橋本元司の「価値創造の知」第373夜:「問い創造工学」と「シナリオプランニング」前編

2026年3月26日:将来を変える『未常識の地図』を創る!

本夜は、「問い創造工学」(第372夜)の続編(3部作)です。

本夜(第373夜)を要約します。
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テーマ:「問い創造 × シナリオプランニング」
 1. 問い創造は「羅針盤」、シナリオは「地図」
 2. 未来は「予測」ではなく「構想」するもの
 3. 「未常識の地図」を描く
 4. 「2つの軸」で未来を展開する
 5. 「問い」がシナリオの質を決める
 6. シナリオの役割は「意思決定の質を上げること」
 7. 前編のまとめ(構造)
 ・問い創造(Why)
   ↓
 ・重要な問い設定
   ↓
 ・未来を動かす2軸抽出
   ↓
 ・シナリオ展開(What)
   ↓
 ・複数の未来地図
   ↓
 ・戦略思考(How)

 →AI時代においては、正解を出すことよりも、新たな問いを再定義する『問い創造工学』です。
  そして、「問いの生成装置」として『シナリオプランニング』が重要な役割を果たします。

 一言でまとめると
問い創造は、成し遂げたい「方向」を決め、
・その「方向」の将来価値の生成装置が「シナリオプランニング」である。

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  最初に、「パーソナルコンピュータの父」のアラン・ケイ(Alan Kay)の言葉から始めます。
 →未来を予測する最良の方法は、それを発明することだ
 (The best way to predict the future is to invent it)」
 つまり、私たちは未来は待つものではなく、自らの『感性・知性・脳性』と『創造性』で創発するもの」という認識が不可欠です。

 上記創発の核心となる「問い創造」「価値創造の羅針盤」です。
その「問い」を使って、「未来を動かすエンジンとなる二つの軸」を抽出・選択し、その2軸から「将来を変える可能性のある『未常識の地図を広げて、構想・戦略の羅針盤にする」という貴重な機能・効能を引き出してくれるのが「シナリオプランニング(後述)です。

 現在、この手法は企業・自治体が長期的な持続可能性を確保し、「新たな成長機会(価値)を創造」するための必須のスキルとして再注目されています。特に、学生・教職員と経営者・ビジネスパーソンのニーズが高くなっているのが最近の傾向です。

 下図の様に「問い創造」「価値創造工学の羅針盤」なら、「シナリオプランニング」は、その「問い」を基盤にして、「不確実な未来の地図を広げる力」・「問いの生成装置」という関係です。
 第370~372夜に綴ってきた「価値創造工学と問い創造工学」を橋渡しする最も刺激的で有効な手法「シナリオプランニング」なので、是非、学生の皆さん、ビジネスパーソンの方たちは、体得・習得されることをお勧めします。


 上図の「問い創造」(第372夜)「シナリオプランニング」はリバースなので、合わせ技で使いこなすことができるようになると、これからのAI時代に増大する「不確実性」を我がものにする可能性が飛躍的に高まります。
 ただ、そのためには、グループで「手を動かし、心を動かし、頭と脳を動かす」ことが必須になります
そこで獲得する「知」を、「手続きの知」(第364夜、第372夜、第374夜詳細)と言います。
これからは、この「手続きの知」が、AI時代にAIが専横する「検索の知」に対して、「人間の側が持つべき最も重要な知」になります。

 さて、初めて「シナリオプランニング」を見聞きした方がいると思いますので、その要約を図解と共にお伝えします。
 改めて、「シナリオプランニング」とは、「地球沸騰時代・AI時代を筆頭にした「不確実性が高い環境下」で、単一の未来を予測するのではなく、起こりうる複数のシナリオ(未来の姿)を描き、それに基づいて現在の戦略を導き出す手法(下図:参考シナリオ@2005年時点)です。

 私が学校・企業・自治体の研修やワークショップで使用している演習や具体的事例は、夜後編(第374夜)にてご紹介します。

 実は、私は、20年以上前の2005年、前職パイオニア社の「総合研究所」時代に、
「10年後のパイオニア社とそれに連動する研究テーマ創出をまとめる」
 というミッションを経営陣から受けていました。
 それで、上記シナリオプランニングの第一人者である「J・オグリビー氏」を目黒本社に招聘して、「シナリオプランニング」を直伝してもらいました。

 ただ、その直伝手法をそのまま使ってみて、二度ほどグループワークでトライしたのですが、思ったような出力ができませんでした。
 そのため、そのプロセスに「価値創造の『3つの知」(第364夜)を挿入して、「自分たちの価値創造」につながるように改変・編集することで、パイオニア社や異業種企業の基礎研究・新事業開発、そして、現職の「地域創生、事業創生、人財創生」の伴走支援等に活用して、効果・成果を上げることができるようになりました。

 さて、この「手法」を成果につなげるには、後述する「複数の重要な『問いが鍵で、それらを通して「本質的で豊かな複数のシナリオ(未来の姿、道筋)」を描き出し、会社・社会に実装展開することにつながります。

■ 「問い創造(別流)・守破離・シナリオプランニング」は相性抜群!

 第370~372夜に、「価値創造工学」とその基盤(OS)である「問い創造工学」についてまとめてきましたが、「卓越した価値創造(別流)」には、既存の枠組みを疑う「問いの質」が不可欠であり、 真の価値創造(イノベーション)を起こすためには、その手前にある「問い」を設計する工学的なアプローチが不可欠です。

 本コラムでは、一貫して「改善」や画一的な従来常識の延長線上ではない「別流の価値創造」が対象にしています「別流(オルタナティブ)」というのは、「将来の『次の主流・本流』になる可能性がある「流儀・様相」を意味しています。

 「次の主流・本流が狙いどころ(メインターゲット)である」と言うと、みなさん「前のめり」になってくるところが興味深いです。

 上図の「価値創造プロセス体系」の「3.別流・別様」に到達するには、既存の枠組みを疑い、これまでの画一的な価値観・常識から離れる、「2.逸脱」するということが必要です。それを体現・実践している「守破離」(第5夜、第88夜、第330夜)について、このコラムでは何回も取り上げてきました。

 改めて、『守破離』(下図)を説明します。
守って破って離れる、のではない。

『守破離』は、下図に示すように、
・守って「型」に着き、
・破って「型」へ出て、
・離れて「型」を生む。

 この素晴らしい思想は仏道の根本にも、それをとりこんで日本的な様式行為をつくった禅にも茶にも、また武芸等々にも開花結実していきました。(第5夜、第88夜、第330夜)

 日本人は、もともと逸脱して「別流の型」を生み出す「守破離」の実践が得意な民族なので、その才能を遺憾なく発揮して欲しいです。
 その思想と手法を、その『守破離』(第5夜、第88夜、第330夜)のプロセスから経験・体得することが「シナリオプランニング」策定にはたいへん有効です。

 改めて、私のこれまでの経験で、『次の主流・本流の可能性』を導き出す一番有効な方法が「シナリオプランニング」でした。アメリカでは「主流」であるこの思考法が日本はそれほど盛り上がりを見せていません。
・いったい、なぜでしょうか?(問い)
 その理由について、
「現状・効率・改善」を重んじる「オペレーション型」の日本と、
・「未来・不確実・革新」を重視するシリコンバレーのような「イノベーション型」のアメリカ
 の違いである(第372夜詳細)、と洞察しています。 
(第98夜の『砂の民、泥の民』も是非参考にされてください)

  そして、それこそが「日本が低迷(失われた35年)している主因」と確信しています。

  さて、上記「守破離」と「シナリオプランニング」とは、「将来の『価値創造』をゴール」としていることが共通です。
 「シナリオプランニング」ワークショップのファシリテーション・ナビゲーションをする際は、上記の「守破離」の「型」を意識しながら、「離(別流)」のステージに到達できるように進めていきます。

 私たちが日本の長い低迷を打破するためには、「問い」を使って「破のステージ」に上り、「シナリオプランニング」を使って、問いを生成して、「離のステージ」の型を創り上げていく思考とスキル・パワーを体得することが不可欠です。

■ 「シナリオプランニング」の背景、および、扱う領域(図解)

 ますます「シナリオプランニング」が必要になっている背景は、従来日本の「鉄道の時代(レールのあるオペレーション・改善型):(第141夜、第150夜)」から、AI進展の「航海の時代(レールのないイノベーション・変革型):(第156夜、第225夜)」の大変化にあります。
 レールのない「航海に出る時代」には、「羅針盤・航海図=シナリオプランニング」」が必要ですよね。

 それでは上記を下敷きにして、「航海の時代」に「シナリオプランニング」が扱う領域を二つの図解で紹介します。

1.不確実性を扱う「シナリオ思考の領域」
 下図の、従来の画一的な未来予測が左図で、日本は「改善・効率・安く」(オペレーション型)を追求してきましたが、「未来・未常識・効能」という「不確実性」を前提に物事を考えることが必要な時代(イノベーション型)では、右図の「シナリオ的思考」が求められます。


2.価値観の「M字型領域」
 さて、ここからが重要なのですが、「生成AI」は、「過去の情報・常識」を取り出すことが超得意で、下図の左側の日本が得意としてきた画一的価値観の常識領域では、これからもう人間の出る幕はありません。「生成AI」を相棒の様に活用している人は実感しているはずです。

 前夜にも綴りましたが、下図の右側の「未来の不確実な未常識」のM字型領域が未開拓であり、その領域が「生成AI」が苦手とするところであり、人間の側が「才能を発揮する」ところです。上図(新しい視座)の右側のシナリオ的思考領域の大きい丸の領域が、M字型領域と重なります。

 このイノベーションの領域が、AI時代の「人間側の価値創造領域」であり、「問い創造」と「シナリオプランニング」の間を行き来することで、「手続きの知「(第372夜)」が駆動して、そのプロセスで、深く・高く・広く考えることが、独自のスキル、パワー、構想になっていきます。

 上手のイノベーション領域を開拓するメインプレイヤー、ツールが「問い創造」になります。
本質的な「問い」を活用して、未常識の世界を広げてくれるのが「シナリオプランニング」です。

 将来を洞察すると、シナリオプランニングの有効性が、「生成AI」により、さらに脚光を浴びることは間違いありません。
 私たちの経済環境、社会環境は大きく変わっています。「生命サステナブル」「AIデジタル」「人口減少」「戦争」等々であり、それは「すでに起こった未来」です。
その変化に適応できなければ、将来は沈んでいきます。

■ 参考:学生向けの説明版-A

  皆さん、これまでは『1つの正解』を早く見つける人が優秀とされました(上図の左側)。
でも、その役割はAIに譲らざるを得ません。
 これから皆さんに必要なのは、上図の右側にある『まだ誰も注目していない両端の可能性(未常識)』を見つける力です。
 ここで、私の専門である『問い創造工学』と『シナリオプランニング』『価値創造工学』を合わせて、順を追ってお伝えします。

1.テーマ設定の「問い」FocalQuestion
 まず、「問い創造工学」を使って、
「いったい、『何を知る為のシナリオ』を作るのか?」
という、テーマ(FocalQuestion)を 設定します

2.将来を左右する主因となる力(=ドライビングフォース)を導きだす「問い」
 将来を左右する重要な変化 として、
・①自社でコントロールできない外部環境 (不確実度)
・②未来を大きく左右する要因 (インパクト)
 の①②を包含するモノはどこにあるか? という「問い」を立てます。
 これが未来を探るためのOS(基盤)になります。

3.(下図の)2軸で広がる4つの象限の世界への「問い」
 上記1.2.の「問い」から導き出された要因・力(ドライビングフォース)で、浮かび上がる複数の未来(4つの象限)のそれぞれの「問い:Why?What?How?(価値創造の3つの知:第364夜」から得られる姿を検討・描写・検証する。

4.「何れにせよやるべきこと」への「問い」

 上記1.2.3.で広がる「4つの世界」をグループ対話を通じて、
「問い」何れにせよやるべきことは?
 を検討します。
シナリオプランニングにおいて、どのような未来が訪れるかに関わらず、「何れにせよ(どのシナリオでも)やるべきこと」は、不確実な環境下での生存と成長の基盤を固めるアクションになります。

 参考例:
① 外部環境の定点観測とシグナルの検知
② 「対話」を通じた組織的なリスク意識の共有
③ レジリエンス(適応力・回復力)の向上
④ 成長のための「後悔しない一手」
⑤ 「学習する組織」への転換

重要なことは、共に上記を検討・対話・共感するプロセスの中で、「価値創造が発芽する」コトと、参加者の「関与する自覚」がそこから生まれるコトです。

つまり、『問い』によって、成長の未来の種を見つけ、『シナリオプランニング』によってその未来の歩き方を事前にトレーニングする
 この「問い」と「シナリオプランニング」の2つが組み合わせることを数回体験・習得・修練することで、不確実な時代でも、私たちは迷わずに『新しい価値』を創り出す側に「立つ」ことができます。

■ 整理タイム: AI時代の生存戦略「問い」と「シナリオ」

1.AIが「正解」を奪う時代(左側の山)

  • メッセージ: 過去のデータに基づく「平均的・論理的な正解」はAIの得意領域。
  • 内容:
    • これまでの常識(正規分布の頂点)はAIが瞬時に導き出す。
    • ここでは「効率」や「正確さ」が価値だったが、もはや人間が競う場所ではない。
    • 学生への問い: 「AIと同じ正解を出して、勝てるでしょうか?」

2.人間が輝く「M字型」の未常識(右側の山)

  • メッセージ: 私たちが磨くべきは、まだ誰も正解と言っていない「不確実な領域」。
  • 内容:
    • M字の両端にある「未常識」「不条理・ワクワク」「違和感」にこそ、次のイノベーションが眠っている。
    • このカオスな領域を探索するための「OS」が問い創造工学である。

3.問い創造工学とシナリオプランニングの「融合」

  • メッセージ: 「問い」が羅針盤なら、「シナリオ」は地図を広げる力。
  • 内容:
    • 問い創造工学: 「そもそも、将来を左右する変化の種は何なのか?」というOS(起点)
    • シナリオプランニング: その種がどう成長し、どんな未来(複数の可能性)を創るかを洞察する手法(プロセス)
    • 関係性: 質の高い「問い」を立てるからこそ、意味のある「シナリオ(道筋)」が描ける。

■ 「ドライビングフォース(未来を動かすエンジン)」と「問い」の交差点

 学生のみなさんにとって「シナリオプランニング」核心であるドライビングフォース(変化の駆動力・エンジン)と、「問い創造工学」をリンクさせることは、「未来を探索し、洞察する具体的手法」を理解実践する上で非常に効果的です。

 学生向けのワークショップでは、
「ドライビングフォースを見つける=問いを立てることだ」
 と直感的に理解できるように、下記のステップ形式でお伝えしていきます。

1. ドライビングフォースとは「未来を動かすエンジン」

  • 説明: 社会を大きく変える力(環境、技術、人口、価値観、規制など)の中で、特に、
    「①将来どうなるか予測がつかない(不確実)」かつ「②影響力が大きい」
    ものを指します。
  • 学生への例え: 「10年後のスマホ」を考えるとき、「通信速度が上がる」は予測可能な事実ですが、「人々が画面を見ることをやめるか?」は予測不能なドライビングフォースです。

2. 「問い」がドライビングフォースを発掘する

  • メッセージ: ドライビングフォースは、データ(過去の延長線上)の中にはありません。
    「未来の予兆」「問い」という光を当てることで、初めて見えてきます。
プロセス問い創造工学の役割(OS)シナリオプランニングの動き
発見「当たり前と思っていることの裏にある不条理ワクワクは何か?」社会を揺さぶる「変化の種(ドライビングフォース)」を特定する。
選定「その変化は、私たちの根幹を揺るがす本質的な問いか?」数ある要因から、未来を左右する「最重要の不確実性エンジン」を絞り込む。
展開「もしその問いの答えが『A』なら?『B』なら?」絞り込んだ軸を掛け合わせ、複数の未来(シナリオ)を描写する。

■ 参考:学生向けの説明版-B

 「皆さん、シナリオプランニングで最も重要なのは、未来を激変させる力である『ドライビングフォース』を見つけ出すことです。
 しかし、これは単なる『流行チェック』ではありません。ここで「問い創造工学」が必要になります。

 図のM字型の領域(未常識)を見てください。
左側の『常識』の山にいる限り、見えるのは『予測可能な未来』だけです。しかし、『なぜ、今これが当たり前だと思われているのか?』という鋭い問いを立てることで、M字の右側の山にある、まだ誰も気づいていない『変化の予兆(不条理&ワクワク)』がの片りんや輪郭が見えてきます。

『この「不条理&ワクワク」が解消・創造される方向に社会が動くとしたら、それはどんな力(ドライビングフォース)によるものだろうか?』

こう問い直すことで、単なるデータ分析では辿り着けない、未来を左右する本当の変数が抽出できます。
『問い』は、霧深い未来の中から、真に注目すべき『変化のエンジン』を照らし出すサーチライトです。

『不条理&ワクワクがドライビングフォースの源泉
 学生には、 『今の社会のヘンなところや自分の中のワクワク・数寄』が、未来を変える大きな力になります よー」とお伝えすると、彼らの内面や外部アンテナが敏感になってきます。

図との連動: M字型の「谷」の部分(常識が崩れる場所)にドライビングフォースが潜んでいると説明すると、視覚的にも納得感が高まります。


■ 前編のまとめ

 上記でご覧いただいたように、「卓越した価値創造」と「問い創造」を橋渡しするのが「シナリオプランニング」です。習得すると「アナタの卓越したスキル」になります。
 ただ私もそうでしたが、言葉や図で説明してもらっても実感がわかず、自分ゴトになれませんでした。
・何せ、未常識ゴト
 なのですから。

 ここに、「切実」「不条理・ワクワク」「本気(自分ゴト)」(第370夜)が必要になります。

上図プロセスを基盤にして「シナリオプランニング」は立ち上がっていきます。

 それは、仲間たちと共に、
・現在の中に点滅している『未来の兆し』」を収集し、
・ホワイトボードの前で、ポストイットを動かし、
・「問い」と「試行錯誤」を繰り返し、
・未来を変えうる二つの軸を選択し、
・そこに現れる4つの象限(世界)を描写する
・そして、「いずれにせよやるべきこと」を検討する。

 上記の「手続きの知」(第364夜、第372夜詳細)が未来の不確実性を「ワガモノ」に引き寄せてくれます。
そんな経験を数多く積み重ねてきました。

 さて、次夜(第374夜)は、本夜の後編を綴ります。
そこでは、「『緑茶』の本来と未来」をテーマにしてシナリオプランニングで描写します。

 是非、下図の「問い」→「シナリオプランニング」→「3つの知」→「価値創造」の流れを実感して頂ければ幸いです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第372夜:実践『問い創造工学』宣言

2026年3月10日 「問い」が「価値創造」の源流である



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 「問い創造工学」の二つの要諦は、
1.「問い創造工学」とは、「まだ出現していない価値を創出する可能性へのアクセス」であり、
2.「問い創造工学」とは、「価値創造工学」(第370夜詳細)を成立させるための最重要かつ最上流の基盤(OS)である。
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「問い創造工学」宣言(第372夜)の超要約

1. 価値創造の出発点は「答え」ではなく「問い」

  • 社会や人が抱える切実な問題や違和感から価値創造は始まる。
  • 既存の知識や技術で答えを探すのではなく、
    「何を問うべきか」を見つけることが最も重要

→ つまり、
良い答えより「良い問い」が価値創造の源泉。


2. 問いは「Why → What → How」の循環で深まる

価値創造の思考は次の問いの循環で進む。

  1. Why(なぜ)
    本質的な意味や背景を問い直す
  2. What(何を)
    新しい価値の姿や方向を定義する
  3. How(どうやって)
    実装・仕組み・方法を設計する

この問いを繰り返し更新することで新しい価値が生まれる。


3. 問いは「人間の切実さ」から生まれる

問い創造の起点は次のような状況。

  • 人の困りごと
  • 社会の矛盾
  • 逆境や受難
  • 「このままでいいのか」という違和感

この切実さを深く理解することが価値創造の原点


4. 問いを通じて既存の枠組みを超える

問い創造の役割は

  • 常識
  • 既存ビジネスモデル
  • 業界の前提
  • 固定観念

を問い直し、別流の価値(新しい見立て)を生むこと


5. 育てたい人材像

目指す人材は

  • 正解を早く出す人
    ではなく
  • 問いを生み、問いを更新し続ける人

つまり
「問いを回すエンジニア、イノベーター」


まとめ(超要約)

問い創造工学」とは

人や社会の切実な問題から
「なぜ」「何を」「どうやって」を問い続け、
既存の枠を越えた「別流・別様の価値」を構想・実装するための思考と実践の方法論。


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 (参考) 大学生向け:実践「問い創造工学体系」の歩き方
 皆さん、新しい価値を生むため「問い」とは、常識という壁の向こう側にある「まだ見ぬ未来」へ手を伸ばすためのチケットです。この図は、そのチケットを手に入れてから、実際に未来を形にするまでの「心の動き」と「行動」を表しています。

1. 受動的な「心の揺れ」から始まる(A・B)
 価値創造のスタートは、意外にも「受動的」なものです。
日々の生活の中で感じる「えっ?(驚き)」や「なんか嫌だな(違和感)」という心の揺れを大切にしてください。それが、外側の世界への切実心や、内側への好奇心に変わったとき、あなたは「なぜ?」という疑問を抱きます。これが、自分と世界との間にある「未知の扉」の前に立った瞬間です。

学生向け)解説: 「数寄」とは、「好き、漉き、透き・・・」という、世の中の平均ではない「偏り、こだわり、型破り、不足、未完、執着・・」を好むこと、つまり「好きこそものの上手なれ」の究極の形です。自分の問いに対して、損得抜きで「なぜ?」「もっと知りたい!」と深掘りし続けること。それが結果として、これまでにない価値創造・新ライフスタイル・新技術・大発見につながる自分の内なる能動の「研究開発」の道です。

2. 能動的な「探求と問い」へ(C・D)
 扉の前に立ったら、次は自ら動く「能動的」なフェーズです。
常識(既知)にとらわれず、別のやり方・あり方(別流)を探る探求を始めましょう。そこで自分なりの「仮説」や「信念」が固まったとき、ただの疑問は、強い情熱・意志を伴う「問い」へと進化します。この「問い」こそが、まだ出現していない「別様の可能性」へのアクセスパスになるのです。

3. 「3つの知」(第364夜参照)で価値を形にする(価値創造)
 磨き上げた「問い」を手にしたら、最後はそれを社会に実装(仕立てる)段階です。
下記「3つの知(赤枠の空白)」のそれぞれの余白を埋めることで別流の世界が立ち上がってきます。

  • 深い知 (Why?): あなたにとって最も大切なコトは?(志・ミッション)
  • 高い知 (What?): それが実現した未来はどんな景色か?(方向・ビジョン)
  • 広い知 (How?): 自分(たち)の内側に「異質な何か」を導入してワンランク上になっているか?(実装・イノベーション)

■ なぜ、「問い創造工学」か?

 後述する、本格化してきたAX(AIトランスフォーメーション)時代を背景にして、人間に求められる能力・才能は、「価値創造力(目的)=イノベーション力(手段)」とその基盤(OS)となる「問い創造力」習得・獲得にシフトすることは間違いありません。これが、核心であり確信です。
(* 「X」で表わす「トランスフォーメーション」とは、「後戻りしない変化」のコト)

 ここ三か月ほど、「価値創造工学」のセミナー・研修・ワークショップを、「大学(学生・教職員)、企業、自治体」で演習と対話を繰り返してきましたが、想像以上の高い共感と反応・評価をいただきました。
 そうした中、自分の中で「価値創造」の基盤(OS)として、価値の方向性を決める「問い創造」領域のプロセス、メソッドの体系化の重要性・必要性が立ち上がってきました。
 そこで、「問い創造工学」の構造と体系を、文系理系を問わず、「工学の手法」で「設計・プロセス化・図解化」して、いち早く日本の皆様にお届けすることを思い立ちました。

 今、日本人にとって重要なことは、このAX時代の変わり目の大ピンチを大チャンスに変えるために、その変化の本質を把えて、「価値創造」と「問い創造」双方の構造と思考を結合・統合して、先取り・先行・展開することにあります。

 それでは、「価値創造工学」の最重要かつ最上流の基盤(OS)としての「問い創造工学」世界で初めて明らかにしていきます。

 ■ 「価値創造工学」と「問い創造工学」の関係は?
   ⇒ 「手段」としての価値創造と、「目的」を定める問い創造

 上記二つの「新しい工学」の関係は、情報の「図(分子)」と「地(分母)」にあたります。
 最も重要なことは、下図の本質的でインパクトのある「価値創造」(図・分子)の出力には、本質的・構造的な「問い創造」(地・分母・最上流の基盤)が欠かせないことです。
⇒ 理解を深めていただくために、最後方に「三つの事例」を用意しています。

 師匠の松岡正剛は、情報や知識の編集を考えるときに、しばしば「地(ground)」と「図(figure)」の指南がありました。
 この「地と図」の関係を自在に動かすことができるようになると、「問い」の深み、高み、広みが拡張して、「問い創造工学」の上級者に向かいます。

A. 「図」とは、=目に見える情報・主題
 ・今まさに注目されている内容
 ・テーマ、主張、ストーリー
 ・表に現れている情報
 つまり、人が意識的に見ている情報です。

B.「地」とは=背景・文脈・知識のネットワーク
 一方の地は、図を成立させている背景全体です。
 ・文脈
 ・前提
 ・歴史、関連知識
 つまり、表に出ていないが、意味を支えている情報の場です。

本夜のテーマにおいては、「価値創造」が「図(手段・別流・出力)」で、「問い創造」が「地(目的・源流・入力)」にあたります。

 「問い」がなければ「価値」は迷走し、単なる既存の改善(カイゼン)に留まってしまいます。優れた価値創造には、既存の枠組みを疑う「問いの質」が不可欠であり、 真のイノベーション(価値創造)を起こすためには、その手前にある「問い」を設計する工学的なアプローチが不可欠です。

概念役割基本的視点
問い創造工学基盤・エンジン・源流「何を成すべきか」を定義する。これがないと、どれだけ技術があっても無価値なものが生まれる。
価値創造工学実装・アウトプット・別流「どう実現するかを形にする。問いによって定義された価値を、実際に社会へ届ける。

■ 「問い創造工学」が必要とされる3つの背景(要約)

 それでは、「問い創造工学」が求められる3つの背景をお伝えします。
 俯瞰すれば、 2024年末に生成AIが自己学習能力(推論)を獲得したことによる大変容(X:トランスフォーメーション)の時代が到来したことが起因です。 

1.「正解」のコモディティ化(正規分布の終焉)
 AIは、既存事業や既存人財を「根こそぎ自動化代替する組織変容力」と、AI自身が「自動的・自律的に進歩させる自己変容力」を持つ大きな自動変容ツールです。
 これまでの論理的に導き出される「正解」はAIやITですぐに共有され、もはや差別化要因になりません。
①AIエージェント(ポスト・ホワイトカラー)
②AIロボティクス(ポスト・ブルーカラー)
 への代替がそれを現実化して、加速していきます。

2.本質的な「問い」が、人間側のこれからの「競争力の源泉」
 ⇒ 問う力、対話力(=プロンプト力)武器になる時代
 「正解」のコモディティ化の中、今後求められるのは、AIに何をやらせるかを定義できる人間です。
 「プロンプト」とは、AIに与える「指令文」ですが、これは単なる命令ではなく、
「問い」の構造設計そのものです。
 ・どんな切り口で情報を整理させるか?
 ・何を前提に答えさせるか?
 ・どの抽象度で出力させるか?

 これは単なるスキルではなく、「思考能力」と「構造化力」の複合体です。
 (「日本経済AI成長戦略」加筆引用)

 これからは、「どう創るか(How)」ではなく「何を問うべきか(Why、What)」という本質的な「問い」が、人間としての『競争力の源泉』となります。

3.「問い」による価値の再定義:M字型(未常識)への移行(シフト)
 ⇒ これからの人財教育は、「オペレーション型」から「イノベーション型」へ

 従来の「工学」は「いかに作るか(How)」に特化しすぎ、結果としてコモディティ化と失われた35年を招きました。(オペレーションの時代)
 令和の時代は、「何のために創るか(①Why)」、「何を創るか(②What)」を前提にして「具体化する(③How)」という「ひとつなぎ」を科学し、工学の手法価値を設計する必要に迫られています。(イノベーションの時代)

 下図の様に、これまで日本が得意だった、正確で速く効率的に解決する「オペレーション型」(左図)の正規分布曲線の価値観が「常識」でしたが、それらの領域は、上記「AIエージェント」や「AIロボティクス」で代替できるという新常識がはっきりしてきました。

 これからは、独自の視点で「本質的な問い」を立て、価値観の両極(M字型:未常識のユニークな本質)を掘り起こすことが、新しい価値(イノベーション)の創造につながります。その掘り起こすメソッドがこのコラムでお伝えしてきた「3つの知」(第364夜詳細)です。
 いま、「イノベーション型人財教育」シフトに日本人は迅速に気づき、次の一手に進むことが肝要です。
(本夜のコラムは、そのことを速く、強く、広く伝えることも目的にしています)

 昨今のニュースでも
・アマゾンはAI導入を背景に全従業員の約2%に当たる3万人の人員削減を発表
・大手コンサルティングファームでは、AIの台頭による業務代替やクライアントのコンサル離れにより、数千人規模の減員や再編が進んでいる
・みずほFGが事務職5000人削減へ。事務センターにAI本格導入、配置転換進め集客力強化
・・・
 が伝えられました。

 このニュースに「心の揺れ(自分と世界のズレ)」が発生しないで、「他人事」と思う人はアブナイです。
学生、企業人、行政人等、上記「価値創造/問い創造」に向かう人は、迅速に「自分ゴト」になる知性・感性・脳性が必要です。
 「AX時代」にこれからの人間に求められる能力は、右図の「価値創造(=イノベーション)」領域にシフトすることが納得いただけたら幸いです。

■ 小まとめ
 「問い創造工学」の二つの要諦である
A.「まだ出現していない価値」の可能性へのアクセス」
B.これまでの延長線上ではない「別流の価値創造」
 は、正規分布曲線のセンター(=常識)から離れたM字領域(未常識)にあるコト。
その領域の本質的な「価値を生み出す」基盤が「問い創造能力」になります。

■ 「問い創造工学」の「問い」の領域とは?
  ⇒ 「検索の知」から「手続きの知」

 本コラムで扱う「問い創造」の「問い」とは、
・明日の天気は?
・日経平均株価は?
・ここから「鎌倉駅」までの電車のルートは?
・「鎌倉駅周辺の」観光名所は?
・paypayの残高は?
 等々での会話やスマホ(グーグル検索やAI)への「検索の問い(知)」ではありません。

 いま、「検索の知」の領域は、AIの独壇場になることがはっきり実感できるようになりました。
これから、人間の側に重要な「知」は、情報をただの知識として蓄えるのではなく、それらを「編集(つなぐ・変える・再構成する)」して「新しい知や未常識」を創り出す「手続きの知」になります。



■ 「問い創造工学体系」図解

 それでは、上記を踏まえて「価値創造工学」の基盤(OS)となる「問い創造工学」体系を図解します。

 第370夜に提唱した「価値創造工学」は、文系・理系を問わず、「人の役に立つ仕組みを考え、試し、社会に届けるための[心得・思考・実践]の方法論」です。
 同様に、「価値創造工学」の基盤となる「問い創造工学」も同様に、文系・理系を問わず、「人の役に立つ仕組みを考え、試し、社会に届けるための[心得・思考・実践]の方法論」です。
 そのプロセス・構造・体系を展開・図解したのが下記になります。

 別様の価値を「生み出す(Output:別流)」ためには、
---------
A.心の揺れ(驚き・違和感)
 ⇒「内面の常識」と「外側の世界」とのズレの発生
  ・常識や既知の枠組み(既存のアルゴリズム)の外側にある「驚き・違和感」をキャッチする段階。
   これがAIにはできない「切実心(なんとかしたい)」の起点となります。

B.疑問(Why・疑念)

 ⇒内面に向かう「好奇心」と外側に向かう「切実心」
  ①「負」「不思議」の感情を観察する: 怒り、切実、はてな?といった感情が動く瞬間を捉えます。
  ②「当たり前」を疑う: 「業界の常識だから」「昔からこうだから」と見過ごされている
    不合理を、あえて「なぜ?」と見つめ直します。
  
C.探求(未知・探求)
 ⇒「外側の世界(過去・現在・未来)をどうどうとらえるか」という客観的な認識
 ⇒「志(自分はどんな世界を作りたいか)」という主観的な想い

  ①  事実の深掘り(Fact Finding)
  ②  背景の洞察(Context Analysis)
  ③ 本質的な問いへの変換(Reframing)
   ・「真善美(内側)」を問う研究開発的なアプローチと、
    「別流(外側)」を目指す事業開発的なアプローチが交差する段階。
    ここで「守破離」による既存知からの脱却が起こります。
   ・「どうすれば効率化できるか?」という「解くための問い」ではなく、
    「そもそも、これが必要な目的(本質)は何だったか?」という問いに変換します。
    例:「効率的なハンコのリレーはどうすればいいか?」ではなく、
      「確認と責任の所在を担保する、全く新しい方法は何か?」と問い直します。

D.問い(仮説・信念)

 ⇒ 内面に向かう「数寄(ミッション)」と外側に向かう「道標(ビジョン)」
 ⇒「数寄」と「道標(ビジョン)」がシンクロ(二つ以上の物事が同期・同調)
 ⇒「別流」に向かう「3つの知」(第364夜詳細)
  ① 道標(みちしるべ):事業開発的なアプローチ
   →一言で言うと: 「世界をどう変えるか?」という社会への実装
   → 自分の立てた問いを、社会をより良くするための「進むべき方向(道標)」として掲げることです。
   ビジネスやサービスを通じて、多くの人を巻き込み、具体的に世の中の不条理を解消していく「事業開発」の道です。
  ② 数寄(すき):研究開発的なアプローチ
   →一言で言うと: 「真理・大元(おおもと)はどうなっているのか?」という本質の探究
   →これは、「真理や色即是空(第6夜、第122夜)を探究するスペシャリスト」を目指す方向です。

  上記「D」が、「問い」を仮説と信念まで磨き上げる段階。
   これが最強の「プロンプト」となり、AIを「再設計(トランスフォーム)」するための
  強力な指令となります。

フェーズテーマ学習内容(ワークショップ例)
A. 心の揺れ「感性・心性」の解凍常識の中に潜む「違和感」・「ズレ」を言語化する。AIには検知できない「人間の内面・内発」をリスト化する。
B. 疑問「Why・疑念」の深掘りなぜその違和感があるのか?「切実心・好奇心」を起点に、課題の本質を抽出する。
C. 探求/探究「別流」の探索「守破離」と「真善美」を往復し、AIが提案する「最適解」ではない「別流の解決策」を練る。
D. 問い「志・信念」の構造化磨き上げた問いを、最強の「プロンプト(経営の設計図)」へと変換する。

 コラム第364夜の「新成長を生み出す3つの知」に旭山動物園のプロセス事例を上げていますので、それをご覧いただけると、さらに理解が進むと思います。
 他に、3つの事例を後方に用意していますのでご覧ください。


 それでは、上記を土台にして、「問い創造工学」を宣言します。

■ 『問い創造工学』宣言

---------
 問い創造工学とは、
文系・理系を問わず、
価値創造の起点となる『問い』を設計し、構造化し、
磨き上げるための[思考・対話・設計]の基盤(OS)である」

私たちは、単なる情報の処理や正解の検索を目的としない。
私たちが向き合うのは、
日常に潜む「切実」「不条理」や「驚き」「違和感」の中に、
潜み隠れた本質的な「問い」の種であり、
それを通して、AI(AX)時代における人間の
「競争力の源泉」や「真善美」を再構築することである。

問い創造工学は、
価値創造工学を駆動させるための「地(文脈・前提)」であり、
既存の「当たり前・常識」を疑い、
「何を問うべきか」という上位の設計図を描き、
複雑な事象をどの切り口、どの抽象度で把えるかを
構造化し、言語化し続けるための
知性感性・脳性の体系である 。

私たちは、
効率よく「解」を出すオペレーターではなく、
「問い」の構造そのものを設計し、
自らの内なる「了解(常識)」と、
激変する外側の世界との「ズレ(心の揺れ)」を見逃さず、
既知と未知が踵(きびす)を接する境界から
その人ならではの「問いのタネ」を引き出し、

価値のベクトルを定めるイノベーター(再構築者)を育てたい 。

「問う」とは、自分という「未知」を起動することであり、
それは、外から新しい知識や技術を詰め込むことではない。
ふとした瞬間に生まれる「なぜ?」や「おかしいな」という、
あなただけの切実・好奇心の現場を、逃さずにつかまえること。

「問い」を立てるプロセスは、
あなたの内側に眠ったまま、まだ一度も使われていない
「潜在的な力」を呼び覚ますプロセスです。

誰かが決めた正解をなぞるのではなく、
あなた自身の内部からしか生まれてこない
「唯一無二の視点」に自覚的になること。
それこそが「問う」ことの真意であり、
未来の価値を生み出すための、
最も新しく、最も本質的なアプローチです

問い創造工学とは、
人の「心の置き方(精神)」と「モノの見方(思考)」のフェーズを変え、
その両立を通して、
人々に役立つ価値が生まれるための「土壌(OS)」を耕す方法と営みです。
---------

■ 「問い創造」の理解・実行に向けた事例集
 下記の「3つの事例」を用意しました。
ワークショップでは、多くの事例と演習を通して習得していただきますが、
下記エッセンスから、「問い創造」を自分ゴトとして把えていただければ幸いです。

◆事例紹介A.実践「ピュアモルトスピーカー」(第35夜、第126夜、第340夜詳細)
 ⇒前職パイオニア時代、私がプロデュースした連続ヒット商品「ピュアモルトスピーカー」等を使って説明します。

[現状]:コモディティ化と赤字という「切実」
 1990年代初頭、パイオニア社のオーディオ事業は「コモディティ化」の限界に直面してました。
A. 「心の揺れ(驚き、不安、違和感)」:1992年、国内ホームオーディオ事業が赤字転落。
  「HiFiを核とした良いものを作れば大丈夫」という技術中心のこれまでの常識が崩れました。
B. 「疑問(疑念): 「なぜ赤字になったのか? それは続くのか?」
   ⇒「オーディオ活性化委員」「超高密度メディア委員」に選出される
C. 「探索(別流、探求)」(1993年):
   ⇒社長直轄の「ヒット商品緊急開発プロジェクト立ち上げ」を直訴 
   C-1. 別流:機能的な製品を売る時代から、下図の個人の生活様式(ライフスタイル)に
     寄り添い、新たな価値体験(Smile, Style, Story)を提供する時代

 
   ⇒ 探求:時代背景(1993年作成)と「楽音心理」の進化形(ハッピープログラム)

D-1.「問い」①: 
  ・「次のパイオニア」の流儀(別流)を創るには?
    →「エレクトロニクス業」から「エンタテインメント業」へ
    →「ハードウェア×ハートウェア」
  ・個人の生活様式(ライフスタイル)に寄り添うオーディオは?
    →「テクニカルポイント×アーティスティックポイント」の新結合
  ・それを実現する「異業種コラボレーション」の可能性は?
    →「社内横断型」から「社外ネットワーク型」へ
    →「ウィスキー」「ファッション」「インテリア」「家具」等々


D-2. 「問い」②:オーディオ事業の未来の洞察(非常識と未常識)
 
⇒ 1993年、超高密度メディア(SDカード、メモリスティック等)と放送系、通信系の進化を洞察した結果、12年後の2005年に大きな変化がくることが洞察できました。
 そう、予測した通り、2005年からアップル社スティーブジョブズの「iPad」「iPhone」が、携帯事業、オーディオ事業、カメラ事業等を直撃して、国内産業の数兆円が蒸発しました。

追記: 前職では、未だ現れていない「未常識(別様)の可能性」を数回提案してきましたが、これまでの成功体験・常識に照らし合わせた経営陣の多くからは、「理解できない」、「それが自分(たち)の既得権を犯してくる」と判断すると、「拒否」や「受け入れがたい」という反応が返ってきます。
 → 「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」
そこの「たいへん」を何回か、潜り抜け、乗り越えたり、挫折もしてきましたが、その壁が結果的に「企画内容」と「自分(たち)の能力」を引き上げてくれます。

 ただ、時代を切り拓く「価値創造者(イノベーター、アントレプレナー、研究者)」たちのご支援に行きますが、彼らの悩みは、「未常識」への「拒否」や「無理解」にあります。(もちろん、タイミングもあります)
 しかし、上述したように、イマを生きる私たちは、AR時代の大変化を切り拓いていく精神、時代を動かす精神と知恵をもって挑戦することがこれから更に求められてきます。
 この「価値創造工学」、「問い創造工学」の心得とメソッドが、それらを打ち破る強い「ツールとロール」に役立つことを確信しています。

 それでは、時代を大きく切り拓き「スマホ文化」を創造した、自分と同年生まれの「スティーブジョブズ」の事例を次に取り上げます。

◆事例紹介B.「iPhone」(第83夜、第159~165夜詳細)
 ⇒「問い創造工学」から「価値創造工学」へのプロセス

〜iPhoneの事例に見る「あり方の問い」への転換〜
 従来の多くの企業が陥っていたのは、下図右側にある「よくある思考プロセス」です。
これは「売上・利益」を目的とし、そのための「解決策(やり方)」を模索するもの(=改善)」でしたが、結果として機能の同質化(コモディティ化)を招き、行き詰まりを見せることになります。(山口周「ニュータイプの時代」加筆引用)

 対して、ジョブズのiPhoneのプロセスは、「気立て→見立て→仕立て」(第367~368夜詳細)そのものであり、思考の起点を「あり方の問い」へとシフトさせたものでした。


1. 気立て:現状の不条理と「ありたい姿」のギャップ

 思考の起点は「どう売るか」ではなく、現状に対する「切実な不条理」と、真善美に基づく「ありたい姿」の間に生じるギャップです。

  • 現状の不条理: 
    ①当時は、携帯電話、カメラ、iPod、ボイスレコーダー等の情報機器を別々に持ち歩いていました。
    ②当時の携帯電話は、物理ボタンが画面を占領し、アプリごとに最適化できない「不自由さ」に満ちていました。
  • ありたい姿(志): ジョブズが掲げたのは「売れる製品」ではなく、
    「創造的な人々の知性を増進する道具を届けたい」
    という強烈な「あり方(Being)」の確信でした。

2. 見立て:本質的な「問い」への変換(問い創造工学)

ここで、図にある「Why(深い知)」「What(高い知)」による問いの再定義が行われます。

  • 従来の問い(やり方): 
    ・「携帯電話、カメラ、iPod、ボイスレコーダーの機器を別々に持ち歩くことは常識?」
    ・「どうすればキーボードを使いやすくして、他社より売れるか?」(コモディティ化への道)
  • 本質的な問い(あり方): 
    ・「電話・カメラ・音楽等の機器とコンテンツをシームレスにできないか?
    「なぜ、知性を拡張する道具が、固定されたハードウェアに縛られているのか?」
  • 問いの再定義: この「あり方の問い」が、既存の「電話」という概念を破壊し、
    「別流の可能性(シームレスな体験、全面液晶による無限のインターフェース)」
     という北極星を導き出しました。

3. 仕立て:価値の具現化(価値創造工学)

「問い」によって導かれた「ありたい姿」を、具体的な技術や仕組みで「仕立て(How:広い知)」ます。

  • 実装:「iOS」、「 マルチタッチ」、「エコシステム」を統合し、解決策を具現化。
  • 価値創造: その結果として生み出された「別様の価値」が、「スマホ文化」を創り、後追い的に「売上・利益」という結果をもたらしました。

◆「3つの知」による統合整理

「問い創造工学」体系図にある「問い」の構造を、「3つの知」(第364夜)で整理すると以下のようになります。

  1. 深い知(Why): 「あり方の問い」。個人の内面にある「真善美」や「志」から、不条理を打破する動機を汲み取る。(第85夜、第364夜詳細)
  2. 高い知(What): 「ありたい姿」。既存の枠組みを外れ(逸脱)、未来における「別流の可能性」を構想するビジョン。(第87~88夜、第364夜詳細)
  3. 広い知(How): 「解決策の構築」。問いを解決するために、多様な技術や手法を新結合させる知性。(第83~84夜、第364夜詳細)

結論:思考プロセスの転換

iPhoneの成功は、
① 単なる「やり方」の改善ではなく、思考プロセスそのものを「売上(出口)」から「問い(入口)」へと逆転させたこと
②「現状(不条理・既知)」と「ありたい姿(志・未知)」のギャップを直視し、「なぜ、何のためにそれをするのか」(創造的な人々の知性を増進する道具を届けたい!)という上位概念の問いを立てること。
 にありました。

 この「問い創造」こそが、多くの日本産業のコモディティ化の泥沼を抜け出し、真の価値を創造するための唯一のエンジンとなります。
 下図で説明しますが、「経営」の「経」とは「縦糸」を表しています。「営」とは、「営み」です。「あり方(縦糸・道理)」と「やり方(横糸・営み)」を編むことで経営は成り立っています。
 いま、日本の多くの企業が[横軸のやり方(HOW)」でコモディティ化して行き詰っています。必要なことは、[縦軸のあり方(道理・WHY)]を探求・発見することです。
 それについては、前述のコラム第364夜の「新成長を生み出す3つの知」に旭山動物園のプロセス事例(深い知)に詳細を綴っていますので、関心のある方は是非ご覧ください。


◆事例紹介C:覚えきれない「パスワード」の切実

Q. 増えるカードやアプリで、溢れる「パスワード」作成・管理でぜんぜんスマートになっていない。
 この不条理を「本質的な問い」に変換してみる

  1. 「事実」の深掘り(Fact Finding)
    まずは、現状の何が「不条理」なのかを分解します。
    現状: 安全のために「複雑にしろ」「使い回すな」と言われる。
    矛盾: 人間の記憶力には限界があるのに、システム側は「人間が記憶すること」を前提に設計されている。
    結果: パスワードを忘れて再発行を繰り返したり、結局メモに書いて貼ったりという、本末転倒な(セキュリティを下げて利便性を損なう)行動が起きている。
  2. 「背景」の洞察(Context Analysis)
    なぜこの不条理が放置されているのでしょうか?
    システムの都合: 「本人であることの証明」を、システム側が最も安価で管理しやすい「秘密の文字列の照合」に依存し続けているからです。
    責任の転嫁: 「忘れるほうが悪い」「管理できないほうが悪い」という、ユーザーへの責任転嫁が設計の根底にあります。
  3. 本質的な「問い」への変換(Reframing)
    ここからが「問い創造」の本番です。問いの抽象度を上げ、枠組みを変えます。

    ①改善の問い(従来): 「どうすればパスワードを忘れずに管理できるか?」
    これでは「パスワード管理アプリ」などの既存の解決策しか出てきません。
    ②本質的な問い:
    「そもそも、なぜ『記憶』という不確かなものを、個人の証明(アイデンティティ)の鍵に使わなければならないのか?」
    さらに視点を変えると、以下のような問いも生まれます。
    ・関係性の問い: 「『私は私である』ということを、証明(Proof)するのではなく、環境が自然に認知(Recognition)する状態を作るにはどうすればいいか?」
    ・存在の問い: 「デジタル社会において、鍵(パスワード)を持たずに、信頼という扉を開け続ける仕組みとは何か?」
  4. 価値創造へのヒント(仕立て)
    「記憶に頼らないアイデンティティの認知」という問いを立てると、解決策はパスワード管理の枠を超え始めます。
    生体認証の先: 指紋や顔だけでなく、歩き方、タイピングのリズム、生活圏のログなど、その人特有の「振る舞い」で常時認証される世界。
    ・分散型ID: 企業ごとに鍵を作るのではなく、自分が自分の鍵そのものになる仕組み。

    [ワークアウトのまとめ(案)]
    この不条理から導き出された「本質的な問い」は?

    「『覚えること』から人間を解放しつつ、どうすれば『自分であること』を社会に証明し続けられるか?」

    * この「問い」を立てることで、単なる「便利な管理ツール」ではなく、「認証という概念そのものを消し去るサービス」という新しい価値創造の地平が見えてこないか?

    * 「覚える必要がない世界」という問いの先に、どんな未来のサービスがあったら、あなたは「これこそスマートだ!」と感じるのか?
    -------------------

■ 次夜、次次夜について

 次夜(第373夜)と次次夜(第374夜)は、本夜の「問い創造工学」と「価値創造工学」の間を橋渡しに最も有効な手法(思想)としての「シナリオプランニング」について綴っていきます。

■ 追記

・「変化」は今までと違う思考で始まり、今までとは違う行動から生まれる。
・「成長」のために、心の置き方(場所)モノゴトの見方のステージを上げる
・「挑戦」しないことこそが、1番の失敗である。

 上記を、起業志向に留まらずに、就職・研究・SDGs・事業開発・地域幸福・社会実装まで、
学部横断、社内横断、部局横断産学官連携で活用できる「基盤教育」として活用していただければと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第371夜:価値はどこから生まれるのか?

2026年2月1日:「アントレプレナーシップセミナーin 香川大学 2026」

 前夜に綴った「価値創造工学」の全体像(通常24時間ワークショップの内容)を、4時間半のダイジェスト版(講義、動画、実践事例、演習など)に編集したものを香川大学の学生にお届けしてきました。

 先生方の強制ではなく、自発的に参加された学生の皆さんからの真剣な眼差しと溢れる熱意が伝わってきました。 この様な、受講者の眼差しと熱意の光景が大数寄です。 

 さて、セミナー前日は「こんぴらさん」(御本宮785段踏破)と弘法大師空海の誕生の地「善通寺」に参拝して、「身体と精神と智慧」の入り混じった時空間を深く感じてきました。

 そう、「弘法大師空海(第369~370夜詳細)」と「価値創造工学(第370夜)」は、深い関係、ご縁で結ばれていることを感じてきました。
空海は日本が誇る「イノベーター(=価値創造者)」であり、「目に見えない意味を、構造として可視化し、現実世界で機能させる知のあり方」をビジュアル化し、展開し、実践して広められたことです。
 少しでも「価値創造工学」との絆・中身が、世の中のお役に立てれば幸いです。

「空海の両界曼荼羅」と「新価値創造研究所の価値創造工学」のつながり(第369夜)を記します。
・胎蔵界曼荼羅:「気立て→見立て→仕立て」(=人間の内側から駆動する内的な力)
・金剛界曼荼羅:「切実→逸脱→別様」(=価値が生まれる外的プロセス)
 その上で、その誕生の地である「香川」で、「価値創造工学」をコアとするセミナーを開催していただけたことに深い意味と感動と感謝がありました。

■ メインテーマ: 価値はどこから生まれるのか?

 「価値」は、下図の1-①の「切実:なんとかしたい」から始まります。
(ここで言う「価値」は、「改善」レベルの価値ではなく、「変革・脱皮」レベルの価値です)
「本気、真剣、逆境」でなければ、その扉を開けられないことを前職や伴走支援でも痛感してきました。
「価値」は、図の「らせんプロセス」を通して磨かれていきます。
この全体像の中に、「理論と実践」の両立のエキスがいっぱい詰まっています。

 そして、「なんとかしたい(Want)」は、「なんとかする(Do)」に昇華していきます。

 今回は「ダイジェストセミナー」として、このらせんプロセスを順番に、ワークショップ体験していただきました。社会人に比べて、学生は「経験と知識」が不足していますが、いま、「知識」のほうは「生成AI」が有り余るほどのものを提供してくれます。

 「経験」のほうは、社会人が「常識」の中に固まっているのに比べて、「常識を疑う」想像力を持てることが大きな強みになります。
 子供の「創造力」は「想像力」によってしかもたらせられないことがよく言われます。
そう、子供も大人も関係なく、「創造力」「想像力」を触発しないかぎり生まれません。
制約を外した自由な「想像力(虚・Another)」こそが「創造力(別様)」を生み出します。
つまり、「想像力(心)」と「創造力(智慧)」はコインの裏表です。(第367夜詳細)

 空海の「胎蔵界曼荼羅」が「価値創造」の筋道です。
胎蔵界曼荼羅:「気立て→見立て→仕立て」(=人間の内側から駆動する内的な力)

そして、アントレプレナーシップとは、下図の「Another(別流)」を創り出す上記「心と智慧」が土台になります。


■ 「常識の枠」を外す
  上図のこれまでの延長ではない「別流」を見つける方法を、このコラムでは何回も記してきました。
「別流」を見つけるには、これまでの「常識の枠」を外す必要があります。
 その「常識の枠」を外す幾つかの訓練(編集稽古)があり、それらを通して、編集の基礎をつくってくれるバイブルが「プランニング編集術」(松岡正剛監修)です。

 多くの企業、学校、自治体で、「価値を創造するために、常識の枠を外す」ための編集稽古を有効活用してきましたが、今回のアントレプレナーシップセミナーには、これまで以上にその必要性を感じました。
 頭の中の「注意のカーソル」を動かすためには、それなりの方法と練習が必要です。
・コップを言い換える: コップの使い道
・頭の中の「注意のカーソル」を自在に動かす
・「見立て」「らしさ」がプランニングを彩る
・二軸で新しいポジショニングに気づく:ビジネスで最も大切なコト
・・・
 そんな「編集稽古」をダイジェスト版に組み込みました。

 参考に、「まえがき」から加筆引用します。
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 日本の企業競争力の低下が進む中、日本企業の事業開発部門やマーケティング部門では、
・従来のやり方にとらわれない発想をしなさい
・他社に勝てる斬新なアイデアを出しなさい
などという言葉が投げられています。
 斬新なアイデアを出せ、というのは簡単ですが、現実的には何をどうしたらよいのかわからない、というのが本音ではないでしょうか。

 ロジカルシンキング、クリティカルシンキングがブームになりましたが、もともと論理とは自分の考えを相手にわかりやすいように整理したり、自分の考えが間違っていないか分解しながらチェックするツールにすぎず、これを教科書通りに究めてみても新しい発想は生まれません。

 むしろ分解・分類した情報に、これまでとは違う角度から光をあて再編集・再構築することからイノベーションは生み出されます。・・・

 さびついた脳とマンネリ化した思考パターンから覚醒したいと思っていらっしゃる方には最適な本になるでしょう。・・・
----------

 上記の「編集稽古」を基礎にして、「逸脱する智慧」の根幹になる「3つの知」(第361夜、第364夜、第368夜参照)を動画と実例と演習により、習得してもらいました。

 これまでと「別の価値・様式」に到達するには、「心のあり方」「ものの見方」のフェーズを上げる必要があります。
 是非、アントレプレナーシップ教育には「価値創造工学」と「空海の両界曼荼羅」を組み込んでいただけれるとバージョンアップした内容になると思います。

■ 「イノベーティブスキル習得」の2本柱

 上記は、「常識(枠)を外す力」を綴りましたが、その後に必要なのが、「つなげる力」(=3つの知の「広い知」)になります。それがこのコラムで何回も綴ってきた「イノベーション」(第361夜)です。
 簡単な演習や実例動画で慣れながら、回数をこなすことで、誰でも体得することができます。
是非、習得されることをおすすめします。

■ 香川大学の先生方の溢れる熱意と熱量

 セミナー後の夜は、エネルギーに満ちた4名の先生方と、気づけば3時間半の懇親会でした。
立場を超えて深く語り合える、とても豊かで楽しい時間が続きました。
 その対話の中で、香川大学には、これからますます大きく成長していく力が確かにある——そんなことを強く感じた一日でした。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第370夜:『価値創造工学』宣言

2026年1月1日:『価値創造工学』とは

 新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 2026年は丙午(ひのえうま)。
 「情熱と行動力」を象徴し、
一気に流れを切り拓いていく年とも言われます。

先月、本コラムを第369夜まで綴ってきたせいか、
「価値創造工学」という言葉がスーッと脳裏に
浮かび上がってきました。

 その仕組み・体系が、日本の「本来と将来」
きっと役立つのではないかと想い、
元旦に、みなさまに公開しようと思い立ちました。

新価値創造研究所として12年間活動してきましたが、
前職含め、自分の内側に蓄えてきたものを再編集して、
将来に役立つ「プロセス・型」を外へと拡大・発信し、
前に向かって走らせていく年にしようと思っています。

■ 「価値創造工学」宣言の背景-①
 現在の日本企業の多くは、過去の成功体験に基づくハードウェアを中心とした「効率化」や「品質向上」等のオペレーションには長けていましたが、ITに乗り遅れ、生成AIで出遅れて、ソフトウェアやヒューマンウェア(ハートウェア)を組み入れた「別流の新しい価値」を生み出す力(=価値創造)と「未来をにらんで立ち上がる力・気概」の不足が目立ちます。

課題: 従来の工学は「いかに作るか(How)」に特化しすぎ、結果としてコモディティ化と失われた35年を招きました。(オペレーションの時代)
 *受け身に立って未来を予測する時代から
 「あるべき未来とは何か」を考動する時代
 *地域・社会において、自らが「預かったもの」や
  「ライフワーク」を明確にすることが大切
 *他者に「別流の喜びを提供すること」こそが重要な課題

解決: 令和の時代は、下図の「何のために創るか(①Why)」、「何を創るか(②What)」を「具体化する(③How)」という「ひとつなぎ」を科学し、工学の手法価値を設計する必要に迫られています。(イノベーションの時代)
 *未来の課題を解決するのは、「深い知→高い知→広い知」(第364夜詳細)
 *大切なコトは、「時代がもっている可能性」に果敢に挑むコト
 *「未来の芽」は、すでに私たちの周りに点滅・明滅しているコト

 令和の地球沸騰環境(生命サステナブル)、ビジネス環境(AIデジタル等)等では、「立つ・立ち上がる・自立する・両立する」 という動詞が、これまで以上に経営事業創発のコア技術になります。
 事業が立ち上がる、経営・組織を立て直す、人財が自立する、経済価値と社会価値両立する、──これらはすべて、価値創造のプロセスをどう設計できるかにかかっています。
 価値創造とは、後述する切実のトリガーが逸脱を呼び、智慧の編集が別様の価値を構築する」という、一種の“立ち上げ工学”です。

■ 「工学」「価値創造」の共通項は?
 私は「理工学部機械工学科」出身で、「工学(エンジニアリング)」の道を歩みましたが、これまで、「工学」と「価値創造」をつなげて考えることはありませんでした。

 私のこれまでの現場実践を振り返ると、
前職パイオニア社(開発・企画の時代)技術開発統括→ヒット商品緊急開発プロジェクトリーダー→研究開発企画→シナリオプランニング開発→新事業開発→パイオニア人財開発→・・・
現職新価値創造研究所(創生の時代):価値創造開発→事業創生→人財創生→地域創生→・・・
と、次々に「開発・企画・創生の領域・引き出し」が広がり、連結することで、「工学」と「価値創造」の二つが自然とつながってきました。

 因みに、現職の新価値創造研究所では「新価値創造」をミッションにして、下記のように定義しています。
・「価値」とは、「人・世の中」に役立つコト
・「創造とは、未来を先取りするコト
 あらためて、上記ミッションは「工学」の起点・目的と同じであることに気づき、認識したときに不思議な驚きと感動がありました。

 それでは、「価値創造」と「工学」の二つの共通項を洞察(A.B.C.)したものをご覧ください。

A.共通項①」「人の役に立つ」を起点にしている
 ・工学:技術は自己目的ではなく、社会課題・人間の不便・不具合を解消するためにある。
 ・価値創造:人々に役立つ(=価値)ことを先取り(創造)する
 *どちらも「課題があるから始まる」学問・実践です。
 *「切実(なんとかしたい)」という人間の内的な要請が起点。
 *「純粋理学や思弁哲学」とは異なり、現場性・当事者性を前提にしています。

B.共通項②」正解が最初から存在しない
 ・工学:「与件・制約・環境条件」の中で、最適解を探索・設計する営み。
 ・価値創造:「切実→逸脱→別様」というらせんを回しながら、
  価値そのものを発見・生成していく。
 *探索的・試行錯誤的・プロセス重視という点で、完全に同じ型です。

C.共通項③」構想(Design)→実装(Implementation)→更新(Iteration)
 これは、後述する「価値創造プロセス体系」の
 ・別様(構想)
 ・仕立て(統合・実装)
 ・共創(創発・社会化)

  *「工学の基本プロセス」が美しく重なります。

「工学」の基本プロセス「価値創造」のプロセス
要求定義切実・気立て
概念設計逸脱・見立て
詳細設計別様・別流
実装・検証仕立て・統合
改良・保守らせんの循環

 令和の時代は、前述した「ハードウェア、ソフトウェア、ヒューマンウェア」と「新3Cコンピューター、コミュニケーション、コントロール)」(第345夜、第358夜詳細)の二つが進展・結合して、デュアル「三位一体」構造になっています。
 それに拍車をかけているのが、「AIデジタル=キュービタル:第40夜、205夜、303夜、350夜)」「生命サステナブル(第360夜)ではないでしょうか。
 「iPhone」、「AIロボティクス」、「AI自動運転」等をみても時代の流れが急です。

 「イノベーション」とは、下図の自分(たち)の内側に異質(SDGs17の社会課題、AIデジタル、異業種コラボレーション等)なものを導入して新しくする(=新結合)」コトです。
 それが、イノベーションの本質であり、価値創造のための極めて重要なアプローチです。
イノベーションこそが、既存の枠組みや同質的な価値観に非連続な変化をもたらし、新たな社会的・経済的価値を生み出す原動力となります。

 日本は、ハードウェア特化の「昭和のオペレーション時代」から「令和のイノベーション時代」へのシフトが急です。(第333夜詳細)

 その様な時代ならばこそ、多くのメディアで下図の「価値創造(目的)・イノベーション(手段)」(第357夜)が叫ばれていると思いませんか。

 「価値創造/イノベーション」工学の手法で価値設計する必要性から、「価値創造工学」として立ち上げることが私たちの将来に、きっと役立つと確信しています。

 さて蛇足ですが、日本文化の「おもてなし」は、「しつらい(ハードウェア)、ふるまい(ソフトウェア)、心遣い(ハートウェア)」という上記同様の「三位一体の構造」(第2夜・第20夜・第93夜)でできています。
 この三位一体の「おもてなし」が、その構造と本質価値が広く理解されて、「AIロボティクス」「生成AI」「サステナブル」等にも組み込まれて、一段と脚光を浴びる「文化経済の時代」(第136夜、第362夜)になることも、ここで宣言します。

■ 「価値創造工学」宣言

◆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◆
 価値創造工学とは、文系・理系を問わず、
人の役に立つ仕組みを考え、試し、社会に届けるための[心得・思考・実践]の方法論」である。

私たちは、技術や知識を学ぶことそのものを目的としない。
私たちが向き合うのは、
人や世の中(社会・生命環境)が抱える
切実(=なんとかしたい)な「問い」であり、
それを通して、これまでの延長では解決できない
「別流の価値」を創出することである。

価値創造工学は、
人間の切実・逆境・受難を起点に、
既存の枠組みを問い直し、
新しい見立てを構想し、
それを社会の中で機能する価値として
設計し、試し、更新し続けるための
思考と実践の体系である。

私たちは、
正解を早く出すエンジニアではなく、
問い(Why?What?How?)を回し、
更新し続けるエンジニアを育てたい。

失敗を恐れず、
境界を跨(また)ぎ、
気概(根底的な精神性)を持って
逸脱を創造に変え、
他者と協働しながら、
価値を社会に届ける。

価値創造工学とは、
人の「心(気概)と智慧(方法)」の両立を通して、
「人の役に立つとは何か」を問い続け、
その想いをカタチ(型)にする方法と営みである。
◆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◆


■ 「価値創造工学」宣言の背景と構造-②
 現代社会は、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と呼ばれ、
従来の「正解を探す」教育だけでは対応が困難です。

 「情報編集」から一歩進み、未だ存在しない「価値」を自ら「創造」する能力が不可欠です。
本宣言は、編集工学研究所・松岡正剛先生の「編集工学」を基盤とし、新価値創造研究所の「らせんプロセス体系」実践的技法として体系化した新領域「価値創造工学」の提唱です。

 あらためて、編集工学研究所の松岡正剛師匠は、「編集工学」という独自の分野を提唱し、「物事のつながりや、多様な情報・知識が関わり合って新しい意味を生み出すプロセス」を重視し、実践されてきました。
 松岡先生から指南された「編集工学」の思想・方法が、上記宣言の「価値創造工学」という新分野の提唱に繋がっています。

■ 「価値創造工学」の実践的プロセス体系
 「価値創造工学」は、下記「3つのプロセス」が「らせん的」に関わりあい、つながりあって「価値を創造する」実践的プロセスです。
1.(べつ):「切実→逸脱→別様」という「価値」が生まれる外的なプロセス
2.(たつ):「気立て→見立て→仕立て」という人間の内面から駆動する内的なプロセス
3.(むつ):「深い知→高い知→広い知」という上記を結ぶインターフェース的な解決プロセス

 上記1.2.3.を図解します。
詳細は、第364夜、第368夜、第369夜に綴っています。

■ 「価値創造プロセス体系」全体像
上記の「価値創造らせんプロセス」をシンプルな全体像に図解したものが下図になります。
この図をまとめるきっかけになったのが、弘法大師空海の「両界曼荼羅」です。(第369夜詳細)
右脳の働きである「切実・気概(心)」と左脳の働きである「逸脱・方法(智慧)」が結合した時に、「別流・別様(型・カタチ)」が現れます。
 是非、一流人のスポーツ選手(二刀流・大谷翔平、山本由伸等)やプロジェクトX、茶道、書道、華道、文芸、料理等々の成長プロセスに当てはめていただくことで、「切実→逸脱→別様」のらせんプロセス理解が進むように思います。

■ アントレプレナー向け「ワークショップ」
 上記、「価値創造プロセス」をベースにして、アントレプレナー向け「ワークショップ・基礎編」に展開したものが下図になります。
 現在は、「立つ」時代です。
・「役に立つ」「両立する」「自立する」・・・
・立志、立身、立国、立社、立地域・・・
 「右脳:気立て、気概、本気」と「左脳:見立て、智慧、方法」が両輪・合体して、「実践:仕立て、別流、別様」に向かうことがポイントです。

 これからのアントレプレナー、イノベーターに必要なのは、「価値創造の知(理論)」「実践の知(現場)」両立です。その両輪を多様な人財が集まって、ワークショップ(わかりやすい演習と実例・ビデオ等)で協働で習得・納得していくことがたいへん有効です。

 そこでのワーク演習の前半では、一人一人の「切実(自分ゴト・なんとかしたい)」を深堀して(深い知)、「逸脱(枠を出る・越境する・境界をまたぐ)」するプロセスを実感・体得(高い知)します。
  「切実・自分ゴト」という本気(根底的な精神性)が土台にあることで、それに触発された「智慧(3つの知)」が湧出してきます。

 参加者(仲間)の「切実(根底的な精神)の多様性」を演習を通して知り、これまでの「境界の外の異質」を探索して、看過できない異質を内部に導入(イノベーション)して、「結ぶ」「構想する」(広い知)ことを通して「別様の価値」と「ライフワーク」が生まれ、新しい成長が始まります。

 ご覧の様に「教育的特徴」には、大学の学部横断、企業の社内(組織)横断、自治体の部局横断、産学官連携で実施可能な構成になっています。

■ まとめ
 価値創造とは、特別な才能やひらめきから始まるものではありません。
それはまず、目の前の問題・課題を「切実(なんとかしたい→なんとかする)」として引き受けることから始まります。
 そして、その切実が心を動かし(気立て)、既存の枠を越え(逸脱)、新しい把え方を与え(見立て)、現実の別様の価値として立ち上げる(仕立て)ことで完成します。

・「学生」にとっては、学びや研究、進路を「自分ゴト」として
 立ち上げる思考の型であり、
・「ビジネスパーソン」においては、事業や組織を再生・創発する
 ための実践的な編集技法です。

価値は「思いつく」ものではなく、「立ち上げる」もの
重要なコトは、自分たちが素敵だと思うことは他者に頼まずに、自分たちでやってみるということ。そのことへの共感は必ず得られます。

「心と智慧」を往復・両立・合体させながら、「別様・別流」を現実に仕立て、実装していくところに、令和の「価値創造の本質」があります。

 上記のワークショップは、学生・ビジネスパーソンに「正解を出す力」ではなく、
不確実な時代に問いを回し続ける「価値創造の力」を育てる内容です。

 価値創造は、直線的に成果を出すことではなく、
切実(自分ゴト)から問いを立て、前提(常識)を疑い、小さく試す(実行する)」
という「らせん」を回すことから生まれます。
 上述の前職パイオニア社時代の連続ヒット商品化・新事業創出、及び、現職の新価値創造研究所の多業種業態の伴走ご支援はその連続の思考錯誤と実践でした。

 現職の「伴走支援の現場」では、
「らせん」を一回し、二回して磨きをかけることで、
次のワクワク・ナゼナゼの「課題と別様」が立ち現れてきます。
それをまた「らせん」で回すことが
構想課題解決実装を引き寄せます。

「心と智慧(構想)」と「別様と共創(実践)」の両輪が「価値創造工学」です。

 本プログラムでは成果物ではなく、
この〈らせんプロセス〉そのものを評価します。

・「変化」は今までと違う思考で始まり、今までとは違う行動から生まれる。
・「成長」のために、心の置き場所モノゴトの見方のステージを上げる
・「挑戦」しないことこそが、1番の失敗である。

 起業志向に留まらずに、就職・研究・SDGs・事業開発・地域幸福・社会実装まで、
学部横断、社内横断、部局横断産学官連携で活用できる「基盤教育」として活用していただければと思います。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第369夜:価値創造の『らせんプロセス体系図』

2025年12月21日: 弘法大師空海『両界曼荼羅』と『らせんプロセス体系図』の共通項 

 前夜は、前職パイオニアでの様々な開発や、現在の新価値創造研究所の伴走支援の双方の実務・実践経験から導き出した「価値創造のらせんプロセス体系」について説明しました。
 そこでは、
「切実→逸脱→別様」(価値が生まれる外的なプロセス)
「気立て→見立て→仕立て」(人間の内面から駆動する内的な力)
 価値創造は、単なるアイデア発想やフレームワークの活用だけでは不十分であり、「心(熱意・決意)」と「智慧(方法)」を一体化、統合化させた「らせん的プロセス」を辿ることで真の価値創造(イノベーション)が立ち上がるコト。

 そして後半では、
 「価値創造の極意」として、西洋的な二者択一(AかBか)ではなく、下記の事例のように、一見相反する要素を対立させず、深く結びつける東洋的な「二つでありながら一つ」という統合の知恵現代のビジネスやイノベーションに活用する時代であることを提示しました。

社会性と経済性の両立: SDGsのように、「社会課題の解決(LOVE)と事業の実行力(POWER)」を同時に成り立たせること。
違いと共感: ビジネスの本丸は「他と違うこと(差別化)」と「共感を得ること」を高く結合させることにある。
暗黙知と形式知: 個人の経験(暗黙知)を組織の知識(形式知)へと変換し、相互に作用させること。
 をお伝えしてきました。
 本夜は、第367~368夜が土台となって、「イノベーションの極意・奥義」を弘法大師空海の「両界曼荼羅」を通してご案内します。

■ 価値創造の「らせんプロセス体系図」
 上記のつながりを統合して、価値創造の奥義を「一目でわかる」ようにしたのが下図ですが、2020年頃から増えてきた下記の依頼等でご活用いただいています。
 ・「アントレプレナー/スタートアップ/SDGs」(学生向け)
 ・中堅企業、中小企業(多業種業態)の「第2・第3の創業」(企業向け)
 ・地域幸福度(ウェルビーイング)ファシリテーター(行政・自治体向け:産官学連携) 

 上記「切実の主な要因は、
・「なんとかしたい」
・「なんとかしなければならない」
・「あり続けたい」

・「下請けから脱皮したい」
・「地域がこのままの延長では拙い」
・「AIデジタルを取り込みたい」

・「SDGsを取り込みたい」
・Others
 にあります。

 あらためて、令和のビジネス環境では、「立つ・自立する・立ち上げる」 という動詞が、これまで以上に経営事業創発のコア技術になります。事業が立ち上がる、組織を立て直す、人財が自立する──これらはすべて、価値創造のプロセスをどう設計できるかにかかっています。
 価値創造とは「切実のトリガーが逸脱を呼び、智慧の編集が別様の価値を構築する」という、一種の“立ち上げ工学”です。

 さて、「起業、創業、新事業」というと、多くの人は
「アイデア → ビジネスプラン → 成功」
という一直線の流れを想像します。そして、その様な「現場を巻き込んだワークショップ」が多いことも事実ですが失敗することが大多数です。

 実際のスタートアップや創業、新事業は「一直線の流れ」のようにそう簡単に進展しません。
「行ったり来たり、迷い、戻り、やり直し」ながら前に進みます。
⇒ 「心」は「物語」になり、「ちがい」は「洗練」され、「かたち」は革新して、循環していきます。
その様な経験を、前職パイオニア社や現職(新価値創造研究所)の伴奏支援(学生・企業・自治体等)でも数多くしてきました。

・上記の現場で培った様々な実践の「心得と方法」
・そして、松岡正剛・谷口正和両師匠から指南された「心得と方法」の継承
 の双方を統合した「実践と理論」両輪を一枚で表したのが、この“らせんプロセス”の奥義であり結晶です。
(「らせんプロセス」各ステージの詳細は、第367~368夜に綴っています)

「らせんプロセス体系図」の重要なポイントは、
・本気で向き合う切実(気立て)
・常識を疑う 逸脱(見立て)
・別流を小さく試す 別様(仕立て)
それを何度も回し続ける覚悟です。
この図は、「成功する方法」ではなく、「成長し続けるための羅針盤」を示しています

 つまり、「価値創造」とは単なるアイデア創出ではなく、立ち上げ(気立て・見立て・仕立て)”の連続編集であり、心の反応から組織の実装、市場展開を貫く「価値創造ビジネス・アーキテクチャ」です。
参考:「ビジネス・アーキテクチャ」とは、企業の事業戦略や目的を実現するため、ビジネスの全体構造(業務、プロセス、組織、情報、IT、生成AIなど)を可視化し、設計・最適化する考え方や手法

 実際の「らせんプロセス体系」の研修・セミナー・伴走支援では、「1.切実、2.逸脱、3.別様」の各ステージ、ステップ毎に、参加者への「解説・問い・対話・気づき」に時間をかけて、順を追って積み重ねて、「価値創造/イノベーション」の真髄を体得していただいています。

■ 新価値創造研究所「らせんプロセス体系」と弘法大師空海の「両界曼荼羅」
 ここからは上記を踏まえて、
・新価値創造研究所の「価値創造『らせんプロセス体系』」と、
・弘法大師空海の「両界曼荼羅(胎蔵界曼荼羅・金剛界曼荼羅)」

 との間に、モノゴトの捉え方や創造のプロセスにおいて深い共通項があり、「両界曼荼羅」に触れることで自分の中に、大きなる響き・感動と飛躍がありました。

■ 弘法大師空海の「両界曼荼羅」
 ⇒両界曼荼羅とは何でしょうか?(前提の整理)
両界曼荼羅の基本構造
 空海の真言密教における両界曼荼羅は、

  • 胎蔵界曼荼羅
     → 原理・可能性・生成・慈悲内面世界
  • 金剛界曼荼羅
     → 構造・知・実践・智慧外化された働き
    この二つの世界を分けつつ、同時に不可分なものとして捉える宇宙観です。

重要なのは、「真理は一つだが、見る次元・働かせる次元が異なる」 という点です。
つまり「両界曼荼羅の本質」は、同じ世界を異なる次元で表現したもので、胎蔵界と金剛界は上下関係ではありません。(「二つでありながら一つ」です

 これって、上図「らせんプロセス体系」の構造と全く同じなので、出逢った時に驚きでした。
胎蔵界曼荼羅:「気立て→見立て→仕立て」(=人間の内側から駆動する内的な力)
金剛界曼荼羅:「切実→逸脱→別様」(=価値が生まれる外的プロセス)

 この「両界曼荼羅」に触れた時に、新価値創造研究所の価値創造「らせんプロセス体系」に間違いがないことを確信しました。また、空海への関心が更に強くなりました。
 ということは、「空海」の「哲学・洞察・理念・信念・行動・実践(生き様)」等を見れば、きっと現代にも生かせると確信しました。温故知新(第364~366夜詳細)です。

 特筆されるのは、弘法大師空海が日本が誇る「イノベーター(=価値創造者)」であったことです。空海は「目に見えない意味を、構造として可視化し、現実世界で機能させる知のあり方」をビジュアル化し、展開し、実践して広めたことです。

 イノベーションとは「胎蔵界で生まれ、金剛界で実装され、再び胎蔵界を更新する循環」です。この循環が止まると、改善止まりか、空理空論になります。

■ 両界曼荼羅をイノベーション構造に翻訳する
 まず対応関係を明確にします。

両界曼荼羅イノベーション領域具体例
胎蔵界意味・問い・可能性Why / 世界観 / 未言語ニーズ
金剛界智慧・構造・技術・実装How / ビジネスモデル / 技術

 つまり、「イノベーションは常に胎蔵界から始まる」ということを教えてくれます。
それは、下図「3つの知」が下記「深い知」(第364夜)から始まることと同じです。

◆ 胎蔵界イノベーション:最初にやるべきことは?
胎蔵界で問うべき問い
 イノベーション初期に必要なのはアイデアではなく「問い」です。
例:

  • この事業は「何の苦」を減らそうとしているのか
  • 顧客は何にまだ名前を付けられていないか
  • 社会の前提はどこでズレ始めているか

これは空海のいう「衆生の内に仏性がある」という見方と同じです。
⇒価値は外に探しに行くものではなく、内在している未顕在の可能性を洞察することです。
⇒参考:『深い知』 : 事業の再定義やミッション(使命)の創出につながる「大切にすることは何か」という問いに関する知。(第364夜、第367夜)

◆ 金剛界イノベーション:「意味」(meaning)を壊さずに形にする(第85夜、第364夜)
・胎蔵界で見出した「意味」を、次に壊さずに構造化します。
ここでの金剛界の役割は:

  • 技術選定
  • ビジネスモデル設計
  • 組織・プロセス設計

⇒重要なのは、金剛界は「意味に従属」するという関係性です。
空海においても、

  • 「金剛界の智慧」は、胎蔵界の慈悲・生成を実現するための力

◆ 真のイノベーションは「往復運動」
 ⇒世の中の「多くのフレームワーク」にないのが、ここです。

両界往復モデル

  1. 胎蔵界:問い・意味・世界観を掘る(⇒深い知@3つの知)
  2. 金剛界:構造・プロトタイプを作る(⇒高い知・広い知@3つの知)
  3. 現実にぶつかる
  4. 胎蔵界へ戻る:問いを更新する
  5. 再び金剛界へ

    ⇒ 上記1.2.で、上記「3つの知」(第364夜)の奥義とつながります。
    ⇒ 「らせんプロセス体系」と「両界曼荼羅」同じ構造でつながっています。

◆ 両界が分断されたときの症状は?

状態組織で起きること
胎蔵界だけ理想論・理念倒れ
金剛界だけ改善・模倣・価格競争
両界往復本質的イノベーション

⇒ 日本の産業界で多いのが、金剛界だけによる「改善・模倣・価格競争」です。その多くは、顕在化しているオペレーションに時間をかけて、胎蔵界の「意味・問い・可能性」を突き詰めていないことが原因です。
「両界往復」「本質的イノベーション」につながります。

◆ 両界曼荼羅を使った実践フレーム
 ここで、新価値創造研究所の「価値創造」フレームワークの一部を紹介します。
下図は、「3つの知」(第364夜)の中の「深い知」のステージです。
特に「旭山動物園のフレームワーク」が参加者の多くの理解が深まる演習になっています。
下図を見ていただくと、この「価値創造の構造」と上記「両界曼荼羅」は同じであることがおわかりいただけると思います。この「おおもと=胎蔵界」を探求・究明して往還することがポイントです。
 この構造に至ったのは、前職パイオニア社のヒット商品緊急開発プロジェクトを推進する中で、禅・瞑想の実践(第6夜、第289夜)をして、「理論と実践」を両立できたことが関係していると思います。

参考: 瞑想・座禅は、思考や思い込みによって切れていると思っているいろいろなものとのつながりを、もう一回本当は繋がっていたんだと気づくためのツールです。
座禅は、小さくなった心を取り戻すオリジナルな自分を取り戻すための型です。
瞑想とは、あなたの本来があなたに再びつながること(=Reconnect)です。

 興味・関心がある方は、是非、本コラム第364夜をご覧ください。

■ ワーク例

それでは、ワークとして使う一例を提示します。
Step 1(胎蔵界)

  • この事業が「救おうとしている苦」は何か?
  • それは言葉になっているか?

Step 2(金剛界)

  • その苦は、「どの構造で解消」できるか?
  • 技術・制度・体験の設計は?

Step 3(往復)

  • 実装して「ズレた感覚」はどこか?
  • 問い自体を更新できているか?

◆ 一言でまとめると

イノベーションとは、
・胎蔵界(意味)を忘れず、
・金剛界(構造)に閉じこもらず、
・その往復を続ける「知の修行」である。

空海の両界曼荼羅を「イノベーションの原型構造」 と確信してお伝えしていきます。

■ 「両界曼荼羅」の現代展開版が「らせんプロセス体系」!
 新価値創造研究所は、「両界曼荼羅」を現代に具現化展開しているのが、価値創造の「らせんプロセス体系」及び、「らせんプロセス体系図」とご縁を感じると共に、確信しています。
 是非、この「両界曼荼羅」「らせんプロセス体系」を下記の様に活用されてみてください。
例えば、「生命サステナブル」には、SDGsの17の社会課題があります。「AIデジタル」にもたくさんの課題があります。先ず、身の回りの「小さな課題」から挑戦されてください。
・「らせんプロセス体系」×「生命サステナブル」(第366夜)
・「らせんプロセス体系」×「AIデジタル」(第363夜)
・「らせんプロセス体系」×「日本流コネクタブル」(第362夜)
・「らせんプロセス体系」×「課題:○○○○○」
・「らせんプロセス体系」× Others

■ 『AI空海』の時代へ
 第363夜に「生成AI(AIデジタル」について綴りましたが、下図の様に、生成AIは『AI空海』を目指すことになると直感しました。
 「慈悲・意味」(胎蔵界曼荼羅)と「智慧・構造」(金剛界曼荼羅)を「二つでありながら一つ」として目指し、展開する『AI空海』の宇宙観こそが、私たちが求め、向かう「あてど」「拠り所」になると確信しています。
 その様に、「生成AI」が革新していって欲しいと願っています。

■ 謝意
 この『らせんプロセス体系』の背景には、私を三十年以上にわたり導いてくださった京都出身の二人の師の存在があります。 顧客の心の揺らぎを慈悲の目で見つめ、胎蔵界の如く広義のマーケティングを説かれた谷口正和先生。そして、世界の断片を金剛界の智慧のごとく編集し、知の体系を築き上げられた松岡正剛先生
  お二人から授かった『心の機微』と『知の極意』が、私の中で響き合い、今ようやくこの図解という一蓮(いちれん)の形となりました。 お二人が遺された光を、私はこのらせんの循環の中に灯し続け、次なる「価値創造の道」を歩む方々へと繋いでいくことを、ここに深く誓い、感謝を捧げます。
 
 永眠された二人の師匠との出逢いとご指南には、感動・感激・感謝しかありません。
コラム第308夜に綴りましたが、
「終わりと始まりはつながっている」
それを実践していきます。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第368夜:『気立て→見立て→仕立て』(後編)

投稿日: 

2025年12月18日: 価値創造の『らせんプロセス体系』 

 本夜は、前夜の後編になります。
 本コラムも368夜を数えますが、本夜と次夜は、下記A.B.の私の「理論と実践」の経験知を踏まえた「集大成の編集」の一つになります。
A.前職パイオニア社:幅広い「開発業務」経験
 ⇒技術開発・ヒット商品緊急開発プロジェクト・研究開発・シナリオプランニング開発・新事業開発等の実践
B.新価値創造研究所:独立後の「伴奏支援活動」経験
 ⇒「学校・起業・企業(ベンチャー、老舗)・自治体(行政)」への伴奏支援
 ⇒「産官学連携」伴奏支援
 ⇒ 各種研修・セミナー・ワークショップ
 上記A.B.双方の長年の実務経験を通して、「理論と実践」の両輪で「事業創生・地域創生・人財創生」に注力・尽力してきました。

 それら「理論と実践」の経験知を基盤において、本コラムで綴ってきた下記二つを組み合わせ、統合して「体系化」したのが下図になります。
・「切実→逸脱→別様」( 第333~334夜第366~367夜)
・「気立て→見立て→仕立て」(第249夜、第368夜)

 これらは、「アントレプレナー/スタートアップ/起業/ベンチャー等」の各伴走支援、各種研修・セミナー等でお伝えしてきたものです。(各ボックスの実例と演習で体得していただいています)
 ⇒ 新価値創造研究所のオリジナル体系です。
 ⇒ そこには、永眠された、松岡正剛・谷口正和の両師匠から受け継いだ叡智が色濃く刻まれています(第308夜: 「終わりと始まりはつながっている」)

 上記の「切実→逸脱→別様」「気立て(本気)→見立て(対象の本質)→仕立て(新しい本流)」の両プロセスは、「深い知(ミッション)→高い知(ビジョン)→広い知(イノベーション)」という「3つの知」と深く紐づき、実践に活用されています。(下図)
 これらが「らせん階段」のように連動することで、真の価値創造(イノベーション)が起こります。

■「切実→逸脱→別様」の要約
切実(せつじつ):
 現状の課題や危機に対する「本気」の思いや、なんとかして現状を変えたいという強い「自分ゴト」意識が起点となります。倒産危機のような逆境や受難が、この切実さを強く触発することもあります。
逸脱(いつだつ):
 従来のやり方や常識、既存の「枠」を乗り越えようとする段階です。切実な思いを土台に、対象の本質を見極め、あえて「非常識」とも思えるような新しいアプローチや異質なものを導入し、行動に移します。
別様(べつよう):
 逸脱した結果として、それまでとは「別流」となる新しい事業展開や市場、文化、ライフスタイルといった「新しい全体」が拓ける段階です。これは、新しいバージョンアップや成長の道筋を意味します。

■「気立て→見立て→仕立て」の要約
気立て (きだて): 価値創造の出発点
意味: 切実な状況に直面したときに「何とかしたい」「このままではいられない」と立ち上がる、内面から湧き出る心の構え態度
役割: 課題を自分ごととして引き寄せ、想像力や創造力を呼び覚ます心理的なエンジン。「洞察フェーズ」の始まり。

見立て (みたて): 価値を発想/構想する知恵
意味: 既存のものを別のものに置き換えたり、関連付けたりして、新しい意味や可能性を見出す「気づき」「発想」。例えば、リンゴの斑点を星に見立てるような、既存の枠を超えた視点など。 
役割: 「気立て」で生まれたエネルギーを、具体的なアイデアやコンセプト(新しい価値の構想)に転換する「発想・構想フェーズ」

仕立て (したて): 価値を現実にする統合力
意味: 「見立て」で描かれた新しい価値を、組織・市場・社会の中で「使われ、伝わり、続く」ような、持続可能な実体(製品、サービス、仕組み)へと実装・統合する力
役割: 構想を現実に落とし込み、価値を「立ち上がらせ」、自立させる「実行・実現フェーズ」。価値創造の最終工程であり、完成度を高める。 

■「気立て→見立て→仕立て」が示すこと

  • 日本的なプロセス: 日本の美意識や文化に根ざした、イノベーションを生み出す独自の道筋。
  • 実装重視: 素晴らしいアイデア、構想(見立て)を現実世界に根付かせる「仕立て」の力が不可欠であること。
  • 螺旋的発展: このプロセスは一度で終わらず、実現した価値が新たな「気立て」を生み出し、次の価値創造へとつながる「螺旋プロセス」を形成する。 

 上記の複数のフレームワークは、単なるビジネスモデルではなく、「心・智慧・実践」が三位一体となった、日本ならではの「日本流の価値創造のあり方」をも体系化したものです。

■ 価値創造の「らせん的展開・発展
 上図の「らせんプロセス体系」をご覧ください。
上段が、「①切実→②逸脱→③別様」(外側:価値が生まれるプロセス)
下段が、「④気立て→⑤見立て→⑥仕立て」(内側:人間の内面から駆動する力)
 に配置があり、「価値創造」は、
・①→④→②→⑤→③→⑥
 という、右に流れる「螺旋(らせん)階段」の様なプロセスで進みます。
このような進め方の段取りなしで、「アイデア発想」や「SWOT分析」から進めても多くが失敗に終わることを経験されてきたのではないでしょうか。
 自治体や多業種多業態の企業への伴走支援で「新成長の構想・実装」で不足しているのが、前半の「①→④→②→⑤」であり、特に、後段の「④→⑤→⑥」です。
 「成功のポイント」は、
・「別流」を生み出す(創る)という熱意・決意(心の領域)
・「別流」を生み出す(創る)ための方法(智慧の領域)

 という「心」と「智慧」を別々にしないで、「二つでありながら一つ」という心得と方法(らせんプロセス体系)が重要です。それを研修・セミナー・伴走支援では、「事例(ビデオ)と演習」で一歩一歩進めていきます。(次夜コラムでも触れます)

■ 価値創造の奥義・秘訣は「二つでありながら一つ」(第31夜~第37夜詳細)

 上図の「実践・アントレプレナー体系」をご覧ください。
① B(異変、問題)の「探求(内側)」と「解決(外側)」
② D(利他、気立て)とE(智慧、見立て)
③ LOVE(信念、確信)とPOWER(創造、革新)

 のそれぞれの二つは、「相反する二つの概念や要素が、対立するのではなく、深く結びつき、相互作用することで、より高次の価値を創造する」という「二つでありながら一つ」になっています。ここが「価値創造」の肝(きも)です。

参考事例:「③LOVE(信念、確信)とPOWER(創造、革新)
 学校、企業、自治体から、「イノベーション×SDGs」(下図)の依頼が多くあり、皆さんに質問して考えていただくシート(未来を変えるために必要なこと)の一部をここで紹介します。
 SDGsは、「あり続けるため(サステナブル)」に、17の社会課題(Goals)をどう解決(ディベロップメント)するかを考え、「社会性」と「経済性(利益)」を両立(二つでありながら一つ)する思想であり実践です。図の右上の高い点数を目指したいですよね。
 学生はこのような学習を学校の授業で体験してきています。
・学生たちは、○○○の社会課題を解決(LOVE)したいが、POWERがない
・社会人は、POWER(能力)の一部を持っているが、LOVE(利他)に向かわない。

この「愛と力」の二つを「両立させること」が、社会にも会社にも自治体にもベストなのです。
 その両立させる「心得と智慧」が「らせんプロセス体系」の習得にあります。


参考(第33夜)『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは何だと思いますか?
それは、「二つ」にならないということにあります。
座禅の姿勢は、「結跏趺坐(けっかふざ)」という右足と左足を組んでいますね。
 この姿勢は、『二つではない、一つでもない』という「二元」性の「一者」性を表わしています。これが、もっとも大事な教えです。
 もし私達の心と身体が二つである、と考えるとそれは間違いです。心と身体が一つである、と考えるとそれも間違いです。私達の心と身体は、“二つでありながら一つ”なのです。(引用:禅マインド)

 この二つでありながら一つという東洋的な思想は、西洋的な二者択一や二項対立の考え方とは異なり、物事の両面を柔軟に捉え、統合することで、イノベーションや持続的な成長を生み出すための「秘訣」「奥義」です。 

■「二つでありながらひとつ」の例
 ・違いと共感:
 ビジネスで最も大切なコト(第82夜詳細)は、「違いを創るコト」と「共感を生み出すコト」を両立して、継続的に高く統合することです。
 つまり、「違いと共感」の新結合です。下図の赤丸が「価値創造の本丸」になります。

  • 暗黙知と形式知:(第185夜、第363夜)
    • 言語化や数値化が難しい個人の経験やノウハウ(暗黙知)と、マニュアルやデータとして表現された知識(形式知)は、一見すると別々のものですが、相互に変換・作用することで、組織的な知識創造が可能になります。
  • 不易と流行:(第34夜、第245夜詳細)
    • 時代が変わっても変化しない本質的な価値(不易)と、その時代のトレンドや変化(流行)は、別々に存在するのではなく、根底で一つにつながっています。不易を大切にしつつ、流行を取り入れることで、新しい価値が生まれます。
  • 負(マイナス)と正(プラス):(第292夜、第348夜)
    • 人生やビジネスにおける困難や失敗(負)は、単なるマイナスではなく、それを乗り越える過程や経験を通じて、新たな洞察や成長(正)の源泉となります。両者は切り離せない関係にあります。

■ 価値創造の秘訣(第76夜:価値創造イニシアティブ)

 「価値創造の秘訣」を提示(下図)します。
 2017年に「革新の7つの力」を本コラム第59夜~第74夜に亘って綴り、その構図・体系は第60夜、第76夜にまとめいます。
 本夜は、その7つの力の奥に潜む「価値創造の秘訣」をあらためてご紹介します。

 下図をご覧いただくと、本夜で展開してきた内容は、
1.自分を変える:危機意識・情熱力
2.他者を愛する:幸せ想像力
3.余白をつくる:本質創造力
4.舞台をつくる:仕組構想力

 という項目とつながっているのがわかります。

 さて、「4.舞台をつくる:仕組構想力」までくれば「価値創造の土台」がしっかりとできているので、先(未来)に進めるむことが可能です。興味関心がある方は、第59夜~第76夜をご覧ください。

・「別流を創る」「価値創造をする」「成長する」ということは、「自分を変える・自分が変わる」ことから始まります。ここが出発点です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ


橋本元司の「価値創造の知」第367夜:『気立て→見立て→仕立て』(前編)

2025年12月16日: 『立つ』 の時代

  前夜は、「価値創造」について「One(現流)」と「Another(別流)」を一対として説明しました。「価値創造」とは、これまでの延長線上ではない「別流(Another)」の価値を創ることです。
 「One(現流)」と「Another(別流)」を往還(いったりきたり)することで、「別流」の価値は磨かれ、未来から現在を見直して(逆算:バックキャスティング)、情熱・志をもって、未来に向かってアプローチすることができるようになります。

■「未来(Another)は自ら創り出すことができる」(ドラッカー)
 「価値創造」によって、未来は受け身ではなく、別流を自ら創り出すことができます。
前職パイオニア社では、それを複数実践してきました。
 下図の様に、「One(現流)」と「Another(別流)」は双方向のコインの裏表です。
そして、「Another(別流)」を創り出すためには、「立つ、立ち上がる、立ち上げる」という
『立』の実行・実践が不可欠です。これが本夜の「鍵」「主題」です。

 「実(じつ)に居て虚(きょ)にあそぶことはかたし、 虚(Another)に居て実(One)を行ふべし」 (第191夜、第333夜、第366夜)

 前夜にも綴りましたが、上記の松尾芭蕉の言葉を私が現代語訳すると、
「日常的な現実世界(実・here・One)に身を置きながら、真理や未来世界(虚・大元・there・Another)の視点に立って物事を考えることは難しい。むしろ、真理や未来世界のAnother視点(虚・大元・there、想像性)に「立ち」ながらこそ、日々の現実的な行動(実・here・One)を適切に行うことが必要である」
 と云っています。
「価値創造」に向けた至言です。

 さて、上記の「虚(きょ)」を「想像性」に置き換えると理解がしやすくなります。
「Another(=虚)」は、「想像力」によって生まれてきます。

・子供の「創造力」は「想像力(虚)」によってしかもたらせない。(松岡正剛)
・「創造力」は「想像力(虚)」を触発しない限りは生まれない。(キエラン・イーガン)

 制約を外した自由な「想像力(虚・Another)」こそが「創造力(別様)」を生み出します。
つまり、「想像力(心)」と「創造力(智慧)」はコインの裏表です。
 参考ですが、「想像力(心)」と「創造力(智慧)」は、ビジネスの後工程である「マネジメント」領域ではなく、前工程の「イメジメント」の領域(下図)であることを申し添えます。(第7夜、第82夜、第312夜詳細)

■ 「価値創造」は「別流」の価値を創るコト!
 令和時代のいま、Anotherである「生命サステナブル(SX)」&「AIデジタル(AX)」という「世の中の不可避的な変化」を不確実で不確定なものと思っていると慎重になります。慎重になると、行動や決断が先送りされます。果報は寝て待てになり、「様子見」になります。その様な様子見の姿勢が、地域や企業に多く見られる「日本の失われた35年」「ITやAIに出遅れた日本の現実」につながる大きな要因です。

「明治という時代は立国・立志・立身・立憲・立党の『立』の時代だ。立派とは立国・立志・立身をまっとうすることだ。会社をおこすことは立社といった・・・。」(松岡正剛・千夜千冊1134夜引用)
 大局的にみると、令和時代の今は、「失われた35年」から『立ちあがる』絶好のタイミングではないでしょうか。立ち上がらなければ、更に失われた右肩下がりの時代になっていきます。

 さて、本当にAnother(別流)である「生命サステナブル(SX)」&「AIデジタル(AX)」は不確実で不確定なのでしょうか?このコラム「価値創造の知」第361夜で、下記「新成長ルル三条(SX・AX・JX)」を記してきましたが、それらは後戻りしない変化(X=トランスフォーメーション)であり、確実で確定したものです。この成長領域に10年間尽力してきました。

 新価値創造研究所の大きな役割の大きな一つは、眼前に確実にきている「未来の大きな変化、波」の「本質と行方」という『本来と将来』をとらえて先取り(価値創造)できるビジネスパーソン(起業・企業)や学生を輩出するコトに置いています。(=人財創生)

 あらためて、
・「価値創造」とは、これまでと違う「別流の価値」を創る(立ち上げる)ことです
 「経営の神様」と呼ばれたピーター・ドラッカーは、「企業の目的は、“顧客価値を創造すること」という名言を残しました。
 企業・地域は、「顧客価値の創造」を継続・持続できなければ、衰退・退陣に向かうのが原理原則です。(第82夜)

 価値創造は、「本業(One)」に「異質(Another)」を取り込むという、「統合領域」において、
・「本業×SX(SDGs:17の社会課題)」
・「本業×AX(生成AIデジタル)」

・「本業×SX×AX」
・「本業×○○○」
 というシンプルな新結合(第 17~18 夜、第 90~100 夜)から生まれてきます。
 「本業」に「異質」を取り込めば、自ずと「違い」のある先取りの「別流の化合物」が生まれてきます。(第82夜、第126夜)
 下に、その未来の化合物を創出する「自立(脱皮・変革)へのシナリオ」を図解化しています。

■ 『自立へのシナリオ
 令和のイノベーション時代は、「今までにないコトを起こす」という「立つ・立ちあがる(自立)・立ち上げる」ということが重要な「鍵」になります。「今までにないコト」は、前述の様に『異質』を内側(内面)に取り入れることから始まります。
 そして、「まだ表れてない、隠れている別流を勇気と智慧を持って起こす」ことが「地域創生」「事業創生」「人財創生」にダイレクトにつながってきます。
 次なる時代は、「次なる世代が自ら創り上げる気概と智慧」によって、「別流」を創っていくことがポイントになります。

 それでは、上図群の流れを追ってみましょう。
① 「こうであったら」という「想像力」が価値創造の『起点』となります。
② その「想像力」を強く触発して立ち上げるのが、心の領域の「切実・受難・逆境」です。
  ⇒「気立て(本気)」(境界を越える:なんとかして現状を変えたい!)
③ その「切実」→「想像力」が土台となって、次の「逸脱」を促します。
④ その「逸脱」にカタチを与えるのが「智慧」の領域の「3つの知」です。
  ⇒「見立て(本質)」(別流を立てる:対象を深く高く広く読んで構想する)
⑤ ②「心」と④「智慧」から「別様」(別流の新しい全体)が立ち上がります。
  ⇒「仕立て(次の本流)」(別流を仕上げる:構想をカタチにする、実装する)

 時間軸で整理すると、
・「想像力」→「気立て」→「創造力」→「見立て」→「別様」→「仕立て」
 となります。

■ 『立』(立つ・立ち上がる・立ち上げる)という内面から湧出する時代
 上記を「価値創造」の本筋である
・「切実→逸脱→別流」(第309夜、 第333~334夜、第361夜)
 と置き換えると、新しい景色が見えてきます。

・「切実」→「気立て(想像力)」→「逸脱」→「見立て(創造力)」→「別様」→「仕立て(統合力)」
・「切実」→「気立て」→「逸脱」→「見立て」→「別様」→「仕立て」
[解説](下図参照): 「切実」に触発されて、「気立て(心が立ち上がる)」が発生し、これまでの枠を破る「逸脱」を検討する中で、「見立て(智慧を立ち上げる)」を活用し、そこから「別様(別の様式)」の価値観が立ち現れて「仕立て」に向かう。

この連鎖こそが、令和のイノベーション時代に求められる「価値創造」の実装プロセスです。

 上図をシンプルに解説すると、
「気立て(心)」と「見立て(智慧)」の二つが組み合わさると、「仕立て(統合)」へジャンプして、「別流の価値」が生まれるという図式です。
⇒「価値創造」とは、これまでと違う「別流の価値」を創る(立ち上げる)コト

■ 「気立て→見立て→仕立て」を解説します
 2017年1月に、新価値創造研究所として本コラム「価値創造の知・第21夜」にて「気立て→見立て→仕立て」というコンセプト/プロセスを公表しました。それ以降、研修・講演・伴走支援で「イノベーションの発想・構想・実装」によるワークショップでお伝えしてきました。

 その後、「気立て」「見立て」「仕立て」の流れは、日本の文化や美意識に深く根ざした、日本流の価値創造のプロセスを示すフレームワークとしてブラシュアップを遂げました。
 それでは、其々を「意味と価値創造の役割」として整理します。

1. 気立て(きだて)
意味: 切実な状況に直面したときに立ち上がる「心の構え」であり、「自分ゴトとして引き受ける態度」である。課題を外在的な問題として処理するのではなく、内側に引き寄せ、応答しようとする心の起動状態を指す。
価値創造における役割:
すべての出発点となる「洞察フェーズ」。
ここではまだ解決策は見えていないが、「何とかしたい」「このままではいられない」という想いが、想像力を呼び覚ます。気立ては価値創造の心理的エンジンであり、切実を単なる状況認識から、創造へ向かう動力へと転換する働きをもつ。

2. 見立て(みたて)
意味: 見立てとは、逸脱によって生じた未分化な可能性に対して、意味と構造を与える智慧の働きである。既存の枠組みを離れた発想や視点を、単なるアイデアに留めず、「何として捉えるか」「どう位置づけるか」を定める行為が見立てである。
価値創造における役割:
「構想・計画フェーズ」。
 これは、対象の本質を捉え直し、別の文脈へ転移させる編集的思考であり、創造力の中核をなす。見立てによって、逸脱は方向性を持ち、価値として成立するための骨格を得る。
 重要な認識は、既存の常識や枠にとらわれない新たな可能性を見出すフェーズであるコト。
 下記「3つの知(第364夜)」の3つの余白を創出することが、次の「別様」につながります。
『深い知』: 事業の再定義やミッション(使命)の創出につながる「大切にすることは何か」という問いに関する知。
『高い知: 「故きを温ねて新しきを知る」という視点で、新しいビジョン(何を目指すのか)を見つけ出す知。
『広い知』: 『深い知』(ミッション)と『高い知』(ビジョン)をつなげ、異質なものを導入することでイノベーション(新結合)を具体化する知

3. 仕立て(したて)
意味:  仕立てとは、見立てによって描かれた別様を、現実の世界に実装し、持続可能なかたちに整える統合の力である。新しい価値は、構想された瞬間に完成するのではなく、組織・市場・社会との関係の中で「使われ、伝わり、続く」ことで初めて本流となる。
価値創造における役割:
「実行・実現フェーズ」。
 仕立ては、上図のように、「心(気立て)と智慧(見立て)」の成果を一つの実在へとジャンプしてまとめ上げる最終工程であり、価値創造を構想から実装へと貫通させる力である。ここで価値は「立ち上がり」、自立する。

 上記の「気立て→見立て→仕立て」や「切実→逸脱→別様」のように、「価値創造/成長経営」を発想・構想するときに、西欧の言葉ではなく「日本語」で考えることが肝要になります。それは、「日本流コネクタブル(JX)」(第362夜、第366夜)の出力に繋がってきます。

■ 次夜は・・・
A.切実→逸脱→別様
B.気立て→見立て→仕立て

 の二つの体系を新結合した「螺旋プロセス・構造」を図解でお伝えします。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ



橋本元司の「価値創造の知」第366夜:『Another(別流)』から『One(現流)』へ

2025年12月5日:価値創造のメインプロセスは『切実→逸脱→別様』 

 前夜は、「価値の高い仕事」の「ありか、あてど(当て所)」について綴りました。
下図の価値が高い「B箱(領域)」は「特別・別格な領域」であり、そこを突き詰めて考え、構想・実装することで、持続的な対価を得ることができるようになります。

・「価値創造」とは、これまでと違う「別流の価値」を創ることです。

 「生命サステナブル(Outer)」・「AIデジタル(I/F)」(第363夜に詳述)の時代、「人間」が能力を発揮する「価値の場所」は、ますますこの「B箱(領域)」にシフトしていくことは間違いありません。先読みして半歩先の手を打つことが肝要です。

そして、その特別で格別な「B箱(領域)」に導いてくれる方法が、これまで多くを綴ってきた「3つの知(第364夜)」であり、人間ならではの想像力、創造力が開花して下記を生み出す『心得と方法』です。

・「深い知」:新しい根本観:大切だと想うことは何か?
・「高い知」:新しい将来観:将来、目指したいコトは?
・「広い知」:新しい全体観:別流の価値観を創造する


■ 「枠を外す力」と「つなげる力」の両立
 さて、上記「3つの知」創出になくてはならないのが下図の「二つの力」です。
この「二つの力」を往還(行ったり来たり)することで新価値が生まれ、磨かれていきます。

「枠を外す力」の大御所が「深い知」:人間軸(一番大事なこと、心の拠り所)です。
そこ(あり様、おおもと)に到達すると、自動的に「高い知」・「広い知」は「枠・境界」を易々と越えることができます。
 それは、禅的思考:「禅」「瞑想」の修行・悟りに近いです(第235夜詳細)

・次に、「つなげる力」ですが、
⇒「高い知」:時間軸(温故知新:過去と現在をつないで新しい未来にジャンプする)
⇒「広い知」:空間軸(主客一体:異質な二つをつないで新しい全体にジャンプする

 の二つです。
 アップルのスティーブ・ジョブズは、「創造性とは、モノゴトを結び付けることにすぎない」と言いました。上図の「つなげる力」です。是非、時間軸(高い知:温故知新)、空間軸(広い知:主客一体)のそれぞれで「結び付けること、つなげること」に挑まれてください。

 上記は、参考として第364夜「3つの知」に詳細を記し図解化しています。

 この「二つの力」と「3つの知」の関係と方法を理解していただくことが価値創造の肝(きも)であり頭の整理につながります。
 それを「研修・セミナー・伴走支援プロジェクト」では、第364夜で事例紹介した「旭山動物園」等の「最も大切なコトは?」をビデオ演習などを通して腹落ちしていただいた後に、「自分(自社、自地域)の問題・課題」に取り組んでもらい、打開策を探索・探求する「道筋と心得・方法」をまるまる体得いただいています。

 さて、「深い知」(第85夜詳細)は「心の領域(顧客ニーズ)の奥」に潜んでいます。内在していて隠れているものを見つける「知」です。学校や会社では教えてもらっていません。

・「大切なコト」は目にみえないんだよ。(SDGs経営塾第6回:「星の王子さま」)

 私たちは「心」の奥底を探求して、自分の「心のステージ、フェーズ」を上げていく必要があります。そのための最大の推進力になるのが「切実・本気・自分ゴト」です。このエネルギーの「元・源」がないと「心の領域(顧客ニーズ)の奥底」には届かないことを実感しています。
 つまり、そこに「志・大義・覚悟・ミッション」という目に見えない(インビジブル)ものが心に灯っていることです。これが苦手の方のための「演習」もあります。

 その「深い知(最も大切なコト)」で「モノゴトのおおもと」を探索・探求(禅的思考)して突き詰めた先に、「本来と将来(高い知・広い知)」によるワクワク風景が浮かび上がり、観えるようになってきます。

■ 『One(現流)とAnother(別流)』
 上記から導き出されるのは、これまでの流儀(One=現流・現実)の「常識、枠、境界」を越えた「新しい流儀(Another=別流・新しい現実)」です。
 これまでの「社会、業界や事業(One)の枠組み(上図の左上の中)」にどっぷり嵌まってしまっていると、右側の「新しい現実」の価値創造には届くことはありません。
 つまり、これまでの枠組みを意識して取り払い、境界を越境して、左側(現実・現状)から右側(新しい現実、別枠)へ転移しないと新しいものなんて生まれないことをお伝えします。
 その代表格が「アップルのiPhone」です。iPhoneの「B.あり様、おおもと」は、
「創造的な人々の知性を増進する道具を届けたい」
 iPhoneは、皆さんが知る通り、私たちの文化・ライフスタイルを大きく変えていきました。(第164夜、第175夜、第361夜)

 第364夜で説明しましたが、「おおもと」の図の下方の赤枠三角形には、“本当はこうでありたい”という『真善美』の価値を見つけること、『意味(meaning)』を見つけることが、事業(企業)の成長につながってきます。
 『真善美』(第235夜詳細:素直な心)とは、人間が生きる上での理想の状態を3つで、
・「真:偽りのないこと」
・「善:良いこと・道徳的に正しいこと」
・「美:美しいこと・調和していること」

を表現した言葉です。きれいごとではなく、「心の奥底」からの言動は、社会性・共感性・成長性に大きく関与してきます。
 「iPhone」や伴走支援で、持続的に成長・成功されている会社群は、この「真善美」から生まれるコンセプトが心の拠り所・基盤になっていることをお伝えします。。

 補足として、「あり様:being」の領域には、『真善美』に深く紐づいた経営者の深い言葉(コンセプト)が入ってきます。それが、経営(事業)の「ミッション(使命)」「パーパス(存在意義」や「創業」の“becoming(「あり様」から「なり様」)”に繋がってきます。

 下図は、「新しい現実・枠組み」に変容する「新ルル三条(第361夜詳細)」をまとめています。
因みに、時代のトップの価値観は「あり続けたい=サステナブル」です。ここ重要です。
---------
新成長ルル三条: 日本新成長の変革(トランスフォーメーション=X)に不可欠な3大要素
1.気候沸騰⇒「生命・サステナブル」:SX⇒あり続けたい(Outer)
2.量子技術⇒「AI・デジタル」  :AX⇒知能技術活用(I/F)
3.文化経済⇒「日本流コネクタブル」:JX⇒見立て仕立て(Inner)

---------

 その「3つの知」の構造には、境界を跨いだ上図の「赤枠の余白」が3つ(▽○◇)あり、それを突き詰めることが「価値創造」の本筋であり、具現・具体(新しい現実)につながります。(第364夜詳細)
 つまり、その「赤枠の余白」に答えを出すことが、これまでの「やり方、常識、境界」を越える『別流』を生み出すことを可能にします。
その「別流」を上記「3つの知」の図を使って説明します。

・「深い知」:所有→使用→[別流]あり様(ミッション:一番大事なこと、心の拠り所)
・「高い知」:過去→現在→[別流]未来の姿を描く(ビジョン:目指す場所)
・「広い知」:本業×○○→[別流]新しい全体をつくる(:イノベーション創出の場)

 「新しい全体(別流)」は、「深い知」→「高い知」→「広い知」の流れで創出されます。

■ 「別流」が求められる背景
  下図の様に、昭和の時代は経営戦略立案のフレームワークとして、『旧3Cの「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの要素を「分析」することで済ませることが多かったのです。それは、「正解」「ゴール」が分かっている時代でした。

 しかし、今の急激な変化(第361夜詳細:SX・AX・JX)には、『新3C』の「顧客(Customer)」「将来文脈(Context)」「自社(Company)」の新3要素を「洞察(Insight&foresight)」し、構想・実装することができるかどうかで、地域・自社の将来を左右するようになっていきます。
 「生命サステナブル(SX)」「AIデジタル(AX)」という不確実で不確定なものには慎重になる。慎重になると、行動や決断が先送りされる。果報は寝て待てになる。それが、日本の停滞を生み出した「原因・源」です。ここから脱皮する手段が「価値創造の習得と実装」です。

■ 「新しい枠組み」
 それでは、皆さんがご存じの「身近な新しい枠組み」で成長している事例の一部を上げます。
・宿泊: ホテル→ Air B And B
・携帯電話:○○○→iPhone
・撮影: カメラ→iPhone
・掃除機:○○○→ルンバ(アイロボット)
・EV:  ○○○→テスラ
・Others

 上記は、「異業種」からの参入という「想定外」が従来と違います。
 特筆すべきことは、開発や導入のタイミングではその「新市場」はなかったのです。現在の「生成AI」にアクセスしても「AI」は新市場の可能性をきっと答えられないと思います。この領域が「人間とイノベーション」の出番です。
 上記の創業者は、「One(現流)」からの視点ではなく、「Another(別流)」に身を置き、拠り所にして「One(現流)」を変えています。それは、下図の「フォアキャスティング」から「バックキャスティング」への視点の移動です。
 つまり、未来から現在を観る『逆算』が「自地域や自社」の価値創造と上図の「競争優位&将来収益の源」につながります。
 現状に嵌まっていないで、転移(ジャンプ)しましょう。

 「生成AI」について記しましたが、「生成AI」が「推論」の能力を持てることがわかり、そのことで、私たちのビジネスやライフスタイルは劇的な変化が起こっています。
 第363夜に、「生成AI(AX:AIデジタル)」の急激な進展(推論の獲得)について案内しましたが、下図の「未来の姿」に「生成AI」(Another)を置いて、それを大前提として、現在(One)を変革することが喫緊です。それは、上図の「生命サステナブル(SX)」も同じ構図です。

⇒「『AI/SX』 に職を奪われるのではない。『AI/SX』を使いこなす誰かに職を奪われるのだ」

  繰り返しになりますが、これまでの「既存の枠組み(One)」を取り払って、「新しい枠組み(Another)を組み合わせて価値創造」する視点に『転移』させることの有無、出来不出来で皆さんの将来は大きく変わってくることを申し添えておきます。

■ 自分の「思考の拠点(拠り所)」を移してみる
 上記でお伝えしたかったことは、自分の「思考の視点・拠点」のありかで、大きく結果が変わってくることです。「視点・拠点」を動かさなければ、「オペレーション型の改善」への注力しかありません。しかし、この「改善」は同業者も同じことを続けているので「違い」を出すのが困難です。
 「思考の拠点、拠り所」を転移するのが、「イノベーション型の革新」です。その方法が「3つの知」になります。

 さて、前夜(第355夜)大谷翔平選手の目標達成シート(マンダラチャート)を紹介しましたが、上図の「赤丸の未来の姿」に自分の思考の拠点を中心に置いて、達成するための施策をマンダラ(8つの箱)に展開しています。

 重要なことは、大谷翔平選手が
・なぜ、マンダラチャートのど真ん中に『ドラフト1位 8球団』(=Another)
 というビジョン(目指すこと)を記したかということです。
私たちは、この『ドラフト1位 8球団』と記されたその「奥底」にある『一番大切な自分ごと(切実)』に想いを馳せなくてはいけません。「深い知(第85夜)」に隠された『覚悟』があります。
隠れているもの、内在しているものの本質を見つけ出すことが肝要です。
 その流れを次にご案内します。

■ 切実→逸脱→別様(第309夜、第322夜、 第333~334夜詳細)
 以上を踏まえて、「価値創造」の本筋(メインプロセス)をご案内します。

⇒「切実(本気、自分ゴト)→逸脱(対象の本質と転移)→別様(新しい本流、Another)

切実(Seriousness / Urgency): 現在直面している差し迫った、解決すべき課題や要求、あるいは深い願望・切望を指します。価値創造の出発点となる「現状認識」「動機」や「心の拠り所」です。(⇒深い知)

逸脱(Deviation / Transcendence): 既存の解決策、常識、確立された規範、あるいは期待される行動様式を意図的に破ることを意味します。これが創造的な飛躍やイノベーションの鍵となる段階です。「守破離」(第88夜、第330夜)の「破」にあたります。(⇒深い知・高い知)

別様(Difference / Alternative): 逸脱の結果として生まれる、従来とは異なる新しい状態、解決策、あるいは新しい価値観を指します。新しいパラダイムや創造された価値そのものです。(⇒広い知)

■ 『虚に居て実を行ふべし』 (第191夜、第333夜)
 さて、2018年の夏に松尾芭蕉の句で有名な山寺を訪ねました。
・ 「閑さや岩にしみ入る蝉の聲」
・ 「蛙飛こむ水の音

 何故、ここで芭蕉の句を登場させたのでしょうか?
 それは、松尾芭蕉が本夜のテーマである「One(現実)とAnother(心)」を結び付けて、それまでの言葉遊びにすぎなかった、貞門俳諧や談林俳諧の停滞を脱して、芭蕉が心の世界を打ち開いたイノベーションの句だからです。
 古池の句は現実の音(蛙飛びこむ水の音)をきっかけにして心の世界が(古池)が開けたという句です。つまり、現実と心の世界という次元の異なる合わさった『現実+心』の句であるということになります。
 この異次元のものが一句に同居していることが、芭蕉の句に躍動感をもたらすことになります。
心の世界を開くことによって主題(問題・課題)を変遷させ、音域を広げ、調べを深めていく。
そして数年後、芭蕉は「古池や」の流れに繋がる句を作りたくて「みちのく」を旅する。即ち「奥の細道」につながります・・・

 本日の主題です。
 少し加筆しますが、芭蕉は次のように言っています。
⇒ 「実(One、here)に居て虚にあそぶことはかたし、 虚(Another、there)に居て実を行ふべし」

 上記を私が現代語訳すると、
「日常的な現実世界(実・here・One)に身を置きながら、真理や未来世界(虚・大元・there・Another)の視点に立って物事を考えることは難しい。むしろ、真理や未来世界のAnother視点(虚・大元・there)に立ちながらこそ、日々の現実的な行動(実・here・One)を適切に行うことが必要である」

 現実の枠・常識の中(One)では改善はできても新しい成長に向かうことは難しい。「利他」に向かう「未来の姿」を突き詰めて「目指す姿、ありたい姿」(Another)をイメージして現在に戻り、現実を革新していく。それを何度もお伝えしました。

■ 参考①: 『別』とは何か?
 『別流』が、本夜の『OneとAnother』を読み解くキーワードになります。
理解を深めていただくために、「『別』とは何か?」について、松岡正剛師匠の言葉を加筆引用します。

ーーーーーーーーーーーー
 「『別』とは何か?」
・・・日本では古来、「別当」「別業」「別所」「別格本山」「別伝」などというふうに、格別な位や場所や建物をあらわす場合に、しばしば「別」の字を使ってきた。「特別な」「別格の」「とりわけ」という意味合いだ。
 ・・・「別」は何を意味しているかというと、「one」に対する「another」をさしている。oneがあってもなお「もうひとつの(別の)another」がありうることを言っている。「もうひとつのone」としてのanotherがあることです。
 ・・・われわれは不確実で不確定なものには慎重になる。慎重になると、行動や決断が先送りされる。果報は寝て待てになる。
個人が慎重になるのはそれでもいいかもしれないが、組織はその先行きが見えない不確実な状況のあいだも、システムを維持していかなくてはならない。仮になるべく冒険をしないようにしたとしても、何もしないことにもコストがかかる。成長してきた組織やビッグシステムにとっても、そのコストは膨大だ。
 こうした隘路に立たされないようにするには、どうするか。

 成長期の早期から、いくつかの「別様の可能性(コンティンジェンシー)」が発現されるように仕組んでおくべきだったのである。・・・
ーーーーーーーーーーーー

■ 参考②:「今・イノベーション時代」に必要な心得と方法
 本夜は、長々と綴ってしましました。
 昭和の時代はやることがわかっている、到着先まで「レール」が敷いてある「鉄道の時代」・「オペレーションの時代」でしたが、その後、「失われた35年」が続きました。令和の時代は、そのレールがない「航海の時代」・「イノベーションの時代」にとっくになっています。

 あらためて、私が主催する研修・セミナー・伴走支援プロジェクトでは、上記「航海の時代」に転移、適応するために『ドック入り』してもらい、「イノベーション型人財(事業、地域)」に変身・変容していただいています。

・「価値創造」で、多くの人々を幸せにしたい
それが「新価値創造研究所の使命」です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第365夜:『価値の高い仕事は何か』を考え抜く

2025年11月28日:価値の高い『あてど(当て所)』を突き詰めて考える

 前夜では、「価値」を生み出す「3つの知」の体系をお伝えしてきました。
重要な観点は、
①「価値創造」の答えは、「3つの知」の余白にあるコト
②その「余白を見つける共通の手法」は、これまでの「常識、枠、境界」をまたぐ、越えるコト(=卵の殻を破ること)
③それら「三つの余白」を突き詰めて答えを出すコト
 にあります。

■ 『あてど(当て所)』」を突き詰める
 それらを踏まえて本夜は「価値創造の『あてど(当て所)』」に注力して案内したいと思います。
「あてど」という言葉のもともとの意味は、
・「そこ(的:まと)をねらって矢などを命中させる」
・「刀などを当てる所、当てようとする場所」
 のことですが、転じて、
⇒「物事をするにあたって、目あて・目的とするところ」
 をいうようになりました。

 さて、「価値創造による成長経営」を遂行するにあたって、目の前の局面のどこ(Where,What)を「あてど(当て所)」にするかで、結果は大きく変わってきますね。
それでは、下図(「イシューから始めよ」加筆引用)」をご覧ください。


 この図は、
横軸が、「課題解決の必要性の高さ(度合い)」
縦軸が、「課題の解決レベルの高さ(度合い)」

 で、簡易的に4つの箱(A.B.C.Ð)に分けています。

 さて、「皆さんの仕事やテーマは、どこにプロット(観測値を点でグラフに描き入れる)されますか? その仕事の「本来と将来」を考えて、書き入れてください。
 という演習を下記ワークショップの出だしのタイミングで行うことが多くなってきました。
・企業、自治体の「成長経営」ご支援
・起業(アントレプレナーシップ、スタートアップ)の研修、講演
・「発想・構想・実装」の研修、講演

 やはり価値のある「あてど(当て所)」は、右上B(価値の高い仕事)の象限(箱)ですよね。
 課題解決の必要性が高く、解決レベルが高いものを両立できれば、世の中(社会)から喜ばれ、評価され、顧客からの対価が大きくなります。結果的に、地域や企業が『成長』する一丁目一番地の象限(箱)です。

 若い人たちも右上の仕事を早期から携わることで、やる気や生きがい、対価、そして人生が変わってくるのは容易に想像できます。
そうであれば、このB箱(領域)の「価値(バリュー)の高い仕事は何か」を時間をかけてでも突き詰めることがとっても重要なのが分かります。このことに賢明な「外部の知」を活用することも有益です。(第2創業、第3創業の時に呼ばれることが多いです)

 そのワークショップから、皆さんの「プロット分布」から見えてくるのが、「A箱(領域)」のプロットが多いことと「C箱(領域)」のプロットが少ないことです。
経験上、この「A箱」ルートから「B箱」に移行することは余ほどのことがなければありません。それは、もともと「課題解決の必要性」の弱い(低い)ことが底流にあるからです。

 挑戦するのは、「C箱」から「B箱」に移行するルートです。その時に重要なのが、将来の「B箱(価値の高い仕事)」が何かをしっかりと突き詰めておくことで、その準備、溜めとして「C箱」で磨きをかけることです。
 そして、その時に役立つのが、前夜(第364夜)に詳細と事例を綴った「3つの知」です。
「3つの知」を突き詰めると、これまでの機能や常識とは異なる別流の意味(深い知)、将来像(高い知)、ワンランク上の価値(広い知)が生まれてくることを後述します。

 この「C箱」から「B箱」に自動的に移行している最適事例が、下記の「SDGsシフト経営」です。その「本来と将来」が自分の中でイメージできたため、10年前の2015年から、新価値創造研究所は、イノベーションによる「SDGsシフト経営」の伴走支援に舵をきりました。

■ 「SDGsシフト経営」とは、「B箱(領域)」経営!
  対象課題を「深く読み、高く読み、広く読む」こと(=3つの知)で、「B箱」の将来の姿が浮かびあがってきます。その姿(価値)を持って、下図の様に、現在に還ってくる、逆算して展開することがポイントです。

 SDGsとは、「必要性」が高く、迅速に実現して欲しい「17の社会課題」が選択されています。
つまり、「SDGs経営」にシフトすることはとても「意味のあるコト」「大切なコト」であり、それは「B箱(領域)」経営そのものです。

 それを、ボランティア活動やSDGsウォッシュ(企業が実態が伴わないにもかかわらず、あたかもSDGsに熱心に取り組んでいるように見せかけること)にしないで、企業、自治体は、「本業×SDGs社会課題」を両立して対価(利益)を持続的に創出することが『成長の源』です。
 これまで「SDGs成長経営」に深く関わってきましたが、周りを見渡すと、多くの企業が「C箱(領域)」でとどまっていて、「SDGsウォッシュ」のままなのが残念です。
 どう解決するかは、「SDGs経営の多くの図解と事例」(第281夜、SDGs 経営塾:全 10 回コラム詳細)で、実例と共にお伝えしてきましたのでそちらを参考にされてください。
https://www.kiraboshi-consul.co.jp/column/sdgs_vol2/

  前夜にも紹介しましたが、上図の逆算について中学生、高校生、大学生、社会人が納得されるコンテンツが、「大谷翔平選手の高校時代に目標達成シート」(下図)です。「なりたい姿からの逆算」が現在を変えていくのが実感できます。
 上記「目標達成シート(マンダラチャート)を自分ゴト(会社・地域)としてワクワクと検討され、そこを埋めて隆々とした姿、状況をイメージすることを通して、「C箱」から「B箱」にルートが容易になります。
 各研修、セミナー、ご支援プロジェクトでは、皆さんにシート作成に挑戦していただいています。効果絶大です。

■ 『成長経営』は、B箱「価値の高い仕事」から得られる
 B箱「価値の高い仕事」は、二つの要素(軸)でできています。
その二つの要素をしっかり認識して両立することが『成長経営』につながります。
それでは、その要素を確認していきます。
① 横軸「必要性の高さ」=大切なコト、意味のあるコト ⇒「深い知」
② 縦軸「解決レベルの高さ」=解決スキル ⇒「高い知」・「広い知」

 ①の横軸「必要性の高さ」は、「心の領域」です。
それは、下図の「大切なコト、意味のあるコト」「meaning」です。
第364夜でお伝えした「3つの知」の中の「深い知」を突き詰めるコトです。
そして、「新しい現実」という高い価値が生まれてきます。


 ②の縦軸「解決レベルの高さ」は、「解決スキル」の領域です。
第364夜でお伝えした「3つの知」の中の「高い知」「広い知」を突き詰めるコトです。
・「高い知」は、上記「深い知」を基盤として、「将来、何を目指すか」を突き詰めます。
 ⇒ それは、過去と現在をから「未来」を豊かにする方法です(=温故知新)
・「広い知」は、上記「深い知」と「高い知」を「具現化する方法」を突き詰めます。
 ⇒ それは、異質な二つを掛け合わせて一つ上のレベルの価値を創出(=主客一体)
上記「高い知」と「広い知」に共通するのは、
下記の様に、二つのものを両立させることです。
・「高い知」:過去と現在(時間軸)
 事例: 過去(寺子屋、よろづや、炭焼き等)
・「広い知」:異質な二つ(空間軸) 
 事例:本業×SDGs社会課題、本業×AIデジタル

■「A箱」のアウトプットをキッチリ出すのに必要なコト

 上記を踏まえて、本当に「大事なコト」をお伝えします。
 それは、
・心の領域: 切実、本気、自分ゴト、志、おおもと(深い知)
・モノゴトの見方の領域: 時間軸(高い知)、空間軸(広い知)
 という皆さんの内側にある二つの領域「心」と「モノゴトの見方」のステージ、フェーズを変える、上げるコトにあります。
 もう一歩踏み込んで言えば、「心の領域(大切なコト、意味のあるコト)」のレベルを上げる(志、本気)ことができれば、「モノゴトの見方」は必ず追随してきます。
 あなたの「心」のスイッチは他の誰からも入れられず、「あなた」しかONできません。
ただ、「高い知」「広い知」を習得することで、「深い知」のスイッチが入った経営者もおられたことを申し添えます。

 最後に、「価値の高い仕事」を突き詰めると「価値の高い人生」に繋がってきます。
その高みに変容する皆さんの声、表情、姿を現場で目撃するのが大数寄です。

そして、ここから「事業創生、地域創生、人財創生」の物語が始まります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第364夜:「新成長」を生み出す「3つの知」

2025年11月19日:価値創造を実現する「3つの知」を「しる→わかる→かわる」

 「事業(企業)の大目的は『顧客価値の創造』です」(第82夜、第170夜、SDGs経営塾第10回に詳細)
「顧客価値の創造」が継続的にできなければ、急速に商品・サービス・ブランドの魅力がなくなります。それは、顧客からの「対価」がなくなることを意味しています。企業は、先を読んで『世の中の変化』に適応して、「新しい価値」を創造し続けなければ生き残れないことをこのコラムでは繰り返しお伝えしてきました。

 「顧客価値の創造」とは、「世の中に役立つ未来を先取りすること」を目的(鍵穴)として、「イノベーション(3つの知)」の方法(鍵)を通して実現することにあります。下図の様に、「価値創造」と「イノベーション」」はコインの裏表です。

 日本の失われた35年から「離脱・脱皮」する最上の方法が『価値創造』です。従来通りの「事業の業務改善」だけでは立ちいかない「後戻りしない変化(トランスフォーメーション)」による様々な課題が顕在化しています。そこに必要なのは、「業務改善」対応ではなく、「事業革新(改革)のための『価値創造』」です。

 それをスティーブジョブズは、「Think outside the box(=箱を出る)」と言っていました。彼の口癖だったそうです。これまでの「価値観の箱(常識・枠・殻)」をはみ出る、跨ぐことです。
従来の「枠・境界」を越えて「逸脱」しないと「新しい価値」は生まれません。
下図は成長経営するための境目・境界を乗り超える『逸脱』の「3つの知」軸を表しています。
そこに、『深い知(人間軸)・高い知(時間軸)・広い知(空間軸)』という体系的な「3つの知」があります。

・下図の様に、「価値創造・3つの知」は、成長経営の羅針盤(ミッション・ビジョン・イノベーション)そのものに直接つながってきます。

・そして下図の様に、この「3つの知(型)」は相互に関係しあって、
「Why?→What?→How?」という本筋となります。

■ 「価値創造」のための「逸脱」の方法:「Think outside the box」(第170夜詳細)
  「顧客価値創造」のための『逸脱(=箱を出る)』の方法は二つだけです。(第75夜)
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1.不要なものを削いで取り除いて核心に辿りつく方法(深い知)
2.モノやコトを新しく結びつけて革新に辿りつく方法(高い知、広い知)

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 この二つは、もともと日本が得意としてきた二つの方法です。(第362夜に詳細)
「2.モノやコトを新しく結びつけて革新に辿りつく方法」の「高い知」と「広い知」は同じ方法なのですが、対象が「時間軸(高い知)」「空間軸(広い知)」が違うものです。
 詳細は図解と共に後述します。

 ⇒上記1.2.二つ(2軸)が、『ビジネスで最も大切なコト』です。
1.『A.共感』を生み出すコト:不要なものを削いで取り除いて核心に辿りつく
2.『B.違い』を創るコト:モノやコトを新しく結びつけて革新に辿りつく
 上記二つは、『経営の2大戦略』に繋がってきます。

 さて、この二つは「別々のもの」ではなく、「二つでありながら一つ」です(第82夜:「違いと共感」に詳細)。 身近な例では、「鍵と鍵穴」「表と裏」「陰と陽」「心と身体」「夫婦」「坐禅の結跏趺坐」「縁側」「陰翳礼讃」等があります。
 (参考:私達の心と身体が二つである、と考えるとそれは間違いです。心と身体が一つである、と考えるとそれも間違いです。私達の心と身体は、“二つでありながら一つ”なのです)

 それでは、それぞれ、「共感」と「違い」を要約していきます。

⦿ [A.共感]: 『共感度』が低ければ対価も下がります。現在の市場の短期的な「共感」にだけフォーカスしていると「違い」への逸脱ができ辛くなります。「共感」にもグラデーションがあって、慣れてくると価値が薄れてきます。他との「共感度」に差がなくなれば、図解の左側の低い「共感」に向かいます。顧客の「NEXT共感」を明確にして顧客を捉える想像力が必要です。

⦿ [B.違い]: 他と『違い』がなければ、「低い提供価値」になります。そうなると、顧客の関心・興味が薄れて対価が減り、次の価値づくり、投資が出来なくなります。事業継続の維持が危ぶまれてきます。
 前職パイオニア社では「総合研究所や技術研究所」に在籍していましたが、シーズの「違い」ばかりに目を奪われて、それが世の中に、顧客に、本当に役立つのか、ニーズがあるのか、共感するのか、を見極めないで突っ走り、結局何も成果が出せなかったという事例を多くみてきました。複数の他業種の研究所に、「シナリオプランニング」のご支援でうかがいましたが、どこも同様の悩みがありました。

 あらためて、「企業の目的は、“顧客価値”をつくること」にあります。それを維持・継続できなければ、企業の存続は困難になります。 その“顧客価値”をつくることができる、ただ二つの機能が上記の『違いと共感』です。

 さて、『違い』をつくるのは「技:イノベーション」で、『共感』を生み出すのは「心:マーケティング」です。(第32夜参照)
 因みに、企業では「イノベーション(違い)」は、主に研究開発・技術開発部門が担当し、イノベーションは『技(Skill&Style):新結合』を扱い、「マーケティング(共感)」は主にマーケティング部門が『心(Will&Smile)』を扱います。

 図解の様に、“二つ(2軸)でありながら一つ”の高み(右上の象限)に持っていくこと、両立することがポイントです。 詳細は第82夜をご覧ください。

■ 「顧客価値創造」を実現する「3つの知」

「1.不要なものを削いで取り除いて核心に辿りつく方法」が「深い知」(方法A)です。
「2.モノやコトを新しく結びつけて革新に辿りつく方法」は2種類あります。
ーーーーーーーーーーーー
・一つ目は、時間(過去、現在、未来)を結びつける「縦の新結合」
      =「高い知」(方法B)
・二つ目は、空間上で複数のモノ・コトを結びつける「横の新結合」

      =「広い知」(方法C)
ーーーーーーーーーーーー

 それぞれ、「SDGs経営塾(全10回コラム)」に詳細を上げていますので、事例や図解は下記のURLでご覧ください。要約は後述します。
⇒「A.深い知」:人間軸のイノベーション
https://www.kiraboshi-consul.co.jp/column/sdgs_vol6/
⇒「B,高い知」;時間軸のイノベーション
https://www.kiraboshi-consul.co.jp/column/sdgs_vol5/
⇒「C,広い知」;空間軸のイノベーション(=主客一体)
https://www.kiraboshi-consul.co.jp/column/sdgs_vol4/

■「A.深い知」:人間軸のイノベーション(禅的思考)
 https://www.kiraboshi-consul.co.jp/column/sdgs_vol6/
・「A.深い知」は、不要なものを削いで取り除いて『核心』に辿りつく方法(深い知)です。
それは、日本人が本来得意としてきたもので、禅、茶道、枯山水、わびさび、俳句・俳諧、おもてなし等に代表される奥義です。

 それは、「ビジネスの大元(経営のあり方)」につながる重要なスキルです。
 ・そもそも何のためにビジネスをおこなうのか?
 ・いったい世の中の何を変えたいのか?
 ・何を大切にするのか?
という大変化の時代(第361夜)の経営者の心の根本レベルの“あり方の再定義”が、社内外から求められています。

そのために経営者は、下記の生活者ニーズの変化を先取り、深堀していくことが必要になります。
・所有(○○が欲しい)→使用(こう使いたい)→あり様(こうでありたい) 
「あり方、あり様」まで枠を超えられるかどうか(深堀)が、成長有無の分岐点になります。
 ここで重要なことは、「いま自分(自地域、自社)が置かれた状況、局面」において、
 ①それは意味のあるコト(下図のmeaning)なのか
 ②それは必要性が高いコトなのか
 という社会性、経済性、環境性を確認・確信しておくことが、結果的に持続性、成長性に大きく関わってきます。
(事例を使って後述します)

 今の時代、下方の赤枠の三角形には、“本当はこうでありたい”という『真善美』の価値を見つけること、『意味(meaning)』を見つけることが、事業(企業)の成長につながってきます。(これも後述します)
 『真善美』(第235夜詳細:素直な心)とは、人間が生きる上での理想の状態を3つで、
・「真:偽りのないこと」
・「善:良いこと・道徳的に正しいこと」
・「美:美しいこと・調和していること」
を表現した言葉です。社会性に大きく関与してきます。

 実例の図解でお伝えしますが、「あり様:being」の領域には、『真善美』に深く紐づいた経営者の深い言葉(コンセプト)が入ってきます。それが、経営(事業)の「ミッション(使命)」「パーパス(存在意義」や「創業」に繋がってきます。

・事例の一つ目に、「アルコールフリービール」を上げます。
 キリン(株)は、アルコールフリーという画期的な製品で新しいビール市場を開拓しました。その女性開発者の“大切にした想い”を紹介します。
 「2007年は、飲酒運転撲滅の雰囲気が世間にありました。いくつかの大きな事故があり、警察の取り締まりが強化されるなど、飲酒運転はダメという消費者の意識が強くありました。お酒が原因で悲しい事故が発生するのが嫌だったんです」
 開発者の大切で切実な願いは、
 ・「飲酒運転がなくなる幸せ」
 でした。
 その“あり方”が土台にあることで、技術開発やマーケティングの“やり方”も変わって成功につなげました。

 さて、ビール事業にとってのコアは“酔えるアルコール”です。その一番のコアを無くしてしまうのは凄い決断だと思いませんか?でも、女性開発者にとって重要な熱い想いは、“飲酒運転のない幸せ”でした。本業と社会課題(飲酒運転)が結合して、ここから「アルコールフリー」という新しいビール市場(新事業)が創出されました。

 前職のパイオニア社が開発した“カラオケ市場”も上記と同様に、歌手にとって一番大事な“歌”の部分を抜いてしまいました。そのことで、歌手ではない一般の人たちが“主役”になって新しい市場と文化が生まれました。

 2013年に東京国立博物館がWEBサイト上で行った人気投票「あなたが観たい国宝は?」で一位に輝いたのは、長谷川等伯の『松林図屏風』でしたが、引いて引いた余白の負の美学がそこにはあります。 その引き算、余白、空白が観る人の想像力をかき立てます。

 方丈の前の庭である京都の龍安寺の『枯山水』はどうでしょうか?水を感じさせるために水を抜いた枯山水は、日本人の究極の美学をあらわしていますね。

 能、禅、わびさび、俳句、山水画等々、引いて引いく『引き算の美』『余白の美』という方法が日本には息づいています。

 そう、「本業のコア」に執着しないことがポイントです。“大切なこと”、“大切な想い”、“社会課題”に思いを馳せて、様々な制約をはずして、引いて引いて自在になって「余白」をつくること、「別流(another)」をつくることが新しい価値を創造します。

・事例の二つ目として、「北海道旭川市にある旭山動物園」を上げます。
 時は1997年にタイムシフトします。その頃、全国の動物園の来園者数は右肩下がりで減り続けていました。
 当時、旭山動物園の獣医係長(現園長)の坂東元さんは、従来の“パンダやコアラという奇獣、珍獣で来園者を集めるやり方や動物の姿を見てもらうための「形態展示」”ではなく、“普通の動物の本来の行動や生活を見てもらう「行動展示」”へと転換を図りました。メディアにたびたび取り上げられ、国内外からたくさんの観光客がくるようになりました。

 さて、坂東園長が転換を決意した“最も大切にした想い”は何でしょうか?
ここは大事なので、皆さん少し考えてみてくださいね。

⇒旭山動物園が掲げる永遠のテーマは、「伝えるのは命」です。

そこには、坂東さんが獣医として“動物の命”の大切さにずっと寄り添ってきたことが込められています。そのテーマによって、これからの時代の主役になる子どもたちが、動物たちの未来や地球の未来を真剣に考える場所になっています。

 旭山動物園が大事にする赤枠の中に入る言葉は「命の大切さ(を伝える)」でした。

 ここで重要なことは、経営の“あり方(目的・縦軸)”が変わることで、“やり方(手段・横軸)”が変わることです。それまでの「形態展示」から、「普通の動物の“行動展示”」というやり方に転換しました。そのことで、右肩下がりの来園者数が急激な右肩上がりになり、旭川市を含めて経済価値(利益)が上昇しました。


 「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさい。そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると新しい世界(=現実=色=確信)が観える(「空即是色」)ということです。(第85~86夜)
 人々から喜ばれる「新しい現実」を創るコトが「価値創造/イノベーション」の狙いです。

 研修、セミナーや新事業開発プロジェクト/創業プロジェクトご支援では、
「A.現実→B.大元→C.新しい現実」の流れを「色即是空・空即是色」を使って、理解を深めていただいて、自社向けに展開・策定していただいています。

 下図に、「経営」を図解しています。
「経営」の“経”という字は、縦糸のことを表しています。“経”という縦糸(あり方:being)と“営(いとなむ:doing)”の横糸(やり方、行動)で織物が紡がれます。
 経営が行き詰っている時は、それまでの横軸の“やり方(doing)”が行き詰っていることが多いものです。是非、そのような時は経営の縦軸の“あり方”(目的、道理、意味:being)に目を向けて、再定義することにトライされてください。
 上図の「おおもと」が「経営のあり方」です。その再定義の挑戦の場が赤枠の三角形です。

■「B.高い知」;時間軸のイノベーション(=温故知新)
https://www.kiraboshi-consul.co.jp/column/sdgs_vol5/
・「B.高い知」は、「将来、何を目指すのか」という経営の「ビジョン」に繋がってきます。
・いきなり、現在から未来を見るのではなく、過去を紐解くと「未来が豊か」に見えてきます。
・“過去と現在”を縦(時間軸)に配置して、双方を新結合でブリッジして、新しい全体(1ランク上の価値創造)を創出する方法です。(事例を後述します)

 それは。過去を温(たず)ねて、元々のあり方(本来)を知ることにより、過去と現在の“両方の知”を豊かにして結合することで将来の新しい価値が生み出す方法です。 
 弓道のイラスト図を載せましたが、 矢を的(まと)に的中するには、弓を後方に引いて溜めをつくりますね。いきなり未来を考えないで、この大きな溜めが前に飛翔するための原動力になります。将来という的を射抜くために、過去と現在の十分な溜めが肝要というイメージがこの図から伝われば幸いです。

 参考に、10年前の2015年にご支援して、作成したものをご案内します。
 ①コンビニの本来と将来(2015年に作成)

 ②エネルギー事業の本来と将来(2015年に作成)

 是非、本業や業界の本来を紐解いてみてください。
改めて、どのように将来を紐解いていくのかのコツを下図でお伝えします。
ポイントは“A: 過去のGood!”という現在の中では薄れてしまったものが、“B: 現在のBad!(社会課題)”と新結合することで、新しい全体として、“C: 将来のGreat!”に甦ってくるという図式です。
ただ、この図式はすぐには使いこなせないという声が上がります。
・A: いったい何を過去(本来)に置いたらいいのかわからない
・B: 現在のBad!に何を入れたらいいのか
・C: Great!に記した内容に自信が持てない

そのため、成長経営のご支援では、“時間軸のイノベーション”事例をビデオや演習で体感いただき、“インターホンの本来と未来”という誰でもわかる事例から、次々に複数のテーマを検討してもらうと、だんだん手法に慣れてきて、“自社(業界)の本来と将来”を自ら導きだすことができるようになってきます。
 本業の“本来と将来”“のありたい姿”が明確になり、成長経営への道を進まれている多くの社員・経営者の方々を輩出してきました。

 ・下図は、もう25年前の2000年頃に作成したものですが、これから世の中を大きく変えていく「デジタルの本来と将来」も載せますので参考にされてください。(詳細は、第363夜をご覧ください)

・下図のように、現在は「現状から積み上げる(フォアキャスティング)中期計画」では行き詰まりが多く見られます。SDGs成長経営やAIデジタル成長経営等で、私たちに重要なのは未来から現在を見る(バックキャスティング)という視点の転換です。
 この「未来の姿」を導き出すのが「高い知」の方法です。
企業、地方自治体の「ビジョン」(何を目指すのか?何を変えたいのか?なりたい姿は?)」につながって成長経営に直結します。
これまで多くの高校生、大学生、社会人(企業・自治体)の方たちと共に作成してきましたが、これからが楽しみです。

 上図について、中学生、高校生、大学生、社会人が納得されるコンテンツが、「大谷翔平選手の高校時代に目標達成シート」(下図)です。「なりたい姿からの逆算」が現在を変えていくのが実感できます。
 各研修、セミナー、ご支援プロジェクトでは、皆さんにシート作成に挑戦していただいています。効果絶大です。

■「C.広い知」;空間軸のイノベーション(=主客一体)
https://www.kiraboshi-consul.co.jp/column/sdgs_vol4/

 「イノベーション」の本質は、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展することです。それは「『異質なもの』を自分の内部に導入して、一段高い次元での解決策(新バージョン)で成長する」ことにあります。(第361夜)

・「広い知」は、空間上で異質な複数のモノ・コトを両サイドにおいて、二つを結びつけて1レベル上の価値を創出する「横の新結合」です。

 分かりやすい事例が下図の
・「異業種コラボレーション」(第312~313夜他)
・「本業×SDGs(17の社会課題)」(第314夜他)
・「本業×AIデジタル」(第363夜他)
 等であり、それは、新しい市場・文化・スタイルを創る基盤になります。本コラムでは、数多くの事例をお届けしてきたのでご覧ください。

⇒「生成AI」(第363夜)と「人不足」を掛け合わせて、悩んでいる現場と結びつけてみましょう。

・AIロボティクス×医療介護(介護の現場、高度施術、認知症、コミュニケーション・・・)
・AIロボティクス×建築現場(解体、搬入搬出、カスタマイズ設計・・・)
・AIロボティクス×農業・漁業・林業等
・AIエージェント×全ての業務(経営、企画、設計、マーケティング、営業・・・)
Others

 参考に、広い知「本業×SDGs」の企業実例をご紹介します。

・そして、これからの日本の原動力となる「新成長ルル三条」を上げます。
 本コラムの第359~363夜に詳細を綴っています。


■ 体系的「3つの知」

 ここまで「深い知」「高い知」「広い知」をご案内してきました。
それらは、従来のやり方、考え方、常識を超える方法です。そして、その方法は、決して特別なものでなく『革新』を起こすために様々に使用されてきた価値創造の『知』です。

 下図をご覧いただくと直ぐにおわかりいただけると思いますが、赤い枠線(▽・〇・◇)の中が「空白・余白」になっています。首記に記した「Think outside the box(=箱を出る)」です。
 それは、これまでの「価値観の箱(常識・枠)」をはみ出たところにあります。従来の「枠」を越えて「逸脱」しないと「新しい価値」は生まれてきません。

 ビジネスの「行き詰まり」というのは、余白(=新しい可能性)が思い浮かばないことです。
でも、クライアントのお話しに耳を傾けていると、「自ら制約を設けてしまって、モノゴトの見方や視座を狭くしてしまっている」ことが多いことを実感します。

よく経営者から聴く「行き詰っている」というのは、この「空白・余白」が見えていないことが多いのが実感です。実際のご支援では、共にその『制約』や『常識』の殻を破って「3つの空白・余白」を埋めることで、ワクワクする視界が広がってくる喜びを数多く経験してきました。

さて、「3つの知」を進める順番なのですが、『深い知』⇒『高い知』⇒『広い知』で行うことをお薦めします。

『深い知』は、「大切にすることは何か」という事業の再定義につながり、ミッション(使命)を生み出します。自分達が何に「命を使う」のかに関わってきます。当然、ワクワクするものに命を使いたいですよね。船でいう錨(アンカー)の役割です。
『高い知』は、「何を目指すのか」という「新しいビジョン」に繋がります。そのポイントは、「温故知新(故きを温ねて新しきを知る)」です。現在と過去を豊かにすることが将来を豊かにすることに繋がります。
 これが、船・航海で例えると、「北極星」を見つけたことになります。そして、『深い知』からの新しい形(世界と世間:第80夜)を見つけることに繋がります。(=空即是色)
『広い知』は、上記「深い知(ミッション)」と「高い知(ビジョン)」をつなげたビジネスの新機軸の世界を具現化する『イノベーション』の役割(下図)を持ちます。
 この「広い知」が、『内側に異質なものを導入して新しくする(新結合:Innovare)こと』を実行(:-tion)して、経済や企業が発展すること(=イノベーション)そのものです。それは「『異質なもの』を自分の内部に導入して、一段高い次元での解決策(新バージョン)で成長する」ことで、新しい市場・文化・スタイルを創ります。

 是非、多くの方達にその方法と心得を挑戦・習得いただいて、「本質的な違いづくり、共感づくり」、「地域(地球)幸福」、「成長経営」そして、「事業創生・地域創生・人財創生」を通した「幸せづくり(Well-being)」に挑戦していただけると嬉しいです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ