脱の文脈で大いに議論されたものだ。
これは、二つの違う集団の間での戦いではない。
 「グローバル派とナショナリスト」、「自由なエリートと土地に縛られた人々」との戦いでもない。
むしろ、『みんなの心の中で、常に続いている戦い』なのだ。

 脅かされると、人は部族の安全性へと逃れたくなり、がっちりと守りを固めたくなる。そうなると、ヒトは従属的になって強い指導者を求めるようになる。・・・
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 この著書は、「『オープンとクローズド』の戦い」を提起したの大著ですが、「自由と調和」のバランスの難しさ・ジレンマを考えさせられます。
それは、私たちが「垣根を超えよう」とするときに次々に立ち現れる壁です。いまの「国連」の悩みもそこにあると思っています。
私たちが「閉じこもらないでオープン」に立ち向かう時に知っておくべき「クローズド」との戦いを事前に理解しておくことはとっても大事なことと思います。

 同時に、皆さんにお伝えしたいことは「量の変化が質を劇的に変える」という「常識の非常識」(第29夜、第36夜、第310夜)の問題も理解していただければと思っています。
そこには、カモシカや高校進学率の変化を記していますが、「移民流入」の問題も国民の人口の1%未満なのか、30%超なのかで、問題の「質」が大きく変わるということです。
またどこかでお伝えしたいと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第352夜:「維持ではなく、垣根を超える」コト

2025年3月18日: 「この国は生き残るために、将来、何で食っていくんだろう」
本夜は、前夜の「リジェネラティブ」に関連した「Well-being」をテーマにしようと思っていましたが、先日のTV放送「ビートたけしのTVタックル」の中で、
・「俺、心配してるのは、この国は将来、何で食っていくんだろうって思うんだよね」
 というビートたけしさんの発言があり、その解決方法が上記の「リジェネラティブ」、「Well-being」にズバリ関係してくるので、その発言について思うことを綴りたいと思います。

 
■ 父と娘の会話

 「TVタックルでたけしが『この国は将来、何で食っていくんだろうって思うんだよね』と言ってたけれど、お父さんはどう思っているの?」
と聴いてきたので、
 「日本の『産業のパイ、経済のパイを大きくする』ために、ここ10年くらい活動(新価値創造研究所)してきたんだよ。
地球環境でも、国の大借金でも、年金でも、若い人たちの未来が抉(えぐ)られているよね。それを何とかしたいと思ってね」
 って言ったら、
 「へぇー、知らなかった」
と“のたまり”ました。

 自分の想い・活動をパートナーのカミさんは知っていても、娘には伝わっていないことを知り、しばし反省モード、ショックモードに入ってしまいました。

 自分は、「日本は失われた三十数年、従来のオペレーション型(鉄道の時代:第225夜)から脱するには、イノベーション型(航海の時代:第333夜、第342夜)の『価値創造』に軸足を移して、『産業のパイ・経済のパイ』を大きくしなければならないと核心・確信して、そのための心得と方法を図解と事例を、多くの企業・自治体・学校等でお伝えしてきたつもりでした」

・娘に伝わっていないということは、いったい何が欠けていたのだろうか?

その「鍵と鍵穴」を洞察しましたが、後方でそれをお伝えします。
 

■ 「国会・政治家」への憂鬱

・103万円の壁問題
・高校授業料無償化
・ガソリン暫定税率廃止化

 いま、上記等が国会の新年度予算審議の中で議論されていますが、一番の根本問題は、将来の成長の姿が描けていないことにあります。
赤字予算を発行しての財源の中で、近視眼的な限られたパイの配分を考えていることの軋みが見えます。
 本当は、国会で、与野党で、「国の将来の成長の姿」についての前向きな、イノベーション的な論戦を見たいのです。
この狭い視野に追い打ちをかける様に、トランプ大統領の「グローバル主義の終焉」(第350夜)のこれまでの秩序を変える動きが活発です。

 そこに、上述のたけしさんの

・「この国は生き残るために、将来、何で食っていくんだろう」

 国民は、企業人、経済界、大学や国会は、「将来の成長の姿」に向けて真正面から取り組んでいく必要があります。
でも残念ながら、多くの国民はそれを政治家・国会に託せるとは思っていないのではないでしょうか。
過去を紐解いてみましょう。

■ アベノミクス

 2012年12月始まった第2次安倍政権において、安倍晋三首相(当時)が表明した「3本の矢」を柱とする経済政策がアベノミクスです。
アベノミクスの3本の矢(政策の3本柱)を記します。
①大胆な「金融緩和」、
②機動的な「財政出動」
③民間投資を喚起する「成長戦略」
 
 2012年は「失われた22年目」ですが、やはり「成長戦略」が機能していないことが大きな課題でした。
当時、私は「3本の矢」の中に「成長戦略」があることにたいへん期待していました。
前職パイオニア社の社内研修講師として、「イノベーション成長」というテーマで「成長戦略」をよく紹介していました。

さて、それでは「成長戦略」を推進する「日本経団連」はどのように把えていたのでしょうか。

■ 経団連:成長を牽引する「六つのエンジン」

 2014年経団連は、アベノミクスを受けて、いまこそ企業・経済界の出番であるとして、
「日本経済発展の道筋を確立する『六つのエンジン』起動させることが重要である」と発表しました。
以下の「六つのエンジン」です。
(1)グローバル化への対応
(2)イノベーションの加速
(3)国内の新たな需要の発掘(農業の成長産業化等)
(4)人材力の強化(起業家精神、女性活躍等)
(5)成長の基盤の確立(中長期のエネルギー政策)
(6)立地競争力の強化(事業環境の国際的イコールフッティング等)

 さてあれから11年が過ぎましたが、みなさん上記「発展の道筋」が実感されていますか?
その進展があれば、上記たけしさんの

・「この国は生き残るために、将来、何で食っていくんだろう」
 というワードが多くの共感を持ってニュースになることはなかったのだと思います。

 このコラムを綴っている時に、近くにいる「カミさん」にたけしさんのワードを伝えると、

・「トランプ大統領の自動車関税で、自動車産業もぜんぜん安泰でもないし、昔(家電・自動車・半導体)の様な将来の「柱」が見えないので不安」
・「孫たちに、どんな職業が魅力的なのか、伝えるのが難しくない?」
 という返答がありました。

■「日本再成長の構図」(第344~345夜)と「ジャポニズム(日本様式)」

 「日本再成長の構図」については、[第344~345夜]の2夜にわたって綴ったものを抜粋引用します。
A.半分:社会課題(危機の認識)
 1.地球沸騰危機(人類の生命の危機)
 2.エネルギー危機(石油に頼れない)
 3,人口減少危機(少子高齢)
B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)
 1.AI/量子もつれ(キュービタル):本郷バレー
 2.IOWN構想(ナチュラル):オーフォトニクス
 3.自動ロボット(コントロール)
 この選出した[AとB]が「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)の左と右の半分となります。
これを展開し、推し進める方法に下記「C」という方法を入れ込みます。

C.「日本の方法」:「独自のルール」と「メディアミクス」
 1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
 2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
 3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み)

 特に、
①「グローバル主義」の終焉(第350夜)
②間違いのない「AI」の進展
③おさまらない「戦争」
 は、従来の『秩序』というものを大きく変えるものです。
それらに対処、適応していく柔軟性と将来戦略をもつことはたいへんなのですが、現実から目を背けないで、その本質(第347夜)を把えることが肝要です。

■ 成長を牽引する「六つのエンジン」を読み解く

 上記、経団連の「六つのエンジン」を打開する『共通項』は何だと思いますか?
考察されてみてください。
(1)グローバル化への対応
(2)イノベーションの加速
(3)国内の新たな需要の発掘(農業の成長産業化等)
(4)人材力の強化(起業家精神、女性活躍等)
(5)成長の基盤の確立(中長期のエネルギー政策)
(6)立地競争力の強化(事業環境の国際的イコールフッティング等)

 その中身を読んでいくとすべて共通項があります。
それを「しる→わかる→かわる」(第334夜、SDGs経営塾・第10回)ことがポイントです。

■ 本夜の鍵:「垣根をダイナミックに超える」

 いま、「世界・国家・地域・企業・個人」に求められる最重要キーワードは何でしょうか?
それは、『価値創造とイノベーション』(第309夜)です。
私は、その実現を「自分のミッション(使命)」にしてきました。
 持続的・継続的に『価値創造』できれば、「世界・国家・地域・企業・個人」は『成長』します。
でも、それができなければ、『衰退』します。

 『イノベーション』は、ヨーゼフ・シュンペーター(経済成長の創案者)の造語です。
イノベーションは、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展することです。

「六つのエンジン」を打開する『共通項』は、
・『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』
 にあります。
 それは、(1)~(6)すべてにあてはまります。
これが、十分に機能していないのです。

「内側に異質なものを導入して新しくする」には、
・『維持ではなく、垣根を超える』
 ことがポイントです。

・国も企業も自治体も個人も「維持(守る)することを優先して、垣根をダイナミックに越えていないコト」が大きな問題・課題です。
 垣根を超えてどうするかという方法は、この「コラム」(第308~351夜)で多くを綴ってきました。
特に、「型通り→型破り→型創り」(第343夜)を是非ご覧ください。


 
 国を見れば、省庁の壁、企業であれば部門の壁、いろいろな所に壁があります。
組織や団体には、「維持しよう、守ろう」という意識が強く、それが政治の進展・革新にブレーキをかけてしまっています。
俗にいう「既得権」です。 
 そのことで、前職パイオニア社のヒット商品緊急開発プロジェクト(第336~337夜)では痛い思いもしましたが、その壁を乗り越えた先には、新しい景色と喜びが見えてきました。もう35年前のことですが、今の日本には「壁」ばかりです。
 「縦串」に強い力があるのですが、「横串」を通す力が必要です。
「横串」を通そうとすると「縦串」からの反発があるのです。

 国の企業の自治体の「新しい柱」を本気で立てようと思うなら、その壁を乗り越える、「コンテキスト・コンテンツ」と「環境」を創ることが必要です。
それが根本です。
 教育界も『維持ではなく、垣根を超える』力の養成に取り組まれてください。
それが、アントレプレナーシップ、スタートアップ人財の発掘に繋がります。

 是非、「将来の成長の姿」が描けて横串のできる「外部の力・人財」を活用されることをお薦めします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第351夜:「サスティナブル」の一歩先を行く「リジェネラティブ」へ

2025年3月14日: 「リジェネレーション 再生」の時代へ

 前夜は、トランプ大統領による「グローバル主義の終焉」が時代の大きな転換点であるという認識から、私たちの「経営戦略」や「人材戦略」の見直しが急務であること、そしてそれに関連する「キャリア形成」や「3つの輪」の進め方・使い方について記しました。
 「グローバル主義の終焉」という問題は、特に「地球視点」や「社会・環境視点」が後退につながることを意味しています。これは、以前のように地球規模での協力や環境への配慮が疎かになることを示唆しています。

 本夜は、「3つの輪(第350夜)」の「すべきこと(Should)」に焦点を当て、「人類の知」をどのように「リジェネレーション・再生」に向けるべきか、つまり「すべての行動と決定の中心に『生命』をおくべきだ」という良識の「心の叫び」を綴りたいと思っています。
 環境や社会の再生を目指し、私たち一人ひとりの行動がどのように地球や人類全体に影響を与えるかを深く考え行動に移す必要があります。

■ 重要なのは「環境を破壊せずに『生計』を立てる方法」

 私たち人類は、他の動物と比べて非常に優れた「知性」を持っています。その知性を活かして、地球という大切な「家」を守る方法を考えなければならない時が来ています。しかし、私たちは現在、地球を破壊し続けているのが現実です。

 経済重視の影響 人類の経済活動が自然環境に大きな負担をかけ、気候変動を引き起こしています。近年では、山火事や洪水、干ばつ、豪雨、豪雪、極地の氷の融解など、自然災害が頻発しています。これらの現象は、私たちが自然界に与えている影響の証拠です。
 
 私たちは地球人の一員として、酸素や水、食べ物、衣服など、すべてを自然界から得ています。その自然のバランスが崩れつつあり、今や危機的な状況に直面しています。科学者たちは以前から警告を発しており、今その警告が現実となっています。

◎環境破壊の例
・アメリカでは、トランプ前大統領が「パリ協定」から離脱し、石油の採掘を奨励しました。これは地球環境への大きな負担となります。
 このことで私たちは逆説的に、「地球環境視点から、自然系・生態系破壊の解決」に主体的に取り組まねばならない切実さ、必要性を感じたのではないでしょうか。
・アジアでは、熱帯雨林が大規模に伐採されています。特に、安価で質の良い植物油(パーム油)を得るために、大規模な農園が開発され、森林が壊されています。私たち日本人も、年間約5キロのパーム油を消費しており、日常生活に深く関わっています。
・多くの国々では、生きるために農地を使い果たし、木材を伐採して燃料を得るなど、環境を破壊する方法に頼らざるを得ない状況があります。

 しかし新たな希望があります。 それはコロナ禍の中で経済活動が地球規模でストップしたことで、空気や海がきれいになったことを私たちは目の当たりにしたこのことから、私たち自身の欲望を縮めて、環境を守りながらも経済活動を行う方法があるのではないかという反省と希望が見えてきました。

 私たちは、環境を破壊せずに「生計を立てる」という両立の方法(第348夜)を見つけなければなりません。今後の社会では、経済活動と環境保護を両立させる方法(技術・教育・マインドセット)が必要不可欠という声が高まることが洞察できます。


■ 「3つのエコロジー」(心の叫び)

 「すべての行動と決定の中心に『生命』をおくべきだ」という良識の「心の叫び」として、「心のエコロジー」について綴ります。
 1991年、前職(パイオニア社)36歳の時に、エンジニアリング職(設計・技術企画)から目黒本社に異動して、プランニング職(情報企画・開発企画)の入り口にいました。
 従来のオーディオ事業は、1989年をピークにして衰退期に入り、ハードウェアを主体にしていた事業は行き詰まりを見せていました。その中で立ち上げられた全社「オーディオ活性化プロジェクト」に入った自分は、「未来を構想する」「自社のミッション再構築」の手がかりを探索していました。

 ふと、渋谷の本屋(大盛堂)に立ち寄った時に、何かオーラを纏った「三つのエコロジー」(哲学者ガタリが縦横無尽に語った、精神分析・科学・生物学・倫理学・政治そしてエコロジー問題。生前最後のインタビューを収録)という本を手にして感動しました。そのエッセンスを記します。
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・・・のエコロジー運動がいわゆる「環境問題」(自然環境を中心とした)に限定されてきたことに疑問や不満を感じ、それだけでは現代世界の全面的危機に対処しえないとして、「環境のエコロジー」に加うるに、「社会のエコロジー」と「精神(心)のエコロジー」の三位一体理論を提唱する・・・
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 私の理解では、
 「人間は下記3つの世界(エコゾフィー)の中に生きている。
    ①地球環境   :物の公害
    ②人間社会環境 :社会の公害(テロ、離婚等)
    ③心の環境    :ストレス
これを別々に切り離すのではなく、三位一体で直視して展開すること」

 多くの業界は、物の公害という領域のエコロジーばかりに目を向けていましたが、パイオニアという製造業の会社は「音(サウンド)や光(ビジュアル)」を心の領域(=心のエコロジー)で、ハートウェアとハードウェアを新結合して未来展開できるのでは?という仮説を立てました。
 もともと、「サウンド&ビジュアルの本質」は、心の領域(幸福な気持ち、創造的な生活等)で人々に役立っていることにあるのですから。

 そして経営会議では、 「パイオニアは、音・ビジュアル・情報の可能性を究めて、人々の『ココロのエコロジー』の領域に貢献する企業として進化する」を提案し、具体例と共にプレゼンテーションしました。
 それが結果として、3年後の連続ヒット商品(ピュアモルトスピーカー:第35夜、第318夜等)と会社初の「エコプロダクツ展」への出品を通じて、数多くの「エコロジー大賞」をいただく結果につながりました。

 「心のエコロジー」という強い認識・情熱(第322夜)が、地球環境や社会環境に三位一体として影響を及ぼすという実例です。
 当時の「エコロジー啓蒙・啓発」が、大きな迅速な流れになることを願っていましたが、産業界が、「本業とエコロジー」を両立して、「経済・社会・環境」に影響を与えるその速度は遅いものでした。
 そこに登場してきたのが、2015年の「SDGs」(17の目標)でしたが、想定した効果を生み出すことができていないことが残念です。

■ 「グリーンとデジタル」(第346夜)

 2020年10月に、菅・元首相の所信演説で、下記GX、DXがこれからの日本の成長の柱であると表明して、莫大なお金が継続的に注ぎ込まれることになりました。
・SX(SDGs): サステナブル・トランスフォーメーション(=気候変動、人権等、17の社会的課題)
・GX:グリーントランスフォーメーション(カーボンニュートラル等)
・DX:デジタルトランスフォーメーション
上記の後戻りしない変化であるトランスフォーメーション(SX.GX.DX)を、どう本業と「2+1」(第312~314夜)させるのかが重要になりました。

 それを受けて、2021年8月に「きらぼし社長塾・第4回」セミナーのメインテーマは「グリーンとデジタル:~2つの変革を自社のチャンスに変える方法と勘所~」で講演しました。

その中で、「グリーンとデジタル」の各進化ステップをまとめたのが下記図です。
その「SX1→SX2→SX3」の「SX-3」が『リジェネラティブ』です。

この「SX」と「DX]の両ステップはとても重要なのですが、その進化を「理解」(しる→わかる→かわる:第307夜、SDGs経営塾・第10回)した会社は、迅速に次の成長に進んでおられます。
「SX-3:リジェネラティブ」については後述します。

■ 「産業システム」の問題とチャンス

 2022年4月 山と渓谷社から、「リジェネレーション-再生」(ポール・ホーケン編著)が上梓されました。
参考に、その中の「産業-Industry」の冒頭を加筆引用します。
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 すべての産業はシステムです。
産業には、エネルギー・食糧・医薬品・輸送・健康・金融・衣料等、いろいろありますが、すべての産業システムは搾取的だといえます。
なぜなら産業システムは生物界から資源を奪い、害をもたらすからです。その結果、生命は減少します。すなわち、搾取的であるということは環境破壊的でもあるといえます。
 すべての産業システムが、地球温暖化の直接的な原因です。なぜなら、温室効果ガスを排出するだけでなく、土壌や水、海洋、森林、大気、生物多様性、人々、子ども、労働者、文化に害をもたらすからです。
 危害を及ぼす意図は企業にはないでしょう。しかし、再生型(リジェネレーション)になるために企業はまず自らが本質的に環境破壊をもたらす存在であることを認識すべきです。非難しているのではありません。
 これは生物学的な事実であり、莫大なチャンスを示しているのです。・・・
ーーーーーーーーー

 「企業はまず自らが本質的に環境破壊をもたらす存在であること」を『心』から認識することが必要なのです。
そして、知恵を使うことで、そこに「莫大なチャンス」(第346夜)があることを、SDGs先行企業は知っていていち早く先取りしているのです。

・SDGs先行企業群 は、「この領域にしか“未来の成長の種がない”」
と確信して取組まれているのです。

■ 「サスティナブル」から「リジェネラティブ」への進化
 このコラムでは、「SDGs(持続可能な開発目標)」に注力してきました。SDGsは、2030年までに達成すべき国際的な目標で、2015年に国連サミットで世界中の首脳たちによって採択されました。SDGsの理念は、地球環境や社会環境が崩れると経済が成り立たなくなるという考え方に基づいています。そのため、「経済・社会・環境」(第340夜、第342夜)の3つをバランスよく推進することが必要です。

 現在、2030年の目標達成まで残り5年ですが、状況は改善されているのでしょうか?
私自身も、2018年から企業や自治体、学校などでSDGsセミナーやワークショップを実施したり、ご支援をしてきました。しかし、近年の自然災害(山火事や洪水、干ばつ、豪雨、豪雪、氷の融解)や戦争、テロなど、更に、地球環境不安、社会不安が増しているのが現実です。

 そこで、次のステップとして、より進化したアプローチが求められています。それが、「サスティナブル(持続可能)」から「リジェネラティブ(再生)」へのシフトです。
それは、「再生的」「繰り返し生み出す」という意味を持った言葉で、再生を促し、やればやるほど世界が良くなるという考え方を指します。
つまり、これから世界は「サスティナブル」 から「リジェネラティブ」への進化に重心を移さねばならない切羽詰まった時代であると『心』から認識することです。

「サスティナブル」と「リジェネラティブ」の二つを整理すると、
・サスティナブル(持続可能): 「問題の悪化を防ぐこと」に重点を置き、現状を維持することが目的です。
・リジェネラティブ(再生): 「問題の悪化を防ぎつつ、環境を再生させること」を目指します。

 つまり、「サスティナブル」は環境がこれ以上悪くならないように保つことですが、「リジェネラティブ」は、地球環境を再生しながら、生態系全体を繁栄させてより良い状態(Well-being:SDGs経営塾・第7回)に変えるという一段上の「バージョンアップ」を目指すことになります。

■ 「価値創造」と「リジェネラティブ」

「価値創造」については、以前のコラム(第75夜、第175夜、SDGs経営塾・第5回など)で詳しく書いてきました。そして、「価値創造」は私が運営する「新価値創造研究所」の最も重要なキーワードでもあります。

新価値創造研究所の定義:
・『価値』とは、「人に役立つかどうか」というコト
・『創造』とは、「未来を先取りする」というコト
つまり、「価値創造」とは、「人々に役立つことを先取りして実行すること」と言えます。

 「リジェネラティブ」は、「すべての行動と決定の中心に生命を置くべきだ」という考えです。
それは単なる環境問題を超え、私たちの「命」に関わる大きな問題であり、それへの取組み・解決は、まさに「価値創造」の定義と一致しています。
 2015年に「SDGs」が承認されたときから、「価値創造」と「SDGs」はコインの裏表だと思って、それをミッションにして活動してきました。
更にその先を行く「リジェネラティブ」への取組みも、新価値創造研究所の使命であると思っています。

・未来は外からやってくる。そして、内からあふれだす。

 「サスティナブル」から「リジェネラティブ」へのシフト(変革)が求められている中で、もし立ち止まっていたら、国家のイノベーション力は自動的に落ちていくのは当然です。時代が求める「革新性・先行性・目的性」に対して努力も何もしないことが、世界のイノベーションランキングの中で日本が圧倒的に遅れた大きな要素ではないでしょうか。(第303夜)

「リジェネラティブ」の考え方はすでに広まり始めており、私は2021年のSDGsセミナーで「リジェネラティブ」(図解)の位置づけと重要性をお伝えしてきました。
ぜひ、企業や自治体、学校などで「リジェネラティブ」を先取りし、挑戦して成長し続けてください。

■参考書籍の紹介
2022年4月に「リジェネレーション・気候危機を今の世代で終わらせる」(ポール・ホーケン編著)が出版されました。この本には、土地や森林、海洋、人権、都市、発電、産業など、さまざまな分野に関するヒントや事例が満載です。「リジェネラティブ」に関心がある方は、ぜひ読んでみてください。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ