価値創造の知・第4夜 用意と卒意

2016年12月9日 不足転じて満足となす

12月7日のコラムで「おもてなし」を取り上げましたが、茶の湯の「おもてなし」の精神をあらわす言葉に、
「用意」と「卒意」があります。(「書」や「落語」でも使われます)

「用意」:お客をお招きする主催者が事前に準備をしておくこと。
「卒意」:主客一体となって、場をつくりあげること。その場の空気や出来事に応じて、とっさに判断・行動すること。

不意にやってきたお客には用意ができていませんね。「持ち合わせ」、「間に合わせ」だけでもてなさざるをえません。茶の湯では、亭主がお客に「侘び」ながら「持ち合わせ・間に合わせ」で心を込めておもてなしをすることを「侘茶」と言います。「ワビサビ」の「ワビ」ですね。

さて、ここから「卒意」の自分の体験を紹介します。
前職は、パイオニアという会社に勤めていました。1989年から「オーディオ事業」が衰退期に入り、イノベーション(パラダイムシフト)が必要でした。39歳の時、上司や事業部を飛び越えて「既存事業部ではできない、次世代のオーディオ・ビジュアルづくりをやらせてもらいたい」と社長に直訴しました。
社長からは、「新しい商品・技術ではなくて、枯れた技術を使って、量販店ではない売り方でヒット商品を創りなさい」という指示でした。

直訴の為に「次世代事業企画・パイオニアルネッサンス計画」を経営に「用意」したのですが、思惑がならずに、現状の枯れた商品・技術の「持ち合わせ・間に合わせ」というワビの「卒意」により、当初は3名で「ヒット商品緊急開発プロジェクト」を立ち上げました。

今では異業種コラボレーションは花盛りですが、当時は自前主義(スタンドアローン)が常識でした。
緊急プロジェクトでは、今までにない考え方・やり方を構想し、多様なメンバーを社内から集め、枯れた技術を使って、サントリー様や無印良品様等100社を超える外部の異業種と主客一体となってコラボレーションしました。(下図)

結果、連続して4つのヒット商品を世の中に出すことができました。まさに、「不足転じて満足となす」。これは、12月9日のコラムで記した「負の美学」そのものです。
現在、多種多様な企業をご支援していますが、将来に対する「用意」と持ち合わせ・間に合わせのワビの「卒意」のどちらもが役立っています。これも日本のDNAです。みんなで「卒意」しましょう。

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