橋本元司の「価値創造の知・第189夜」:「世阿弥の知:男(おどき)・女時(めどき)」➉

2018年11月30日 人生に無駄はない

『風姿花伝』に、世阿弥の造語の「男時(おどき)・女時(めどき)」があります。

「男時は流れに勢いがあるとき、女時は流れが停滞するとき」と読めます。
前職・パイオニア社を卒業し、新価値創造研究所を立ち上げて活動している今、改めて人生を振り返ると、
自分の『人生』では、正(プラス)に満ちて勢いがある時と負(マイナス)で凹んでいる時が交互にやってきました。
そして、正(プラス)が大きい時は、負(マイナス)が大きいことも経験しました。

そして、それは「自分ひとり」だけのことではなくて、多くの人の「人生の法則」のように感じています。

第157夜~第166夜に連続して取り上げた『スティーブジョブズ』もそうでした。
アップルのスティーブジョブズは、創業者でありながら会社を追い出されました。
アップル退職後、ピクサー・アニメーション・スタジオを設立。また、自ら創立したNeXT Computerで、NeXTワークステーション (NeXTcube, NeXTstation) とオペレーティングシステム (OS) NEXTSTEPを開発した。
1996年、業績不振に陥っていたアップル社にNeXTを売却すると同時に復帰、その後はiPod・iPhone・iPadといった一連の製品群を軸に、アップル社の業務範囲を従来のパソコンからデジタル家電とメディア配信事業へと拡大させた。
世界のライフスタイルを変えた「イノベーションの神様」です。

彼は、「男時」、「女時」を繰り返しました。
重要なことは、会社から追い出され、つらく凹んでいた「女時」に何をするかです。
この「女時」に次の「男時」に向かって着々と用意・準備を進めていました。
それは「弓道」で云えば、弓矢を目一杯後方に引いた状態です。そのエネルギーが大きければ大きいほど「的」に向かって強く早く向かっていきます。

そう把えると、「男時・女時」は、第179夜に綴った「老子の知・陰陽論」と基本は同じだということに気づきます。
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世の中に誕生したものはすべて「陰」と「陽」という矛盾した二つの要素を内包している。それを「どちらを取るか」という二者択一の発想ではなく、
こころを空っぽにして「陰陽両方を取る」という心持で、没頭没我の状態で物事に取組むことが大事である。そうすれば矛盾を乗り越えることができる。
(古代中国で生まれた自然哲学の基礎概念に「陰陽論」というものがあります。万物には、「陰」と「陽」という背反する二つの側面が必ず存在しているという考え方です。
陰陽論では、内へ内へと入ってくる受動的な性質を「陰」、外へ外へと拡大していく動きを「陽」とします。
世の中に「存在しているもの」あるいは「起こっている現象」というのは、すべて陰陽後半双方の性質を持っており、当然よい面もあれば、悪い面もあり、よい時期があれば、悪い時期もある。そうした構造になっているのです。
これが陰陽論の基本的な考え方です)
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「当然よい面もあれば、悪い面もあり、よい時期があれば、悪い時期もある」

世の中は、そうした構造になっているのですね。

自分ゴトで云えば、

男時:カーエレクトロニクス設計、技術企画
女時:カーエレ情報企画、開発企画
男時:ヒット商品緊急開発プロジェクト、新事業創造室、総合研究所
女時:部門解散、「次の柱」事業創出プロジェクト、「次の人財」創出プロジェクト
男時:新価値創造研究所

男時の2006年総合研究所時代には、「パイオニア社の10年後」をプロジェクトでまとめました。
そこでは、
①社運を賭けた「大画面TV事業」には未来がないこと(第184夜)
②リソースを活かした、10年後の4つの将来像(シナリオプランニング&ビデオ)
③その時のHMI(GUI・AUI・TUI)
特許を含むプレゼンテーションをしました。

それは、10年後の2017年に全て現実のものとなりました。

しかし、社内の力学で部門は解散させられました。社内左遷です。2006年末に、「女時」に入ったのです。
その時に、多くの人たちの支援で、
・「シナリオプランニング」::社内事業部の10年後の将来、そして、社外事業及び社外研究所支援
・「次の柱」事業創出プロジェクト(3年間)
・「次の人財」創出プロジェクト:社内外の創造型人財の創出(800人受講)
を経ることで、早期の卒業につながりました。

その女時に、自分流の「秘すれば花」を創出したのでした。

そこから、「男時」となる新価値創造研究所に向かいました。
この2006年末からの「女時」がなければ、きっと今の自分はありません。
勿論、このような「価値創造の知」連載もきっとありませんでした。

「人生に無駄はありません」

それが、今の自分の実感です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ
男時女時