橋本元司の「価値創造の知」第347夜:本質とは何か?洞察力とは何か?

2025年2月12日: 洞察力とは「本質」を見抜く力、見通す力のコト

■「本質」と「洞察」
 「本質」という言葉が、より多くのTV放送等の情報メディアで使われるようになりました。
「これから先がどうなるのか」を読み解くには、表層情報ではなく、もっとその奥にある「深層の根源的なモノを把え、見抜くことが肝要である」というように推察しています。

 私は『本質』を把えるコトが大数寄(第331夜)人間です。
「本質」を把えることができると、モノゴトの動きや流れや未来の常識(未常識)が掴みやすく、視えやすくなることを実感してきました。

 情報過多の時代には、情報の見方や考え方の「要(かなめ)」が何かを見究めることが必要・重要になってきます。
表層の情報に惑わされることなく、根源の「要(かなめ)」となる「本質」を把えることが「価値創造」の出力に大きな影響を及ぼします。
私は、『本質』を深く把えたくて、35歳の時に「瞑想」や「禅」の門を叩きました。
何故ここで、「瞑想」「禅(ZEN)」のことに触れるかというと、それらが物事の「本質」を真正面から把える方法に繋がってくるからです。

 いま、スマホが私たちのライフスタイルに組み込まれ、自分の「目」が外に、外に向かっています。「目」の文化です「目」は自分の外側に向かっています。
「目」を閉じて、雑念をはらい、心を鎮めて、内に内に向かっていく「瞑想」「禅」は「耳」の文化、方法です。「耳」のカタチは、自分の内側に、心に向かっていきますね。
それが、「本質」に向かっていく「道筋」です。

 本夜は、「価値創造の知」の要(かなめ)となる『本質』と『洞察』を綴ります。

■「本質」とは何か?
 「本質」を把えるために反対からみてみましょう。
「本質」の反対は、現象、表象です。木で言えば、「枝葉」です。
・「現象」は、外から見える「外面」「外身」「顕在」です。
 それに対して「本質」は、外から見え辛い『内面』『中身』『潜在』です。

 さて「本質」の「質」とは何でしょうか?
⇒「質」とは、物事が成り立つ「もと(本・元)」として考えられるもの。中身。要(かなめ)。
 もう一つの「本」とは何でしょうか?
⇒「本(元・基)」とは、物事がそれによって成り立つ(大事な)所。それを生ずる初めの部分。

 双方、同じ様なことをいってますが、その「本」と「質」の二つを合わせた「本質」とはいったい何でしょうか?
⇒「本質」とは、「そのものとして欠くことができない、最も大事な根本の性質・要素」と言われています。

 それでは、その「本質」を更に突き詰めていくと何処に行きつくのでしょうか?
⇒「本質」とは、「大元(おおもと)」です。
 (「大元(おおもと)」については後述しますが、「瞑想」「禅(ZEN)」は、「大元(おおもと)」につながることが目的の一つです)

「価値創造の知」においては、
⇒「本質」とは、将来の「本筋」「本流(別流)」をつくる「大元(おおもと)」「源流」になります。

■「瞑想」「禅」と「大元(おおもと)」
 「大元(おおもと)」の領域は第333夜に図解しました。(新価値創造研究所オリジナルです)
 「イノベーションの時代」は、「潜在意識」「空意識」の下部を“探求する”“創(きず)つける”“掘り当てる”ことが求められます。(第332夜)
上述のように、自分は35歳の時にビートルズにも影響を与えた「マハリシ・ヨッギの超越瞑想」の門をご縁によりたたきました。(第6夜、第33夜)
そこに入って驚いたのは、大手の企業経営者が多く集ってことでした。彼らは、「心を空にする」ことで経営の方向性や生き方を見出しているようでした。(空即是色)

そう、そこでは雑念をなくす、私心をなくすことを体得して、大事なコトは何か?そして、大事なものにつながることを体験してきました。
「体性、知性、心性」を澄まし、磨いたことが自分の将来に大きな影響を与えました。

 『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは何だと思いますか?(「禅マインド」から加筆引用)
 座禅の姿勢は、「結跏趺坐(けっかふざ)」という右足と左足を組んでいますね。
この姿勢は、『二つではない、一つでもない』という「二元」性の「一者」性を表わしています。
それは、「二つ」にならないということにあります。
一番大切なコトは、“二つでありながら一つ”ということです。
これまでずっとお伝えしてきた「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)のことです。

 「空・虚・大元(おおもと)」の意識領域で、「あり方・あり様(第333夜)」(⇒核心)とつながると、
それが、ミッション(第89夜・使命:何に命を使うか)になります。
そこから、「新しいやり方」「新しい現実」「ビジョン」(⇒確信)が見えてくる。
それを実行・実践するのが「イノベーション」(⇒革新)という流れです。
 
これが、「核心」→「確信」→「革新」(第332夜)という「イノベーション」の流れです。

 さて、上記の「空・虚・大元(おおもと)」掴む感覚は、お寺(禅宗等)の「坐禅の会」などに参加するのも一つの手です。
「坐禅」「瞑想」を行ずると、最初は「雑念」がいっぱい湧き出てきます。それを次々に「無」にしていくのです。(=空じる、行じる)
「無」というのは、「ナイ」「ナクス」のではなく、「雑念」が湧き出てきたら、心・意識の遠くにはらう、「空じる」のです。
それに慣れて繰り返していると、心の中の雑念である「ポカリスエット」の様な「濁り」が徐々に消えてきて、透明に近くなっていきます。(第235夜)
引いて、引いて、心を澄ませていって、「大元(おおもと)」に辿り着いていくのが初歩の行(ぎょう)です。

■「本質」「大元(おおもと)」の図解

 この説明は言葉ではなかなか伝わりづらい、響きづらいですよね。
そのため、それをビジネスワークショップでは、「観察」を通した「旭山動物園」等の複数の分かりやすい演習で疑似体験していただいてます。(第28夜、第333夜)(SDGs経営塾 第6回)

[左上領域:これまでの現実、常識、目的]
・2000年、動物園の来園者数は右肩下がりでした。
・珍獣、奇獣の「パンダ」や「コアラ」で、何とか来園数を上げる「やり方」でしのいでいましたが、それでも右肩下がりでした。
[下部領域:大元・空・虚]
・ここに、旭山動物園の坂東元・獣医係長(後の園長)が登場します。
・普通の動物の“命の大切さ”を子供たちに伝えたい(=あり方、在り様、未常識)
[右上領域:新しい現実、新しいやり方、新しい目的]
・形態展示から行動展示へ
・SDGs対応

 ここで重要なことは、経営の“あり方(目的)”が変わることで、“やり方(手段)”が変わることです。
それまでの「形態展示」から、「普通の動物の“行動展示”」というやり方に転換しました。
そのことで、右肩下がりの来園者数が急激な右肩上がりになり、旭川市を含めて経済価値(利益)が上昇しました。

 旭山動物園が掲げる永遠のテーマは、「伝えるのは命」です。

そこには、元係長の坂東園長が獣医として“動物の命”の大切さにずっと寄り添ってきたことが込められています。そのテーマによって、これからの時代の主役になる子どもたちが、「動物たちの未来」や「地球と自分たちの未来」を真剣に考える場所になっています。

 この演習に、「価値創造」「成長経営」の大きなヒントがあります。
「経営」の“経”という字は、縦糸のことを表しています。“経”という縦糸(あり方)と“営(いとなむ)”の横糸(やり方、行動)で織物が紡がれます。

経営が行き詰っている時は、それまでの横軸の業界の“やり方”が行き詰っていることが多いものです。是非、そのような時は、先んじて経営の縦軸の“あり方”(目的、道理、大元)に目を向けて、再定義することにトライされてください。

図中の「価値創造」の流れがみえてきたのではないでしょうか。
・行き詰まり → 大元・空・虚 → 新しい成長
・ 切実       逸脱       別様
・ 本気       本質      次の本流

■「洞察」とは何か? 

 前夜に『再成長』の構想」に必要になる3項目を綴りました。
2番目に『洞察』があります。
1.予測:未来がどうなるのか?
2.洞察:未来をどう見通すのか?
3.構想:未来をどうしたいのか?

 「未来の不確実性」に適応した「構想」の出来、不出来に最も大きな影響を与えるのが『洞察』のスキルです。
[1.予測]では、各々の業界情報や、様々なメディアからの「情報発信」等を合理的に理詰めで考える顕在意識の左脳活用が中心になります。
(前職パイオニア社では、2年間本社で調査課の課長も兼務していたので少し得意です)
[2.洞察]は、未来という「不確実の洞」の奥底にあるものを見抜くこと、物事(対象)の本質を見通すコト、見抜くコト、見究めるコトにあり、潜在意識の右脳活用が求められます。(右脳活用に、「瞑想」「禅」が有効です。右脳と左脳が統合・相乗すると出力が大きくなりますね)
[3.構想]は、「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)です。[1.予測]という「方」と、[2.洞察]という「方」が交じり合って、[3.構想(右脳×左脳)]という一つ上のレベルに飛翔(イノベーション)するのです。

 ここでお判りのように[1.予測]領域では、「情報」に大きな差が生まれまないことがわかります。
[2.洞察]のステージで、対象(モノゴト)の『本質』を見通すコト、見抜くコト、見究めるコト、が「価値創出」「構想」に大きな影響を及ぼすことを実務やご支援で経験してきました、
『才能』について第340夜に綴りましたが、対象の[能]にある可能性を、人間側の[才]が引き出すコトをお伝えしました。
本質を見通す、見究める「才能」が『洞察力』です。

 つまり、
⇒『洞察力』とは「本質」を見抜く、見通す力です。

■「3つの洞察力(=3つの知)」

 激変するビジネス環境の中、私たちには新しい時代に適応した発想・構想を生み出すことができる「イノベーティブ・スキル」が求められています。
そのスキルが、
 ①人を読み(Insight)
 ②先を読み(Foresight)
 ③新しい全体を読む(Gestalt)
という「3つの洞察力(=3つの知)」(第89夜、第128夜、第333夜)から発想・構想を生み出す「価値創造技術(エンジニアリング)」です。
その原動力となるのが、上記①②③の「本質」を見抜く、見通す『洞察力』です。

 その価値創造の原動力となる「洞察力」には、3つのベクトルがあります。
つまり、3つの「洞察力」があるということです。
この「3つの洞察力」を習得・駆使していただくのが、人財育成の肝(きも)になります。

 それは、「人間(じんかん)」「時間」「空間」という『間(かん)』・『洞』の中にあります。
「洞察力」は、その3つの『間(かん)』を「表象・現象・る外面」から「見えていない根っこ(根源)、核心、大元」まで見抜いていく力です。
それでは、「人間(じんかん)」「時間」「空間」を紐解きます。

 あらためて、『洞察力』とは、
 ①「人間(じんかん)軸」インサイト(INSIGHT):深く人を読む(最も大切なコトを見抜く):第85~86夜、第89夜
 ②「時間軸」:フォーサイト(FORESIGHT):高く未来を読む(未来に向けた先見性)第87~88夜、第89夜
 ③「空間軸」:ゲシュタルト(GESTALT):広く全体を読む(新しい全体をつくる):第83~84夜、第89夜
という三つの軸にあるそれぞれの「本質」を突き詰めて体系化することです。(第21夜)
すると、「価値創造」のイメージが浮かび上がり、それらが交じり合い選定ができて『構想』が立ってきます。
これが「見立て」(第343夜)です。

 具体的には、図にある様に、従来の既知の常識の領域を『3つの洞察力』で超えて『3つの赤枠』(第89夜)を探求し、ゲットすることにあります。
それは、従来の常識に把われた考え方ややり方を手放し、殻を破って、その先にある「本質」「内面」「赤枠」をつかみとろうと本気になることです。
「価値創造」における「本質」は、通常の常識の枠を超えたところに「潜んでいる」ので、簡単には「姿」を現してくれません。
なので、「切実」「逸脱」が不可欠であることを、何度も繰り返し綴ってきました。

■ミッション・ビジョン・イノベーション(第89夜)

 ビジネスで最も大切なコトは、『本質的な違いと共感』を生み、創ることを第82夜に綴りました。
それから第88夜に亘り『本質的な違い』を生み出す3つの抽象化能力(『深い知』『高い知』『広い知』)について、その構造と方法を明示しました。

それは、従来のやり方、考え方、常識を超える方法です。そして、その方法は、決して特別なものでなく『革新』を起こすために様々に使用されてきた価値創造の『知』です。
ただ、それを構造としてまとめ、トリニティイノベーション体系(第67夜)として、3つの関係性を明確にしました。(第77夜)

 その図解をご覧いただくと直ぐにおわかりいただけると思いますが、赤い枠線(▽・〇・◇)の中が「空白・余白」になっています。そうなんです。課題や対象に向けて、意識的に『空白・余白』を設定することで、そこの中身をしっかり洞察し、イメージングすることになります。

ビジネスの「行き詰まり」というのは、余白(=新しい可能性)が思い浮かばないことです。
でも、クライアントのお話しに耳を傾けていると、「自ら制約を設けてしまって、モノゴトの見方や視座を狭くしてしまっていること。そして、本当はこれまで通りにして、変わりたくないこと」を感じます。

その『制約』や『常識』の殻を丁寧に剥がさせて貰って、下記3つの余白から、新しい補助線を差し上げた時に、そこにはワクワクする視界が広がっていることを認識される喜びを数多く経験しています。

さて、「3つの知」を進める順番なのですが、『深い知(人間軸)』⇒『高い知(時間軸)』⇒『広い知(空間軸)』で行うことをお薦めします。

『深い知』は、事業の再定義につながり、ミッション(使命)を生み出します。自分達が何に「命を使う」のかに関わってきます。当然、ワクワクするものに命を使いたいですよね。それは第85~86夜に綴りましたが、大元(おおもと)に戻ることです(=色即是空)。そのために、違う業種業態の幾つかの納得する分かりやすい事例をお示ししています。禅や瞑想の方法もお伝えします。

 茶、枯山水、わびさび、俳句に代表される、『深い知』へ至る方法は、日本人が本来得意とするものです。是非、自信をもって挑戦してください。
それらのヒント、演習を体験した後に、「自らの課題・問題」のテーマに当てはめると、今までの制約・常識と異なるワクワクの新しい風景が見えてきます。それが、船でいう錨(アンカー)です。

 実際のご支援プロジェクトでは、ここまでで30~40%の到達になります。場合によっては、50~60%を超えることもあります。

 次に、ワクワクする拠り所・錨の元に『高い知』のステップに移ります。
その詳細は、第87~88夜に綴りました。『高い知』のポイントは、「温故知新(故きを温ねて新しきを知る)」です。現在と過去を豊かにすることが将来を豊かにすることに繋がります。それがないままに、未来に向かうおうとするので失敗することが多いのです。

「故き」をどこに設定するのかも重要です。この設定がこちらの腕の見せ所になります。それは課題をお聴きし、現在の変化の元(もと)がどこにあるのかを一緒(デュアル)にして捉え編集するのがコツです。そのために、『深い知』『高い知』の多くの経験が必要です。

プロジェクトでは、『高い知』の、複数の分かりやすい事例を提示し、ビデオも数本見て観察いただき、演習で慣れていただき、自らのテーマ・課題に向かうと目指す将来の姿が見えてきます。これが『ビジョン』となります。

これが、船・航海で例えると、「北極星」を見つけたことになります。そして、『深い知』からの新しい形(世界と世間:第80夜)を見つけることに繋がります。(=空即是色)
私自身が、複数の将来を捉えるのが得意な「シナリオプランニング」のプロでもあるので、これが共有できると、プロジェクトは60~70%は到達したようなものです。
プロジェクトの「バリュー・メンバー」の参加者達の目が輝きます。

上記の『深い知』『高い知』を結ぶ軸が、ビジネスの新機軸になります。ミッションとビジョンがつながります。それをメンバーと一緒に、「シナリオマトリクス」「成長マトリクス」に展開して、其々一枚のシートにまとめます。将来を「見える化」「魅せる化」するのです。

そうすると、将来に向けてやらなければならない自分たちの不足が見えてきます。それを自分たちだけで捉えるのか、パートナーと異業種コラボレーションするのかの見極めが必要になってきます。外部コラボには、いい『ご縁』が必要です。

 ここの詳細は、第83~84夜の『広い知』に綴りました。『深い知』『高い知』と同様に、多くの事例をプロジェクトでご紹介し、これまで紹介してきた大三角形「新しい命・物語」を創る方法と心得をお伝えし、自分達でも扱えるようになってきます。

 前職の異業種コラボの「連続ヒット商品」で培った失敗と成功をお伝えすることも役立つようです。勿論、実行に移す時は、異業種連携のプロですので、実践のコラボレーションのお手伝いもします。この「広い知」が、新しい市場・文化・スタイルを創る「イノベーション(新結合)」です。

これまでの3つの余白を埋めることで、「ミッション」「ビジョン」「イノベーション」が三位一体でつながります。経営戦略の基盤が出来上がります。

 さてさて、本夜は「イノベーション実践」の秘訣をいつもより長く綴ってしまいました。
是非、ご活用ください。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第346夜:中堅・中小企業のためのReビジネス(再成長)と具体事例

2025年2月5日:「リオリエンテーション」の時代の展開事例
 前夜、前前夜と、大きなテーマである「『日本の再成長』を構想・図解する」を綴りました。
ここで必要になるのが下記の3項目です。
 1.予測:未来がどうなるのか?
 2.洞察:未来をどう洞察するか?
 3.構想:未来をどうしたいのか?
この「予測・洞察・構想」に手を動かし、心と脳と足を使うことが求められています。

■ 質問①:「自社の未来をどうしたいのですか」
 ・質問②:「あなたは事業・会社を伸ばすためにどのような努力をされていますか」

 是非、ペンを握って、白紙に書きだしてください。

 現場にいって、上記を経営者の方たちに質問すると、
・従業員による改善提案
・従来の「やり方」の改善
・新しい事業の元になって欲しい試作品やサービスの開発
 等々を聴かせていただけるのですが、

・「どうしたら事業・会社を成長させていけるのか」
・「やり方ではなく、自社の将来の“あり方”について」

 という『構想』(第341~344夜に記述)を描けていないことが大半です。
その原因と方法を第308夜から綴ってきましたが、
 本夜は、「3つのRe」の視点とセミナーで経営者からの反応が高い「具体的事例(:佐藤製作所)」(第314夜)をご紹介します。

■「リオリエンテーション:“進むべき方向”の抜本的見直し」(第147夜)

 1991年にバブルは崩壊し、日本経済は長期の経済停滞に突入しました。
その頃、妹尾堅一郎先生が「真の企業再生のための3つの切り口」を提唱・整理されていましたが、その切り口を参考に加筆引用します。
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「行き詰まりの打破や、新たな成長を目指して、企業再生に取り組む切り口は3つあります。
①リストラクチャリング
「構造」の見直しを意味しますが、企業を縦串で見た時に必要のない部門を削除するものです。
②リエンジニアリング
「機能」の見直しを意味しますが、企業を横串で見た時に必要のない仕事を削除するものです。
③リオリエンテーション
「進むべき方向」の抜本的見直しを意味します。
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 バブル崩壊(1991年)から、①リストラクチャリング、②リエンジニアリングについては、どの会社も取り組まれてきましたが「失われた30年」と言われる様に、
③リオリエンテーション(:進むべき方向の抜本的見直し)については、なかなか進まなかったのが現状です。

・「農業社会→工業社会→情報社会→脳業社会→○○社会」

 前夜(第345夜)に、上記の「社会の進展」と「3C(Computer、Communication、Control)」について綴りましたが、
待ったなしで、「工業社会→情報社会→脳業社会→興(幸)業社会」(SDGsシフト55「価値創造の知・第300夜記念」)に大きく移行(シフト)していくことが洞察されます。
 そして、次述する「後戻りしない変化:トランスフォーメーション」と本業の両立による収益化が成長するか、しないかの大きな分かれ道になります。

 そのような大変化の中で、
・「どうしたら事業・会社を成長させていけるのか」
 が中心の課題になります。

■ 「成長経営」の3つの視点

 その課題を解決するために、私の「成長経営セミナー」では、大きく3つの視点と方法でお伝えしています。
A.後戻りしない変化(トランスフォーメーション)
⇒2020年10月に、菅・元首相の所信演説で、下記GX、DXがこれからの日本の成長の柱であると表明して、大規模なお金が注ぎ込まれることになりました。
・SX(SDGs): サステナブル・トランスフォーメーション(=気候変動、人権等、17の社会的課題)
・GX:グリーントランスフォーメーション(カーボンニュートラル等)
・DX:デジタルトランスフォーメーション
 上記の後戻りしない変化であるトランスフォーメーション(SX.GX.DX)を、どう本業と「2+1」(第312~314夜)させるのかが重要になります。


 
B.「本業と社会的課題」の両立(=イノベーション)のよる価値創造
⇒上記Aの「SXやESG評価」(第257夜)に関連して、「“環境・社会・経済”の三位一体経営」への本格的取り組みが重要です。


C.「価値創造の3つの知」(第122夜、第149夜、第323夜)
⇒上記Bを具体化する方法が、「深い知・高い知・広い知」になります。
 図中では隠れているのですが、①②③の3つの赤枠の空白・余白を見つけることで、価値創造につながります。

■ 成長の具体的事例: 佐藤製作所(東京都目黒区)

⇒詳細は、第314夜をご覧ください。
 お伝えしたいことは、高齢男性だけの職場が、積極的に女性新入を採用し、活用し、活躍する環境をつくったことで、異なる能力を活用することで、「Reオリエンテーション」への道が拓かれたことです。

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 「(株)佐藤製作所(東京都目黒区)」は、令和3年度・東京都女性活躍推進大賞、令和4年度・第20回勇気ある経営大賞特別賞を受賞された会社です。
https://www.city.meguro.tokyo.jp/sangyoukeizai/shigoto/sangyou/satouseisakusho20210216.html 

金属加工、特に銀ロウ付け溶接の展開を得意とされている会社ですが、10年前は、連続赤字で倒産を考えられていました。 
取引先が5社(B2B)だった10年前から、現在は約500社(B2B、B2B2C、B2C)の取引先となり、7年連続の賃上げを実現されています。つまり、佐藤製作所は、「B2B(既知)」と「B2C(未知)」を両立されて成長している会社です。 
 10年前の倒産危機の『切実』から、全社員の反対を押し切って女性新入社員を採用し、活用し、活躍という『逸脱』を推進されました。


そのことで、『別様』の新しい事業展開の道が拓けました。
(現状は、10年前の高齢男性だけの職場から、現在は社員数16名のうち、半分が20代、6名が女性に代謝さています)

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・10年前の赤字状態が   「会社バージョン1.0」
・現在の連続賃上げ状態が、「会社バージョン2.0」
・これからの10年の経営が、「会社バージョン3.0」
という次のバージョンアップが楽しみな成長企業に脱皮されました。
 
成長の一手、道筋は、「切実→逸脱→別様」(第333~334夜)にあります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第345夜:発表:『日本の再成長』を構想・図解する -2/2

2025年1月24日: 「3C(Computer、Communication、Control)」と「C.日本の方法」
 前夜の「『日本の再成長』を構想・図解する」は腑に落ちたでしょうか。
どうしてそれらを選択した背景や考え方がわからないと納得できませんよね。

 本夜は、下記2点を重点に補足します。

一つ目は、「B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)」の1.2.3.を選んだ理由
 ⇒ B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)
  1.AI/量子もつれ(キュービタル):本郷バレー
  2.IOWN構想(ナチュラル):オールフォトニクス
  3.自動ロボット(コントロール)

二つ目は、[C.「日本の方法」の背景と具体]です。

■「B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)」の1.2.3.を選んだ理由

 日本の再成長の最も大きな原動力となるのは、「テクノロジー」です。
「農業社会→工業社会→情報社会→脳業社会」と時代は、積み重なり、進展してきています。

 「情報社会→脳業社会」が、産業のコアとなり、それが「新農業」「新工業」(第N次産業等)へと影響を与えます。
 そこでは、3C(Computer、Communication、Control)というものを考えていく必要があります。

→「人間を最も人間らしく遇する道は、その介在をなくすことができない仕事だけを人間に残して,機械にできることはすべて機械にやらせることである」

それを私は、1980年代の28歳と時に、オムロン創業者・立石一真氏から学びました。
オムロン社が開発した「自動改札機」を初めて見た大感動を思い出します。

それでは、オムロン「We are Shaping the Future!私たちが手繰り寄せる未来ストーリー」より加筆引用します。
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 ・・・立石一真氏は、技術面の洞察力で言えば情報化社会がくると予見し、コンピューターの前進ともいえるロジック回路と制御装置を組み合わせたオートメーション技術に早くから取り組み、自動改札機、自動販売機やATMを真っ先に開発している。その先には3C(Communication, Computer, Control)が重要だと考え、コンピュータの世界へ本格的に乗り出しました。
 自動制御技術にフィードバックの機能を与えたものがオートメーションであり,そのオートメーションとコンピュータを組み合わせたものがサイバネーションです。このサイバーネーションに、通信(コミュニケーション)技術が加わることで、3Cとも称される技術を融合した電子制御技術が誕生し、社会の情報化が推進されていきます。・・・
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 私の理解では、3C(Computer,Communication, Control)を人間の機能で表すと、
・①Computer:「脳」
・②Communication:「神経・通信」
・③Control:「手足」
 になります。

■令和時代の「3C」で最適化社会を創る

 工業社会時代は、“③Control:「手足」”が中心でしたが、
現在は、“②Communication:「神経・通信」”、“①Computer:「脳」”が大きく進展したのはご存じの通りです。

それを科学技術の言葉で表すと、
①Computer:「脳」→ AI、量子もつれ
②Communication:「神経・通信」 → “IOWN 6G”
③Control:「手足・ロボット」

 (②による産業の進化を参考に添付します)

 となります。「脳業時代」はこの「3C」が原動力となり、新しい産業や生活が芽吹いてくると洞察します。
日本は、「3C」を三位一体にして、優位性と継続性を創れるかどうかが肝(きも)になります。
そして、上記の「B]と前夜の[AとC]の三つを大胆に交錯させて、どのように「最適な三位一体」にするかが、「日本成長の鍵」を握ると思います。

■参考:オムロンが洞察する「情報化、最適化を経て自律社会へと向かう未来」
https://www.omron.com/jp/ja/edge-link/news/229.html
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 ・・・VUCAの時代と言われ、なかなか先の見えにくい現在ですが、社会全体の大きな傾向としては、これまでの工業・情報化社会における豊かさの象徴であったモノやお金を重視して経済成長こそが正義とみなされた時期を過ぎ、「こころ中心」の「最適化社会」へと移行しつつあると捉えられています。

その先には、2025年を目処に「自律社会」が訪れるとされ、工業・情報化社会の問題点として挙げられていた、一極集中型の社会構造や地域格差、コミュニティの崩壊なども、新たな価値観のもとで解決に向かう見込みです。SNSにおける承認欲求の高まりや、シェアリングエコノミーの普及、循環型で永続的に再生・再利用を行うサーキュラーエコノミーへの関心も、そうした新しい価値観を象徴しており、集団での価値の共有や体験を重視すると共に、自分らしい生き方を自ら実現させて生きる歓びを享受できる成熟した社会環境の実現が期待されています。

一真は、サイニック理論が示すように、近未来デザインを起点として今なすべきことを考えるバックキャスト型の発想で社会課題を解決し、世の中をより良い社会へ変えていくための礎を築きました。オムロンは、VUCAの時代にあっても、一真から引き継いだサイニック理論を経営の羅針盤として、あるべき未来を考え、よりよい社会の実現へとつなげていくための挑戦を今も続けているのです。・・・
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■ C.「日本の方法」の背景と具体

上記[B:テクノロジー(明滅している予兆)群]は、先進国でしのぎを削った競争をしています。
そこに、西洋式とは異なる視点や方法、つまり、「日本の方法の知」を注入することで、「違いのある価値創造」を創出したいという「構想」です。

 1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
 2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
 3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
 4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風、ヘタウマ等):第149夜、第207夜
 5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
 6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)

 世界がフラット化する中で、どこに他との「違い」を見出すのかが重要になります。
訪日外国人観光客が大幅に増えていますが、

・いったい、日本の何に、何処に、「関心」や「数寄」があるのでしょうか?

 それを分類したものの上位が、上記1~6になります。
人々のライフスタイルや価値観を変えた具体的な事例を上げてみます。

・ソニーの「ウォークマン」
・TOTOの「ウォシュレット」
・日本アニメ
・おもてなし
・ゲーム、サブカルチャー
・食文化、回転寿司
・禅、茶道、武道
・・・

 これらは、「日本文化」に根付いたものです。
その「根っこ」が何かを上記1~6にまとめましたが、
・C.「根っこ」を咀嚼する
・A.社会課題とつなげてみる
・B.上記を先端テクノロジーにつなげる
 という道筋が「成長へのプロセス」になります。

■コードをモード化(日本様式化)する:第119夜

 「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
漢字(コード)をそのまま直輸入しないで、平仮名やカタカナという日本のモード(様式)に変換する方法です、
古代から、 日本は外国から「コード」、いわゆる文化や技術の基本要素を取り入れて、それを日本なりの「モード」にしていく、様式にしていくということが、たいへん得意な国だったのです。
 未詳俱楽部で、松岡正剛師匠が提案していたのが、
「苗代(なわしろ)的思考」でした。

『いま日本に足りぬものは苗代(なわしろ)。グローバリズムの直植えではありません』

苗代(なわしろ、なえしろ)とは何でしょうか?
苗代とは灌漑によって育成するイネの苗床である。 もともとは種籾(イネの種子、籾殻つきの米粒)を密に播いて発芽させ、田植えができる大きさまで育てるのに用いる狭い田を指した。
「苗代」は日本特有の文化で、苗を直植えしないで仮の場所で育ててから植え換えをする方法です。

 是非、「苗代」のようなエージェントを作る能力を活用してもらいたいと思います。

■「テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)」、「泥の民」

 アニミズム(animism)とは、人間以外の生物を含む、木や石など、すべての物のなかに魂が宿っているという思想や信仰のこと。
それは日本に古くから存在する、「神道」、「八百万の神」の考え方と共通するものがあります。
日本特有の宗教である神道は、万物には神が宿るという考えがベースで、自然には神が宿ると考えられてきており、これは自然界に霊魂が宿るとするアニミズムの思想ととてもよく似ています。
 ここで『砂の民、泥の民』の話をします。(第98夜)
キリスト教、イスラム教が発祥した場所は、砂漠です。砂漠では、どの方向に進むのかを間違えると「命」に直結します。なので、そこではリーダー(独裁者)を決めて、強いリーダーシップを発揮して早く行動します。
ところが、森や土の多い地域の日本やアジアはどうでしょうか?大雨や災害に遭遇した時に、すぐ動くのではなく、あちらこちらの様子をみて、協議しながらモノゴトを決めていきます。これが「土の民・森の民・泥の民」です。日本は、「チームワーク」が得意なのです。
 ここで、欧米(縦型)と日本(横型)のリーダーシップや「民の価値観」の違いがわかるように思います。

 「アニミズム(animism)」、「八百万の神」の価値観をお伝えしましたが、日本文化の「根っこ」に息づいています。
ロボットやキャラクターに名前を付けたり、TOYOTAがクルマのバンパーをピカピカに磨いたり、「異質」がそこかしこにあります。

■デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜

 松岡正剛師匠はデュアルスタンダードの考え方を提唱しています。
---------
・・・ワングローバルスタンダードではなく、2つの価値を行ったり来たりするような、矛盾を残した仕組みがあっていい。その行ったり来たりに慣れるために、エディティングをしなさいと言っています。
そもそも日本の知はデュアルなものなんです。たとえば「いい加減」という言葉。「お前はいい加減なやつだ」とも言うし、「いい塩加減ですね」と褒め言葉にもなる。「結構」は、「素晴らしいですね」の意味で使うこともあれば、「もう結構です」と断る言葉でもある。これは、言葉の持つコンセプトが変化しているわけではなくて、文脈を成立させるための分岐点がいっぱいあるということです。
この「行ったり来たり」(リバース)があるところが、西洋とは違う日本的価値観のひとつです。まずはこれを意識して、西洋知とデュアルな状態を目指すべきだと思っています。
双対するものはたくさんあります。日本で言えば、天皇と将軍、公家と武家、金閣と銀閣、奢りと侘び・寂びとか、バロックで言えばマクロコスモスとミクロコスモスとか。デュアルな見方が身につくと、物事のプロセスを構造的に捉えられるようになると思います。・・・
ーーーーーーーーー
 
 西洋の一神教と、日本の多神教(八百万の神)では、価値観の土台に違いがあります。
「日本の知」と「西洋の知」をデュアルスタンダードで把えていくと新しい「価値創造」と遭遇します。
それは、「Third Way:第3の道の作り方」(第324夜参照)につながります。
●「途上国」と「世界」
「途上国から」と「ブランドをつくる」
それぞれ相反する二つのモノを組み合わせています・(=「2+1」)
●「大量生産」と「手仕事」
 →手仕事を“効率的”にやるには?
●「社会性とビジネス」
●「デザインと経営」
●「個人と組織」
●「グローバルとローカル」

■まとめ

 まだ、C.の4~6を説明できていませんが、第144夜や第149夜、第207夜をご覧いただければと思います。
以上、補足説明にはまだまだ不足していますが、「3C(Computer、Communication、Control)」と「C.日本の方法」を簡潔に補足しました。

 さて、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギー(再エネ)の拡大は必要不可欠です。再エネのさらなる導入のために、注目を集めているのが「ペロブスカイト太陽電池」があります。これも是非、
 
 1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
 2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
 3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
 4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風、ヘタウマ等):第149夜、第207夜
 5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
 6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)

 の視点で編集していただきたいと思います。

最後に、上記「3C」と「おもてなし」(第2夜、第4夜)を紐づけます。
何か見えてくるものがあれば幸いです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第344夜:発表:『日本の再成長』を構想・図解する -1/2

2025年1月22日: 「日本再成長の構図」と「ジャポニズム(日本様式)」

 前夜に、「航海の時代」は、日本が失われた30年を取り戻し、本格的に『構想(=未来をどうしたいか)』を掲げて、新たな転換のためにギアチェンジを図り、行動・実践する時代です。ということを記しました。
 その想いとこれまでのコラムの流れで、 本夜は、正面から「日本の失われた30年を取り戻すための『構想』」をシナリオプランニング(第15夜、第147夜)を使って、図解と共に綴ってみます。(その一部はすでに、セミナーや企業ご支援等でお伝えしています)


 この内容は、「非常識」ではなく「未常識」(第29夜、第319夜)です。
「未常識」の発表には、「変わりたくない既得権者」からの、非難・反対・軋轢が必ずあります。それを乗り超えることを複数体験してきました。
そのような人たちによって、「成長」が阻害されたり、遅れたり、潰されたりしない時代にしたいですね。
 それでは、順を追ってお伝えします。

■失われた30年: 日本経済低下の現状認識、問題意識

 いまの日本経済の環境を見てみましょう。
・世界における日本の一人当たりの名目GDPの低下(34位:2023年IMF統計)
・国際競争力の低下
・空洞化
・財政収支の悪化(巨大な財政赤字)
・止まらない人口減少
・円安
等々

→つまり、日本の「稼ぐ力」が継続的に、相対的に減少していることが大きな問題です。

■「欧米に追いつき追い越せ」からの脱却・転換

 前夜に綴った日本高度成長期の「鉄道の時代」は、欧米のお手本がある中での、「やり方(How)」・「オペレーション」をいかに最適化することで成長できた時代でした。
私はそれを前職パイオニア社(製造販売業)で体験(1977年~)してきました。
 そして、バブルが崩壊(1991~1993年)し、「失われた30年」に突入しました。

 ここでの認識は時代のフェーズ(段階、局面)が変わったということです。
 1980年代からの日米経済摩擦、そして、前夜でお伝えしたように製造現場が賃金の安い国(中国をはじめとするアジア諸国)に移動しました。
グローバル化による日本の「空洞化」です。

 高度成長期と違う一番の問題は、目指す「お手本」がなくなったということです。そして、世界がフラット化しました。
このことの意味するところは、従来の「やり方/オペレーション」が賞味期限を終えていて、将来の成長の「あり方」を考え、実行に移さなければならない時代になったことです。

 経営の「あり方」と「やり方」については、第321夜、第333夜に綴りました。
「経営」の“経”という字は、縦糸のことを表しています。“経”という縦糸(あり方)と“営(いとなむ)”の横糸(やり方、行動)で織物が紡がれます。
つまり、経営というのは、“経”という縦軸と、“経”という横軸で成立しています。

 日本の高度成長期の「鉄道の時代」は、横軸の「やり方(=How)」を最大化した時代した。
「お手本があり、どうすれば成長できるか」が分かっていたからです。
つまり、その時代は、縦軸の「あり方(=Why・What)」を考えることをしなくて良かった時代です。

 しかし、「お手本」のない時代は、自ら、新しい成長の「あり方」を探求・発掘しなければなりません。
さきほどの、「縦軸(あり方:Why・What)」と「横軸(やり方:How)」を見ていただければ、縦軸方向に『立つ』ことの必要性が見えてきます。
これが、第342夜に綴った「気立て(想像力)・見立て(構想力)・仕立て(創造力)」のことです。
 いま、この3つの『立つ』ことが求められているのです。
これまでの教育の「平均主義的な仕組み」の土台からの、抜本的な変革が必要なことはお分かりいただけると思います。

明治という時代は、『立つ』(立国・立志・立身・立憲)時代でしたが、失われた30年を負のバネとして、「令和」が『立つ』ことを担う時代です。

 そのため、新価値創造研究所(2013年設立)は、「価値創造」・「イノベーション・ジャンプ」という「立つ」ことに重点を置いて活動してきました。(第338夜)

■「立つ」を「SDGs成長経営」で実現する

 2015年、私は『立つ』を世の中に実践するためには、

・「SDGs成長経営」(第281夜)

 を「企業や自治体」に伝授するのが最適ではないか、と思うようになりました。

 「企業・地域」が再成長するための大要素は、『社会課題の解決』にあります。それは、誰からも大きな「共感」を得られるので成長に向かいます。
「目的:何のために行うのか?」の実現です。(「パーパス経営」が脚光を浴びているのはそのためです)

 本業(企業・地域)を本格的な『社会課題の解決』との交錯・飛翔に向かわせるのです。

 片手(半分)には、その志・情熱・数寄(第331夜)を持ち、もう片手(半分)には、実現する手段を持つという姿・状態です。
そして、その異質の二つを交り合わせることで化合物(価値創造)を創る。

・「本業×SDGs(17の社会課題)」

 から醸成される「価値創造(事業の目的)」「イノベーション(目的の実現」(第309夜)です。
これが、「SDGs成長経営」の公式です。
 従来、「社会課題の解決」は、プロフィット(利益)ではなく、コスト(費用)として考えられていましたが、「本業」と「社会課題」を両立させてプロフィット(利益)を出す時代に突入しています。

 昨年9月に、上記の構造と具体的をまとめたもの(を
・「川崎市主催SDGsバリューアップ経営セミナー」
・「京都銀行定例講演会」
 で、講演(第340夜)してきました

■ 日本再成長の要素

 日本再成長の要素を二つ(半分と半分)に分類します。
多くの要素の中から、シナリオプランニング(第15夜、第147)を活用して、日本の再成長と継続に、最も影響を与える明滅する項目をピックアップしました。

A.半分:社会課題(危機の認識)
 1.地球沸騰危機(人類の生命の危機)
 2.エネルギー危機(石油に頼れない)
 3,人口減少危機(少子高齢)

B.半分:テクノロジー(明滅している予兆)
 1.AI/量子もつれ(キュービタル):本郷バレー
 2.IOWN構想(ナチュラル):オールフォトニクス
 3.自動ロボット(コントロール)

 この選出した[AとB]が「2+1(ツープラスワン)」(第312夜)の左と右の半分となります。
これを展開し、推し進める方法に下記「C」という方法を入れ込みます。

C.「日本の方法」:「独自のルール」と「メディアミクス」
 1.コードをモード化(日本様式化)する:第119夜、第144夜)
 2.テクノアニミズム(機械に生命が宿る:八百万の神、無常、小さきもの)
 3.デュアル・スタンダード(2つの価値を行ったり来たりするような矛盾を残した仕組み):第308夜
 4.未完成(負、余白)の美学(枯山水、松林屏風等):第149夜、第207夜
 5.匠と長屋的共同体同一性(チームワーク):第144夜
 6.親しいガラパゴス(日本が日本のためにつくったものがヒットする)

 上記は、明治維新から続けてきた「西洋化」から脱却するために、もともと持っていた「日本の方法(知)」であり、現状を打開する「第3の方法」(第324夜)の一部です。

 例えば、「1.コードをモード化(日本様式化)する」ですが、
 「外来のコード」をつかって、これを日本文化にふさわしい「内生のモード」に編集しなおす、植え換えをするという方法が脈々と受け継がれています。
古代から、 日本は外国から「コード」、いわゆる文化や技術の基本要素を取り入れて、それを日本なりの「モード」(「仮置きの文化」や、「苗代」のような小さいエージェントを作る能力)にしていく、様式にしていくということが、たいへん得意な国だったのです。
 重要なことは、『外からのコード(基本要素)をそのまま受け取らずに、自分の中で編集してモード(様式)化』していく能力を持っているということです。

 →「わかる」方たちには、わかるのですが、多くの方たちには、それがどのように[A]と[B]に紐づくのかは「わからない」と推察します。

■ 上記A・B・Cを「2+1」(第312夜)に組み込む

 これが、私がシナリオプランニングで洞察した「日本成長の構図(公式)」です。

この「構図」が、日本の成長を牽引していくことを、皆さんも「想像→構想→創造」されてみてください。 

・[A]と[B]の共通項を抽出して、「漠然」ではなくて、「渾然一体」で掛け合わせるという「匠の技」です。
 その方法は、第308夜から前夜まで綴ってきました。
・そこに、[C:日本様式]というフィルターを入れて、「編集」することがポイントです。

 その「方法の知」の真髄と別格の方法を、未詳俱楽部等で「松岡正剛師匠」から受け取ってきましたが、その著作や放送を下記紹介します。
・日本という方法
・プランニング編集術
・連塾 方法日本Ⅱ「詫び・数寄・余白」
・日本流
・日本力
・日本問答
・日本文化の核心
・匠の流儀
・別日本で、いい
・参考:世界サブカルチャー史 欲望の系譜 ジャポニズム編(松岡正剛)

  上記の内容と「方法の知」については、もう少し具体的な内容を次夜に綴ります。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第343夜:型通り→型破り→型創り

2025年1月18日: “ 未来の人財 ”を創る基盤について

 前夜では、「現在の閉塞した状況を打開し、打ち破り、未来を切り拓くために、時代が一番に求めているのは『構想力』である」
ということを図解(気立て→仕立て→見立て)とともにお伝えしました。

 『構想』とは、“未来をどうしたいか”にあります。
その「構想力」は、「本気(気立て:半分)」と「次の本流(仕立て:半分)」という前後(ビフォーアフター)によって成立します。
つまり、ずっとお伝えしてきた「2+1(ツープラスワン」(第312夜)の構造です。
「構想」のところだけを切り出しても、前段の「切実や情熱・本気」と後段の「別様と次の本流の姿」がないと「絵に描いた餅」になってしまいます。
そのために、本当に必要なことは、
・『構想(=未来をどうしたいか)』ができるためには、「自分自身を更新する」
 ことにあります。
それが、企業ご支援の最初にお伝えすることです。

①いったい、何に「本気」なのか?(何が「切実」なのか?)の深堀。:本気、情熱
②現状を突破するために、どうなりたいのか?(現状突破とは何か?):逸脱、次の本流
③何が「逸脱の鍵」で、どの様に解決するのか?その資源は、道筋は?:本質、別様

 注記ですが、この①②③の対象に、「改善」「改良」は含まれていないことをお伝えします。
現在の閉塞した状況を打開する、打ち破るには、「改善」「改良」では間に合いません。
それに注力しているあいだに、手遅れになっている現場を数多く見てきました。
いまは、「価値創造」「イノベーション」という「改革」「革新」が求められるのです。
「価値創造・イノベーション」の本質や方法を知らない経営者が多いことも課題です。

■「鉄道の時代」からの脱却

  明治維新から、欧米に「追いつき追い越せ」というスローガンのもとに、日本は成長してきました。
そこには「お手本」があったので、それを速く、安く、丁寧に、大量に製造販売して成長したのが、20世紀後半の日本でした。
鉄道のように、レールがあって、行き先が分かっていて、そこに如何に速く効率的にやるかという「オペレーション」の時代でした。
それを分業してやってきました。


 企業の大小を問わず、いまの高齢の経営者や経営幹部の方たちの多くが、その「オペレーション」の得意な方たちです。
それは、正解(お手本)のあるものを、言われた通りに、早く、速く、正確にこなせるような「教育」と「人材」からなっていました。
 時代が大きく変わっても、これまでの価値観の「枠」の中で、従来の「改善」「改良」に傾注・注力することで、1990年から日本の産業力は衰退していきました。
 さて目を転じて、「お手本」があって、オペレーションの役目を担って、相対的に安い賃金で成長してきたのが、中国やアジア諸国です。
そのことで、「空洞化」が進んでしまったのが先進国であり日本です。

 私自身も、日本製造業の空洞化を推進した当事者でした。
1996年、前職パイオニア社のヒット商品緊急開発プロジェクトプロデュースのオーディオ生産(ホームオーディオ、ポータブルオーディオ)で、パイオニア社として初めて、香港経由で「中国(東莞)」でOEM生産しました。(第14夜、第126夜)
 当時の東莞は、日本の賃金の六十分の一(1/60)でした。
私も現場(東莞工場)に何回か足を運びましたが、日本と同じ「生産技術・製造技術」で造るので、品質に大きな差はありません。
 その「製造原価」で日本で造ろうと思ったら、極論すると製造現場(埼玉の所沢工場、山形の天童工場等)の社員の給料を1/60にしなければなりません。
これが日本産業を苦しめる「空洞化」の始まりでした。

 1/60のコストで製造原価を下げると同時に、インテリア業界、ファッション業界との異業種コラボによる価値をつけることで、
・オーディオ「ハッピーチューン」シリーズ
・ポータブルオーディオ「ループマスター」シリーズ
 は、大ヒットとなりました。

 その後、生産現場は賃金の安い「タイ」や「ベトナム」にシフトしていき、それらの国は成長していきました。
さて、お分かりの通り「空洞化」が起きた時から、「鉄道の時代」を成功の価値観にしてきた「政治・経済界」「教育界」「産業界」の抜本的見直しが必要でした。
それが、「航海の時代」の戦略です。

■「航海の時代」

 「鉄道の時代」の次に現れたのが「航海の時代」です。
 それは、失われた30年を取り戻し、本格的に『構想(=未来をどうしたいか)』を掲げて、新たな転換のためにギアチェンジを図り、行動・実践する時代です。
・そこは、「陸」ではないので「レール」がありません。そして、海路には大きな変動要素があります。
・低賃金から脱するために、「賃金」を高くするために「高い価値」を生み出さなければなりません。
・お手本がないので、何のために、どこに、何を目指して行くのかは自分で考え、決めなければならない時代です。
・我々はまだ、「半分」である、途上である。異質の「半分」を見つけて、革新・変革する時代です。(第312夜)
・①気立て:航海にあたり、何を大切にするのか? 何を「船の錨」にするか?という心の「拠り所」「ミッション」の明確化です。(=Why?)
・②見立て:そして、これまでの殻を破り、枠を出て、何を目指すのか?目指す方向はどこか?という「ビジョン」の明確化です。(=What?)
・③仕立て:それでは、その「ミッション」と「ビジョン」をどう具体化するのかというが、「イノベーション」の明確化です。(=How?)

 という項目の「本筋・道筋」の認識と航海するための「羅針盤」が必要になってきます。
上記実現のために、「ご支援プロジェクト」では、ここの「ドック」にはいっていただき「羅針盤」を策定します。

 その具体的な事例は第314~330夜に、そして、日本の大きな転換と成長については下記(「AI、DX、GX、や17の社会課題(=SDGs)」の戦略的取り込み等)に綴っているのでご覧ください。(セミナーや研修では、多くの事例を紹介しています)

■基本的考え方

 『構想(=未来をどうしたいか)』のポイントは、
・従来の延長上の「型通り」(紋切り型・金太郎飴)では、「未来がない」という認識を持つ(=切実)
・(自分は)今はまだ「途上」である。「未完」「半分」であるという認識(第312夜)
・従来とは違う、(自分が)気になる「別(another)」「異質」を探求する(第332夜)
・つまり、これまでの「枠」を出る、「殻」を破ることを決意をする(逸脱:第330夜)
・それは、これまでの「言われた通りのこと」をやることからの脱却・脱皮です
・つまり、「型破り」です。
・そして、本業(One:半分)と異質・別物(Another:半分)をつなげて、交り合わせる(ーイノベーション)
・そこに、「新しい化合物」、「別様」が閃きから生まれる
・それが、「型創り」です。

→「逸脱」「別様」に向かうので、通常の(西洋式の)経営戦略でよく使われる「3C」「SWOT分析」等はあまり役にたたないのが現実です。

■型通り→型破り→型創り

 『構想(=未来をどうしたいか)』と『新しい成長』の道筋を整理すると、

・「型通り→型破り→型創り」

 になります。
(実際の企業ご支援でも、選抜チームを組む場合には、必ず「女性」「型破りっぽい人材」を選んでいただくことをお願いしています。
やはり、実際に「変革の起動」になってくれるのは、その方たちです)

 これを「2+1」の図に表します。
ご覧いただいてわかるように、それは「守破離」とリンクしています。

“守破離”(第5夜、第88夜、第330夜)とは、
守って破って離れる、のではない。
守破離は、
①守って型に着き、
②破って型へ出て、
③離れて型を生む。

 これが、「航海の時代」の『型の進化』です。
「鉄道の時代」の「型」で行き詰っている「企業」「地域」の多くは、①の「守」(型通り)に留まっていて、②の「破」(型破り、殻破り)に進まないのです。
①「守」のステージの中(領域)で何とかしようとしているで、不足のもう「半分」となる「AI、DX、GX、や17の社会課題(=SDGs)」等の異質を自分の中にモード変更して取り込もうとされません。(第330夜、第332夜)
 挑戦しないことで、企業、地域の将来が更に「不確実」「不確定」の景色になっていくという「悪循環」です。

 是非、前述の第314~330夜の事例や、一昨年に、全国の地銀向けに、上記のエッセンスをまとめた小冊子(3万冊)を執筆しましたので参考にされてください。

■ブレークスルー時代の「教育」の変革

 さて、「鉄道の時代」と「航海の時代」では、求められる『人財』『経営者』が違うことがおわかりいただけたと思います。
キャッチアップの時代では、ゴールが分かっていますから、しっかりと「オペレーション」できる人材が必要でした。そのような教育がずっと続いていました。
 いまのブレークスルーの時代は、現状を打開・打破するために、第308夜から綴ってきた「価値創造」「イノベーション」という「逸脱し、殻を破る」「型破り・型創り」の人財が必要です。
つまり、『構想(=未来をどうしたいか)』をできる人財です。
 それは、従来の「平均主義的人材」ではないことはお分かりいただけたと思います。
人々が求めているのは、現状を打開する、未来を切り拓く「大谷翔平(二刀流)や藤井聡太(将棋×AI)」等の「逸脱」できる「逸材」です。
 不足のもう「半分」を取り入れてブラッシュアップしているのです。(第312夜)

「型通り」ではなく、「型破り」「型創り」の人財、企業、地域をどう創出するのかが、将来の「Well-being」のポイントです。
(ビジネス戦略では西洋式の「型」を使っていますが、ブレークスルーの領域ではその「型」では「違い」が出ません。それをどう「逸脱」「別様」するかがポイントになります。それは次夜に綴ろうと思います)

①いったい、何に「本気」なのか?(何が「切実」なのか?)の深堀。:本気、情熱
②現状を突破するために、どうなりたいのか?(現状突破とは何か?):逸脱、次の本流
③何が「逸脱の鍵」で、どの様に解決するのか?その資源は、道筋は?:本質、別様

 私の周りの東大・早大・慶大等の卒業生や関係者に聴くと、やっと学生の半分近くが「大企業」から、「ベンチャー」「スタートアップ」「価値創造」に向かっていくようになりました。
とってもいい流れです。教育の「中身」「体系」と先生の「中身」「質」を迅速に、大きく変革していかなければなりません。

 それは、私たちの未来の「Well-being」のためです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第342夜:いま時代が一番求めているのは「構想力」である

2025年1月13日: “ 構想力 ”を生み出す “三立て” 
 地球沸騰(地球環境)が止まらず、戦争(社会)も止まりません。
地球人類の「生命」を脅かし、世界及び日本の「政治」「社会」「経済」「環境」の見通しもつき辛いですね。
誰もがこの先の未来がどうなっていくのか明確に見極められず、不安になっています。
そして、地球沸騰、戦争やAIの進展は、個人の力ではどうしようもなく、でもそれらが「私たちの未来の生活や生命」に影響を及ぼしてきます。

・「人生は思う通りになりません」

現代に限らず、先行きが混とんとして、自分や会社や地域が「思い通り」にならない時、そんな時に未来を突破する「構想力」の重要性、緊急性が叫ばれます。

 仏陀は、この世は「苦」であるとしました。
「選ぶ力」(五木寛之著)から、加筆引用します。
---------
・・・「苦」とは本来、「人生は思う通りにはならないものだ」という自覚にはじまる。
不条理で理不尽なものだからこそ、そこに葛藤が生じる。
 私たちはこの世を、できるだけ思い通りに生きたいと思う。しかし、現実は納得のいかないことばかりである。
そこに生じる苛立ちや絶望を、「苦」と表現するのではないか。・・・
---------

 現在の閉塞した状況を打開する、打ち破るための大きな力として『構想力』があります。
『構想』とは、“未来をどうしたいか”を組み立て掲げることです。
・いま時代が一番に求めているのは「構想力」です。
・未来に対してどのようにイマジネーションを働かせ、ビジョンを描くことができるのか、心で思い、絵にかいた餅こそが要求されています。
・私たちが「切望」しているのは、「未来への可能性」であり、ビジネスの場で、クライアント先が私に求めているのも、会社や地域の「未来の可能性」です。
・その「未来の可能性」について、クライアント先にそのチャンスを持っていることを伝えると、勇気・元気が出て喜ばれます。
・その「未来の可能性」を引き出すのが「構想力」です。

 いまでも日本経済が落ち込んでいる大きな要因は、「構造的な不況ではなく、構想的不況」の存在にあるのではないでしょうか。
人々の暮らしや世界産業の転換に、「構想的に対応」できていなかった政治や産業界が日本を支配していたことが大きな要因です。
 

 本夜は、この「構想力」について、谷口正和師匠との対談と著作、将棋棋士で十七世名人である「谷川浩司」さんの著作「構想力」等を紐解いて、加筆引用させてもらいながら、その「本質と具体」を最後は私の図解を交えてお伝えしたいと思います。

■ 谷口正和師匠の「構想力」 

 前夜(第341夜)に引き続き、私が前職パイオニア社を早く卒業しようと思い、2010年に谷口正和師匠のところへ訪れたときの「大テーマの一つ」が『構想力』でした。
その後、正和師匠が京都の12人のオピニオンリーダーにインタビュー編集した提言が

「構想の庭」(2017年)

 として上梓されました。

その想いと意気込みを著作の「はじめに」と「おわりに」から加筆引用します。
◆「はじめに」
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 次なる社会そのものに対する「構想力」が今、問われています。
つまり、我々に突き付けられた課題とは「構想設計」です。その課題に取り掛かるため、「着想」をロングレンジで捉え、その思想・哲学を軸足に「未来のありたい姿」が複合的にジャッジできるように、まず高質な情報が大切なスタートになります。
・・・自己は自らの存在を超え、新たな価値と連帯していく潮流があり、それは相対化された価値軸ではなく、往来しながら複合する価値から、さらに絶対的な価値軸の流れを作り出し、新たな気づきの連鎖をもたらします。・・・
・・・この全体を見渡し、俯瞰された視座から発せられたオピニオンの方々の未来を照らす言葉を体感していただきたい。
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オピニオンインタビューのリーダーの方たちは、
・月尾嘉男
・浜野安宏
・水野誠一
・上野千鶴子
・望月照彦
・小宮山宏
・山極寿一
・田中康夫
・嘉田由紀子
・寺島実郎
・遠藤湖州

 上記多くの方々が、谷口正和師匠主宰の「文化経済研究会」のゲストとして登壇され引き合わせていただきました。
当時は40歳代のときでしたが、その視点・視座・見識に触れることが、その後の活動に大いに役立ちました。

◆社会構想
 文中で、正和師匠が熱く語ります。
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・・・私は色々な機会で「構想が日本を救う」と語ってきました。
私自身、未熟ながら構想家を目指す想いがあります。
 事業は「構想」こそ大事です。
・・・一番大切なコトは、「閉塞した社会そのものに風穴を開ける」ということです。
私が今一番訴えたいことは『社会構想』をどう創り上げていくのかということです。

・・・事業を成功させるために必要なのは、事業自体の狭い構想から、「社会を俯瞰できる構想」へと飛翔させることです。・・・

 第308夜から第341夜に、図解や事例を交えて綴ってきたことは『社会構想』が多くを占めます。
そのために、「本業(半分)」と「社会課題(半分)」を「解決飛翔」する「SDGs成長経営コンサルパートナー」を10年間推進してきました。(第312夜:「2+1」)

ちょっとした「改善」「オペレーション」では、時代の波に飲み込まれてしまいます。
是非、行き詰まりを突破する「革新」「イノベーション」に挑戦されてください。

・【切実】⇒【逸脱】⇒【別様】(第322夜)
・【本気】⇒【本質】⇒【本流】

 「切実」という本気の「負のエネルギー」のない方には、本気の「構想」はつくれません。
 たとえれば、「コップの水」が半分になった時に、
A.まだ、半分ある
B.もう半分しかない
 と、全く同じ状態でも「反応」が違いますね。
その「認識」が、企業や地域のご支援では、「決定的な違い」となって現れます。

 それが、よく言われる「茹でガエル現象」です。
(茹でガエルとは、緩やかな環境変化下においては、それに気づかず致命的な状況に陥りやすいという警句。生きたカエルを突然熱湯に入れれば飛び出して逃げるが、水に入れた状態で常温からゆっくり沸騰させると危険を察知できず、そのまま茹でられて死ぬという説話)

◆「おわりに」
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・・・社会に蔓延する近視眼的で、短期単発的な風潮に思考の視座を見失い、将来不安が募る中、この『構想の庭』を通じてオピニオンパーソンの方々にロングインタビューさせていただき、長期的で、広域的な視座に立ち、より本質に迫る着想を賜り、思考のヒントとしてお届けできれば本望です・・・
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 近視眼的、短期単発的ではなく、長期的、広域的な視座に立ってから、現在に逆算することで、新しい一手を打つことができる可能性が高まります。(第333夜)
興味関心の湧かれた方は、是非、この構想力のヒントが満載な「構想の庭」をご覧ください。

■「谷川浩司」さんの「構想力」

 さて、「新しい一手」と記しましたが、将棋棋士で十七世名人である「谷川浩司」さんの「構想力」(2007年)が上梓されました。


加筆引用します。
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 ・・・「構想力」は、先行きの見えない時代の閉塞した状況を打ち破るための大きな力になると私は思うのだ。
なぜなら、将来どうなるかを正確に読み、向かうべき将来像を明確に描いたうえで、それを実現させるための方法や道筋を組み立てることができれば、効率よくものごとを進め、処理することができる。
 そうすれば、競合相手に先んずるだけでなく、市場を開拓できるし、事前にしかるべき手を打っておくことも可能になる。また、たとえ状況が変化したり、最初に構想したようにはならなかったりしても、その状況に即した新たな構想をいち早く練り直すことができれば大きなアドバンテージを得られるはずだ。先が見えにくい時代だからこそ、構想力の強弱が今後ますます問われてくると思うのだ。・・・
ーーーーーーーーー
 内容は、
・構想に必要な4要素
・事前の構想が序盤を制する
・真の構想力が問われる中盤
・常識外の構想はどこから得るか
・読みは「デパートの買い物」に同じ
・経験は若さに勝る

◆構想に必要な4要素

 より深く、正しく「構想を組み立てる」ために必要な4つの力を上げています。
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・第1は「知識」
 相手の情報を集め、傾向を知ることは、構想を練るためには絶対に必要だ。対局によってはそれで勝負が決まってしまうケースもあるからだ。
・第2は「正確な状況判断」
 将棋でいえば、形成を正しく判断する力のことである。いま現在、自分がいかなる状況にあるかを正確にジャッジできなくては、つまり構想するための立脚点が間違っていては、深く、正しい構想など組み立てられるわけがない。
・第3は「先を見通す正確な読み」
 自分がこういう行動を起こしたら、状況がどのように推移していくかを正しく見極められる力があれば、それだけ構想力は高まることになる。
・第4は「時間の管理」である。
 なにごとを行うにせよ、時間は無制限にあるわけでなはない。将棋にも対局には持ち時間というものがあり、限られた時間のなかで形勢を判断し、正確に先を読み、最善の指してを選択しなければならない。そのためにはいかに時間を使うか、どれだけ効率的に管理し、配分できるかということが勝負に大きく影響する。・・・
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◆構想力を伸ばす大局観

 大局観を持つことは、構想力を伸ばすという意味で非常に大切なことです。
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 ・・・大局観とは、「未来を見据えたうえで現状を見る」という意味でもある。
将来に対する明確なイメージがあり、先行きがどうなるかを正しく読んだうえで、そのイメージを実現するには、いま何をしておくべきなのか、いかなる決断を下すべきなのか。
 それを判断する力を「大局観」と呼ぶわけだ。なすべきことに優先順位をつけるといってもいいかもしれない。・・・
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◆いくつもの顔を持てばどんな状況でも対応できる

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 前に「知識は多ければ多いほど構想は描きやすい」と書いた。
これは、言い換えれば自分の中に「引き出し」をたくさんもっていなければならないという意味である。こういう人は現状を把握し、先を読んだうえで、数ある選択肢の中から最善の方法を組み立てられる。
 私が対局していちばん怖いと思うのも、
「引き出しをたくさん持っている人」だ。
 そういう人は、何をやってくるかわからない。どういう作戦でくるのかわからない。
これは対局する人間にとって嫌なものだ。・・・
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■新価値創造研究所: 過去の延長上には「未来」がありません

 ここまで、「構想力」「大局観」「引き出し」等について記してきましたが、
後戻りしない変化(=トランスフォーメーション:第302~302夜、第319夜)の未常識時代には、

・過去の延長上には「未来」がない(第133夜、第272夜、第333夜))

 という認識が必要です。
企業の従来の中期計画(3年)策定では、右肩下がり、太刀打ちできない状況が現出しています。

 その時に、従来の中期計画から脱皮する「構想力」の重要性が増しています。
それを「本業(半分)」と「新対象(半分)」の「2+1(ツープラスワン)」(第312~332夜)でお伝えしてきました。

◆新価値創造研究所:シナリオプランニング(第38夜、第111夜、第119夜、第155夜)

 構想力を「図解」で見える化する方法に、「シナリオプランニング」があります。
前職パイオニア社の2000年頃に、米国からJオグリビー氏を招き、直伝をうけました。
「価値創造」において重要なのは未来から現在を見るという視点ですが、その未来の可能性を4象限で表すというものです。

 「見える化」ということで、ご支援先で活用しています。
是非、参考にされてください。

◆構想力を実現する『気立て→見立て→仕立て』(第21夜、第122夜)

 図解の三つの「~立て」は何だと思いますか?
 実は、「気立て(想像力)・見立て(構想力)・仕立て(創造力)」の三つは新価値創造研究所が企業をご支援する時の重要な心得・指標を表しています。


この「三つ」が立たないとご支援はうまくいかないことが多いことを経験してきました。
 特に重要なのが、「リーダー」「経営者」の切実、切望、情熱という「気が立っている」ことにあります。
参加する社員の人たちが「燃える集団」になっていても「リーダー」「経営者」が燃えていない、本気でないといい結果が出なことが多いのです。

 詳細は、「価値創造の知」(第21夜)をご覧いただきたいのですが、本夜はそれを図解します。
この「三つの立て」を先に知る・わかることが、「ゴール・結果」に大きな影響を及ぼします。

 この図でワカルことは、「見立て」「構想力」は単独で生まれるものではないということです。
それは、「2+1(ツープラスワン」(第312夜)です。

・「気立て」→「仕立て」→「見立て」
 →「見立て」は「気立て」と「仕立て」のよい「間(ま)」(第311夜)から生まれてきます。
・「想像力(イマジネーション)」→「創造力(イノベーション)」→「構想力(インテグレーション)」
 →「構想力」は「想像力」と「創造力」のよい「間(ま)」から生まれてきます。

 上記から、「未来の可能性」と「ミッション・ビジョン・イノベーション」(第89夜、第122夜)が見えてきます。

皆様の参考になれば幸いです。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第341夜:「あなたがやってきたことを生涯の仕事にしなさい」

2025年1月9日 「定年退職的な発想こそが“元凶”である」

前職パイオニア社を早めに卒業して、2010年に「価値創造で人々を幸せにする研究所」を立ち上げたいと思って、谷口正和師匠のところに相談に行きました。


その時、団塊の世代の正和師匠は、高校時代の同窓生たちが定年退職後に次のステップ、ステージにうまく踏み出さないことに「やきもき」されていました。
 同窓生たちは、口々に、
「人生こんなものなのかと思い、寂しい」と語っていた。
 正和師匠は仲間たちに言った。
「あなたがやってきたことを生涯の仕事にしたら?
我々はライフスタイルという言葉を知っているじゃないか?」
 「・・・人間は、生き方と働き方を分けてはならない」と。

■リスキリング・インタレスティング・バリューイノベーティング
 本夜は、不確定な時代を生きる方たちに、永眠された谷口正和師匠の言葉をご紹介することで、
・リスキリング
・インタレスティング
・バリューイノベーティング
 という「~ing」(図解)で、少しでも人生や仕事の“気づき”や“ブラッシュアップ”につながればと思って綴ります。
この3つのingは後方で綴ります。

 さて、昨夜(第340夜)は「才能」と「匠」を図解と共に綴りました。
その「匠」と、私の相談の時の正和師匠の言葉の数々が、その相談の一年後の「つむぎだす未来」(谷口正和著)に記されていたので加筆引用します。


■高齢者とは体験学習によって磨かれた姿
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 ・・・日本でも江戸時代までは「匠」という職人芸が尊ばれてきたが、それは定年まで勤め上げたなどというレベルから出てくることではない。生まれてから死ぬまで体験学習を繰り返し、身体に染み付いたものである。体験学習を回数化すると、習慣が体質を形成する。そのため一朝一夕では滅びない。
 そのことを逆転的に言えば、高齢になればなるほど集約され、煮詰まり、精度が上がってくる。言ってみれば、高齢者とは体験学習によって磨かれた姿である。
生涯を働く、生涯を生きることによって、社会に貢献しようとした時、人は生涯、他社に対して奉仕と貢献を全うすることができ、その生き様を持って次の世代の弟子たちを育てることができる。まさに伝承であり、伝承のないものに長い価値はないと言っても過言ではないだろう。・・・
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 前夜のコラムでお伝えした通り、職人たちだけが「匠」ではありません。
現代には、課題となる「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)が数多くあり、それを課題解決する「才」が求められます。
「才」と「能」の二つを組み合わせ、磨き上げてカタチ、型にするのが「匠」です。その「匠」たちが切望されています。
生涯をかけてつくりあげてきた「才」を「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)と掛け合わせて若い人たちにみせつけたいですね。

■ベンチャーとは、もう一度次のステージに載せ直すコト
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・・・最も人口の多い団塊世代は、60歳を超えたところで団子状態になっているが、彼らはベンチャーを起こすためにそれまでの職を卒業したのだという認識を持って行動しなければならない。
 「ベンチャー」とは、新しいことをやるよりも、あなたがこれまでやってきたことをもう一度次のステージに乗せ直すということだ。
生涯編集者、生涯パン職人、生涯ドクター・・・。
 あなたは、「生涯をかけて取り組む職業の研究課題」を選び、引き取ったはずである。・・・

・・・こうした流れからすれば、やはり我々は次の活力を創造する担い手にならなければなないだろう。高齢社会となり体験を積んだ人が増えたいま、体験学習の結果生まれてきた「知恵」を使い、未来に対して未解決だった問題を解き、立ち上がって門戸を開くことが大事である。・・・
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■自分の「才」を整理

 上記は、2010年に私が前職パイオニア社を早く卒業して羽ばたいていこうと思っていた時の、背中を押してくれる「珠玉の言葉」の一部です。
正和師匠に、「自分の才」をまとめてみるように言われました。
(これらの経験やご縁が、自分の「才」を拓かせてくれました。やはり「動く」ことが肝要に思います。)

・設計、技術企画、技術統括、情報企画、開発企画・・・
・B2B参入体験(B2CとB2Bの二刀流):第314夜
・労働組合の書記長体験:第29夜、第336夜
・社長直轄ヒット商品緊急開発プロジェクトリーダー体験(異業種コラボ):第14夜、第313夜
・未来シナリオプランニング直伝体験(Jオグリビー氏):第155夜
・総合研究所(10年後の未来シナリオ策定):第111夜
・社内外横断による新事業創造プロジェクトリーダー
・価値創造による人財創生塾
・松岡正剛師匠(未詳俱楽部他):第308夜、第337夜
・谷口正和師匠(文化経済研究会):第323夜、第313夜

 さてさて、2013年10月に「新価値創造研究所」(第75夜)を立ち上げましたが、
やはり、まだまだ自分が磨かなければないないことが次々に現れました。
 人生は「壁」と「殻を破り」「磨き上げる」ことの連続「~ing」です。
その「殻破り」「磨き上げ」を「無我夢中」にできるかどうかが「才能」と「生きがい」に繋がってくるように思います。

■新ステージに向けた「3つのing」
 新しいステージにジャンプアップするときに、「3つのing」を意識することで、時代の波に飲み込まれずに、時代の波に乗れるように思います。
それを、前夜の「才(人間の側が持っているもの)」、「能(対象が持っている可能性)」、「匠(才と能の二つを組み合わせる力)」に当てて図解します。
・リスキリング(人間の側:開拓の精神)
・インタレスティング(対象の側:数寄の精神)
・バリューイノベーティング(創造・統合する能力と精神)

 モノゴトの見方、考え方が「固定」していると、大変化する「社会・経済・環境」に対応できません。
上記に対応した「柔軟性(横軸)」と「開拓性(縦軸)」をingの状態にしていくことが求められます。
松岡正剛師匠、谷口正和師匠のお二人とも、生涯現役でその背中を見せ続けてくださいました。

 少しでも継承していきたいと思います。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第340夜:『才』と『能』の二つを合わせる

2025年1月8日 『価値創造の知』と『才能』

 新年を迎えて初のコラムなので、本夜は『価値創造の知』にとっても密接な関係にある『才能』についてお伝えしたいと思います。
・「才能」とは何か?
・「才能」をブラッシュアップするには?
・「才能」を「匠」と「価値創造」につなげるには?

実は、私が依頼される「企業創生・地域創生」ご支援の入り口は、
すぐ後に綴る、その企業や地域の「才」と「能」の結び目をみつけることがポイントです。
それが、「価値創造(目的)」「イノベーション(手段)」に繋がります。
 そして次に、「才」と「能」の結び目をみつけられる、つまり価値創造できる「人財」を数多く創生する、輩出することが次のポイントになります。

 それでは、「才能」という言葉についても、松岡正剛師匠主催の「未詳俱楽部の遊行」で度々話された内容をお伝えします。
そして、私の具体的体験と提案もそれに交えて綴っていこうと思います。

「匠の流儀:~経済と技能のあいだ~」(松岡正剛編著)より加筆引用します。

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 ・・・かつて日本の職人たちは、「才能」という言葉を「才」と「能」に分けて実感できるようにしてきた。
ごく簡単にいうと、「才」は大工や陶芸家や庭師などの人間の側がもっているもので、「能」は木や石や鉄などの素材が持っている潜在力のことである。
 人間が持っている「才」が素材に潜む「能」をはたらかせるということ、この「才」と「能」との二つが合わさって「才能」だとみなしたのだった。

 ・・・もともと「たくみ」という言葉には技巧性、企画性、工匠性、意匠性といった意味があった。いずれも「巧みなこと」に長けていることをいう。
しかし、これらをもっと“巧み”にまとめ、仕事に従事する職人たちの才能を最大限いかすことができる者を、いつしか「匠」と呼ぶようになった。

 ・・・陶芸や土木や庭師だけではない。茶の湯にも能楽にも絵画にも、俳諧にも立花にも服飾にも楽曲にも、すぐれた「匠」たちがいた。
珠光、紹鷗、利休、世阿弥、禅竹、狩野派の光信や探幽、池坊の専応や専好、芭蕉や蕪村、乾山や木米、近松や馬琴・・・・。
空海や道元、新井白石や本居宣長、本年NHK大河ドラマの蔦屋重三郎・・等々、みんな「匠」なのである。
「匠」は大工さんだけではなかったのだ。・・・

 ・・・「匠」たちが素晴らしいのは、そこにスタイル、モデル、パターン、フォーム、モード、テンプレートといった「型」の違いを自在に持ち込んで、
それらの「型」を適切に選別しながら新たな可能性や可塑性を引き出せるのではないかと、私は思っている。・・・

ーーーーーーーーー

 2015年に、上記「匠の流儀」が上梓された時に読んで、いの一番に思ったことは、
2013年10月に立ち上げた「新価値創造研究所」のメインミッションである「価値創造」と「才能」・「匠」が密接な関係でつながっているという感動でした。

A.人間側が持っている「才」
B.素材(対象)に潜んでいる「能」
C.互いに関係しあう上記の二つを結び目を見つけて掛け合わせてカタチにする「匠」 

 それを「図(2+1)」で表します。(添付)

 当時(2015年)の私の想いは、
・これからは、「新価値創造=イノベーション」こそが『成長の源』となること
 (価値創造は目的であり、それを実現する手段がイノベーションであるコト:第309夜)
・それを創出できる企業・地域をご支援すること(企業創生・地域創生)
・それを駆使できる人財(=価値創造の匠)を輩出すること(人財創生)
 という「価値創造から、企業創生・地域創生・人財創生」にありました。
 その意味で、第308~339夜に綴ってきたことは、その「価値創造の仕組みと実践例」です。

・どのような「才」を持っていて、どのような(潜在的な)「能」を引き出しているのか?
・(潜在的な)「能」を引き出すためには、どのような「才(才覚、才知)」が必要なのか?、磨き上げなければならないのか?
・そこで私たちが分母的に持っていたい『知』が、「社会知」「経済知」「環境知」です。

 さて、上記の図を展開した三つをアッピしますので、
そのことが少しでも皆様のご理解につながりましたら幸いです。

■ 展開事例①: SDGs成長経営

 一つ目は、「才:本業」×「能:SDGs(17の開発目標)」です。
本業が持っている「才」と対象(SDGs)が持っている「潜在能」を掛け合わせて、新しい結び目を見つけることで、新しい価値創造、新しい成長を構想・実現に向かうことです。
これが「令和の時代」のビジネスのど真ん中です。

・(皆さんの)本業には、どのような「多様な才」があるのでしょうか?
・SDGs(17の社会課題)には、どのような「多様な能」があるのでしょうか?
 多様な「才」と「能」の中で、どのような「ご縁」「数寄」があり、どのような「結び目」をみつけ「選択」をするのかが肝要です。
それによって本業の新しい道筋や行方(ゆくえ)が大きく変わってきます。


⇒その方法を、昨年9月の
・「川崎市主催SDGsバリューアップ経営セミナー」、
https://www.city.kawasaki.jp/templates/prs/cmsfiles/contents/0000167/167984/tirashi.pdf
・「京都銀行定例講演会」
https://www.kyotobank.co.jp/houjin/kpa/pdf/seminar20240919.pdf
等でお伝えしてきました。

■ 展開事例②: 前職パイオニア社・オーディオ新事業展開

 二つ目は、前職パイオニア社オーディオ事業の事例です。
・1970~80年代の「オーディオ事業(業界)」は、「音楽を高忠実再生する(Hi-fi)」という手段が目的化していました。
 それで成長してきたピークが1989年でした。
・しかし、それが一般化(コモディティ化)したことで、1990年代は「継続成長」の「常識」が崩れました。(=切実)
・当時、私は「音楽を高忠実再生する(Hi-fi)」以外の「能」(潜在的な可能性)を考察しました。(=逸脱)
・事業目的を「音楽を高忠実再生する(Hi-fi)」から、「音・音楽」を『能』(潜在能、可能性)として楽しむ(新事業)」ことにシフト(逸脱)してみると、
 ① カラオケ(歌部をカットして、ユーザーが主役になる)
 ② ヒット商品緊急開発プロジェクト(異業種コラボ)
 ③ サウンドスケープ(音×楽音)
 ④ CDJのバージョンアップ(DJによるリミックス)
 ⑤ カーエンターテイメント(地図×楽曲×DJ×顧客参加)
 ⑥ 五感コンダクター事業
 ⑦ AUI(オーディブル・インターフェース)事業
 ⑧ 「音・音楽」事業のホップステップジャンプ提案
 等々が想起され、それらに取り組み、幾つかの特許も取得しました。
在職中に、それらを展開できなかったことが悔やまれます。

⇒「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)を見出すことで、「才」が動き出し、輝きだします。
それが、「巧み」「匠」に繋がっていきます。

■ 展開事例③: ピュアモルトスピーカー(第318夜)

 このコラムでは何回もとりあげてきた「ピュアモルトスピーカー」を取り上げます。
ポイントは、「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)として、サントリー社の廃材となるウィスキー樽が、「スピーカーのキャビネット」にならないかという妄想・置き換え(「才」)です。


 この「匠の目線」が、「エコロジー×エコノミー」として多くの「賞」をいただくきっかけになりました。
「能」は、私たちの周りにいっぱいあります。

 さて、ウィスキー樽は、樹齢100年のオーク材を使用していますが、だいたい50年でウィスキー樽の役目を終えてしまいます。木材(「能」)としては、まだ50年使えるのです。
これもヒット商品になった「物語」です。
 ただ、スピーカーに使われる音響ユニットは、8年間の保証しかしていません。樽材キャビネットとしては50年間使えるのに勿体ないのです。

それで、社長とスピーカー事業部長に、
 「あと、50年間使えるオーク材キャビネットなので、音(おと)が少し変わっても、50年間保証する音響ユニットの仕組みをつくりたい」
と申し入れをしました。
 それまで多くの「スピーカー」が、「大量生産」という名目のもとで、使い捨てだったのです。(環境性)
時代は、大量生産・使い捨ての時代から、「エコロジー×エコノミー」の時代になっていました。(社会性)

・家庭の「お宝」になる「ピュアモルトスピーカー」は、スピーカーユニットを50年保証します、と。

・それは、「ピュアモルトスピーカー」だけに限らず、ユニットを取り付ける位置も業界で統一して、使い捨てではなく長く使える商品にする。
・それが、「オーディオ業界」の盟主がやることではないですか。
・そのことによって、修理等も受け付ける「静脈産業」の盟主に先駆けてなれる可能性もあります。
・これまでの「動脈事業」と「静脈事業」を結んだ二刀流になります。

 結局この提案は通りませんでしたが、もしも進めていれば「新しいスピーカー事業(文化)」や「サントリーとパイオニア」の次世代コラボレーションが誕生していたと思います。(そのような企画書を用意していました)


 ここでお伝えしたかったのは、「能」(潜在的な可能性、別様の可能性)と、それを引き出す「才」の関係です。人間側に、引き出そうとする気持ち、志、情熱がなければみえてきません。
そして、「構想」「行動」につなげること。

 是非、「ご自分や社員、学生」及び「会社や地域」の「才」と「能」と「匠」を紐解かれてみてください。
 
 いま、日に日に「経済環境」、「社会環境」、「文化環境」の結び目をみつける重要さが増しています。それはつまり、「経済力」「環境力」「社会力」「文化力」の最適な組み合わせが要請されているということです。
そこに必要なのは、「才」と「能」と「匠」です。

⇒その「匠」の別格の人を『師匠』『巨匠』といいます。

是非、たくさんの方たちに、「才」と「能」を結びつけて、「匠=イノベーター」への道筋を歩んでいって欲しいと思っています。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第339夜:「終わりと始まりはつながっている」

2024年12月29日 本年の『コラム納め』

 本夜は、2024年最後の「コラム納め」です。
昨日12月28日は、毎年行われる一年最後の縁日「納めの目黒不動」に参列しました。

 大本堂で1日6回護摩が焚かれ、13:30の護摩祈願の法要に参列しました。
不動明王の前の壇に護摩木を積み上げられ、それを焚き、しっかりと煩悩を焼きつくしてきました。
(東京・江戸には、白、黒、赤、青、黄の5色の不動明王があり、その中の黒がこの目黒不動です)

 今年一年を納めることで、新しい1年が始まります。
「終わりと始まりはつながっている」
 と正剛師匠はよく言ってました。

 谷口正和師匠、松岡正剛師匠の京都出身のお二人が永眠された(終わり)ことがきっかけで、
その襷(たすき)のほんの一部にしかすぎませんが、私がそれを勝手に引き継ぎ、新しい「始まり」にしようと想いたちました。
 今年の9月に、なぜか、両師匠から呼ばれたように、京都方面の仕事が続いて入り、京都・滋賀を音連れたことも拍車をかけました。
(この「音連れ」という言葉を正剛師匠はよく使われていました)

 そして、本年11月8日から「価値創造の知」第308夜を再開しました。
「新しい始まり」です。
「終わりと始まりはつながっている」を強く意識しました。

 もともと、「イノベーション」は、「2+1」で「これまでの常識」を「新しい視点・視座」で超えていくものです。
そこには、決意・決断・覚悟という「始まり」の元があります。
 その前後が、「終わりと始まり」です。

 11月25日に、松岡正剛師匠を偲ぶ「玄月惜影會」に招待されました。
1995年の目黒区青葉台事務所の満開の桜の季節に入門したのですが、
現在の師匠の活動拠点である世田谷区赤堤の『本の館』を訪れました。
そこで、昔からのスタッフと未詳俱楽部の懐かしい方たちと再会して師匠の面影を語らいました。

 やはり皆さん、正剛師匠の蒔いた格別の種を多くの方たちに伝達しようと行動に移されています。
「終わりと始まりはつながっている」
 正剛師匠の多くの弟子たちの言葉を聴いて、共有して、嬉しくなってしまいました。

 さて、第337~338夜に「マネジメントとイメジメント」を綴りました。
両師匠は、「イメジメント」を拠り所にして、「マネジメント(実業)」に拡張してきました。
私は、製造業の「マネジメント」から、お二人の「イメジメント」の指南を仰いでいました。
それは、「オペレーションの時代」から「イノベーションの時代」への橋渡しでした。

 そのような意味で、「マネジメント(半分)」と「イメジメント(半分)」の『2+1』(第308~338夜)を両師匠と『共創』させてもらいました。
私が30才頃に「自分の不足」を感じてもがいていたのが「イメジメント(半分)」だということを後から気づかされましたが、不足の半分を「格別の両師匠」に指南してもらえる至福の時間でした。

 いま、上記を『納めて』みると、両師匠の一流の指南で、「マネジメントとイメジメント」の二刀流になることができたように思います。
それが、「2+1」のイノベーションジャンプの大きな基盤です。
それを自分が少し得意な「図解化」スキル(見える化)でお伝えしてきました。
これらを学校・企業・自治体の多くの方たちにお伝えしてきました。
これらが、私の「守破離」(第330夜)です。

---------
・・・『守破離』とは、「守って破って離れる」のではない。
 守破離は、
・「守」って型に着き、
・「破」って型へ出て、
・「離」れて型を生む。
ーーーーーーーーー

私の「守破離」は、
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・「守」:マネジメント
・「破」:イメジメント
・「離」:価値創造の知(バリューイノベーション)
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 そして、第308夜から、このコラムを再開すると、更に気合が入って以前には「納まっていた」ことが、「新しい納まり方の景色」が見えるようになってきたことが驚きでした。

・日日是好日(にちにちこれこうじつ)
 です。
 より多くの方たちに、新しくお伝えしたいことがいっぱいになりました。

 今年数え年で、私は「古希」になりましたが、これからが「新しい始まり」です。

価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ

橋本元司の「価値創造の知」第338夜:「土俵が変わる、土俵(自分・自分たちの)を変える」

2024年12月27日 『土俵が変わる、土俵(自分・自分たちの)を変える』

・前前夜(第336夜)は、左斜め上の領域から「変化に対応できなければ、会社は倒産する(第13夜)」コトをお伝えしました。
その時間軸の『大変化』において、「後戻りしない変化=3つのX:トランスフォーメーション」について綴りました。

・前夜(第337夜)は、「変化に対応する」ためには、「マネジメント(管理・オペレーション)能力」の前段の『イメジメント』の個人能力、組織能力の必要性をお伝えしました。
そのイメジメントに必要な「境目・境界を乗り越える能力」となる「3つの知」(深い知・高い知・広い知)を図解しました。

■ 「後戻りしない変化」
 上記をベースにして、本夜は、「後戻りしない」大変化に対応するためのオリジナル体系図を提示します。
それを多くのセミナーでお伝えしてきました。

①「後戻りしない変化」とは、『土俵が変わる』=『常識が変わる』ということです。
②「土俵が変わる」ということは、それに適応した『(自分・自分たちの)土俵を変える』ことが必要です。
③「土俵を変える」プロセスが、「構想」・「2+1」のプロセスであり、その結果が、「新しい全体」・「価値創造」になります

 さて、昭和時代の産業の高い利益は、「産業、家電業界、半導体業界」等、マルチの産業が叩き出していました。
しかし、いまは「自動車産業の一本足打法」に頼っています。
 ただ、オーディオ業界、携帯電話業界等が「iPhone」の登場(2007年)で産業が蒸発したように、クルマ産業も昭和時代の精密機械中心の価値から、「iPhone化」してバージョンアップする「大変化」の真っ最中です。

 つまり、クルマは、「ハードウェア×ソフトウェア×ネットウェア」(「2+1」)に進化しています。
スティーブジョブズ(第157夜、第165夜、第320夜、第321夜)の「iPhoneモデル」が
・『クルマ産業だけでなく、多くの将来産業の土俵を大きく変えている』
 という認識を持つと、産業の将来の風景が変わってきます。

■ 経営統合の意味と先行き
 今週、メディアで「HONDAとNISSAN」の経営統合の話が上がっていましたが、
『昔の土俵=常識・意識』のままでは、上述のオーディオ、携帯電話の二の舞になることが明らかです。
このことは、10年以上も前から言われていたことですが、「成功のジレンマ(成功体験こそが、失敗の原因になる)」を追随しています。

 是非「2+1」で、『逸脱→別様』していただくことを「構想→実行」(第337夜)していただきたいですね。
HONDAさんが『別様』に向かって挑戦してきた中に幾つかのヒントがあります。
日本のクルマ業界が持っているポテンシャルを、クルマ以外の『別様=価値創造』に向かうことが一本足打法からの脱却には『肝要』です。

 政治の世界も、「103万円の壁」で配分を考えること以上に、
日本の将来成長の『切実⇒逸脱⇒別様』に、政治・経済界多くの時間を割いて欲しいと「切」に思っています。
 
 そのために、土俵を変える「2+1」、「3つのX(トランスフォーメーション)」を多くのセミナーや各種ご支援で説明しています。

■ トランスフォーメーション(=X)と価値創造の体系図

◆ 左側は、時間軸を表します。
・下が現在で、上が2030年(SX)、2050年(GX)の変容です。
◆ 真ん中(センター)は、今まで何度も事例でお伝えしてきた価値創造の「2+1」です。
・本業(半分)とSDGs・17の社会課題(半分)から、新しい価値を創造して、新しい全体をつくります
・その価値創造のために、下記「3つの知(A.B.C)」が必要になります。

◆ センター下側が、「航海の時代」の『錨(いかり)』になります。
・それは、これまでの「常識」に屈しない「新ミッション」です。
・「A: いったいなんのためにやるのか?」(志・使命・存在意義・情熱)
・Being: どうありたいのか?
・「実に居て虚にあそぶことはかたし、虚に居て実を行ふべし」

◆ センター上側が、「航海の時代」の『北極星』になります。
・それは、将来の方向性を示す「新ビジョン」です。
・「B: なりたい姿、いつまでに?」
・Becoming: どうなりたいのか?
・「実に居て虚にあそぶことはかたし、虚に居て実を行ふべし」

◆ 右側が、上記を具体化するための『格別の手段』です。
・これが、第308夜からお伝えしてきた「イノベーション」です。

 重要な認識は、これらはつながっていることです。
トランスフォーメーションの時代に、「イノベーション」を実現するためには、「ミッション・ビジョン」の新しい読み解きが不可欠です。
その具体的事例を「価値創造ダイヤモンドグラム」(第317夜~320夜)でお伝えしてきました。 

■経営陣が明確にする3つのコト:プロセスの整理と関係

・ミッション→ビジョン→イノベーション
・深い知  →高い知 →広い知
・Why    →WHAT →HOW

大変化の時代に、リーダーは、経営者は、『深い知→高い知 →広い知』を読み解くスキルを身に付けること、磨き上げることが、自分たちの「本来と将来」を輝かせてくれます。

価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ