橋本元司の「価値創造の知・第129夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑰自己受容と価値ぬ

2018年4月7日 アドラーと価値創造

「すべては自己受容から始まる」
「自分に価値があると思える時だけ、勇気を持てる」(Adler Speaks)

「自己受容の重要性」についてのアドラーの言葉です。皆さん「アドラー」はご存知ですね。
フロイト、ユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」と云われ、図の「嫌われる勇気」はベストセラーとなりました。

前夜(第128夜)では、
⇒「価値創造」に向かうためには、周囲から「認められる」ことが不可欠です。
ということについて綴りました。

本当はその前に、「自分に価値がある」と思えたらそのような自分を受け入れることができるのです。
上記で云っている「勇気」とは、対人関係の中に入っていく勇気のことです。

対人関係は悩みの源泉にもなりますが、生きる喜びや幸せも他者の関係の中でしか得ることはできません。
人間は一人では幸せになれないのです。だからこそ、アドラーは対人関係の中に入っていく勇気が必要だと云っています。
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「人生の意味は全体への貢献である」
「人生の意味は貢献、他者への関心、協力である」

アドラーここでいう「全体」は「共同体」のことですが、もしもこれが既存の共同体であれば、「全体主義」になっています。
先に、所属感は人間にとって基本的な欲求であることを見ましたが、
「全体の一部でありたい」
と思えるからこそ、他者に貢献したいと思えるのです。
全体主義という言葉が悪い連想が働くのは私益しか考えていない一党一派が全体の益を考えていると欺き、全体を支配するということが、歴史上何度もあったからですが、
アドラーのいう、人は全体の一部であるというのは、それとはまったく意味が違います・・・
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なぜ、貢献感を持つことが必要なのかを3つの観点でとらえています。
1.「自己受容性」
⇒ありのままの自分を受け入れるということです。
2.「他者貢献(感)」
⇒生きているだけで、あなたは誰かに貢献している
3.「他者信頼」
⇒他者を「仲間」であると信頼できなければ、他者に貢献しようとは思えません。

ここで記していることをどこかで観ませんでしたか?
前夜(第128夜)の「マズローの欲求6段階」です。
21世紀は、「⑥第6段階・自己超越欲求:自分のためだけでなく、他の人々や他の者を豊かにしたいという欲求」から検討する時代です。
その理由は、どこかの夜に綴ります。

さて、自分が役立たずではなく、役に立てている、貢献していると感じられる時に、そんな自分に価値があると思え、自分を受け入れることができます。
そのことを私たちは「バリューイノベーションプロジェクト」ではとても重要視しています。
全員の力を結集して、イノベーションに向かいたいのです。

そのために、他者貢献、社会貢献を考えようとする時に、「自分に価値がある、自分でも貢献できる」と確信できる『場』『環境』が必要です。

・こんなことを云ったら笑われる
・こんなことを云ったら馬鹿にされる
・こんなことを云ったら評価が悪くなる

通常の職場では、こんな場面が多いのではないでしょうか?
それは「マネージメント」の世界です。

しかしながら、イメージメントの「想像⇒創造⇒構想」(第122夜)という価値創造の場面では、「常識から逸脱する」「従来の殻を破る」ことが必要です。
なので、
・「笑われるくらいがちょうどいい」
ということを何度もお伝えするのです。
ただ、そこでは『センス』が必要となるのですが、これもどこかの「夜」に綴ります。

さてさて、そのうち皆さんセンスも磨かれて、キラリ!と光るアイデアや発言が続々と出てきます。
それを上手に掬い取ります。
そこに、「深い知・高い知・広い知」のスキルも身に付きますから、その「型」の上で大胆に演じることができるようになります。

そうすると、
「自分に価値があると思えて、勇気を持てる」
という(人財)ステージを自動的に迎えることができるのです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
自己受容

橋本元司の「価値創造の知・第128夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑯笑われるくらいがちょうどいい

2018年4月5日 マズローの欲求6段階説

「価値創造」に向かうためには、プロジェクトメンバーが周囲から「認められる」「認めあう」ことが不可欠です。

東洋経済オンライン(4/5)に、「期待の新人を辞めさせない、たった1つのコツ」
~新入社員は「認められる」ことに飢えている~
が載っていたので、参考に引用します。
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入社後3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職するという「七五三」現象はよく知られているが、
企業の採用増と少子化で超売り手市場のいまは、若者の早期離職にいっそう拍車がかかっている。
アンケートなどで離職の理由として上位にあがっているのは、「仕事が合わない」「成長できない」「労働条件がよくない」ことなどである。
しかし、実際には「承認」の不足、すなわち周囲から認めてもらえなかったことが深くかかわっているケースが多い。

バブルのころ、日本を代表する大企業の人事担当者から、つぎのような話を聞いた。
入社間もない若手技術者がつぎつぎと辞めていった。おそらくライバル企業から高給で引き抜かれたのだろうと思われていた。
ところがその後、離職者への追跡調査で辞めた理由を聞いてみると、大半の者が、上司や先輩が認めてくれなかったことを理由にあげたそうだ。
好況で上司や先輩は仕事に忙殺され、新人を認めてやる余裕がなかったのである。

この事実は、上司や先輩が若手をしっかり認めてやれば、早期離職をある程度防止できることを意味する。・・・
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新入社員のことを記していますが、「認められる」「承認される」ことは、家族であれ、夫婦であれ、友人であれ、とても大事なことですよね。
しっかりと向き合うことが重要です。ただ、「褒めればいい」というのとは異なります。
特に、未経験で不安いっぱいのルーキーの場合は尚更です。同期の横のつながりがその不安を解消してくれたりします。
通常のオペレーションで上司や周囲から認められないという状況には辛いものがあります。

皆さんご存知の「マズローの欲求五段階説」というのがあります。
①第1段階・生理的欲求:生きていくために必要な、基本的・本能的な欲求
②第2段階・安全欲求:安心・安全な暮らしへの欲求
③第3段階・社会的欲求:友人や家庭、会社から受け入れられたい欲求
④第4段階・承認欲求(尊重欲求):他者から尊敬されたい、認められたいと願う欲求
⑤第5段階・自己実現欲求:自分の世界観・人生観に基づいて、「あるべき自分」になりたいと願う欲求
⑥第6段階・自己超越欲求:自分のためだけでなく、他の人々や他の者を豊かにしたいという欲求

21世紀に必要なビジネススタイルでは、欲求第6段階の「自己のためだけでなく社会全体を良くしたい、豊かにしたいという欲求がおおもとにあること」が求められています。
世の中の「質・次元」(第124夜)が大きく変わっています。小手先の欲求対応では、事業の持続・継続が難しい時代という認識が求められます。
それが「わかる」ことは、「かわる」ことです。(第8夜)

「次の一手」「次の柱」を検討する時に、是非「自己のためだけでなく、社会全体を良くしたい、豊かにしたいという欲求がおおもとにあること」のステージに立って挑戦してみてください。
そうすると、下記の二つのことが現れます。
1.そのことで「温かい気持ち」が心の中に流れるコト
2.それにより「本質を見極める」ことが必要と感じるコト

上記2.の「モノゴトの本質」を見極め、且つ、価値創造する方法は、下記「3つの知」(第89夜)しかありません。
1.「深い知」
2.「高い知」
3.「広い知」
それは、①「本質」を把えながら、②「常識」から逸脱することです。
そうすることで、「お客様から選ばれる理由」(第37夜:バリュープロポジション)を掘り起こすことができます。

さて、その「3つの知」をバリュープロジェクト・メンバーに習得してもらい、「想像⇒創造⇒構想」を辿っていただきます。
それは、「想像・創造」という、現状の壁を超えて「構想」にいたる舞台です。
その「殻を破る」「常識を超える」時に、メンバーに必要な心得は、

「笑われるくらいがちょうどいい」

ということです。
これを、研修・プロジェクトでは何回、何十回も私がメンバーの方達に言います。

そして、それは全員参加なのですが、「突飛」「突発」な発言には、最初は全員に拍手を強要します。
それが、常識を覆し、「新しい文化」の創造につながってゆきます。それを水先案内します。
そのうちに、自然に全員から拍手がおきます。これは、メンバーから「認められる」「承認される」成果です。

これを繰り返し行うことで、周囲が驚くほどの「アイデア」「企画」「ビジネスシナリオ」が続出します。
「人材」が「人財」に変身する瞬間です。(特に、参加された女性の伸びが著しい)

何故でしょうか?

私もサラリーマン生活が長かったのでよくわかりますが、
発言しても通らない時に、人はだまります。そして、そのまま考えないようになっていく人もいます。

経営陣が従来のやり方・考え方に固執して、時代から取り残されていくのは残念なことです。

前職(パイオニア社)でも何回か経験しました。
・1992年:そんなふうになるわけないじゃないか。(CD⇒通信2005年)
・1996年:それが成功するなんてありえない(ヒット商品プロジェクト)
・2006年:10年後のことなんて意味がない(10年後のパイオニア:2017)

上記のことは、常識という枠を超えて、私たちが想ったように、描いたように実現しました。価値創造がイノベーションになりました。

①世の中に役立つコト、新しい文化を創ること
②モノゴトの本質を把えること

上記①②を「二つでありながら一つにすること」(第33夜)
これが最も重要な方法なのです。

ただ、ここに辿り着く前に、ルーキーのメンバー達を従来の常識から解放させる必要があります。
それが、「笑われるくらいがちょうどいい」から始めることです。
人材を将来の人財にするために。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

マズロー

橋本元司の「価値創造の知・第127夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑮権限委譲と価値創造

2018年4月4日 エンパワーメンとインストラクション

前夜(第126夜)の「相互理解(インタラクション)」に引き続き、参加者の「想像力・創造力・構想力」を引き出すためには、意識的に『権限委譲(エンパワーメント)』することにあります。

つまり、「あなたが主役です」ということを直に伝えることです。

「権限委譲」とは、参加メンバー(従業員)に「権利と責任」を与えることであり、プロジェクト(仕事)の発言権(インプット)と実践を認め、それに報いることです。
それは、人的資源を育成・開発すると共に、マネージャーがタスク(課題)の支援者であるという見方に変わります。

上記では、「マネージャー(管理者)」という言葉を使いましたが、「想像・創造・構想」というステージ上でコーチに必要な能力は「マネージメント=こなし型」ではありません。

「現状のやり方・考え方からの延長上に未来はない!」
という認識の元に、「次の柱」を検討・構想しようとするステージに必要なのは、「イメージメント=仕掛け型」の能力です。仕掛け型のメンバーを1/3以上選定することをお薦めします。

「イメージメント」については、第7夜(イメージメントとマネージメント)に綴りました。
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「イメージメント」を簡単に言うと、「想像・創造・構想」を紡ぎ出すコーチング能力のことです。
現状のマネージャーは、それをどうコントロールされているのかが課題です。

イメージメントは「知」の組み合わせである。「知」は、「個別知=パーソナル・ナレッジ」、「共同知=コミュニティー・ナレッジ」、「世界知=グローバル・ナレッジ」の3つに分けることができる。
この3つの「知」のアドレスをまず認識し、その境界をまたぐことによって「知」を新しい関係によってつなぐ。
これを「編集脳」と言う。すなわち「組み合わせ能力」、または「連想力」、英語でいうと「Association(アソシエイション)」のことである。(「セイゴウちゃんねる」より抜粋)

多種多様な企業をご支援していますが、「次のイメージ」「次の柱」「次の一手」は、「マネージメント」ではなく、その前段の「イメージメント」の構想世界になります。
多くの経営者・管理者の方達は「マネージメント」は得意なのですが、「イメージメント」が残念ながら苦手です。その環境(色)に染まってしまった社員の方達も同様です。
「新たな知を紡ぎだすイメージメント」は、なにせ学校や企業で教えてもらったことがないのですから・・・。
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とすると、それを監督・コーチする人は、「マネージャー」ではなく、「イメージャー」となりますね。因みに、私たち(新価値創造研究所)は、新たな知を紡ぎだす「イメージメントのプロフェッショナル」です。

さて、「次の一手」「次の柱」を検討・構想する際に前提となるのは、メンバーに権限を受け渡し、努力の結果が自分達のものになると本気で感じさせる点にあります。
そうなると当事者意識を持ち、やる気のある「燃える集団」に変身します。

私自身が、社長直轄で「ヒット商品緊急開発プロジェクト」(第14夜)の「権限と責任」を与えられました。また、多様なプロジェクトをご支援している中で、「何が問題なのか?」「何が壁・ネックとなるのか?」を様々なプロセスで見て対応してきました。
どう「権限委譲」するかということの答えは「ひとつ」ではありません。

大手企業の場合は、社長自身が「プロジェクト」に参加することが見受けられないため、最初のプロジェクト・キックオフでトップの方から参加メンバーへの「権限委譲」をことを話していただきます。
それを直に聴くこと、そして激励で、本人たちの「やる気」はぜんぜん違ってきます。

中小企業の場合は、社長自ら参加されることが多いのです。
そのことで報告する必要がありませんから、意思決定のスピードは、猛烈に速いです。ここで新たな範囲の権限委譲が言い渡されることもあります。社長の想いもその中で語られているので「相互理解(インタラクション」が格段に違うのです。

さて、ここで注意をしておくことがあります。
「権限委譲」とは、メンバーに絶対的な自由を与えることではありません。「権限委譲」の限度は、上記の場合では、通常「経営陣の視野」によって決定されます。その視野を多方面に、多角的に拡張したり、場合によっては選択肢を狭めたりすることが私たちの重要な役割のひとつです。
ここで気づかれた方も多いと思いますが、上記の「視野」というのは、第105~107夜に綴ってきた「本分」のことです。この「本分」をどう再定義するのかで、結果が大きく左右されます。そのために、決定者であるトップ(社長)と「バリュープロジェクト」のスコープ(視点・視野・視座と範囲)及び、「本分」を検討し、明確にする必要があります。

ここで「視点・視野・視座」(第77夜)について少し説明します。

・視点とは、「注目しているポイント」
・視野とは、「見る範囲」
・視座とは、「見る場所、目のおきどころ」

ここに経営陣とプロジェクトメンバーとのあいだに、ズレがあると問題なのですね。最初の打合せではどの会社や地域でも「ズレ」があるのが当たり前です。それをこちらが図解しながら「相互理解」で詰めてゆきます。どのようなスコープ・本分にするのかを気合いを入れて協議してゆきます。
(「権限委譲」とは、「顕現委譲」でもありますね)

そして、
・「視点・視野・視座」(分母)をメンバーに明確に提示するすること
・その範囲の中で、「想像・創造・構想」を重文に発揮すること

こうように、「権限委譲(第127夜・エンパワーメント)」「スコープ・本分の相互理解(第126夜・インストラクション)」を進めることで、「価値創造」につなげてゆきます。

私たちの経験で、この「権限委譲」されたメンバーは、殆どが燃える集団になり、イノベーション&経営革新のスピードと確率もグーンと高くなります。
そして何よりも、「人材」が「人財」に変わることが「喜び」になります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
権限委譲

橋本元司の「価値創造の知・第126夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑭理解の秘密・価値創造インストラクター

2018年3月30日 「相互理解=インストラクション」

私たちが「新事業創出/地域創生のご支援」で気をつけていることがあります。
それは、不確実性の高い未来に向けて、価値創造・イノベーションを達成するには、クライアントの皆様との『相互理解=インストラクション』を如何にはかるか、ということが不可欠です。その「相互理解」がなければ、配慮のない情報のやりとりになり、実践・解決の方向に向かいません。

いま、世間を賑わしている『働き方改革』の大きな部分を占めているのも『相互理解=インストラクション』です。
仕事の中には、コミュニケーションのロスやトラブルで溢れていますね。

・「何が重要か」についての管理者と従業員のあいだの不一致
・多くの会社がいまだに従業員と機械を同じように扱っている
・何も決まらない会議にウンザリする
・「言ったじゃないか」と声を荒げることは?
・やっかいなマニュアルを放り投げたことは?
・仕事の成果が見えにくい
・働く人々の多様化が進む
・「わかったね?」「ええ、わかりました」というやりとりはあるが、いっこうに理解してもらえない
・・・

如何ですか?
上記は、1993年「理解の秘密」リチャード・ワーマンが著した中に記している一部です。もう絶版なのですが、「今また、その本が脚光を浴びています」と友人が話していました。
この「理解の秘密」は、松岡正剛師匠が監訳していたので、1998年に購入していました。

本書は、コミュニケーションロスを解消し、相互理解をはかるために、インストラクションの働きとその活用法を教えるはじめての指南書になります。

組織変革のためのリストラクチャリングや資源節約するより、まずインストラクションの仕組みを変えたほうがよほど効果的であるとすら思えるのだ。(引用:松岡正剛あとがき)
是非たくさんの日本人に読んで欲しいと思います。

さて、その後半に『模範的なインストラクター』という項目があります。
①大きな絵、すなわちインストラクションを与えられるコンテクストを説明できる人間
②ある分野の知識をほかの分野に応用できるように、パターンを見つけさせることのできる人間
③信頼感を植え付けることのできる人間
④ひとつのアイデアをいろいろに表現すること、つまり3次元的な像を示すことのできる人間
⑤自分の関心対象に熱意を持つ人間
⑥誤りを認め、リスクをおかすことを奨励する人間
⑦指導のためには、ときには慣習とは逆の方向にすすむことのできる人間

もう20年前の会社勤めの時に、上記に近づきたいと修練してきました。図らずも「価値創造~イノベーション」の「インタラクション」には上記のスキルが全て必要なのでした。
この「価値創造の知」シリーズには①~⑦を散りばめているのもそれが一因です。

是非、新事業創出・地域創生の多くの価値創造インストラクターを輩出できればと思います。
そうしたら、もっともっと日本は、会社は、地域は、人は元気になるのではないかと想っています。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
インストラクション

橋本元司の「価値創造の知・第126夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑬未来は既にここにある

2018年3月29日 将来洞察と価値創造

本夜は、「将来を洞察し、確信する価値創造の方法」を綴ります。

先ず、「二つの言葉」をあげます。

一つ目は、「未来は既にここにある。全ての人に均等に配分されていないだけだ」
“The future is here, it’s just not evenly distributed yet.”
ジャック・ドーシーやティム・オラオリーが好んで引用するウィリアム・ギブソンの言葉です。

二つ目は、『すでに起こった未来』
「政治、社会、経済、企業のいずれにせよ、およそ人間に関わることについては、未来を予想してもあまり意味がない。だが、すでに起こり、後戻りのないことであって、一〇年後、二〇年後に影響をもたらすことについて知ることには重大な意味がある。

しかもそのような『すでに起こった未来』を明らかにし備えることは可能である」
P.F.ドラッカー(経営学の巨人)の言葉です。

◆未来は既にここにあるコト
◆すでに起こり、後戻りのないことであって、一〇年後、二〇年後に影響をもたらすこと
について自分は大納得です。
ここのポイントは、本質となる「どれが」、「何が」なのかを抽出することです。その本質を取り出す感覚を多くの方達に体得していただきたいと思います。

前職(パイオニア社)の拙い自分の二つの体験をご案内します。
1.ヒット商品緊急開発プロジェクト
その構造は、第82夜(ビジネスで最も大切なコト)にあるので、それをご覧になってから下記を読み進めると理解が速くなります。
(『違い』をつくるのは、「技:イノベーティング」で、『共感』を生み出すのは、「心:マーケティング」です)

1990年代のオーディオの行き詰まりを打破することを考えていました。それは、それまでの「オーディオ世界」(縦串)に「オーディオ世間」(横串:ライフスタイル)を通すことでした。このイメージは、当時のフィギアスケートを見ていて思いついたものです。

その採点は、「テクニカルポイント(技術点)」と「アーティスティックポイント(芸術点)」の合算でした。その昔は、「テクニカルポイント」中心で、それが上手な人が「ゴールドメダル」をとれたのです。でも、上記の合算の時代に変わりました。質的転換です。

政治・経済も1940年体制から縦割りに限界を感じ、横串を模索しているところでした。今の行政がなかなかそこから脱皮できないで時代遅れになっていることは皆さんご存知のところです。

当時、周りを見渡すとそのような横串(生活発想)からの機運の高まりの兆候がありました。
現状突破のために、思い切って、新社長に直訴して緊急開発プロジェクトを承認して貰いました。

1995年、異業種コラボレーションを見かけない時代に「横串」による『新しい文化』をプロデュースしました。
・味覚:ウィスキー*オーディオ
・視覚:ファッション*オーディオ
・聴覚:インテリア*オーディオ
・触覚:お風呂ライフ*オーディオ
「異種がつなげる」「異種がつながる」ことで「新しい文化を創る」ことがキーワードです。連続のヒット商品になりました。

そのつなぎ方の秘訣については、「大三角形」第40夜、「広い知」第83~84夜に綴っています。ビジネスで最も大切な構造を当てはめることで、「質的転換」を実現しました。

2.2017年の将来パイオニア
研究所に呼ばれて、10年後(2017年)の将来パイオニアの世界と世間を研究者たちと創発してまとめました。
2006年に作成した10年後の4つの世界(ビデオ)は、ずばり2017年を言い当てていました。

それは、シナリオプランニングの第一人者のJオグルビー氏と紺野登氏からの直伝を日本流に編集した「苗代的(第119夜)シナリオプランニング」(第15夜、第86夜)を活用しました。

ポイントは、10年後の世界に影響を与える因子、軸を抽出することです。ここで出てくる「何を」「どれを」抽出するのかが成否を決めます。

ここで少し関係のある寄り道をします。これが『将来洞察、将来シナリオ』の「核心・確信」に繋がるきっかけを創ってくれました。
それは、2000年の松岡正剛師匠主宰の未詳倶楽部で音連れました。目から鱗が落ちた瞬間です。
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私は20世紀までは主題の時代だったが、21世紀は「方法の時代」であると考えてる。日本はいま、日本を語り、日本を考える方法を失っている。
日本の面影を取り出せなくなっている。面影とは、目の前のモノが去っても、なおそこに残るもののことである。

「面影」はうつろいゆくものである。「うつろい」の「うつ」とは、「移」であり「映」であり「写」でもあって、そして「空」でもある。
そのようにして変化していく面影をとらえ、うつろいを美意識にした方法が「数寄」である。「数寄」とは、「漉く」であり「透く」であり「鋤く」であり、「好き」でもある。
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「将来洞察」を確信する心得と方法が欲しかった時期でした。上記の「面影」と「数寄」のあいだに注目しました。
そこで、「将来の面影」を「数寄」で埋めていく道筋が見えました。「数寄」とは、「漉いて」「透いて」「鋤いて」「好いて」いくものです。「漉いて」「透いて」「鋤いて」「好いて」いくと観えてくるのです。
これは自分で知の大汗をかかないと分かりません。イチゴを食べたことのない人には「イチゴの美味しさ」は伝わりませんね。

そうやって、「10年後(2017年)のパイオニアの世界と世間」を2006年に作成しました。そして、「核心と確信」を持つことができました。第118夜に綴りましたが、「核心と確信」があれば、「革新」に向かえるのです。

それ以降、多様な業種・業態から依頼がくるようになりました。ご支援している数々のシナリオはお見せすることができないので、機密の問題のない、2007年に作成した「広告の将来シナリオ」をアップします。

2015年にご縁があって、丸善株式会社様からの依頼で、「harappa日本橋×丸善夜学」の講師になりました。
仕事と人生にいかす3つの力「プロのクリエイティビティー力」をみにつける、というのがメインテーマでした。
そこでは、会社も年齢も性別も全く異なる「日本橋ビジネスパーソン」が集まりました。

ここで、最初の三回で、「トリニティイノベーション」(第66夜、第21夜、第75夜)の「深い知・高い知・広い知」を習得していただいて、後半の3回で、「ワクワクする日本橋の将来シナリオ」を3チームで挑戦していただきました。

彼らは、異業種でありましたが休日も集まって熱く語り合っていました。夜学という限られた時間で仕上がるかどうか心配もありましたが、どこにでも誇れる「素晴らしいシナリオ」が出来上がりました。

そう「未来はもうここにあるのです。それは、全ての人に均等に配分されていないだけなのです」
その本質を把えて、「漉いて」「透いて」「鋤いて」「好いて」未来の面影を創るのです。
それは、「すでに起こった未来」として眼前に現れます。

もうお分かりの様に、「フィギアスケート」や「面影&数寄」がトリガーになっています。その様な「苗代的思考」(第119夜)が将来を引き寄せます。

多くの方達に、そのWillとSkillを身につけて欲しいと思います。少しでも皆様の参考になれば幸甚です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
観察洞察
広告シナリオプランニング①
広告シナリオプランニング②

橋本元司の「価値創造の知・第125夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑫「質」が変わる、「世界」が変わる

2018年3月28日 質的転換、経営革新

前夜(第124夜)では、「次元が変わると経営危機が訪れる」ことを記しました。
例えば、「オーディオ事業」もカセットテープやディスクのメカニズムの時代は成長しましたが、
それが、iPod、iPhoneの様に、通信やiTunesの「ソフトウェア・ビジネスウェア」が三位一体となる「質的転換」があると、
従来のやり方、考え方(ビジネスモデル)では太刀打ちできなくなります。(新価値創造研究所HP参照:オーディオの定義を革新する)
質的転換したその世界も、数年のうちには新しい「質的転換」が起きるでしょう。

 そのように、「質」が変わり、「世界」が変わることを『次元』が変わると表現しました。皆さんの業界、地域にとっても「質的転換」は何でしょうか?その「本質」「流れ」を察知することがとても重要です。

“ある固定した考え方を続けていくと、鬱血(うっけつ)が起こってきて、床ずれし始めます。その始まりのサインは軽い不快感です” 先人達が決めた先入観、常識を疑い、この床ずれに気づくのが「問題の発見」になります。 (第36夜)

さて、今の「質的転換」の事例をご紹介します。
「AIoT」の進展では、多くの業界が下記の前後を意識せざるを得なくなると思います。(第105夜、第112夜)

①センシング(イメージング)⇒②プロダクティング⇒③コンサルティング(インテグレーティング)

下記の違う描き方(第91夜)で「ピン!」とくる方も多いと思います。
PREPARE(用意)⇒ PERFORMANCE(料理)⇒ PROMOTION(配膳)

製造業であれば、②プロダクティングが中心でしたが、
これからは、①センシング・イメージングという五感部分が間違いなく大きく進展します。そこは、生活や現場と直結する「センサー(部品)」であったり、「ビッグデータ」であったりします。
それは、「活動量計」「ルンバ」「自動運転」「SNS」「スマホ」等を観ればすぐ分かります。

「ルンバ」「自動運転」であれば、その奥底には、「本当は、掃除や運転なんかしたくない」という「在り様・意味(Meaning)」(第85夜)があります。

そのような「在り様・意味」を片手に持ちながら、「①センシングを使った、②新しい価値のプロダクティング」を幅広く実践していると、③コンサルティング(インテグレーティング)が視界に入ってきます。

そして、この①②③を一気通貫で先行してプロデュース、実践できるところが、「質的転換」を図れる「企業革新の会社」に仲間入りします。そして、その企業はもう「製造業」ではありません。それは「新サービス産業」になります。
このような「質的転換」を果たす会社や企業群がこれから続々とメディアに登場するでしょう。

その時に重要なのは、「製造業」の視点で観ないことがヒントです。この「ズラシ」ができるかできないかがポイントです。それについては、分母の再定義(第105夜~第108夜)に綴りました。

実際に、私たちがご支援している「製造業」の半分以上は上記関連のご支援です。現在は、①②③の一気通貫の先を見据えた戦略も必要になっています。その先に向かうには、上記の前後だけでなく、「左右」「上下」を把えることです。

自分達にとっての「顧客価値」&「使命」を認識していれば見えてきます。そして、それは「深い知・高い知・広い知」をメンバーで共有していれば観えてくるものです。(第89夜:「本質的な違い」を生み出す3つの抽象化能力)
その次のステップへの将来シナリオづくりは、皆さんワクワクされながら挑戦されています。

上記を「製造業」のことと想っているとそれは大間違いです。私たちは、サービス業のベンチャー企業~老舗企業をご支援していますが、構造は同じです。全体的にサービス業の方達の意識が高く、取り込みが「急」です。

「IT」「AIoT」「Industory4.0」の世界は、様々な業種・業態に影響を及ぼします。例えば、「ビッグデータ」を活用するとビジネスが変わる業界は全て関係してきます。
その時、それまでの「市場」は、質的転換を起こします。

そのような視点・視座で把えると、私たちには、

「99.9%」

が該当するように思われます。現在の延長線上で観ない事です。その時に必要なのが、「価値創造」と「経営革新」です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
質が変わる

橋本元司の「価値創造の知・第124夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑪「次元」の変化に適応する

2018年3月26日 世の中の「次元が変わる」から経営危機が訪れる

前職(パイオニア社)の後半では、何度か『経営危機』がありました。

そのような中にあって、エンジニアだった自分が、下記の様に転身しながら、
①センター工場:設計、技術企画、組合書記長
②本社:情報企画・開発企画
③本社:ヒット商品企画、新事業創造室
④総合研究所:新価値創造センター
⑤本社:「次の柱」新事業プロジェクト、「次の人財開発」プロジェクト

その只中の当事者として、様々な職種(プランナー、マーケター、プロデューサー、R&D、HRD、コンサルタント)を体験してゆきました。
特に③④⑤では、多くの異業種の方達とお会い、お付き合いがあり、世界が拡がりました。その交流の中で、社外講師として出向いたり、社外シナリオプランナーとしても活動してきました。
それは今の自分にとってはかけがえのない貴重な体験でした。
そして現在、それらが多様な企業/地域をご支援する中で役立っています。

世の中の「次元が変わる」から、経営危機が訪れるのです。

少しおさらいしてみましょう。
1880-90年代に栄えてきた企業が21世紀に入ってのきなみ凋落している姿は枚挙にいとまがありません。地方も銀行も同様ですね。
2000年の前と後では、経営環境が大きく変わり、思いもよらぬ競合相手も出てきました。それはリーマンショックの前からです。

市場や業界の境界が消滅しました。
本質は、「第115夜:インターネット的」に綴りました。「インターネット的」という3つの軸(リンク、シェア、フラット)が「世界と世間」(第80夜)を変えてゆきました。
さらに、『脳業』(第109夜)にシフトしています。その「世界と世間」が変わっているのに、それを用意しない、適応していない企業/地域が多くあるということです。

それは、平昌オリンピックのマススタートという競技に似ているように思いました。
自分から前に出るコトがなく、後ろについていく姿です。鎖国をやっているうちに、外国競合と大きく差がついていってしまう危険があります。
そうでなくても、上記の時代の波に飲み込まれて軒並み凋落している反面教師がいっぱいです。

このような時は、その業界の盟主が変わっていく姿を期待してしまいます。
前職の時は、自社を『盟主』と想い、プランニングしました。
しかし、人と将来の価値観を共有するのは難しいものがあります。
将来世界を拡げて見せて、魅せても「人」は自分の知識、情報や体験以上の発想や判断ができません。

トップとメンバーに求められるのは、「次元の変化」を内包した第122夜「想像力⇒創造力⇒構想力」です。

第93夜では、モノづくり⇒コトづくり⇒つながりづくり
ハードウェア⇒ソフトウェア⇒ハートウェア
第109夜では、農業⇒工業⇒情業⇒脳業
AIoT、Industory4.0
を図解等でご案内してきました。

バリュー・プロジェクトでは、「深い知」「高い知」「広い知」の各ステージに挑戦、習得していただくのですが、
それぞれに、『次元』を自ら超えるステージがあります。
それを乗り超えることで、新しい「顧客価値の創造」、「自己革新」「経営革新」があります。

次元が変わらなければ、「改善」「改良」でやっていればいいのです。
次元が変わるから、「革新」「価値創造」が必要なのです。

今の皆さんは「改善」と「革新」のどちらでしょうか?
「改善」をしているということは、「現状維持」と同じで後退モードです。

前職の業界で言えば、もう従来の「製造業」のままでは隆々とした将来を描くのは難しい時代になっていました。
そしてそれは、多くの業界に及んでいます。

はっきりと『次元』が変わっていることを認識することです。

質的変化、次元変化が起きた時に、迅速にそれを察知して、それを乗り超える「WillとSkill」(第52夜、第63夜)を持って、企業革新していくことが『持続性』の条件です。
持続性には、「新顧客価値の創造」「イノベーション」「企業革新」が企業の能力として求められるのです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
次元

橋本元司の「価値創造の知・第123夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』➉「アブダクション」が不可欠!

2018年3月24日 「アブダクション」で飛躍する!

将来イノベーションを洞察する際に、是非身につけておきたい「推論法」をお伝えします。
これまでに、将来を洞察する別格の方法(守破離:第5夜、弁証法:第10夜、シナリオプランニング:第15夜)を綴ってきましたが、そこで使われる方法の中心は、①帰納法、②演繹法ではなく、③アブダクションです。

「本来と将来」を洞察することを生業としている人には「アブダクション」はあたり前ワードなのですが、一般に「アブダクション」という言葉を聴いたことがある人は少ないと想います。それは普段は、無意識で使っている方法なのですが、意識して活用することで人生に役だちます。

いったい「アブダクション」とは何でしょうか?
松岡正剛師匠の千夜千冊1556夜に記されているので加筆引用します。
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今夜は、どうもアブダクションという推論の方法が掴みにくいなと感じている諸君に向けます。正確には論理学についての知識も必要ですが、そこは軽く扱うので、心配無用。
でも、アブダクションを使えるかどうかは、諸君の仮説にかけるセンスと仕事を仕上げる腕っぷしにかかっています。
・・・
チャールズ・パース(1182夜)は
①帰納はひとつの値を決めるにすぎず、
②演繹はまったくの仮説の当然の帰結を生むだけ
③「アブダクション(仮説的推論)」は説明的な仮説を形成する過程である。それは新しいアイディア(観念)を導く唯一の論理的操作であるであるからだ。
・・・
②「演繹法」は与えられた観察データを“説明する”ための論理を形成するもので、わかりやすくいえば、「◇◇◇だから、☆☆☆である」という論理を数珠つなぎにしていって結論を引き出すという、そういう推論です。
すなわち、一般的な大前提をルールの措定された根幹にして(→人は死ぬ)、そこに中間段階の展開を加え(→ソクラテスは人である)、最終の言明(→ソクラテスは死ぬ)を確立するという方法です。
三段論法が最もよく知られているように、仮定をひとつずつ検証可能な真実かどうかを確認しながら進むため、導き出された結論は強い説得力をもっています。
ただし、最初の大前提(→人は死ぬ)は、仮説のようでいて仮説ではないのです。一般的な常識のように設定できるか、あるいは数学的な公理のように前提になっているような、そういう大前提を下敷きにしておく必要がある。
ということは演繹法ははなはだ自己決定的で、問題解決的だという性質をもっているということになります。だから技術や科学にはふさわしい。いったん前提から発進しはじめると、その次からはどんどん前に進みたくなる推論なんです。けれどもそのぶん、最初の一般的な大前提に偏見や誤りがあると(たとえば「民主主義は正しい」等々)、結論もおかしなものになりかねない。

①一方、帰納法は観察データに“もとづいて”一般化をするためのものです。
たとえば「人は死ぬ」という仮説を言明するために、「ソクラテスは死んだ、真田幸村は死んだ、リンカーンは死んだ、おじいさんも死んだ、隣りの姉さんも死んだ」というような事例をどんどんあげて、そうした個々の事例の集合にもとづいて「人はみんな死ぬ」という結論を導く。
そういうふうに、いろいろなものに“もとづく”という方法です。アリストテレスやキケロは「枚挙法」という言い方をしていました。似ているものを探しながら推理するといってもいいでしょう。
したがって帰納法は「量から質を導くとき」に有効で、そのぶんきわめて自己規制的(self-regulative)になります。これは、いいかえれば量的な現象に対して強いロジックで、それゆえすこぶる自己修正的(self-corrective)な性質をもっているんですね。
けれどもどこまで事例を集めればすむかというと、そこは案外はっきりしない。一定の範囲で共通項が見えたら、このくらいでいいだろうという質的な判断がまじります。
ただし、今日のようなビッグデータ時代では、似たような事例はそうとう集まってくるので、こういう場合の帰納法はそれなりに強力です。とはいえ、そればかりしていてはデータが厖大に重くなる。
ビッグデータはこの悩みをかかえているわけですね。

③ もともとアブダクションは帰納法の途中から発展していったものです。事例をどこまでも集めるだけではキリがないとき、いったん仮説を設定して、その仮説の地平からあたかも戻ってくるように推論を仕上げる、束ねるという方法ですからね。
この、「あたかも戻ってくるように推論を仕上げる」「いうところが、たいへん大事なミソです。ツボです。途中で先に進んで、そこから戻ってくるんです。
そのため、アブダクションはまたの名を「レトロダクション」(retroduction)ともいいます。いったん仮想した概念や事例のほうに推論の道を行って、そこからまた戻りながら推論の内実を仕上げていくからです。
パースはアブダクションを拡張的推論(amplative reasoning)だとも言っていました。拡張的機能あるいは発見的機能をもつ推論だからです。ぼくはそういうアブダクションこそ編集的機能をもっていると思っています。

★ それでは、どこが帰納法とアブダクションが大きく違うのかといえば、次の点にあります。
アブダクションという方法には、大きく傑出した二つの特徴があると思うといいでしょう。
ひとつには「われわれが直接に観察したこととは違う種類の何ものか」を推論できるということです。帰納法には「違う種類のもの」は入りません。似たものばかりが集まってくる。けれどもアブダクションは「違うもの」を引き込むことができるのです。ここがとても重要なところです。
またもうひとつには、「われわれにとってしばしば直接には観察不可能な何ものか」を仮説できるということです。いまだに例示されたことのない仮説的な命題や事例を想定することができるのです。これは哲学や社会学がこれまで前提にしてきた概念で言うと、いわば「ないもの」さえ推論のプロセスにもちこむことができるということで、きわめて大胆な特色になります。ぼくが気にいっているのは、ここなんですね。
このような驚くべき特徴は、アブダクションには「飛躍」(leap)があるということを示していると言えます。・・・
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皆さんにご理解いただくために、多くを引用させていただきました。上記で、もうお分かりかと思いますが、

『アブダクションには「飛躍」(leap)があるという驚くべき特徴がある』

ということが「価値創造とイノベーションのあいだ」のポイントです。
従来のやり方、考え方は、先細り・行き詰まりを感じておられる会社・地域が多くあります。『その行き詰まりの枠・制限を超える適切・的確な「飛躍」(leap)』が次の一手、次の柱、革新・イノベーションには求められます。

3つの『トリニティイノベーション』の「深い知・高い知・広い知」は全てそれまでの常識を打破る飛躍の方法です。
それは、「新奇」なものではなく、「目から鱗が落ちる」世界の発見・発現です。
それ故に、価値創造・イノベーションには、「アブダクション的思考」が不可欠なことを身をもって体験してきました。

ここで問題となるのは、飛躍することは「ファーストペンギン」になる可能性が高いということです。
(「ファーストペンギン」とは、集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛びこむ1羽のペンギンのこと。
転じて、その“勇敢なペンギン”のように、リスクを恐れず初めてのことに挑戦するベンチャー精神の持ち主を、米国では敬意を込めて「ファーストペンギン」と呼びます。
日本でも、NHKの朝の連続ドラマでそのエピソードが紹介され、広く一般に知られるようになりました)

そこで重要となるのが「核心⇒確信⇒革新」(第118夜)です。特に、『確信』がポイントですね。「確信」がなければ、「革新(イノベーション)」には向かいません。
そして、「確信⇒革新」に向かう時に、従来のやり方・考え方と違う世界を取り扱う、踏み出すという「覚悟」が必要になります。
そのためにも、私たちは従来事業を含み込む「適切・適確な飛躍(次の一手、次の本流)」には細心の注意を配ります。

「人(メンバー)」は自分の知識、情報や体験以上の発想ができません。そのために、私たちは異業種の事例やシナリオ、ビデオ等を多くご用意します。

一緒に、「適切・適確な将来(次の本流)」に向けて『飛躍』しましょう。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
アブダクション

橋本元司の「価値創造の知・第122夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑨想像力・創造力・構想力

2018年3月23日 想像力⇒創造力⇒構想力

多様な会社・地域のご支援で伺ってお聴きすることは、
「構想力のある人材がいない」ということです。
本当でしょうか?そんなことはありません。

本夜お伝えしたいことは、『確信のある構想のために』です。

・想像力⇒創造力⇒構想力

①想像力:夢・想いの世界を描く本気の力(気立て)
②創造力:独自の夢・想いを実現する本質の力(見立て)
③構想力:独自の夢・想いを組み立てて、次の本流にする力(仕立て)

上記の流れは、第117夜から続けてご覧になられている方にはすぐに納得いただけるかと思います。
それを図に表してました。

「構想力」は、「想像力」⇒「創造力」と共にあるのです。こことっても重要です。
「良い構想力」には、「想像力」「創造力」の『熱』が失われずに伝わってきます。
ただ、前夜(第121夜)にも綴りましたが、気をつけないといけないことがあります。
それは、「人(メンバー)」は自分の知識、情報や体験以上の発想ができないことです。
それを補完し、『熱』が伝わるようなプロセス・方法が外部人材に求められます。

いかがでしょうか。 貴社・貴地域では、そのように『構想』がつくられていますか?

いきなりコンサルティングの言われるままに、
SWOT分析や、3C分析をやって、
・誰に:WHO
・何を:WHAT
・どのように:HOW
という流れで検討されていませんか?

それは、「最初・先」にやるものではありません。
首記、「想像力⇒創造力⇒構想力」を進めてから、『後』に行うものです。
そうすると、迅速に全くレベルの違うものが出来上がります。

なぜならば、『深い知・高い知・広い知』が盛り込まれているからです。
そこには、『熱意』があるからです。
そして、メンバーの『確信』ができるからです。

 

図解をご覧ください。

左側の、「夢・想い・情熱」世界を常識の枠を外して拡げます。
そうして拡げたものから、そのなかにある「本質」(色即是空)を取り出します。
そこには、「ミッション・ビジョン・イノベーション」の大元があります。
それを将来(次の本流・新しい価値観)の実現の為に「想いを組み立てます」。
そこには、「物語的な感情(エモーション)」が必要です。
そして、将来の現実世界に反映(空即是色)するのですね。

上記の「色即是空⇒空即是色」については、第6夜、第85夜に綴っていますので是非ご覧ください。
このイメージと方法を手にすることで世界が変わります。

同様に貴方の『世界・世間』を変えるためにお伝えすることがあります。
それを次夜(第123夜)で、「想像力⇒創造力⇒構想力」の中で活用する「アブダクション(仮説形成や仮説的推論)」について綴ります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
想像創造構想

橋本元司の「価値創造の知・第121夜」『価値創造とイノベーションのあいだ』⑧想像力と創造力をつなげる

2018年3月21日 「想像力」⇒「創造力」⇒「構想力」

本夜お伝えしたいことは、『創造力/イノベーションには、想像力が不可欠である』ということです。
「創造性」と「想像性」のあいだには、とても密接な関係があります。
「想像力」とは、夢・想いの世界を描く力であり、「創造力」とは、独自の夢・想いを実現する力です。「創造力」を生み出す触媒が、「想像力」といってもいいと思います。

それでは、「想像力」を違う角度から見てみましょう。
先日TV放送「SWITCHインタビュー達人達」で、声優の緒方恵美さんが出演されました。
アニメの声を2役3役と別格で演じられるアニメ界のプロフェッショナルですね。

その中(声優)で、
「想像力で自分が変わる」
「自分の想像力で自分の中の体の中を変えちゃう」
「中身がともなった人としての声で出していないと説得力がない」

上記が、価値創造/イノベーションと何の関係あるの?
と思われる方もいると想いますが、

将来に対する熱い夢・想いが脈々とあり、その光景、イメージが目の前にありありと、まざまざと浮かんでいるとその人の中身は『将来』になってしまうのではないでしょうか。
自分も全く同じ体験を何度かしています。

それを、声優の緒方恵美さんは、「自分の想像力で自分の中の体の中が変わる、変えちゃう」と表現されました。

「想像力」(イマジネーション)が明確にあれば、それをどう実現するか、という「創造力」(イノベーション)に移ります。

さて、私たちが企業/地域のご支援でうかがった時に、トップの方が選出されたメンバーに求める『創造性』について二つのパターンがあります。
①やたらにメンバーの「創造性」に期待する
②あまりメンバーの「創造性」に期待していない

会社の大小にかかわらず、仕事の分業化、効率化で、「全体を見る力」「先を見る力」が弱っています。
情業/脳業時代(第109夜)に綴った「不確実性」「不確かさ」がそれに拍車をかけています。

いきなり、将来を切り拓く「創造性」を期待されても困りますよね。
なので、いきなり「創造力を発揮しなさい」と社員や関係者にいっても彼らは困ってしまうのが現実です。

だいたい「ビジョン」が時代にあっていない、ズレていたり、何を目指しているのかが統一されていないことが多いのです。
指し示す「ビジョン・志」が明確であれば、イノベーションは発揮しやすいのです。

なので、「想像性」から入ることをお薦めします。
しかし、ここで気をつけないといけないことがあります。
それは、「人」は自分の知識、情報や体験以上の発想ができないことです。
ここで必要なことは、
①一人ではなく、異能の人財を集めて『衆知を結集』することです
②そして、全体を読んだり、先を読んだり、本質を読むのが得意な『外部人材』を投入することです。

そして、『想像力』『創造力』『構想力』を自由自在に働かせるのです。

『想像力』のステージでは、、
先ず、そこでは従来のやり方、考え方から意識的に離れることが必要です。離れることができなければ、意味がありません。
ただ、「離れる」ということは、必ず「新しいアプローチ」をすることが必要になります。その『覚悟』はトップに必要です。

次に、個性や独自性という「偏在」を良しとすることです。そうでなければ、「顧客から選ばれる理由」(第37夜)を創れません。
そこに、その会社/地域に看過できない現在情報、将来情報のボールをこちらから適宜、提供します。
そうすると、複数のイメージが出来上がってきます。

そのステージの最中に、『新価値創造研究所』が同時並行で巡らせているのは、
①顧客にとっての効能
②従来の価値観に代わる新しい価値観の可能性(=新しい目的)
③バリュープロポジションの候補
④成長のシナリオ(従来⇒開発⇒開拓⇒開際:第66、67夜)
⑤異業種連携等による実現性
・・・

等々です。

さてさて、上記を全員で汗をかき、描き、整理することで、

「想像力で自分が変わる」

ことを全員が体験できます。これがとっても重要です。
「想像力」と「創造力」を繋げるには、「3つの抽象化能力」(第89夜)と「物語り的な感情(エモーション)」が必要です。
それが、「価値創造の知」連載で多くを綴ってきた『深い知・高い知・広い知』(第66夜、第89夜)です。これで全員の自信がつきます。
更に、「学ぶ⇒真似ぶ⇒翔ぶ」(第114夜)ための、異業種や先行事例の情報・図解・ビデオを多数用意して『創造力』『構想力』の橋渡しを行います。

・多くの事例を知る、体感する(集合の「知」となり、自分たちの考えの自信につながる)
・「3つの抽象化能力」で、本質的・本格的な違いを生み出す(=意識的に余白をつくる)
・新しい価値観を創る、これまでの価値観を変える、(これまでの殻、常識を破る)
・顧客に選ばれる理由を明確にする(=ゆるぎないコンセプト)

「想像力」の共感で、気持ちが合わさり、「やる気・本気」のモードになっていきます。
つまり、「想像力」が「創造力」の触媒となり、その二つが、「構想力」の触媒になります。
そして、次のステージの「構想力」に向かうのですが、「創造力」には「想像力」が必要なことがおわかりいただけましたか。

隆々とした将来を望まれるのであれば、「想像力」⇒「創造力」⇒「構想力」です。
是非、メンバー全員に習得させてください。人生と会社/地域が変わります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
想像力と創造力