2019年11月2日 「商道ビジネス」の時代へ
みなさん、「船場商法」という言葉を聴かれたことはありますか?
関東出身の自分にはあまり馴染みがなかったのですが、今年の春(3/17~3/19)、「チーム創発」の仲間と共に、関西方面(神戸・大阪・京都)に知の出遊の時に出会いました。
それは、大阪パナソニックミュージアム「松下幸之助歴史館」、京都の「PHP研究所」を訪問して、松下幸之助氏を体感した後に、パナソニック出身のチームの彼から熱い言葉で聴きました。
それは、「松下幸之助氏」の原点だそうです。
経営の神様にして、松下電器産業はじめ松下グループの創業者。和歌山県和佐村の生まれであるが、大阪・船場で丁稚奉公、大阪市内で独立開業されました。
船場商人の原形をつくったのは太閤秀吉で、大坂を商都とすべく、京都より伏見商人、堺より堺商人、河内より平野商人を集めてきたのが起こりで、この3者を総称して船場商人という。
この時代から昭和のはじめに至るまで商人街を支えていたのが、丁稚奉公制度で、厳しい修業と独立・暖簾分けという仕組みが活力の源であったそうです。
松下幸之助も自らの船場での奉公時代をこう表現されています。
上方商人の3要素は、始末・才覚・算用。いまの言葉でいえば、「始末」はムダを省いて節約する一方で必要な投資は惜しまないこと、「才覚」はアイディアと戦略、「算用」はコスト計算にあたる。また船場の気風としての開拓・挑戦の精神と独立自営の精神、そして商人の基本としての挨拶・立ち居振る舞い。高等小学校や中学をでたばかりの丁稚は、毎日、一日中みっちりとこれらを叩き込まれた。もちろん住み込みで、もちろんすべてが(現在の言葉で言うところの)OJTである。
経営の神様とよばれるほどの創業社長は、こういう“学校”で学んできている。
そこには近代ビジネスの前の「商い」「商道」の理念と実践がありました。参考に「船場商法の構成図」をアップします。
そのエッセンスを「語り継ぐ船場商法」(和田哲株式会社・和田亮介会長)から加筆引用します。
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—「天道」と一番上に書いておりますが、いま殆ど口にすることはありませんが、船場商人は「お天道さん」という事を言っておりました。祖父も「お天道さんが見てはるで」は口ぐせでした。お天道さまとは、神、仏、先祖で、そのお天道様のお蔭で商いができる。
ですから、天道の下に天職とあります。いまは天職という言葉は死語になりましたが、昔はどんな商人や職人でも皆誇りを持っていました。それは、こういう仕事ができるのは、神仏の加護、祖先のお蔭だと、手の届かない上の方から見られているという。
—船場商法の構成図をご覧いただくと、私は40年間船場で生活しまして、船場の祖父や古老、特に私は創業者が好きだったものですから、私よりもはるかに年配の方々の話を聞いて、船場商法と何だろうと、私なりに作ったのが、この構成図です。
一番下の始末・才覚・算用は、皆様がいつもお聞きになっている大阪商法の三つのキーワードであります。日本永代蔵という小説を書き元禄時代に活躍した井原西鶴が大阪商法とは一番下の始末・才覚・算用であると言っております。
・「始末」とは、本来の言葉の意味は始めと終わりをきちんとするという計画性で、計画性を持ってやれば、思いつきでやるよりもはるかに無駄が少なく倹約になります。
・「才覚」とは、人の真似をしないで、どうして成功するか。自分で編み出す。それが、戦前の才覚でした。何とかして永続させようと才覚をはたらかせ、のれんを降ろさないように努力します。
・「算用」とは、算盤に合うということですから、せっかくいい計画を立てても、黒字に繋がらなければ何の意味もない。だから、商法として算盤に合う、採算が見込まれるというものでなければなりません。
この三つを先ず組み合わせることによって、時間の経過によって、信用というものが生まれるわけです。銀行の応接室などにはこの三つの横に、信用という言葉が額に入れてありますが、この三つと信用とは本質的には違う。三つの結果が、信用になっていくわけです。—
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いかがでしょうか。
自分も小さいころに、母から「お天道さんが見てはる」と何回も云われたことを覚えています。
「近代ビジネス」というのは、そこからずいぶんと離れてしまいましたね。
「船場商法」とは、古き良き「商い」「商道」でした。
松下幸之助から一番学んだことは、「商い」と「道」の心得と方法でした。
構成図の「奉公・体面・分限」は理念であり、「始末・才覚・算用」は実践で、それを併せて、「商道」に昇華しています。
温故知新で将来のビジネスを観ると、
①商い・商道 → ②近代ビジネス →③商道ビジネス
に進化するのではないでしょうか。
第246~266夜に綴ってきた、「SDGs」(2030年の国際目標)は、
→「お天道さんが見てはる、③商道ビジネス」にピッタリはまるように思います。
「船場商法」の『始末・才覚・算用』は、まさにSDGsが求めているそのものです。
そのような意味で、関西方面は、関東方面よりも「SDGsシフト」する地盤・基盤ができているように思います。
先日、播磨・姫路に伺いましたが、上記が無縁でないように感じました。
関西方面の方達の出番です。
顔晴って頑張っていきましょう。全力で応援します。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ