橋本元司の「価値創造の知」第350夜:これからの「会社創生・地域創生」と「人財創生」

2025年3月11日: 「人財創生の3つの輪(トライアングル)」

■ 「トランプ主義=グローバル主義の終焉」の影響
 前夜にお伝えしたことは、トランプ大統領の言動により、これまでの時代において「常識」と思われていた主流の考え方や規範そのものが変わっていく時代であり、過去の価値観や認識を引きずっていると、これまでの常識に縛られてしまい「変化」に対応しきれなくなることをお伝えしました。
その思考の補助線が「グローバル主義の終焉」の認識です。
 
 これからは、それに伴う「オープン(グローバル主義)とクローズ(反グローバル主義)」のせめぎあいの時代であり、双方の「両立に挑戦する時代(第388夜)」になるのは間違いありません。それに対応・適応して、私たちはこれまでになかった新しい選択肢や方策や産業を創り出してゆく必要があります。
(それが、第308夜これまで綴ってきた「航海の時代(第333夜)」「バリューイノベーションの時代」です)
 その対応の良し悪しは、私たちの国家戦略、経営戦略、地域戦略に大きな影響を及ぼします。

 そして、そのことが働く人たちの「人財創生・育成」や「教育の見直し」にも深く関わっていくことは間違いありません。
それは後述する「キャリア形成」3つの輪の「すべきこと(Shuold)」の円が大きくなることから始まります。
「すべきこと(Shuold)」に対応・適応することを「やらざるを得ない時代」になってくるからです。

 それを「やらざるを得ない(MUST)」とネガティブに考えるか、「すべきこと(Should」とポジティブに把えるかで、社員の成長とやる気に大きな違いができてきます。
本夜は、企業経営に高まりを見せる「人的資本経営」の視点から、「人財創生」、「キャリア形成」という「3つの輪」を図解を通してお伝えします。

 その「人財創生」、「キャリア形成」は、下記「人的資本経営」と不可分な関係があります。

■ 「人的資本経営」の加速

 2018年、国際標準化機構(ISO)から「人的資本」に関する情報開示のガイドライン「ISO30414」が発表されました。
その目的は、
1.企業や投資家が「状態を把握」しやすくすること
2.企業経営の「持続可能性をサポート」すること
 の二つにあります。

 『人的資本経営』とは、人材を「資本」と把え、その価値を最大限に引き出して企業価値を向上させる経営手法です。
日本でも世界的な潮流を受けて、人的資本の情報開示が求められるようになったため、多くの企業や自治体で取り組まれています。
 、
 さて、この「人的資本経営」が注目される背景には、
・企業の競争力を高めるには「人材への投資」が不可欠であるという考え方の広がり
・技術革新や少子高齢化、働き方の多様化
 等々があります。
 その結果、人的資本経営では「人財」に投資するため、「従業員のスキルアップと成長」が促されます。 
前夜(第348夜)に綴ったトランプ大統領の反グローバル主義からの「時代の大きな転換点」への対応・適応は、上記「人的資本経営」への更なる取組みに繋がる道筋を綴ります。

・「グローバル主義の終焉」→反グローバル主義
   ↓
・「経営戦略・地域戦略・人生設計」の大きな見直し
   ↓
・これまでの「依存体質」から「自立・自律体質」への迅速転換
   ↓
・「するべきコト(Should)」(図解)の増大
   ↓
・「できるコト(Can)」「やりたいコト(Will)」(図解)の輪を大きくする

 という「流れ」が、国家・地域・企業・学校・個人で、今後加速することが洞察されます。

■ 「人財創生」「キャリア形成」の「3つの輪」から
 
 「キャリア形成」とは、仕事を通じて経験やスキルを積み重ね、自己実現を図るプロセスです。
「将来なりたい姿(Will)」を見据えて、自分の成長や達成感を得ることを目的としています。
 2年前、岸田政権は、「構造的賃上げ」の実現を優先課題に掲げ、それを達成する具体的手段として
・「リスキリング(学び直し)」
・「日本型職務給(ジョブ型)の導入」
・「成長分野への円滑な労働移動」
 の3つを「三位一体の労働市場改革」としていました。

 少子高齢化による労働力減少などの影響を受けて、「雇用流動化」「労働市場の流動化」により、
「人材が企業間を移りやすくして、労働力の流動化を図ることにより、企業の生産性が向上して経済成長につながる」
という考え方です。

 従来の「終身雇用制度」から、年齢や在籍年数ではなく、「成果主義(従業員の成果や実力に応じて評価や待遇を決定する方法)」に移行しています。
このことが、若者や労働者に、企業の「キャリア形成導入」の促進につながっています。
 「ボー」っとしていると社員が他の会社に移動してしまい、人材採用も困難になっている時代です。

 さて、「キャリア形成」のフレームワークに「3つの輪」があります。
(ただ、対象や領域の把え方で、単語や意味合いが変えた表現の違いが見られます)

「3つの輪」は、、
・「Will・Would(やりたいコト)」
・「Can(できるコト)」
・「Must・Should(やらなければならないコト・するべきコト)」
の3つの視点に分けて考えられています。(図1)

■ 「航海の時代」の3つの輪
 
 高度成長時の「鉄道の時代」「オペレーションの時代」(第333夜)には、ゴールが共有されているので、左側の「Can(できるコト)」と上側の「Will(やりたいコト)」が中心でしたが、「グローバル主義の終焉」という「航海の時代」(第338夜)には、

・「すべきコト(Should)」の円が大きくなる(図2)
  ↓
・「自立・自律」への強い認識
  ↓
・「できるコト(Can)」の領域を大きくする(円が大きくなる)
  ↓
・「やりたいコト(Will)」を大きくする

 という「善循環」への転換が成長の鍵になります。

 上記流れで、「すべきコト(Should)」に迅速に取り組むコトは、「ピンチではなくチャンスである」という認識・行動につながります。
そこでは、トップがその認識を持てるかどうかが大きなポイントになってきます。
トップが「いやいやながらやる(Must)」という消極性が社員に見えると、それは「Can」「Will」の円が大きくならないことにつながり、成長の速度や結果に悪い影響を及ぼします。

■ 「2+1(第312夜)」と「すべきコト(Should)」

 「グローバル主義の終焉」に伴って、「社会的課題(Should)」が顕在化してきます。
その「課題(Should)」と「本業(Can)」を交り合わせて、一段上の価値を創り出す。
それは、このコラムで数多くの「2+1(第312夜)」の事例を通して紹介してきました。

 「一段上の価値創造」を「Will(実現したいこと、やりたいコト)」として掲げて、
そこにベクトルを合わせて、「すべきコト(Should)」として力を結集する。
それが、次の成長の源になります。

 それは、「個人のキャリア形成」に留まらず、「事業開発」「地域開発」と同類であることがおわかりいただけると思います。
「グローバル主義の終焉」によって、「経営戦略」の見直しが図られ、それに基づいてそれを実現する「人財戦略」「人財創生」をブラッシュアップする時代です。
これまでの「狭いキャリア形成」から、上記の「激動のキャリア形成」を図ることが求められます。

・ピンチはチャンスである

 そこへの気づき、アプローチの遅速が、「国家」「企業」「地域」「学校」の成長に大きく関わってきます。
前夜にも綴りましたが、「オープン(グローバル主義)とクローズ(反グローバル主義)」の時代のはざまで、私たちに必要なのは、一段上の新しい価値を創る『覚悟』と『自活力』です。
 対抗概念をのみ込んで、一段上の新しい価値を創る時代の本格到来です。
 
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第349夜:「グローバル主義の終焉」

2025年3月5日: 「思考の補助線」
■ 時代の転換点
2月28日、トランプ大統領は、報道陣の面前でゼレンスキー大統領と激しく口論しました。
予想はしていましたが、はっきりと明確に「時代の大きな転換点」を認識した日だったのではないでしょうか。

・「アメリカ・ファースト」

 への本気、脅しを全世界の人たちの脳に刻み付けました。
作用反作用はありますが、自国の国益を最優先にするということです。
 かつての古き良き時代のアメリカからの衰退、苛立ち、余裕がなくなる等が、感情的な言葉に表出しているように思います。
それは、国際社会への関与を徹底的に控え、「関税」「ディール」を前面に出して、「自由貿易」「グローバル主義」からの脱却に拍車をかけた動きです。
本年1月の「パリ協定」からの離脱の大統領署名は、同じ地球に生まれた生命体として連鎖する「アーシアン」「地球視点」の価値認識を欠いていることが、アメリカへの「信用・信頼」を大きく疑わせることになりました。

 そして、私たちは、ウクライナ・ガザの二つの戦争の「国連の無力」を何回も目の当たりにして、これまでの「法の支配」を拠り所にした理想・希望から、19世紀からの「大国の力(暴力)による支配」への移行を危惧していますが、その様な最悪のシナリオに同盟国も備えることが必要になりそうです。

 その様な「グローバル主義の終焉」「力による支配」というベクトルに、私たちはどう対応し備えたらいいのでしょうか?
「切実」として、他人事ではなく、自分ゴトで考え、構想し、行動することが求められてきます。

 まさしく、
・「切実→逸脱→別様」(第333~334夜)
 です。
いずれにしても、上記に立ち向かうための『自立と自律』の精神と認識が求められる時代に突入したのではないでしょうか。

 本夜は、これからの認識の助けとして、下記「一本の補助線」としての『グローバル主義の終焉』を綴ります。
それに向かう迅速な認識の有無で、「世界の見え方、風景」と「それに向けた戦略・行動」が大きく変わると思いますので、下記が皆様の参考に少しでもなれば幸いです。

■内なる情熱

 さて、この「価値創造の知」コラムでは、従来からの転換の発火点としての「情熱」(第157夜、第322夜)、「切実」(第314夜、第330夜)を何度も取り上げてきました。
「情熱(Passion)」という言葉は、「受難(Passion)」と同じ語源を持っています。この世で「難」を受け、「困ったこと」「切実」があるから「情熱」が生まれてきます。

 上記の両大統領の口論から「受難」「切実」「苛立ち」からの、なりふり構わないトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」という「情熱(Passion)」を感じます。
大局的にみれば、「国際的に何が正しいか」という規範よりも、「受難」「切実」「苛立ち」から「アメリカ・ファースト(自国の国益最優先)」を実現したいという情熱が上回り、それをアメリカの半分以上の人たちの共感・支持を得たということになります。

 「受難」と「情熱」はコインの裏表です。

良し悪しは別として、このような『情熱の強さ』によって、様々なモノゴトや世界・世間が変わっていくことの重要性をこのコラムでは取り上げてきました。 

■ 「一本の補助線」

 さてさて、私は中学・高校時代に「幾何学の問題」を解くことが好きでした。
たった一本の補助線を引くことで解答・証明への道筋につながる面白さと喜びを感じていました。
それは、自分が社会人になっても続き、商品設計や企画、研究開発、事業開発の現場でも、「一本の補助線」「思考の補助線」を引くことで、それまで無関係そうに見えていた間(第348夜)に、新しい関係の脈絡がついて、そこに気づかなかった風景・様相が拡がり成果に繋がるコトに喜びを感じていました。
 
 そのビジネス現場では、インサイト(INSIGHT:第68夜)、フォーサイト(FORESIGHT:第89夜)、コンセプト(CONCEPT)等の言葉が使われますがそれも同類の様に思います。
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参考: 第347夜から引用します。
 ①人を読み(Insight)
 ②先を読み(Foresight)
 ③新しい全体を読む(Gestalt)
という「3つの洞察力(=3つの知)」(第89夜、第128夜、第333夜)から発想・構想を生み出す「価値創造技術(エンジニアリング)」です。
その原動力となるのが、上記①②③の「本質」を見抜く、見通す『洞察力』。
ーーーーーーーーー
それらによるこれまでになかった「違い」「共感」に到達すると、それまでのモヤモヤが消えて、ワクワクする新しい世界が見えて、解決への道筋が拡がってくる感覚・体感があります。この喜び感覚をより多くの方たちに体験していただきたいと思っています。

 本夜は、トランプ・アメリカ大統領が就任してから、顕著に変わってきた地球世界の情勢と秩序をどの様に把えていけばいいのかを「一本の補助線」を踏まえて、仮説・洞察したいと思います。「内なる情熱」「受難」を絡めながら、これから顕在化する「グローバル主義の終焉」という「一本の補助線」を紐解いていきます。
そのうえで、ピンチをチャンスに変える「価値創造」を皆と共有・革新していきたいと思っています。

■ 参考:「思考の補助線」

 茂木健一郎さんは、「クオリア」をキーワードとして、心と脳の関係を探求されています。
前職パイオニア社の研究所時代では、「音楽と五感」の研究をしていた関係で、2度ほどお会いしました。
その時に話された「思考の補助線」という言葉が自分の脳に響いたのを覚えています。
松岡正剛師匠と茂木健一郎氏の共著である「脳と日本人」の対談は、自分の中に大きな刺激と整理をもたらしてくれました。

 著書「思考の補助線」の「序」から引用します。
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・・・トータルの「未知」の量は、どうやら変わらないらしい。
それでも、できることならば、「不思議」という観念を、人間の経験を真摯で忠実に反映したかたちで抱いていたい。
 タコツボの中の不思議も味わいがあるが、もっと広い視野から、はるか遠くまで見て途方に暮れたい。
一見関係ないことの間に脈絡をつけたい。そのうえで、不思議と感じたい。
 そんな思いで、私は「クオリア」という補助線を精神と物質の間に引きたい。
それで問題が解けるかどうかはわからない。しかし、明らかに不思議の質が変わる。・・・

 「整合しなければならぬ」

・・・そのうえで、生きることの情熱とまっすぐに結びついた輝ける不思議を、たった一度しかない人生の中で、受難しつくしたい。
私の内なる情熱はそのように告げている。

・・・小林秀雄が講演の中で現代の知識人を揶揄して使った言葉、
「悩みも悟りもしないやつら」
 にならないためにも、一見両立させようがないように見えるものの間を結び、そこに気づかなかった風景を見たい。
何時間かけて考えても解けなかった幾何学の問題が、たった一本の補助線を引くだけで見通しがつき、一挙に解決に向かうように、何らかの新しい視点を得る努力をしてみたい。・・・
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 どこに、どのような「補助線を引く」かで見通しがつく、風景が変わることを経験してきたので大変参考になりました。

■ 「自由貿易とは?」「グローバル主義とは?」

 今回の「アメリカ・ファースト」宣言の背景として、
・製造業
・農業
 等のラストベルトの衰退を復活させたいというトランプ大統領の言動がありました。

 翻って、日本の製造業も「グローバル化」によって、中国・東南アジアにシフトして空洞化しました。
私自身も前職パイオニア社でヒット商品緊急開発プロジェクトリーダー(第343夜)の時に、初めて中国(東莞工場)に入って生産導入を決めた当事者でした。
 当時(1995年)の東莞は、日本の賃金の六十分の一(1/60)でした。
現場(東莞工場)に何回か足を運びましたが、日本と同じ「生産技術・製造技術」で造るので、品質に大きな差はありません。
 その「製造原価」で日本で造ろうと思ったら、極論すると製造現場(埼玉の所沢工場、山形の天童工場等)の社員の給料を1/60にしなければなりません。
これが日本の製造業や他産業を苦しめる「空洞化」の始まりでした。

 その後、アメリカビジネス界は、例えばアップル社iPhone生産(2006年~)に見られるように自前で工場を持たないファブレス化という中国生産で利益を最大化していきました。
それらの参入の結果、中国が世界の工場になり中国は急成長しました。(豊かになれば、民主主義の国になるとの希望がありましたが裏目に出ました)

 自由貿易(貿易の自由化)によって傷んだのは、製造業等の空洞化が進んだ先進国でした。
そして、世界を見渡していただければお判りのように、成長している国は、先進国よりも賃金の安いところです。

・「空洞化して傷むのは、しょうがない」
・「それに代わる新しい価値を持った次なる産業の構築」

 という認識です。

 「グローバル主義」「自由貿易」とは、このような傷みをもたらすものでした。
そのことを誰よりも実感しているのが「日本」ではないでしょうか。

■ 「グローバル主義」の終焉

 上記の自国の「傷み(受難)」に我慢がならなかったのが、トランプ大統領だったと洞察します。
傷んだ「製造業」「農業」等を復活させることを「公約」に掲げました。
それを推進するのが、「関税」のラッシュです。

 それが結果的に、アメリカによる「グローバル主義の終焉」につながります。
そのことで最大の影響を受ける国はどこでしょうか?
それが、グローバル主義で一番恩恵を受けてきた「中国」です。
トランプ大統領は、「自由貿易の終焉」で「中国の衰退」を画策しているようにも見えます。

 その影響、意図を中国サイドは十分に承知しているはずです。
中国は、これまで恩恵に授かった「自由貿易」を世界に向けて発信していくと思います。
(国策として低価格でつくったものは自由貿易の火種になります)
本当は、「開く(オープン)」ことの嫌いな中国のジレンマの始まりです。

 さて、本夜お伝えしたいことは、これまでの時代において「常識」と思われていた主流の考え方や規範そのものが変わっていく時代だということです。
過去の価値観や認識を引きずっていると、これまでの常識に縛られてしまい「変化」に対応しきれなくなります。
それが、「グローバル主義の終焉」の認識です。

 これからは「オープンとクローズ」のせめぎあいの時代、両立させる時代になるのは間違いありません。
それに適応して、私たちはこれまでになかった新しい選択肢や方策や産業を創り出す必要があります。

 先ず重要な認識は、「グローバル主義の終焉」という「一本の補助線」を持ってこれからのモノゴトを視るか、従来の延長線上で視るかの違いで、打つ手が大きく変わってくることです。

■ 「自立と自律」の時代

 「コロナ禍」「プーチン禍」「トランプ禍」と世の中は安定しませんね。
変化を恐れ、不安の要因として受け止められないのであれば、それは現状への依存体質が染みついてしまっているのかもしれません。
いま私たちは、望むと望まざるとにかかわらず、「変化」が凄まじい速度と規模でやってくることを知っています。
これらの危機、変化を逆転的に活用し、チャンスだと思う、変えることが「未来の入り口」と思います。

 変化に対応・適応するのに、もちろん「協調、共同、連携」も必要ですが、
「トランプ禍」で特に求められるのは、様々な「自立と自律」です。

・自立とは、他者の助けを借りずに自分の力で行動すること
・自律とは、自分の立てた規範に従って行動すること

 ここで重要になってくるのが、第309夜で綴った
・未来に向けた価値創造(目的)
・未来に向けたイノベーション(手段)
 です。

 ここで求められる力は、
・「課題」に対してどのようなアプローチであなたか解決できるかどうか
 の一点だけです。

・「3つの知(第333夜)」「2軸・両立で考える思考(第348夜)」の活用で「未来構想」することがポイントです。

■ 「自活力」

 一つの価値観や概念にとらわれていては、新しい発想やイノベーションは生まれません。
両立思考・デュアル思考(第348夜)でも綴りましたが、対抗概念をのみ込んで、一段上の新しい価値を創る時代の本格到来です。
「オープン(開放・自由)とクローズ(関税)」時代のはざまで、私たちに必要なのは、一段上の新しい価値を創る『覚悟』と『自活力』です。 

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第348夜:「2軸で考える」

2025年2月27日: 「2軸思考」・「両立思考」
「価値創造(目的)とイノベーション(方法)」(第309夜)の二つはコインの裏表であり、その本質は「異質なものを自分の内部に導入して、一段高い次元での解決策(新バージョン)で成長する」ことにあります。そこで本夜は、その異質なもの同士を「両立・ジャンプ」させる考え方と方法ををお伝えしたいと思います。

■ 『二つでありながら一つ』(両立思考)

 価値創造の知「第308夜」から「第347夜」を読み通していただくと、
・『二つでありながら一つ』(第33夜、第175夜、第347夜)
 という『両立するコト・交じり合うコト』が重要な「キーワード」・「思考軸」であることがおわかりいただけたと思います。
either・どちらか一方という「OR(△△あるいは□□)」ではなく、both・両方「AND(「○○と○○」)」です。

「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一翁(第276夜)は、約500もの企業を育て、同時に約600の社会公共事業にも関わりましたが、そのコンセプトは、「道徳経済合一」です。
それは、「経済」と「道徳」を両立するということです。
「論語(道徳)と算盤(経済・利益)」という「AND(「○○と○○」)」の本を著していますが、

『道徳的な商売が一番儲かる』

 と語っています。
 「論語(道徳)か算盤(経済・利益)」という選択ではなく、「論語と算盤」で両立させることが、価値創造であり社会に役立つということです。

 「論語と算盤」で両立モデルが、このコラムでは何回も取り上げてきた「SDGsビジネスモデル(第275夜、第310夜」です。
これも[「本業」と「17の社会課題」]を統合「2+1(ツープラスワン)」(第312夜、第339夜)することで、成長経営に脱皮するメインビジネスモデルであることを紹介してきました。

 また、このコラムでよく取り上げる「ピュアモルトスピーカー」(第36夜。第318夜、第340夜)は、[「サントリー社(ウィスキー樽材)」と「パイオニア社(音響)」]の「2+1(ツープラスワン)」(第312夜、第339夜)ですが、「片方」だけでは生まれない異業種コラボレーション事業です。
「YOASOBI」の二人も同じ構図ではないでしょうか。

 その流れで、一番イメージが浮かびやすく、納得できる事例が「赤ちゃん」です。
異質同士の「男と女」から「新しい生命」が誕生します。
“二つでありながら一つ”の体現です。

  前夜でもお伝えしましたが、
『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは何だと思いますか?(「禅マインド」から加筆引用)
 座禅の姿勢は、「結跏趺坐(けっかふざ)」という右足と左足を組んでいますね。
この姿勢は、『二つではない、一つでもない』という「二元」性の「一者」性を表わしています。
それは、「二つ」にならないということにあります。
一番大切な思考は、“二つでありながら一つ”ということです。 
 

■ 自ら「余白」をつくる

 さて、私が1970年後半から関わってきた「音響事業」「家電業界」「クルマ業界」は大きく様変わりしました。
・万物はいつも流転(るてん)し、変化・消滅がたえない「諸行無常」です。
 後述(「二者択一以外の道))しますが、「量」が、一定の水準を超えると、「質」が劇的に変化します。(第10夜、第11夜、複雑系)

 グローバル主義もトランプ大統領の登場で終焉に向かっているように思います。
日本の人口動態も、高度成長時代のピラミッド型から、現在は、逆ピラミッド型に移行しています。
人口減と少子高齢化です。これは一例ですが、それまでの「質」(第347夜)が変化して様々な問題が発生しています。
 年金、医療、学校、地方行政や、昨今問題が出ている上下水管メンテナンス、そこで生じる行き詰まり等々が大きな課題です。
(その事例は、「二者択一以外」の道で後述します)

 問題の大小にかかわらず、仕事や人生、社会等で、誰でも大きな行き詰まりに出くわします。
そんな時は、「余裕」「余白」や「新しい視座」が見つけられないことが原因であることが多いのです。
 前職パイオニア社時代の40歳頃、「行き詰まりの悩み」を松岡正剛師匠(第308夜)に相談すると、
 ・有意義な『余白』を意識して見つけるコト(第89夜)
という指南、アドバイスをいただきました。
 その指南から、自分の使命となる「価値創造の知」の3つの余白(第88夜、第333夜、第347夜)が生まれました。

■ 「2軸思考」・「デュアル思考」(第346夜)・「バロック思考」

 行き詰っている時に、有意義な「余白」を見つける方法をお伝えします。
(これは、ビジネスでも人生や様々な創生で有効です)

 前夜でも、その中の本質的な方法の一つである「やり方とあり方」(第321夜、第333夜、第347夜)を図解しました。
「やり方」で行き詰った横軸だけでは、「余白」は生まれません、(多くの会社がこの状態にあります)
新しい「あり方」という「縦軸」を通す(立てる)と「4つの象限」が立ち上がります。
(「あり方」というのは、「新しい目的:第333夜」をつくることです)
二つの軸に、それぞれ「現在(過去)」と「未来」を記入してみてください。

 それが、図解「成長経営マトリクス」になります。

・本業(既存事業)⇒開発(右下)⇒開拓(左上)⇒業際(右上)
 というステップです。
多くのご支援(企業創生、地域創生)で活用して成果を上げてきました。
ポイントは、既存の象限から逸脱することです。
(切実→逸脱→別様:第333~334夜)
 参考に、「健康をはかる」から「健康をつくる」へシフトされた「タニタ」(第245夜)のマトリクス(新価値創造研究所作成版)をアップします。

 上記は、「有意義な余白」を見つける肝要な方法ですが、後述の有効な方法もありますのでそれを綴ります。

■ 「有意義な2軸」

 「あり方」と「やり方」以外の2軸を上げてみます。

・「世界(時間)」と「世間(空間)」
・「時間軸」と「空間軸」
・「タテ軸」と「ヨコ軸」
・「垂直思考」と「水平思考」
・「コード」と「モード」
・「変化」と「安定」
・「効能」と「効率」
・「東洋思想」と「西洋思想」
・「既存事業」と「戦略事業」
・「イノベーション」と「オペレーション」
・「デュアルスタンダード」と「ワングローバルスタンダード」
・「テクニカルポイント」と「アーティスティックポイント」
・「バロック」と「ルネサンス」
・「デジタル」と「アナログ」(⇒「キュービタル」)
・ Others

 上記は、個人ご支援、企業ご支援、地域ご支援の際の「基本型」です。
ご支援に伺うと、二つの内のどちらか一方は気に留めないていない、アプローチしないことが多いのです。
 第337夜に詳しく記しましたが、「鉄道の時代(オペレーション型)」はそれでもよかったのですが、今の「航海の時代(イノベーション型)」はこれまでの「枠」「制限」を超えることが求められています。
 是非、「もう一つの軸」をピックアップして、2軸をクロスして取り組まれることをお薦めします。

 さて、とっても参考になるのが、「価値創造の知・第324夜」にマザーハウスの山口絵里子さんが挑戦された「2軸」です。
検討・具体化される際のヒント満載です。
●「途上国」と「世界」
 ⇒「途上国から」と「ブランドをつくる」
●「大量生産」と「手仕事」
 →手仕事を“効率的”にやるには?
●「社会性とビジネス」
●「デザインと経営」
●「個人と組織」
●「グローバルとローカル」
 異質な二つの両立に、果敢に挑戦されて「Third Way」として成果を上げています。

 山口絵里子さんのコメントを記します。
・『今年、来年の数字を見る姿勢では何も生まれません』
 私たちは、ついつい「妥協点を探る行為」を求めがちだけれど、きっとそれだけでは消耗していく。
私は両者の交差点で生まれるアイデアや共感、相互作用が『もう一段高い次元での解決策を、広く社会に提供するもの』であると信じている。
 何より、その方が楽しい。ワクワクする。無理がなくて、長続きする。
だから、サードウェイという考え方を一人でも多くの人に知ってほしいと強く思った。・・・

■「間(ま)」を上手に使いこなす

 2軸があるということは、「間(ま)}(第17夜、第311夜)が発生するということです。
どちらかを選択するという二者択一ではなく、重層的に双方を両立させていく方法を日本は持っていました。

・モノとコト
・天皇と将軍
・公家と武家
・金決済と銀決済
・神と仏(神仏習合)
・冥と顕
・浄土と穢土
・善と悪
・ウツとウツロ
・空(クウ)と色(シキ)
・男と女
・てり(照り)とむくり(起り)
・平仮名と片仮名
・記号(コード)と様式(モード)
・Others

 二つのAIDAの絶妙な「間(ま)」をつくることがポイントです。
それについては、第311夜(間をしる)に綴りました。
 正剛師匠は、「(異質な)二つのものを関係させることは、それが遠いものほど価値が生まれる」と言われていました。
(対角線を折る、斜めに見るという「編集」の方法については、いつかこのコラムで綴ります)
 本来の日本の方法は、一対(二つ)のものを両方活かす(デュアルスタンダード)ことが優れていたので、日本人と「間(MA)」とのつきあい、相性は抜群です。
日本人は、既存の二つのもの(第310夜:半分と半分)を両方活かすという特性、センスがあるのです。
 どちらかを選択するのではなく、両方を活かすことを『2項同体』といいます。「二者択一」ではない、この把え方を習得することが肝要です。
それらを「バロック(二つの焦点=楕円)で見る」、「デュアルに見る」という言い方を正剛師匠は言われてました。
(真円は「ルネッサンス」、楕円は「バロック」。二つの焦点があることで、動的になります)

 価値創造&イノベーションとは、「既存の組み合わせ」によってできる1ランク上が生じた新しい全体(魅力・価値)です。(第308~310夜)
「既存の組み合わせ」「2軸の組み合わせ」というイノベーションを挑戦することによって、企業人、行政人や学生にとって最も有益なことは、
「既存の異質の組み合わせで、自分オリジナルの思考や考えを持つことができること、そして、その成果に自信を持てること」
にあります。

■参考:「二者択一以外」の道(第29夜)

「常識の非常識」(山本七平著)より加筆引用します。

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・・・日本に、カモシカ問題がある。同じようにどの国でも、絶滅に瀕した動物を保護すると、急速に増加するが、今度はその動物による食害問題が起こる。

すると、保護をやめて一定数以上は射殺・捕獲すべきか、あくまで保護すべきかが当然問題になる。日本でも檜の苗木をばりばり食べられてしまえば、山林業者にとってはカモシカは害獣ということになるであろう。保護を続けるなら、山林の保護をどうするか、業者への損害保障はどうすべきかが当然問題になる。

そして、こういう場合、議論はしばしば保護か、捕獲・射殺かの二者択一になりやすく、多くの場合、両者とも自説を固持して譲らないという対立になりやすい。

これはすべての問題についていえる。環境問題、貿易問題、また企業内の問題、各人の抱える問題、そのすべてについて、問題が二者択一のように見えてきたら、そのいずれでもない「第3の道」があるのではないか、ともう一度、探索してみる必要があるのであろう。・・・
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 上記には、ビジネスのイノベーション・価値創造の本質が記されています。
・「量」が、一定の水準を超えると、「質」が劇的に変化する(第10夜、第11夜、複雑系)
・「矛盾」とは、発展の原動力“矛盾の止揚”である(第15夜、第17夜、第18夜)
この「質への変化」「矛盾の止揚」の視点・視座を柔軟に活用できることが、創造性「クリエイティブ&イノベイティブ」(第1夜)への本筋です。

ただ、実際の現場では、それまでの「常識」で成功した人達や組織が存在して権力(既得権)を持っているので、新しい「常識」に移行するのが遅くなったり、困難になることがあります。若い人たちのは、大きなジレンマ・ストレスになっています。
 そこで重要になるのが、不易流行(何が変わって、何が変わらないのか)という認識です。
「不易流行」(第34夜、第245夜)の「不易」と「流行」を両立することがポイントです。

 「両立する」ことは、とても労力がいる、骨がおれるですが、それがそのまま「価値創造」につながります。
これが、令和の時代に私たちが取り組む「生きる道」です。
 「企業」「学校」「地域」の多くの場で、上記をお伝えしています。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第347夜:本質とは何か?洞察力とは何か?

2025年2月12日: 洞察力とは「本質」を見抜く力、見通す力のコト

■「本質」と「洞察」
 「本質」という言葉が、より多くのTV放送等の情報メディアで使われるようになりました。
「これから先がどうなるのか」を読み解くには、表層情報ではなく、もっとその奥にある「深層の根源的なモノを把え、見抜くことが肝要である」というように推察しています。

 私は『本質』を把えるコトが大数寄(第331夜)人間です。
「本質」を把えることができると、モノゴトの動きや流れや未来の常識(未常識)が掴みやすく、視えやすくなることを実感してきました。

 情報過多の時代には、情報の見方や考え方の「要(かなめ)」が何かを見究めることが必要・重要になってきます。
表層の情報に惑わされることなく、根源の「要(かなめ)」となる「本質」を把えることが「価値創造」の出力に大きな影響を及ぼします。
私は、『本質』を深く把えたくて、35歳の時に「瞑想」や「禅」の門を叩きました。
何故ここで、「瞑想」「禅(ZEN)」のことに触れるかというと、それらが物事の「本質」を真正面から把える方法に繋がってくるからです。

 いま、スマホが私たちのライフスタイルに組み込まれ、自分の「目」が外に、外に向かっています。「目」の文化です「目」は自分の外側に向かっています。
「目」を閉じて、雑念をはらい、心を鎮めて、内に内に向かっていく「瞑想」「禅」は「耳」の文化、方法です。「耳」のカタチは、自分の内側に、心に向かっていきますね。
それが、「本質」に向かっていく「道筋」です。

 本夜は、「価値創造の知」の要(かなめ)となる『本質』と『洞察』を綴ります。

■「本質」とは何か?
 「本質」を把えるために反対からみてみましょう。
「本質」の反対は、現象、表象です。木で言えば、「枝葉」です。
・「現象」は、外から見える「外面」「外身」「顕在」です。
 それに対して「本質」は、外から見え辛い『内面』『中身』『潜在』です。

 さて「本質」の「質」とは何でしょうか?
⇒「質」とは、物事が成り立つ「もと(本・元)」として考えられるもの。中身。要(かなめ)。
 もう一つの「本」とは何でしょうか?
⇒「本(元・基)」とは、物事がそれによって成り立つ(大事な)所。それを生ずる初めの部分。

 双方、同じ様なことをいってますが、その「本」と「質」の二つを合わせた「本質」とはいったい何でしょうか?
⇒「本質」とは、「そのものとして欠くことができない、最も大事な根本の性質・要素」と言われています。

 それでは、その「本質」を更に突き詰めていくと何処に行きつくのでしょうか?
⇒「本質」とは、「大元(おおもと)」です。
 (「大元(おおもと)」については後述しますが、「瞑想」「禅(ZEN)」は、「大元(おおもと)」につながることが目的の一つです)

「価値創造の知」においては、
⇒「本質」とは、将来の「本筋」「本流(別流)」をつくる「大元(おおもと)」「源流」になります。

■「瞑想」「禅」と「大元(おおもと)」
 「大元(おおもと)」の領域は第333夜に図解しました。(新価値創造研究所オリジナルです)
 「イノベーションの時代」は、「潜在意識」「空意識」の下部を“探求する”“創(きず)つける”“掘り当てる”ことが求められます。(第332夜)
上述のように、自分は35歳の時にビートルズにも影響を与えた「マハリシ・ヨッギの超越瞑想」の門をご縁によりたたきました。(第6夜、第33夜)
そこに入って驚いたのは、大手の企業経営者が多く集ってことでした。彼らは、「心を空にする」ことで経営の方向性や生き方を見出しているようでした。(空即是色)

そう、そこでは雑念をなくす、私心をなくすことを体得して、大事なコトは何か?そして、大事なものにつながることを体験してきました。
「体性、知性、心性」を澄まし、磨いたことが自分の将来に大きな影響を与えました。

 『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは何だと思いますか?(「禅マインド」から加筆引用)
 座禅の姿勢は、「結跏趺坐(けっかふざ)」という右足と左足を組んでいますね。
この姿勢は、『二つではない、一つでもない』という「二元」性の「一者」性を表わしています。
それは、「二つ」にならないということにあります。
一番大切なコトは、“二つでありながら一つ”ということです。
これまでずっとお伝えしてきた「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)のことです。

 「空・虚・大元(おおもと)」の意識領域で、「あり方・あり様(第333夜)」(⇒核心)とつながると、
それが、ミッション(第89夜・使命:何に命を使うか)になります。
そこから、「新しいやり方」「新しい現実」「ビジョン」(⇒確信)が見えてくる。
それを実行・実践するのが「イノベーション」(⇒革新)という流れです。
 
これが、「核心」→「確信」→「革新」(第332夜)という「イノベーション」の流れです。

 さて、上記の「空・虚・大元(おおもと)」掴む感覚は、お寺(禅宗等)の「坐禅の会」などに参加するのも一つの手です。
「坐禅」「瞑想」を行ずると、最初は「雑念」がいっぱい湧き出てきます。それを次々に「無」にしていくのです。(=空じる、行じる)
「無」というのは、「ナイ」「ナクス」のではなく、「雑念」が湧き出てきたら、心・意識の遠くにはらう、「空じる」のです。
それに慣れて繰り返していると、心の中の雑念である「ポカリスエット」の様な「濁り」が徐々に消えてきて、透明に近くなっていきます。(第235夜)
引いて、引いて、心を澄ませていって、「大元(おおもと)」に辿り着いていくのが初歩の行(ぎょう)です。

■「本質」「大元(おおもと)」の図解

 この説明は言葉ではなかなか伝わりづらい、響きづらいですよね。
そのため、それをビジネスワークショップでは、「観察」を通した「旭山動物園」等の複数の分かりやすい演習で疑似体験していただいてます。(第28夜、第333夜)(SDGs経営塾 第6回)

[左上領域:これまでの現実、常識、目的]
・2000年、動物園の来園者数は右肩下がりでした。
・珍獣、奇獣の「パンダ」や「コアラ」で、何とか来園数を上げる「やり方」でしのいでいましたが、それでも右肩下がりでした。
[下部領域:大元・空・虚]
・ここに、旭山動物園の坂東元・獣医係長(後の園長)が登場します。
・普通の動物の“命の大切さ”を子供たちに伝えたい(=あり方、在り様、未常識)
[右上領域:新しい現実、新しいやり方、新しい目的]
・形態展示から行動展示へ
・SDGs対応

 ここで重要なことは、経営の“あり方(目的)”が変わることで、“やり方(手段)”が変わることです。
それまでの「形態展示」から、「普通の動物の“行動展示”」というやり方に転換しました。
そのことで、右肩下がりの来園者数が急激な右肩上がりになり、旭川市を含めて経済価値(利益)が上昇しました。

 旭山動物園が掲げる永遠のテーマは、「伝えるのは命」です。

そこには、元係長の坂東園長が獣医として“動物の命”の大切さにずっと寄り添ってきたことが込められています。そのテーマによって、これからの時代の主役になる子どもたちが、「動物たちの未来」や「地球と自分たちの未来」を真剣に考える場所になっています。

 この演習に、「価値創造」「成長経営」の大きなヒントがあります。
「経営」の“経”という字は、縦糸のことを表しています。“経”という縦糸(あり方)と“営(いとなむ)”の横糸(やり方、行動)で織物が紡がれます。

経営が行き詰っている時は、それまでの横軸の業界の“やり方”が行き詰っていることが多いものです。是非、そのような時は、先んじて経営の縦軸の“あり方”(目的、道理、大元)に目を向けて、再定義することにトライされてください。

図中の「価値創造」の流れがみえてきたのではないでしょうか。
・行き詰まり → 大元・空・虚 → 新しい成長
・ 切実       逸脱       別様
・ 本気       本質      次の本流

■「洞察」とは何か? 

 前夜に『再成長』の構想」に必要になる3項目を綴りました。
2番目に『洞察』があります。
1.予測:未来がどうなるのか?
2.洞察:未来をどう見通すのか?
3.構想:未来をどうしたいのか?

 「未来の不確実性」に適応した「構想」の出来、不出来に最も大きな影響を与えるのが『洞察』のスキルです。
[1.予測]では、各々の業界情報や、様々なメディアからの「情報発信」等を合理的に理詰めで考える顕在意識の左脳活用が中心になります。
(前職パイオニア社では、2年間本社で調査課の課長も兼務していたので少し得意です)
[2.洞察]は、未来という「不確実の洞」の奥底にあるものを見抜くこと、物事(対象)の本質を見通すコト、見抜くコト、見究めるコトにあり、潜在意識の右脳活用が求められます。(右脳活用に、「瞑想」「禅」が有効です。右脳と左脳が統合・相乗すると出力が大きくなりますね)
[3.構想]は、「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)です。[1.予測]という「方」と、[2.洞察]という「方」が交じり合って、[3.構想(右脳×左脳)]という一つ上のレベルに飛翔(イノベーション)するのです。

 ここでお判りのように[1.予測]領域では、「情報」に大きな差が生まれまないことがわかります。
[2.洞察]のステージで、対象(モノゴト)の『本質』を見通すコト、見抜くコト、見究めるコト、が「価値創出」「構想」に大きな影響を及ぼすことを実務やご支援で経験してきました、
『才能』について第340夜に綴りましたが、対象の[能]にある可能性を、人間側の[才]が引き出すコトをお伝えしました。
本質を見通す、見究める「才能」が『洞察力』です。

 つまり、
⇒『洞察力』とは「本質」を見抜く、見通す力です。

■「3つの洞察力(=3つの知)」

 激変するビジネス環境の中、私たちには新しい時代に適応した発想・構想を生み出すことができる「イノベーティブ・スキル」が求められています。
そのスキルが、
 ①人を読み(Insight)
 ②先を読み(Foresight)
 ③新しい全体を読む(Gestalt)
という「3つの洞察力(=3つの知)」(第89夜、第128夜、第333夜)から発想・構想を生み出す「価値創造技術(エンジニアリング)」です。
その原動力となるのが、上記①②③の「本質」を見抜く、見通す『洞察力』です。

 その価値創造の原動力となる「洞察力」には、3つのベクトルがあります。
つまり、3つの「洞察力」があるということです。
この「3つの洞察力」を習得・駆使していただくのが、人財育成の肝(きも)になります。

 それは、「人間(じんかん)」「時間」「空間」という『間(かん)』・『洞』の中にあります。
「洞察力」は、その3つの『間(かん)』を「表象・現象・る外面」から「見えていない根っこ(根源)、核心、大元」まで見抜いていく力です。
それでは、「人間(じんかん)」「時間」「空間」を紐解きます。

 あらためて、『洞察力』とは、
 ①「人間(じんかん)軸」インサイト(INSIGHT):深く人を読む(最も大切なコトを見抜く):第85~86夜、第89夜
 ②「時間軸」:フォーサイト(FORESIGHT):高く未来を読む(未来に向けた先見性)第87~88夜、第89夜
 ③「空間軸」:ゲシュタルト(GESTALT):広く全体を読む(新しい全体をつくる):第83~84夜、第89夜
という三つの軸にあるそれぞれの「本質」を突き詰めて体系化することです。(第21夜)
すると、「価値創造」のイメージが浮かび上がり、それらが交じり合い選定ができて『構想』が立ってきます。
これが「見立て」(第343夜)です。

 具体的には、図にある様に、従来の既知の常識の領域を『3つの洞察力』で超えて『3つの赤枠』(第89夜)を探求し、ゲットすることにあります。
それは、従来の常識に把われた考え方ややり方を手放し、殻を破って、その先にある「本質」「内面」「赤枠」をつかみとろうと本気になることです。
「価値創造」における「本質」は、通常の常識の枠を超えたところに「潜んでいる」ので、簡単には「姿」を現してくれません。
なので、「切実」「逸脱」が不可欠であることを、何度も繰り返し綴ってきました。

■ミッション・ビジョン・イノベーション(第89夜)

 ビジネスで最も大切なコトは、『本質的な違いと共感』を生み、創ることを第82夜に綴りました。
それから第88夜に亘り『本質的な違い』を生み出す3つの抽象化能力(『深い知』『高い知』『広い知』)について、その構造と方法を明示しました。

それは、従来のやり方、考え方、常識を超える方法です。そして、その方法は、決して特別なものでなく『革新』を起こすために様々に使用されてきた価値創造の『知』です。
ただ、それを構造としてまとめ、トリニティイノベーション体系(第67夜)として、3つの関係性を明確にしました。(第77夜)

 その図解をご覧いただくと直ぐにおわかりいただけると思いますが、赤い枠線(▽・〇・◇)の中が「空白・余白」になっています。そうなんです。課題や対象に向けて、意識的に『空白・余白』を設定することで、そこの中身をしっかり洞察し、イメージングすることになります。

ビジネスの「行き詰まり」というのは、余白(=新しい可能性)が思い浮かばないことです。
でも、クライアントのお話しに耳を傾けていると、「自ら制約を設けてしまって、モノゴトの見方や視座を狭くしてしまっていること。そして、本当はこれまで通りにして、変わりたくないこと」を感じます。

その『制約』や『常識』の殻を丁寧に剥がさせて貰って、下記3つの余白から、新しい補助線を差し上げた時に、そこにはワクワクする視界が広がっていることを認識される喜びを数多く経験しています。

さて、「3つの知」を進める順番なのですが、『深い知(人間軸)』⇒『高い知(時間軸)』⇒『広い知(空間軸)』で行うことをお薦めします。

『深い知』は、事業の再定義につながり、ミッション(使命)を生み出します。自分達が何に「命を使う」のかに関わってきます。当然、ワクワクするものに命を使いたいですよね。それは第85~86夜に綴りましたが、大元(おおもと)に戻ることです(=色即是空)。そのために、違う業種業態の幾つかの納得する分かりやすい事例をお示ししています。禅や瞑想の方法もお伝えします。

 茶、枯山水、わびさび、俳句に代表される、『深い知』へ至る方法は、日本人が本来得意とするものです。是非、自信をもって挑戦してください。
それらのヒント、演習を体験した後に、「自らの課題・問題」のテーマに当てはめると、今までの制約・常識と異なるワクワクの新しい風景が見えてきます。それが、船でいう錨(アンカー)です。

 実際のご支援プロジェクトでは、ここまでで30~40%の到達になります。場合によっては、50~60%を超えることもあります。

 次に、ワクワクする拠り所・錨の元に『高い知』のステップに移ります。
その詳細は、第87~88夜に綴りました。『高い知』のポイントは、「温故知新(故きを温ねて新しきを知る)」です。現在と過去を豊かにすることが将来を豊かにすることに繋がります。それがないままに、未来に向かうおうとするので失敗することが多いのです。

「故き」をどこに設定するのかも重要です。この設定がこちらの腕の見せ所になります。それは課題をお聴きし、現在の変化の元(もと)がどこにあるのかを一緒(デュアル)にして捉え編集するのがコツです。そのために、『深い知』『高い知』の多くの経験が必要です。

プロジェクトでは、『高い知』の、複数の分かりやすい事例を提示し、ビデオも数本見て観察いただき、演習で慣れていただき、自らのテーマ・課題に向かうと目指す将来の姿が見えてきます。これが『ビジョン』となります。

これが、船・航海で例えると、「北極星」を見つけたことになります。そして、『深い知』からの新しい形(世界と世間:第80夜)を見つけることに繋がります。(=空即是色)
私自身が、複数の将来を捉えるのが得意な「シナリオプランニング」のプロでもあるので、これが共有できると、プロジェクトは60~70%は到達したようなものです。
プロジェクトの「バリュー・メンバー」の参加者達の目が輝きます。

上記の『深い知』『高い知』を結ぶ軸が、ビジネスの新機軸になります。ミッションとビジョンがつながります。それをメンバーと一緒に、「シナリオマトリクス」「成長マトリクス」に展開して、其々一枚のシートにまとめます。将来を「見える化」「魅せる化」するのです。

そうすると、将来に向けてやらなければならない自分たちの不足が見えてきます。それを自分たちだけで捉えるのか、パートナーと異業種コラボレーションするのかの見極めが必要になってきます。外部コラボには、いい『ご縁』が必要です。

 ここの詳細は、第83~84夜の『広い知』に綴りました。『深い知』『高い知』と同様に、多くの事例をプロジェクトでご紹介し、これまで紹介してきた大三角形「新しい命・物語」を創る方法と心得をお伝えし、自分達でも扱えるようになってきます。

 前職の異業種コラボの「連続ヒット商品」で培った失敗と成功をお伝えすることも役立つようです。勿論、実行に移す時は、異業種連携のプロですので、実践のコラボレーションのお手伝いもします。この「広い知」が、新しい市場・文化・スタイルを創る「イノベーション(新結合)」です。

これまでの3つの余白を埋めることで、「ミッション」「ビジョン」「イノベーション」が三位一体でつながります。経営戦略の基盤が出来上がります。

 さてさて、本夜は「イノベーション実践」の秘訣をいつもより長く綴ってしまいました。
是非、ご活用ください。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第346夜:中堅・中小企業のためのReビジネス(再成長)と具体事例

2025年2月5日:「リオリエンテーション」の時代の展開事例
 前夜、前前夜と、大きなテーマである「『日本の再成長』を構想・図解する」を綴りました。
ここで必要になるのが下記の3項目です。
 1.予測:未来がどうなるのか?
 2.洞察:未来をどう洞察するか?
 3.構想:未来をどうしたいのか?
この「予測・洞察・構想」に手を動かし、心と脳と足を使うことが求められています。

■ 質問①:「自社の未来をどうしたいのですか」
 ・質問②:「あなたは事業・会社を伸ばすためにどのような努力をされていますか」

 是非、ペンを握って、白紙に書きだしてください。

 現場にいって、上記を経営者の方たちに質問すると、
・従業員による改善提案
・従来の「やり方」の改善
・新しい事業の元になって欲しい試作品やサービスの開発
 等々を聴かせていただけるのですが、

・「どうしたら事業・会社を成長させていけるのか」
・「やり方ではなく、自社の将来の“あり方”について」

 という『構想』(第341~344夜に記述)を描けていないことが大半です。
その原因と方法を第308夜から綴ってきましたが、
 本夜は、「3つのRe」の視点とセミナーで経営者からの反応が高い「具体的事例(:佐藤製作所)」(第314夜)をご紹介します。

■「リオリエンテーション:“進むべき方向”の抜本的見直し」(第147夜)

 1991年にバブルは崩壊し、日本経済は長期の経済停滞に突入しました。
その頃、妹尾堅一郎先生が「真の企業再生のための3つの切り口」を提唱・整理されていましたが、その切り口を参考に加筆引用します。
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「行き詰まりの打破や、新たな成長を目指して、企業再生に取り組む切り口は3つあります。
①リストラクチャリング
「構造」の見直しを意味しますが、企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除するものです。
②リエンジニアリング
「機能」の見直しを意味しますが、企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除するものです。
③リオリエンテーション
「進むべき方向」の抜本的見直しを意味します。
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 バブル崩壊(1991年)から、①リストラクチャリング、②リエンジニアリングについては、どの会社も取り組まれてきましたが「失われた30年」と言われる様に、
③リオリエンテーション(:進むべき方向の抜本的見直し)については、なかなか進まなかったのが現状です。

・「農業社会→工業社会→情報社会→脳業社会→○○社会」

 前夜(第345夜)に、上記の「社会の進展」と「3C(Computer、Communication、Control)」について綴りましたが、
待ったなしで、「工業社会→情報社会→脳業社会→興(幸)業社会」(SDGsシフト55「価値創造の知・第300夜記念」)に大きく移行(シフト)していくことが洞察されます。
 そして、次述する「後戻りしない変化:トランスフォーメーション」と本業の両立による収益化が成長するか、しないかの大きな分かれ道になります。

 そのような大変化の中で、
・「どうしたら事業・会社を成長させていけるのか」
 が中心の課題になります。

■ 「成長経営」の3つの視点

 その課題を解決するために、私の「成長経営セミナー」では、大きく3つの視点と方法でお伝えしています。
A.後戻りしない変化(トランスフォーメーション)
⇒2020年10月に、菅・元首相の所信演説で、下記GX、DXがこれからの日本の成長の柱であると表明して、大規模なお金が注ぎ込まれることになりました。
・SX(SDGs): サステナブル・トランスフォーメーション(=気候変動、人権等、17の社会的課題)
・GX:グリーントランスフォーメーション(カーボンニュートラル等)
・DX:デジタルトランスフォーメーション
 上記の後戻りしない変化であるトランスフォーメーション(SX.GX.DX)を、どう本業と「2+1」(第312~314夜)させるのかが重要になります。


 
B.「本業と社会的課題」の両立(=イノベーション)のよる価値創造
⇒上記Aの「SXやESG評価」(第257夜)に関連して、「“環境・社会・経済”の三位一体経営」への本格的取り組みが重要です。


C.「価値創造の3つの知」(第122夜、第149夜、第323夜)
⇒上記Bを具体化する方法が、「深い知・高い知・広い知」になります。
 図中では隠れているのですが、①②③の3つの赤枠の空白・余白を見つけることで、価値創造につながります。

■ 成長の具体的事例: 佐藤製作所(東京都目黒区)

⇒詳細は、第314夜をご覧ください。
 お伝えしたいことは、高齢男性だけの職場が、積極的に女性新入を採用し、活用し、活躍する環境をつくったことで、異なる能力を活用することで、「Reオリエンテーション」への道が拓かれたことです。

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 「(株)佐藤製作所(東京都目黒区)」は、令和3年度・東京都女性活躍推進大賞、令和4年度・第20回勇気ある経営大賞特別賞を受賞された会社です。
https://www.city.meguro.tokyo.jp/sangyoukeizai/shigoto/sangyou/satouseisakusho20210216.html 

金属加工、特に銀ロウ付け溶接の展開を得意とされている会社ですが、10年前は、連続赤字で倒産を考えられていました。 
取引先が5社(B2B)だった10年前から、現在は約500社(B2B、B2B2C、B2C)の取引先となり、7年連続の賃上げを実現されています。つまり、佐藤製作所は、「B2B(既知)」と「B2C(未知)」を両立されて成長している会社です。 
 10年前の倒産危機の『切実』から、全社員の反対を押し切って女性新入社員を採用し、活用し、活躍という『逸脱』を推進されました。


そのことで、『別様』の新しい事業展開の道が拓けました。
(現状は、10年前の高齢男性だけの職場から、現在は社員数16名のうち、半分が20代、6名が女性に代謝さています)

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・10年前の赤字状態が   「会社バージョン1.0」
・現在の連続賃上げ状態が、「会社バージョン2.0」
・これからの10年の経営が、「会社バージョン3.0」
という次のバージョンアップが楽しみな成長企業に脱皮されました。
 
成長の一手、道筋は、「切実→逸脱→別様」(第333~334夜)にあります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第345夜:発表:『日本の再成長』を構想・図解する -2/2

2025年1月24日: 「3C(Computer、Communication、Control)」と「C.日本の方法」
 前夜の「『日本の再成長』を構想・図解する」は腑に落ちたでしょうか。
どうしてそれらを選択した背景や考え方がわからないと納得できませんよね。

 本夜は、下記2点を重点に補足します。

一つ目は、「B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)」の1.2.3.を選んだ理由
 ⇒ B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)
  1.AI/量子もつれ(キュービタル):本郷バレー
  2.IOWN構想(ナチュラル):オールフォトニクス
  3.自動ロボット(コントロール)

二つ目は、[C.「日本の方法」の背景と具体]です。

■「B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)」の1.2.3.を選んだ理由

 日本の再成長の最も大きな原動力となるのは、「テクノロジー」です。
「農業社会→工業社会→情報社会→脳業社会」と時代は、積み重なり、進展してきています。

 「情報社会→脳業社会」が、産業のコアとなり、それが「新農業」「新工業」(第N次産業等)へと影響を与えます。
 そこでは、3C(Computer、Communication、Control)というものを考えていく必要があります。

→「人間を最も人間らしく遇する道は、その介在をなくすことができない仕事だけを人間に残して,機械にできることはすべて機械にやらせることである」

それを私は、1980年代の28歳と時に、オムロン創業者・立石一真氏から学びました。
オムロン社が開発した「自動改札機」を初めて見た大感動を思い出します。

それでは、オムロン「We are Shaping the Future!私たちが手繰り寄せる未来ストーリー」より加筆引用します。
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 ・・・立石一真氏は、技術面の洞察力で言えば情報化社会がくると予見し、コンピューターの前進ともいえるロジック回路と制御装置を組み合わせたオートメーション技術に早くから取り組み、自動改札機、自動販売機やATMを真っ先に開発している。その先には3C(Communication, Computer, Control)が重要だと考え、コンピュータの世界へ本格的に乗り出しました。
 自動制御技術にフィードバックの機能を与えたものがオートメーションであり,そのオートメーションとコンピュータを組み合わせたものがサイバネーションです。このサイバーネーションに、通信(コミュニケーション)技術が加わることで、3Cとも称される技術を融合した電子制御技術が誕生し、社会の情報化が推進されていきます。・・・
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 私の理解では、3C(Computer,Communication, Control)を人間の機能で表すと、
・①Computer:「脳」
・②Communication:「神経・通信」
・③Control:「手足」
 になります。

■令和時代の「3C」で最適化社会を創る

 工業社会時代は、“③Control:「手足」”が中心でしたが、
現在は、“②Communication:「神経・通信」”、“①Computer:「脳」”が大きく進展したのはご存じの通りです。

それを科学技術の言葉で表すと、
①Computer:「脳」→ AI、量子もつれ
②Communication:「神経・通信」 → “IOWN 6G”
③Control:「手足・ロボット」

 (②による産業の進化を参考に添付します)

 となります。「脳業時代」はこの「3C」が原動力となり、新しい産業や生活が芽吹いてくると洞察します。
日本は、「3C」を三位一体にして、優位性と継続性を創れるかどうかが肝(きも)になります。
そして、上記の「B]と前夜の[AとC]の三つを大胆に交錯させて、どのように「最適な三位一体」にするかが、「日本成長の鍵」を握ると思います。

■参考:オムロンが洞察する「情報化、最適化を経て自律社会へと向かう未来」
https://www.omron.com/jp/ja/edge-link/news/229.html
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 ・・・VUCAの時代と言われ、なかなか先の見えにくい現在ですが、社会全体の大きな傾向としては、これまでの工業・情報化社会における豊かさの象徴であったモノやお金を重視して経済成長こそが正義とみなされた時期を過ぎ、「こころ中心」の「最適化社会」へと移行しつつあると捉えられています。

その先には、2025年を目処に「自律社会」が訪れるとされ、工業・情報化社会の問題点として挙げられていた、一極集中型の社会構造や地域格差、コミュニティの崩壊なども、新たな価値観のもとで解決に向かう見込みです。SNSにおける承認欲求の高まりや、シェアリングエコノミーの普及、循環型で永続的に再生・再利用を行うサーキュラーエコノミーへの関心も、そうした新しい価値観を象徴しており、集団での価値の共有や体験を重視すると共に、自分らしい生き方を自ら実現させて生きる歓びを享受できる成熟した社会環境の実現が期待されています。

一真は、サイニック理論が示すように、近未来デザインを起点として今なすべきことを考えるバックキャスト型の発想で社会課題を解決し、世の中をより良い社会へ変えていくための礎を築きました。オムロンは、VUCAの時代にあっても、一真から引き継いだサイニック理論を経営の羅針盤として、あるべき未来を考え、よりよい社会の実現へとつなげていくための挑戦を今も続けているのです。・・・
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■ C.「日本の方法」の背景と具体

上記[B:テクノロジー(明滅している予兆)群]は、先進国でしのぎを削った競争をしています。
そこに、西洋式とは異なる視点や方法、つまり、「日本の方法の知」を注入することで、「違いのある価値創造」を創出したいという「構想」です。

 1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
 2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
 3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
 4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風、ヘタウマ等):第149夜、第207夜
 5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
 6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)

 世界がフラット化する中で、どこに他との「違い」を見出すのかが重要になります。
訪日外国人観光客が大幅に増えていますが、

・いったい、日本の何に、何処に、「関心」や「数寄」があるのでしょうか?

 それを分類したものの上位が、上記1~6になります。
人々のライフスタイルや価値観を変えた具体的な事例を上げてみます。

・ソニーの「ウォークマン」
・TOTOの「ウォシュレット」
・日本アニメ
・おもてなし
・ゲーム、サブカルチャー
・食文化、回転寿司
・禅、茶道、武道
・・・

 これらは、「日本文化」に根付いたものです。
その「根っこ」が何かを上記1~6にまとめましたが、
・C.「根っこ」を咀嚼する
・A.社会課題とつなげてみる
・B.上記を先端テクノロジーにつなげる
 という道筋が「成長へのプロセス」になります。

■コードをモード化(日本様式化)する:第119夜

 「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
漢字(コード)をそのまま直輸入しないで、平仮名やカタカナという日本のモード(様式)に変換する方法です、
古代から、 日本は外国から「コード」、いわゆる文化や技術の基本要素を取り入れて、それを日本なりの「モード」にしていく、様式にしていくということが、たいへん得意な国だったのです。
 未詳俱楽部で、松岡正剛師匠が提案していたのが、
「苗代(なわしろ)的思考」でした。

『いま日本に足りぬものは苗代(なわしろ)。グローバリズムの直植えではありません』

苗代(なわしろ、なえしろ)とは何でしょうか?
苗代とは灌漑によって育成するイネの苗床である。 もともとは種籾(イネの種子、籾殻つきの米粒)を密に播いて発芽させ、田植えができる大きさまで育てるのに用いる狭い田を指した。
「苗代」は日本特有の文化で、苗を直植えしないで仮の場所で育ててから植え換えをする方法です。

 是非、「苗代」のようなエージェントを作る能力を活用してもらいたいと思います。

■「テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)」、「泥の民」

 アニミズム(animism)とは、人間以外の生物を含む、木や石など、すべての物のなかに魂が宿っているという思想や信仰のこと。
それは日本に古くから存在する、「神道」、「八百万の神」の考え方と共通するものがあります。
日本特有の宗教である神道は、万物には神が宿るという考えがベースで、自然には神が宿ると考えられてきており、これは自然界に霊魂が宿るとするアニミズムの思想ととてもよく似ています。
 ここで『砂の民、泥の民』の話をします。(第98夜)
キリスト教、イスラム教が発祥した場所は、砂漠です。砂漠では、どの方向に進むのかを間違えると「命」に直結します。なので、そこではリーダー(独裁者)を決めて、強いリーダーシップを発揮して早く行動します。
ところが、森や土の多い地域の日本やアジアはどうでしょうか?大雨や災害に遭遇した時に、すぐ動くのではなく、あちらこちらの様子をみて、協議しながらモノゴトを決めていきます。これが「土の民・森の民・泥の民」です。日本は、「チームワーク」が得意なのです。
 ここで、欧米(縦型)と日本(横型)のリーダーシップや「民の価値観」の違いがわかるように思います。

 「アニミズム(animism)」、「八百万の神」の価値観をお伝えしましたが、日本文化の「根っこ」に息づいています。
ロボットやキャラクターに名前を付けたり、TOYOTAがクルマのバンパーをピカピカに磨いたり、「異質」がそこかしこにあります。

■デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜

 松岡正剛師匠はデュアルスタンダードの考え方を提唱しています。
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・・・ワングローバルスタンダードではなく、2つの価値を行ったり来たりするような、矛盾を残した仕組みがあっていい。その行ったり来たりに慣れるために、エディティングをしなさいと言っています。
そもそも日本の知はデュアルなものなんです。たとえば「いい加減」という言葉。「お前はいい加減なやつだ」とも言うし、「いい塩加減ですね」と褒め言葉にもなる。「結構」は、「素晴らしいですね」の意味で使うこともあれば、「もう結構です」と断る言葉でもある。これは、言葉の持つコンセプトが変化しているわけではなくて、文脈を成立させるための分岐点がいっぱいあるということです。
この「行ったり来たり」(リバース)があるところが、西洋とは違う日本的価値観のひとつです。まずはこれを意識して、西洋知とデュアルな状態を目指すべきだと思っています。
双対するものはたくさんあります。日本で言えば、天皇と将軍、公家と武家、金閣と銀閣、奢りと侘び・寂びとか、バロックで言えばマクロコスモスとミクロコスモスとか。デュアルな見方が身につくと、物事のプロセスを構造的に捉えられるようになると思います。・・・
ーーーーーーーーー
 
 西洋の一神教と、日本の多神教(八百万の神)では、価値観の土台に違いがあります。
「日本の知」と「西洋の知」をデュアルスタンダードで把えていくと新しい「価値創造」と遭遇します。
それは、「Third Way:第3の道の作り方」(第324夜参照)につながります。
●「途上国」と「世界」
「途上国から」と「ブランドをつくる」
それぞれ相反する二つのモノを組み合わせています・(=「2+1」)
●「大量生産」と「手仕事」
 →手仕事を“効率的”にやるには?
●「社会性とビジネス」
●「デザインと経営」
●「個人と組織」
●「グローバルとローカル」

■まとめ

 まだ、C.の4~6を説明できていませんが、第144夜や第149夜、第207夜をご覧いただければと思います。
以上、補足説明にはまだまだ不足していますが、「3C(Computer、Communication、Control)」と「C.日本の方法」を簡潔に補足しました。

 さて、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギー(再エネ)の拡大は必要不可欠です。再エネのさらなる導入のために、注目を集めているのが「ペロブスカイト太陽電池」があります。これも是非、
 
 1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
 2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
 3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
 4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風、ヘタウマ等):第149夜、第207夜
 5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
 6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)

 の視点で編集していただきたいと思います。

最後に、上記「3C」と「おもてなし」(第2夜、第4夜)を紐づけます。
何か見えてくるものがあれば幸いです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第344夜:発表:『日本の再成長』を構想・図解する -1/2

2025年1月22日: 「日本再成長の構図」と「ジャポニズム(日本様式)」

 前夜に、「航海の時代」は、日本が失われた30年を取り戻し、本格的に『構想(=未来をどうしたいか)』を掲げて、新たな転換のためにギアチェンジを図り、行動・実践する時代です。ということを記しました。
 その想いとこれまでのコラムの流れで、 本夜は、正面から「日本の失われた30年を取り戻すための『構想』」をシナリオプランニング(第15夜、第147夜)を使って、図解と共に綴ってみます。(その一部はすでに、セミナーや企業ご支援等でお伝えしています)


 この内容は、「非常識」ではなく「未常識」(第29夜、第319夜)です。
「未常識」の発表には、「変わりたくない既得権者」からの、非難・反対・軋轢が必ずあります。それを乗り超えることを複数体験してきました。
そのような人たちによって、「成長」が阻害されたり、遅れたり、潰されたりしない時代にしたいですね。
 それでは、順を追ってお伝えします。

■失われた30年: 日本経済低下の現状認識、問題意識

 いまの日本経済の環境を見てみましょう。
・世界における日本の一人当たりの名目GDPの低下(34位:2023年IMF統計)
・国際競争力の低下
・空洞化
・財政収支の悪化(巨大な財政赤字)
・止まらない人口減少
・円安
等々

→つまり、日本の「稼ぐ力」が継続的に、相対的に減少していることが大きな問題です。

■「欧米に追いつき追い越せ」からの脱却・転換

 前夜に綴った日本高度成長期の「鉄道の時代」は、欧米のお手本がある中での、「やり方(How)」・「オペレーション」をいかに最適化することで成長できた時代でした。
私はそれを前職パイオニア社(製造販売業)で体験(1977年~)してきました。
 そして、バブルが崩壊(1991~1993年)し、「失われた30年」に突入しました。

 ここでの認識は時代のフェーズ(段階、局面)が変わったということです。
 1980年代からの日米経済摩擦、そして、前夜でお伝えしたように製造現場が賃金の安い国(中国をはじめとするアジア諸国)に移動しました。
グローバル化による日本の「空洞化」です。

 高度成長期と違う一番の問題は、目指す「お手本」がなくなったということです。そして、世界がフラット化しました。
このことの意味するところは、従来の「やり方/オペレーション」が賞味期限を終えていて、将来の成長の「あり方」を考え、実行に移さなければならない時代になったことです。

 経営の「あり方」と「やり方」については、第321夜、第333夜に綴りました。
「経営」の“経”という字は、縦糸のことを表しています。“経”という縦糸(あり方)と“営(いとなむ)”の横糸(やり方、行動)で織物が紡がれます。
つまり、経営というのは、“経”という縦軸と、“経”という横軸で成立しています。

 日本の高度成長期の「鉄道の時代」は、横軸の「やり方(=How)」を最大化した時代した。
「お手本があり、どうすれば成長できるか」が分かっていたからです。
つまり、その時代は、縦軸の「あり方(=Why・What)」を考えることをしなくて良かった時代です。

 しかし、「お手本」のない時代は、自ら、新しい成長の「あり方」を探求・発掘しなければなりません。
さきほどの、「縦軸(あり方:Why・What)」と「横軸(やり方:How)」を見ていただければ、縦軸方向に『立つ』ことの必要性が見えてきます。
これが、第342夜に綴った「気立て(想像力)・見立て(構想力)・仕立て(創造力)」のことです。
 いま、この3つの『立つ』ことが求められているのです。
これまでの教育の「平均主義的な仕組み」の土台からの、抜本的な変革が必要なことはお分かりいただけると思います。

明治という時代は、『立つ』(立国・立志・立身・立憲)時代でしたが、失われた30年を負のバネとして、「令和」が『立つ』ことを担う時代です。

 そのため、新価値創造研究所(2013年設立)は、「価値創造」・「イノベーション・ジャンプ」という「立つ」ことに重点を置いて活動してきました。(第338夜)

■「立つ」を「SDGs成長経営」で実現する

 2015年、私は『立つ』を世の中に実践するためには、

・「SDGs成長経営」(第281夜)

 を「企業や自治体」に伝授するのが最適ではないか、と思うようになりました。

 「企業・地域」が再成長するための大要素は、『社会課題の解決』にあります。それは、誰からも大きな「共感」を得られるので成長に向かいます。
「目的:何のために行うのか?」の実現です。(「パーパス経営」が脚光を浴びているのはそのためです)

 本業(企業・地域)を本格的な『社会課題の解決』との交錯・飛翔に向かわせるのです。

 片手(半分)には、その志・情熱・数寄(第331夜)を持ち、もう片手(半分)には、実現する手段を持つという姿・状態です。
そして、その異質の二つを交り合わせることで化合物(価値創造)を創る。

・「本業×SDGs(17の社会課題)」

 から醸成される「価値創造(事業の目的)」「イノベーション(目的の実現」(第309夜)です。
これが、「SDGs成長経営」の公式です。
 従来、「社会課題の解決」は、プロフィット(利益)ではなく、コスト(費用)として考えられていましたが、「本業」と「社会課題」を両立させてプロフィット(利益)を出す時代に突入しています。

 昨年9月に、上記の構造と具体的をまとめたもの(を
・「川崎市主催SDGsバリューアップ経営セミナー」
・「京都銀行定例講演会」
 で、講演(第340夜)してきました

■ 日本再成長の要素

 日本再成長の要素を二つ(半分と半分)に分類します。
多くの要素の中から、シナリオプランニング(第15夜、第147)を活用して、日本の再成長と継続に、最も影響を与える明滅する項目をピックアップしました。

A.半分:社会課題(危機の認識)
 1.地球沸騰危機(人類の生命の危機)
 2.エネルギー危機(石油に頼れない)
 3,人口減少危機(少子高齢)

B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)
 1.AI/量子もつれ(キュービタル):本郷バレー
 2.IOWN構想(ナチュラル):オールフォトニクス
 3.自動ロボット(コントロール)

 この選出した[AとB]が「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)の左と右の半分となります。
これを展開し、推し進める方法に下記「C」という方法を入れ込みます。

C.「日本の方法」:「独自のルール」と「メディアミクス」
 1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
 2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
 3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
 4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風等):第149夜、第207夜
 5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
 6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)

 上記は、明治維新から続けてきた「西洋化」から脱却するために、もともと持っていた「日本の方法(知)」であり、現状を打開する「第3の方法」(第324夜)の一部です。

 例えば、「1.コードをモード化(日本様式化)する」ですが、
 「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
古代から、 日本は外国から「コード」、いわゆる文化や技術の基本要素を取り入れて、それを日本なりの「モード」(「仮置きの文化」や、「苗代」のような小さいエージェントを作る能力)にしていく、様式にしていくということが、たいへん得意な国だったのです。
 重要なことは、『外からのコード(基本要素)をそのまま受け取らずに、自分の中で編集してモード(様式)化』していく能力を持っているということです。

 →「わかる」方たちには、わかるのですが、多くの方たちには、それがどのように[A]と[B]に紐づくのかは「わからない」と推察します。

■ 上記A・B・Cを「2+1」(第312夜)に組み込む

 これが、私がシナリオプランニングで洞察した「日本成長の構図(公式)」です。

この「構図」が、日本の成長を牽引していくことを、皆さんも「想像→構想→創造」されてみてください。 

・[A]と[B]の共通項を抽出して、「漠然」ではなくて、「渾然一体」で掛け合わせるという「匠の技」です。
 その方法は、第308夜から前夜まで綴ってきました。
・そこに、[C:日本様式]というフィルターを入れて、「編集」することがポイントです。

 その「方法の知」の真髄と別格の方法を、未詳俱楽部等で「松岡正剛師匠」から受け取ってきましたが、その著作や放送を下記紹介します。
・日本という方法
・プランニング編集術
・連塾 方法日本Ⅱ「詫び・数寄・余白」
・日本流
・日本力
・日本問答
・日本文化の核心
・匠の流儀
・別日本で、いい
・参考:世界サブカルチャー史 欲望の系譜 ジャポニズム編(松岡正剛)

  上記の内容と「方法の知」については、もう少し具体的な内容を次夜に綴ります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第343夜:型通り→型破り→型創り

2025年1月18日: “ 未来の人財 ”を創る基盤について

 前夜では、「現在の閉塞した状況を打開し、打ち破り、未来を切り拓くために、時代が一番に求めているのは『構想力』である」
ということを図解(気立て→仕立て→見立て)とともにお伝えしました。

 『構想』とは、“未来をどうしたいか”にあります。
その「構想力」は、「本気(気立て:半分)」と「次の本流(仕立て:半分)」という前後(ビフォーアフター)によって成立します。
つまり、ずっとお伝えしてきた「2+1(ツープラスワン」(第312夜)の構造です。
「構想」のところだけを切り出しても、前段の「切実や情熱・本気」と後段の「別様と次の本流の姿」がないと「絵に描いた餅」になってしまいます。
そのために、本当に必要なことは、
・『構想(=未来をどうしたいか)』ができるためには、「自分自身を更新する」
 ことにあります。
それが、企業ご支援の最初にお伝えすることです。

①いったい、何に「本気」なのか?(何が「切実」なのか?)の深堀。:本気、情熱
②現状を突破するために、どうなりたいのか?(現状突破とは何か?):逸脱、次の本流
③何が「逸脱の鍵」で、どの様に解決するのか?その資源は、道筋は?:本質、別様

 注記ですが、この①②③の対象に、「改善」「改良」は含まれていないことをお伝えします。
現在の閉塞した状況を打開する、打ち破るには、「改善」「改良」では間に合いません。
それに注力しているあいだに、手遅れになっている現場を数多く見てきました。
いまは、「価値創造」「イノベーション」という「改革」「革新」が求められるのです。
「価値創造・イノベーション」の本質や方法を知らない経営者が多いことも課題です。

■「鉄道の時代」からの脱却

  明治維新から、欧米に「追いつき追い越せ」というスローガンのもとに、日本は成長してきました。
そこには「お手本」があったので、それを速く、安く、丁寧に、大量に製造販売して成長したのが、20世紀後半の日本でした。
鉄道のように、レールがあって、行き先が分かっていて、そこに如何に速く効率的にやるかという「オペレーション」の時代でした。
それを分業してやってきました。


 企業の大小を問わず、いまの高齢の経営者や経営幹部の方たちの多くが、その「オペレーション」の得意な方たちです。
それは、正解(お手本)のあるものを、言われた通りに、早く、速く、正確にこなせるような「教育」と「人材」からなっていました。
 時代が大きく変わっても、これまでの価値観の「枠」の中で、従来の「改善」「改良」に傾注・注力することで、1990年から日本の産業力は衰退していきました。
 さて目を転じて、「お手本」があって、オペレーションの役目を担って、相対的に安い賃金で成長してきたのが、中国やアジア諸国です。
そのことで、「空洞化」が進んでしまったのが先進国であり日本です。

 私自身も、日本製造業の空洞化を推進した当事者でした。
1996年、前職パイオニア社のヒット商品緊急開発プロジェクトプロデュースのオーディオ生産(ホームオーディオ、ポータブルオーディオ)で、パイオニア社として初めて、香港経由で「中国(東莞)」でOEM生産しました。(第14夜、第126夜)
 当時の東莞は、日本の賃金の六十分の一(1/60)でした。
私も現場(東莞工場)に何回か足を運びましたが、日本と同じ「生産技術・製造技術」で造るので、品質に大きな差はありません。
 その「製造原価」で日本で造ろうと思ったら、極論すると製造現場(埼玉の所沢工場、山形の天童工場等)の社員の給料を1/60にしなければなりません。
これが日本産業を苦しめる「空洞化」の始まりでした。

 1/60のコストで製造原価を下げると同時に、インテリア業界、ファッション業界との異業種コラボによる価値をつけることで、
・オーディオ「ハッピーチューン」シリーズ
・ポータブルオーディオ「ループマスター」シリーズ
 は、大ヒットとなりました。

 その後、生産現場は賃金の安い「タイ」や「ベトナム」にシフトしていき、それらの国は成長していきました。
さて、お分かりの通り「空洞化」が起きた時から、「鉄道の時代」を成功の価値観にしてきた「政治・経済界」「教育界」「産業界」の抜本的見直しが必要でした。
それが、「航海の時代」の戦略です。

■「航海の時代」

 「鉄道の時代」の次に現れたのが「航海の時代」です。
 それは、失われた30年を取り戻し、本格的に『構想(=未来をどうしたいか)』を掲げて、新たな転換のためにギアチェンジを図り、行動・実践する時代です。
・そこは、「陸」ではないので「レール」がありません。そして、海路には大きな変動要素があります。
・低賃金から脱するために、「賃金」を高くするために「高い価値」を生み出さなければなりません。
・お手本がないので、何のために、どこに、何を目指して行くのかは自分で考え、決めなければならない時代です。
・我々はまだ、「半分」である、途上である。異質の「半分」を見つけて、革新・変革する時代です。(第312夜)
・①気立て:航海にあたり、何を大切にするのか? 何を「船の錨」にするか?という心の「拠り所」「ミッション」の明確化です。(=Why?)
・②見立て:そして、これまでの殻を破り、枠を出て、何を目指すのか?目指す方向はどこか?という「ビジョン」の明確化です。(=What?)
・③仕立て:それでは、その「ミッション」と「ビジョン」をどう具体化するのかというが、「イノベーション」の明確化です。(=How?)

 という項目の「本筋・道筋」の認識と航海するための「羅針盤」が必要になってきます。
上記実現のために、「ご支援プロジェクト」では、ここの「ドック」にはいっていただき「羅針盤」を策定します。

 その具体的な事例は第314~330夜に、そして、日本の大きな転換と成長については下記(「AI、DX、GX、や17の社会課題(=SDGs)」の戦略的取り込み等)に綴っているのでご覧ください。(セミナーや研修では、多くの事例を紹介しています)

■基本的考え方

 『構想(=未来をどうしたいか)』のポイントは、
・従来の延長上の「型通り」(紋切り型・金太郎飴)では、「未来がない」という認識を持つ(=切実)
・(自分は)今はまだ「途上」である。「未完」「半分」であるという認識(第312夜)
・従来とは違う、(自分が)気になる「別(another)」「異質」を探求する(第332夜)
・つまり、これまでの「枠」を出る、「殻」を破ることを決意をする(逸脱:第330夜)
・それは、これまでの「言われた通りのこと」をやることからの脱却・脱皮です
・つまり、「型破り」です。
・そして、本業(One:半分)と異質・別物(Another:半分)をつなげて、交り合わせる(ーイノベーション)
・そこに、「新しい化合物」、「別様」が閃きから生まれる
・それが、「型創り」です。

→「逸脱」「別様」に向かうので、通常の(西洋式の)経営戦略でよく使われる「3C」「SWOT分析」等はあまり役にたたないのが現実です。

■型通り→型破り→型創り

 『構想(=未来をどうしたいか)』と『新しい成長』の道筋を整理すると、

・「型通り→型破り→型創り」

 になります。
(実際の企業ご支援でも、選抜チームを組む場合には、必ず「女性」「型破りっぽい人材」を選んでいただくことをお願いしています。
やはり、実際に「変革の起動」になってくれるのは、その方たちです)

 これを「2+1」の図に表します。
ご覧いただいてわかるように、それは「守破離」とリンクしています。

“守破離”(第5夜、第88夜、第330夜)とは、
守って破って離れる、のではない。
守破離は、
①守って型に着き、
②破って型へ出て、
③離れて型を生む。

 これが、「航海の時代」の『型の進化』です。
「鉄道の時代」の「型」で行き詰っている「企業」「地域」の多くは、①の「守」(型通り)に留まっていて、②の「破」(型破り、殻破り)に進まないのです。
①「守」のステージの中(領域)で何とかしようとしているで、不足のもう「半分」となる「AI、DX、GX、や17の社会課題(=SDGs)」等の異質を自分の中にモード変更して取り込もうとされません。(第330夜、第332夜)
 挑戦しないことで、企業、地域の将来が更に「不確実」「不確定」の景色になっていくという「悪循環」です。

 是非、前述の第314~330夜の事例や、一昨年に、全国の地銀向けに、上記のエッセンスをまとめた小冊子(3万冊)を執筆しましたので参考にされてください。

■ブレークスルー時代の「教育」の変革

 さて、「鉄道の時代」と「航海の時代」では、求められる『人財』『経営者』が違うことがおわかりいただけたと思います。
キャッチアップの時代では、ゴールが分かっていますから、しっかりと「オペレーション」できる人材が必要でした。そのような教育がずっと続いていました。
 いまのブレークスルーの時代は、現状を打開・打破するために、第308夜から綴ってきた「価値創造」「イノベーション」という「逸脱し、殻を破る」「型破り・型創り」の人財が必要です。
つまり、『構想(=未来をどうしたいか)』をできる人財です。
 それは、従来の「平均主義的人材」ではないことはお分かりいただけたと思います。
人々が求めているのは、現状を打開する、未来を切り拓く「大谷翔平(二刀流)や藤井聡太(将棋×AI)」等の「逸脱」できる「逸材」です。
 不足のもう「半分」を取り入れてブラッシュアップしているのです。(第312夜)

「型通り」ではなく、「型破り」「型創り」の人財、企業、地域をどう創出するのかが、将来の「Well-being」のポイントです。
(ビジネス戦略では西洋式の「型」を使っていますが、ブレークスルーの領域ではその「型」では「違い」が出ません。それをどう「逸脱」「別様」するかがポイントになります。それは次夜に綴ろうと思います)

①いったい、何に「本気」なのか?(何が「切実」なのか?)の深堀。:本気、情熱
②現状を突破するために、どうなりたいのか?(現状突破とは何か?):逸脱、次の本流
③何が「逸脱の鍵」で、どの様に解決するのか?その資源は、道筋は?:本質、別様

 私の周りの東大・早大・慶大等の卒業生や関係者に聴くと、やっと学生の半分近くが「大企業」から、「ベンチャー」「スタートアップ」「価値創造」に向かっていくようになりました。
とってもいい流れです。教育の「中身」「体系」と先生の「中身」「質」を迅速に、大きく変革していかなければなりません。

 それは、私たちの未来の「Well-being」のためです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第342夜:いま時代が一番求めているのは「構想力」である

2025年1月13日: “ 構想力 ”を生み出す “三立て” 
 地球沸騰(地球環境)が止まらず、戦争(社会)も止まりません。
地球人類の「生命」を脅かし、世界及び日本の「政治」「社会」「経済」「環境」の見通しもつき辛いですね。
誰もがこの先の未来がどうなっていくのか明確に見極められず、不安になっています。
そして、地球沸騰、戦争やAIの進展は、個人の力ではどうしようもなく、でもそれらが「私たちの未来の生活や生命」に影響を及ぼしてきます。

・「人生は思う通りになりません」

現代に限らず、先行きが混とんとして、自分や会社や地域が「思い通り」にならない時、そんな時に未来を突破する「構想力」の重要性、緊急性が叫ばれます。

 仏陀は、この世は「苦」であるとしました。
「選ぶ力」(五木寛之著)から、加筆引用します。
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・・・「苦」とは本来、「人生は思う通りにはならないものだ」という自覚にはじまる。
不条理で理不尽なものだからこそ、そこに葛藤が生じる。
 私たちはこの世を、できるだけ思い通りに生きたいと思う。しかし、現実は納得のいかないことばかりである。
そこに生じる苛立ちや絶望を、「苦」と表現するのではないか。・・・
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 現在の閉塞した状況を打開する、打ち破るための大きな力として『構想力』があります。
『構想』とは、“未来をどうしたいか”を組み立て掲げることです。
・いま時代が一番に求めているのは「構想力」です。
・未来に対してどのようにイマジネーションを働かせ、ビジョンを描くことができるのか、心で思い、絵にかいた餅こそが要求されています。
・私たちが「切望」しているのは、「未来への可能性」であり、ビジネスの場で、クライアント先が私に求めているのも、会社や地域の「未来の可能性」です。
・その「未来の可能性」について、クライアント先にそのチャンスを持っていることを伝えると、勇気・元気が出て喜ばれます。
・その「未来の可能性」を引き出すのが「構想力」です。

 いまでも日本経済が落ち込んでいる大きな要因は、「構造的な不況ではなく、構想的不況」の存在にあるのではないでしょうか。
人々の暮らしや世界産業の転換に、「構想的に対応」できていなかった政治や産業界が日本を支配していたことが大きな要因です。
 

 本夜は、この「構想力」について、谷口正和師匠との対談と著作、将棋棋士で十七世名人である「谷川浩司」さんの著作「構想力」等を紐解いて、加筆引用させてもらいながら、その「本質と具体」を最後は私の図解を交えてお伝えしたいと思います。

■ 谷口正和師匠の「構想力」 

 前夜(第341夜)に引き続き、私が前職パイオニア社を早く卒業しようと思い、2010年に谷口正和師匠のところへ訪れたときの「大テーマの一つ」が『構想力』でした。
その後、正和師匠が京都の12人のオピニオンリーダーにインタビュー編集した提言が

「構想の庭」(2017年)

 として上梓されました。

その想いと意気込みを著作の「はじめに」と「おわりに」から加筆引用します。
◆「はじめに」
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 次なる社会そのものに対する「構想力」が今、問われています。
つまり、我々に突き付けられた課題とは「構想設計」です。その課題に取り掛かるため、「着想」をロングレンジで捉え、その思想・哲学を軸足に「未来のありたい姿」が複合的にジャッジできるように、まず高質な情報が大切なスタートになります。
・・・自己は自らの存在を超え、新たな価値と連帯していく潮流があり、それは相対化された価値軸ではなく、往来しながら複合する価値から、さらに絶対的な価値軸の流れを作り出し、新たな気づきの連鎖をもたらします。・・・
・・・この全体を見渡し、俯瞰された視座から発せられたオピニオンの方々の未来を照らす言葉を体感していただきたい。
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オピニオンインタビューのリーダーの方たちは、
・月尾嘉男
・浜野安宏
・水野誠一
・上野千鶴子
・望月照彦
・小宮山宏
・山極寿一
・田中康夫
・嘉田由紀子
・寺島実郎
・遠藤湖州

 上記多くの方々が、谷口正和師匠主宰の「文化経済研究会」のゲストとして登壇され引き合わせていただきました。
当時は40歳代のときでしたが、その視点・視座・見識に触れることが、その後の活動に大いに役立ちました。

◆社会構想
 文中で、正和師匠が熱く語ります。
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・・・私は色々な機会で「構想が日本を救う」と語ってきました。
私自身、未熟ながら構想家を目指す想いがあります。
 事業は「構想」こそ大事です。
・・・一番大切なコトは、「閉塞した社会そのものに風穴を開ける」ということです。
私が今一番訴えたいことは『社会構想』をどう創り上げていくのかということです。

・・・事業を成功させるために必要なのは、事業自体の狭い構想から、「社会を俯瞰できる構想」へと飛翔させることです。・・・

 第308夜から第341夜に、図解や事例を交えて綴ってきたことは『社会構想』が多くを占めます。
そのために、「本業(半分)」と「社会課題(半分)」を「解決飛翔」する「SDGs成長経営コンサルパートナー」を10年間推進してきました。(第312夜:「2+1」)

ちょっとした「改善」「オペレーション」では、時代の波に飲み込まれてしまいます。
是非、行き詰まりを突破する「革新」「イノベーション」に挑戦されてください。

・【切実】⇒【逸脱】⇒【別様】(第322夜)
・【本気】⇒【本質】⇒【本流】

 「切実」という本気の「負のエネルギー」のない方には、本気の「構想」はつくれません。
 たとえれば、「コップの水」が半分になった時に、
A.まだ、半分ある
B.もう半分しかない
 と、全く同じ状態でも「反応」が違いますね。
その「認識」が、企業や地域のご支援では、「決定的な違い」となって現れます。

 それが、よく言われる「茹でガエル現象」です。
(茹でガエルとは、緩やかな環境変化下においては、それに気づかず致命的な状況に陥りやすいという警句。生きたカエルを突然熱湯に入れれば飛び出して逃げるが、水に入れた状態で常温からゆっくり沸騰させると危険を察知できず、そのまま茹でられて死ぬという説話)

◆「おわりに」
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・・・社会に蔓延する近視眼的で、短期単発的な風潮に思考の視座を見失い、将来不安が募る中、この『構想の庭』を通じてオピニオンパーソンの方々にロングインタビューさせていただき、長期的で、広域的な視座に立ち、より本質に迫る着想を賜り、思考のヒントとしてお届けできれば本望です・・・
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 近視眼的、短期単発的ではなく、長期的、広域的な視座に立ってから、現在に逆算することで、新しい一手を打つことができる可能性が高まります。(第333夜)
興味関心の湧かれた方は、是非、この構想力のヒントが満載な「構想の庭」をご覧ください。

■「谷川浩司」さんの「構想力」

 さて、「新しい一手」と記しましたが、将棋棋士で十七世名人である「谷川浩司」さんの「構想力」(2007年)が上梓されました。


加筆引用します。
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 ・・・「構想力」は、先行きの見えない時代の閉塞した状況を打ち破るための大きな力になると私は思うのだ。
なぜなら、将来どうなるかを正確に読み、向かうべき将来像を明確に描いたうえで、それを実現させるための方法や道筋を組み立てることができれば、効率よくものごとを進め、処理することができる。
 そうすれば、競合相手に先んずるだけでなく、市場を開拓できるし、事前にしかるべき手を打っておくことも可能になる。また、たとえ状況が変化したり、最初に構想したようにはならなかったりしても、その状況に即した新たな構想をいち早く練り直すことができれば大きなアドバンテージを得られるはずだ。先が見えにくい時代だからこそ、構想力の強弱が今後ますます問われてくると思うのだ。・・・
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 内容は、
・構想に必要な4要素
・事前の構想が序盤を制する
・真の構想力が問われる中盤
・常識外の構想はどこから得るか
・読みは「デパートの買い物」に同じ
・経験は若さに勝る

◆構想に必要な4要素

 より深く、正しく「構想を組み立てる」ために必要な4つの力を上げています。
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・第1は「知識」
 相手の情報を集め、傾向を知ることは、構想を練るためには絶対に必要だ。対局によってはそれで勝負が決まってしまうケースもあるからだ。
・第2は「正確な状況判断」
 将棋でいえば、形成を正しく判断する力のことである。いま現在、自分がいかなる状況にあるかを正確にジャッジできなくては、つまり構想するための立脚点が間違っていては、深く、正しい構想など組み立てられるわけがない。
・第3は「先を見通す正確な読み」
 自分がこういう行動を起こしたら、状況がどのように推移していくかを正しく見極められる力があれば、それだけ構想力は高まることになる。
・第4は「時間の管理」である。
 なにごとを行うにせよ、時間は無制限にあるわけでなはない。将棋にも対局には持ち時間というものがあり、限られた時間のなかで形勢を判断し、正確に先を読み、最善の指してを選択しなければならない。そのためにはいかに時間を使うか、どれだけ効率的に管理し、配分できるかということが勝負に大きく影響する。・・・
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◆構想力を伸ばす大局観

 大局観を持つことは、構想力を伸ばすという意味で非常に大切なことです。
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 ・・・大局観とは、「未来を見据えたうえで現状を見る」という意味でもある。
将来に対する明確なイメージがあり、先行きがどうなるかを正しく読んだうえで、そのイメージを実現するには、いま何をしておくべきなのか、いかなる決断を下すべきなのか。
 それを判断する力を「大局観」と呼ぶわけだ。なすべきことに優先順位をつけるといってもいいかもしれない。・・・
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◆いくつもの顔を持てばどんな状況でも対応できる

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 前に「知識は多ければ多いほど構想は描きやすい」と書いた。
これは、言い換えれば自分の中に「引き出し」をたくさんもっていなければならないという意味である。こういう人は現状を把握し、先を読んだうえで、数ある選択肢の中から最善の方法を組み立てられる。
 私が対局していちばん怖いと思うのも、
「引き出しをたくさん持っている人」だ。
 そういう人は、何をやってくるかわからない。どういう作戦でくるのかわからない。
これは対局する人間にとって嫌なものだ。・・・
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■新価値創造研究所: 過去の延長上には「未来」がありません

 ここまで、「構想力」「大局観」「引き出し」等について記してきましたが、
後戻りしない変化(=トランスフォーメーション:第302~302夜、第319夜)の未常識時代には、

・過去の延長上には「未来」がない(第133夜、第272夜、第333夜))

 という認識が必要です。
企業の従来の中期計画(3年)策定では、右肩下がり、太刀打ちできない状況が現出しています。

 その時に、従来の中期計画から脱皮する「構想力」の重要性が増しています。
それを「本業(半分)」と「新対象(半分)」の「2+1(ツープラスワン)」(第312~332夜)でお伝えしてきました。

◆新価値創造研究所:シナリオプランニング(第38夜、第111夜、第119夜、第155夜)

 構想力を「図解」で見える化する方法に、「シナリオプランニング」があります。
前職パイオニア社の2000年頃に、米国からJオグリビー氏を招き、直伝をうけました。
「価値創造」において重要なのは未来から現在を見るという視点ですが、その未来の可能性を4象限で表すというものです。

 「見える化」ということで、ご支援先で活用しています。
是非、参考にされてください。

◆構想力を実現する『気立て→見立て→仕立て』(第21夜、第122夜)

 図解の三つの「~立て」は何だと思いますか?
 実は、「気立て(想像力)・見立て(構想力)・仕立て(創造力)」の三つは新価値創造研究所が企業をご支援する時の重要な心得・指標を表しています。


この「三つ」が立たないとご支援はうまくいかないことが多いことを経験してきました。
 特に重要なのが、「リーダー」「経営者」の切実、切望、情熱という「気が立っている」ことにあります。
参加する社員の人たちが「燃える集団」になっていても「リーダー」「経営者」が燃えていない、本気でないといい結果が出なことが多いのです。

 詳細は、「価値創造の知」(第21夜)をご覧いただきたいのですが、本夜はそれを図解します。
この「三つの立て」を先に知る・わかることが、「ゴール・結果」に大きな影響を及ぼします。

 この図でワカルことは、「見立て」「構想力」は単独で生まれるものではないということです。
それは、「2+1(ツープラスワン」(第312夜)です。

・「気立て」→「仕立て」→「見立て」
 →「見立て」は「気立て」と「仕立て」のよい「間(ま)」(第311夜)から生まれてきます。
・「想像力(イマジネーション)」→「創造力(イノベーション)」→「構想力(インテグレーション)」
 →「構想力」は「想像力」と「創造力」のよい「間(ま)」から生まれてきます。

 上記から、「未来の可能性」と「ミッション・ビジョン・イノベーション」(第89夜、第122夜)が見えてきます。

皆様の参考になれば幸いです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第341夜:「あなたがやってきたことを生涯の仕事にしなさい」

2025年1月9日 「定年退職的な発想こそが“元凶”である」

前職パイオニア社を早めに卒業して、2010年に「価値創造で人々を幸せにする研究所」を立ち上げたいと思って、谷口正和師匠のところに相談に行きました。


その時、団塊の世代の正和師匠は、高校時代の同窓生たちが定年退職後に次のステップ、ステージにうまく踏み出さないことに「やきもき」されていました。
 同窓生たちは、口々に、
「人生こんなものなのかと思い、寂しい」と語っていた。
 正和師匠は仲間たちに言った。
「あなたがやってきたことを生涯の仕事にしたら?
我々はライフスタイルという言葉を知っているじゃないか?」
 「・・・人間は、生き方と働き方を分けてはならない」と。

■リスキリング・インタレスティング・バリューイノベーティング
 本夜は、不確定な時代を生きる方たちに、永眠された谷口正和師匠の言葉をご紹介することで、
・リスキリング
・インタレスティング
・バリューイノベーティング
 という「~ing」(図解)で、少しでも人生や仕事の“気づき”や“ブラッシュアップ”につながればと思って綴ります。
この3つのingは後方で綴ります。

 さて、昨夜(第340夜)は「才能」と「匠」を図解と共に綴りました。
その「匠」と、私の相談の時の正和師匠の言葉の数々が、その相談の一年後の「つむぎだす未来」(谷口正和著)に記されていたので加筆引用します。


■高齢者とは体験学習によって磨かれた姿
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 ・・・日本でも江戸時代までは「匠」という職人芸が尊ばれてきたが、それは定年まで勤め上げたなどというレベルから出てくることではない。生まれてから死ぬまで体験学習を繰り返し、身体に染み付いたものである。体験学習を回数化すると、習慣が体質を形成する。そのため一朝一夕では滅びない。
 そのことを逆転的に言えば、高齢になればなるほど集約され、煮詰まり、精度が上がってくる。言ってみれば、高齢者とは体験学習によって磨かれた姿である。
生涯を働く、生涯を生きることによって、社会に貢献しようとした時、人は生涯、他社に対して奉仕と貢献を全うすることができ、その生き様を持って次の世代の弟子たちを育てることができる。まさに伝承であり、伝承のないものに長い価値はないと言っても過言ではないだろう。・・・
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 前夜のコラムでお伝えした通り、職人たちだけが「匠」ではありません。
現代には、課題となる「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)が数多くあり、それを課題解決する「才」が求められます。
「才」と「能」の二つを組み合わせ、磨き上げてカタチ、型にするのが「匠」です。その「匠」たちが切望されています。
生涯をかけてつくりあげてきた「才」を「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)と掛け合わせて若い人たちにみせつけたいですね。

■ベンチャーとは、もう一度次のステージに載せ直すコト
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・・・最も人口の多い団塊世代は、60歳を超えたところで団子状態になっているが、彼らはベンチャーを起こすためにそれまでの職を卒業したのだという認識を持って行動しなければならない。
 「ベンチャー」とは、新しいことをやるよりも、あなたがこれまでやってきたことをもう一度次のステージに乗せ直すということだ。
生涯編集者、生涯パン職人、生涯ドクター・・・。
 あなたは、「生涯をかけて取り組む職業の研究課題」を選び、引き取ったはずである。・・・

・・・こうした流れからすれば、やはり我々は次の活力を創造する担い手にならなければなないだろう。高齢社会となり体験を積んだ人が増えたいま、体験学習の結果生まれてきた「知恵」を使い、未来に対して未解決だった問題を解き、立ち上がって門戸を開くことが大事である。・・・
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■自分の「才」を整理

 上記は、2010年に私が前職パイオニア社を早く卒業して羽ばたいていこうと思っていた時の、背中を押してくれる「珠玉の言葉」の一部です。
正和師匠に、「自分の才」をまとめてみるように言われました。
(これらの経験やご縁が、自分の「才」を拓かせてくれました。やはり「動く」ことが肝要に思います。)

・設計、技術企画、技術統括、情報企画、開発企画・・・
・B2B参入体験(B2CとB2Bの二刀流):第314夜
・労働組合の書記長体験:第29夜、第336夜
・社長直轄ヒット商品緊急開発プロジェクトリーダー体験(異業種コラボ):第14夜、第313夜
・未来シナリオプランニング直伝体験(Jオグリビー氏):第155夜
・総合研究所(10年後の未来シナリオ策定):第111夜
・社内外横断による新事業創造プロジェクトリーダー
・価値創造による人財創生塾
・松岡正剛師匠(未詳俱楽部他):第308夜、第337夜
・谷口正和師匠(文化経済研究会):第323夜、第313夜

 さてさて、2013年10月に「新価値創造研究所」(第75夜)を立ち上げましたが、
やはり、まだまだ自分が磨かなければないないことが次々に現れました。
 人生は「壁」と「殻を破り」「磨き上げる」ことの連続「~ing」です。
その「殻破り」「磨き上げ」を「無我夢中」にできるかどうかが「才能」と「生きがい」に繋がってくるように思います。

■新ステージに向けた「3つのing」
 新しいステージにジャンプアップするときに、「3つのing」を意識することで、時代の波に飲み込まれずに、時代の波に乗れるように思います。
それを、前夜の「才(人間の側が持っているもの)」、「能(対象が持っている可能性)」、「匠(才と能の二つを組み合わせる力)」に当てて図解します。
・リスキリング(人間の側:開拓の精神)
・インタレスティング(対象の側:数寄の精神)
・バリューイノベーティング(創造・統合する能力と精神)

 モノゴトの見方、考え方が「固定」していると、大変化する「社会・経済・環境」に対応できません。
上記に対応した「柔軟性(横軸)」と「開拓性(縦軸)」をingの状態にしていくことが求められます。
松岡正剛師匠、谷口正和師匠のお二人とも、生涯現役でその背中を見せ続けてくださいました。

 少しでも継承していきたいと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ