価値創造の知・第35夜 “やってみなはれ”

2017年3月12日 ピュアモルトスピーカー

写真は、20年前に「ピュアモルト・オーディオ」を佐治敬三会長にプレゼンテーション(@赤坂)した時のものです。

私は、サントリー様とコラボレーションして創った「スピーカー&オーディオ」に“ピュアモルト”という名前をどうしても付けたかったのですが、鳥井 信吾・サントリーホールディングス代表取締役副会長のサポートをいただいて、想いが実現したスーパーショットです。

 佐治敬三会長が大好きな曲を、ウィスキー樽で造ったピュアモルトスピーカーの響きでお聴きになり大変喜んでいただきました。
私から、「“やってみなはれ”をコラボレーションでやってしまいました」とお伝えすると、
「ピュアモルトスピーカー、いいものをつくられましたな」
と素敵な笑顔と握手で応えてくれました。忘れられません。
そして、「ピュアモルトスピーカー」のネーミングにOKを出していただき、サントリー創業100周年記念ウィスキーのプレゼントがありました。我が家のお宝です。感動・感激・感謝でした。
伝え方が重要なことを直に教えていただきました。

さて、「やってみなはれ」について記されたことを綴ります。
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「やってみなはれ、やらしてみなはれ」の精神で、父親から譲り受けた会社を世界有数の洋酒メーカーに発展させたサントリーの佐治敬三。「生活文化企業」を目指し、新規事業に次々と進出。彼の経営人生はまさに挑戦の連続であった。

「やってみなはれ」というのは、おやじがわたくしに、もう百万回も言うとったわけです。耳にタコができるほど。

で、社長になって考えてみましたら、やっぱり小理屈を並べておっても、物事は運ばない、ともかく実行をまず第一に考えて、それからその中でいろいろ学びながら、第二段階のアクションを考えていったらいいんじゃないかということなんですね。

で、上司といいますか、管理職が、部下に対して「やってみなはれ」と、こう言うわけですね。
それと同時に、その「やってみなはれ」だけではいかんので、やったあとの結果については、「おれがその骨を拾ってやるぞ」「失敗してもいいじゃないか」と、それはおまえの責任ではないという意味で、この「やらしてみなはれ」というのを加えまして、主としてその管理職に対する希望でございますから、役員室に掲げてあるんです。
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「価値創造」を使命とする身にとって、“やってみなはれ”の環境は垂涎の的なのです。

在職中は、日本初のモルトウィスキー、そして「ウィスキー文化」を創られ、世界最高峰のビールに向けても挑戦と改革を続けられました。
サントリーホールやラグビーも含め、遊び心いっぱいの自由人・文化人で、その格別のお人柄とイノベーターとしての情熱の高さにずっと憧れていました。

サントリーの社員の方達とのお付き合いは今でも続いていますが、常にどんどんチャレンジしていく風土があり、恐れずに新しいことを提案されていて、とっても羨ましく思います。

さて、「ピュアモルトスピーカー」の異業種コラボレーションのおかげで、サントリー友人のアドバイスから、売上の一部を「国土緑化推進機構」に寄付をし続けました。
そして、その商品がパイオニア社初めての「エコマーク商品」となりエコプロダクツ展への出品とつながりました。コラボレーション効果です。

さてさて、私の中では、「ピュアモルトスピーカー」の未来形が頭に浮かび、サントリー様とのコラボレーション第2世代の進化形が明滅し、そのポリシーとライフスタイルをご一緒に展開する構想があります。
“やってみなはれ”の精神で、いつか実現させることを愉しみにしています。

第35夜 価値創造から経営革新へ

佐治敬三

価値創造の知・第34夜 不易流行(ふえきりゅうこう)

2017年3月10日 不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず

不易流行という言葉を知っていますか?

前職・目黒本社に転勤となった35歳の時に、痛勤時間に一日一冊を読むということを自分に課していた時(第25夜)に、
「流行予知科学」(星野克美著)を読み、未来を推測する認知科学マーケティングに興味を持ちました。
『価値創造』にとって、「流行」の本質をどうしても掴みたかったのです。

 そのように『流行』の行先や本質に関心を持ちながら、「ヒット商品緊急開発プロジェクト」のリーダーになりました。(第14夜)
そして、サントリー様と「ピュアモルトスピーカー」でコラボレーションした時に、大阪・堂島の本社や山崎蒸留所に行きました。
その夜の懇親会で、「サントリー・不易流行研究所」があることを知り、『不易流行』の話しで盛り上がりました。(写真は、不易流行研究所の発行本)

「不易流行」とは俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の中で見出した蕉風俳諧の理念の一つです。

芭蕉の俳論をまとめた書物『去来抄』では、不易流行について、以下のように書かれています。
(引用:日本俳句研究会 俳句の作り方)
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「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」(去来抄)

噛み砕いて言うと、
「良い俳句が作りたかったら、まずは普遍的な俳句の基礎をちゃんと学ぼう。でも、時代の変化に沿った新しさも追い求めないと、
陳腐でツマラナイ句しか作れなくなるので、気を付けよう」 ということです。

例えば、明治時代に正岡子規は、江戸時代以来の陳腐な俳句を月並み句として批判し、俳句の革新を成し遂げましたが、彼はいきなり新しい句を作ったのではありません。
正岡子規の初期の作品は、彼が否定した月並み句そのまんまです。

正岡子規は、俳句の本質を学んでから、新しい俳句を目指すという、不易流行を体現したような人だったのです。

不易流行の『不易』とは、時を越えて不変の真理をさし、『流行』とは時代や環境の変化によって革新されていく法則のことです。
不易と流行とは、一見、矛盾しているように感じますが、これらは根本において結びついているものであると言います。

蕉門に、千歳不易(せんざいふえき)の句、一時流行の句といふあり。是を二つに分けて教え給へる、其の元は一つなり。(去来抄)

去来抄の中にある向井去来の言葉です。
「千年変らない句と、一時流行の句というのがある。
師匠である芭蕉はこれを二つに分けて教えたが、その根本は一つである」
という意味です。

その根本とは、「風雅の誠」であり、風雅の誠を追究する精神が、不易と流行の底に無ければならないと語っています。

師の風雅に万代不易あり。一時の変化あり。
この二つ究(きはま)り、其の本は一つなり。
その一つといふは、風雅の誠なり(三冊子)
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これまでの価値創造・夜話から、上記には下記「3つ」のことが浮かび上がります。

①「不易(変わらぬもの)と流行(変わるもの)の根本は一つである」
これは、第31夜~33夜でお伝えした“二つでありながら一つ”と同じです。つまり、不易流行も根本は一緒です。

② 正岡子規の“俳句の本質を学んでから、新しい俳句を目指す”は、
守破離(第5夜)そのものです。
“守って型に着き、
破って型へ出て、
離れて型を生む”

③虎屋の羊羹(第12夜)
さて、あの虎屋さんが「大切にすること」をご存知ですか?
違う切り口で質問すると、「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」が何かです。
・変えていいものは「味」
・変えてはいけないものは、「お客様への感謝の気持ち」
です。素晴らしいですね。

そう、私たちは、未来を観るときに『本来と将来』を同時に観ることが必要です。
そして、過去を豊かにすることが、現在と未来を豊かにしてくれます。これがとっても重要です。

これは、“温故知新”でもありますね。
価値創造の“第2法則”です。

さて、サントリー様の関係者との懇親はとても楽しいものでした。それは、「不易流行」から始まり、「やってみなはれ」につながっていきました。
それらが美味しいお酒の肴になりながら、北新地の夜は更けていきました。

さてさて、赤坂で佐治敬三会長にプレゼンテーションをしました。「やってみなはれ」については、どこかの夜に綴りたいと想います。

第34夜・価値創造から経営革新へ

不易流行

 

価値創造の知・第33夜 禅と価値創造③

2017年3月1日 “二つでありながら一つ”

『禅(ZEN)』の修行で一番大切なコトは何だと思いますか?
それは、「二つ」にならないということにあります。
座禅の姿勢は、「結跏趺坐(けっかふざ)」という右足と左足を組んでいますね。

 この姿勢は、『二つではない、一つでもない』という「二元」性の「一者」性を表わしています。
これが、もっとも大事な教えです。(引用:禅マインド)

もし私達の心と身体が二つである、と考えるとそれは間違いです。心と身体が一つである、と考えるとそれも間違いです。私達の心と身体は、“二つでありながら一つ”なのです。
私達は普通、もし何かが一つ(単数)でなければ、それは二つ以上(複数)であると考えます。けれども実際の人生の経験に照らしてみましょう。
私達の人生は、複数であるばかりではなく、単一です。私達は、互いに支え合うと同時に自立しています。

『禅』が大事にするのは、今この時、現在です。
過去を考えれば、それは現在に戻り、未来を考えれば、それも現在に戻ります。
これも“二つ(過去と未来)でありながら一つ(現在)”なのです。

“人生が2度あれば”いいのですが、人生は単一です。

『禅』という字の意味がわかってきましたでしょうか。

さて、“二つでありながら一つ”と同じことを第17夜(「間(ま)」と「創造」)でお伝えしました。覚えておられますか?それは、『真(間)』です。
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「間」は日本独特の観念です。ただ、古代初期の日本では
「ま」には「間」ではなく、「真」の文字が充てられていました。

真理・真言・真剣・真相・・・
その「真」のコンセプトは「二」を意味していて、それも
一の次の序数としての二ではなく、一と一が両側から寄ってきて
つくりあげる合一としての「二」を象徴していたそうです。
「真」を成立させるもともとの「一」は「片」と呼ばれていて
この片が別の片と組み合わさって「真」になろうとする。
「二」である「真」はその内側に2つの「片」を含んでいるのです。
それなら片方と片方を取り出してみたらどうなるか。
その取り出した片方と片方を暫定的に置いておいた状態、
それこそが「間」なのです。
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『禅(ZEN)』の修行(方法)で一番大切なコトは、“二つでありながら一つ”ということです。

如何でしょうか?
「イノベーション」の代表格の“スティーブジョブズ”が禅寺に通っていたということが意味をもってきますね。
さあこれで、第31夜「アイデア」、第32夜「イノベーション」、第33夜「禅(ZEN)」の一番大事な方法・原理が同じだということをお伝えできたでしょうか?

この方法・原理を習得することが、どれだけ意義のあることかが、ご納得いただけたら嬉しいですね。

さて、ブッダの基本的な教えは、ものごとは移ろうということ、変化ということ、それは“無常”であるということです。
無常迅速であるから、人は悩み、事業は変化に対応するのです。
そこで、『禅(ZEN)』が教えるのは、“初心”です。“ありのままに在ること”“大元(おおもと)に在ること”です。
それは、第6夜(「色即是空・空即是色」)に記しました。

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「色即是空」というのは、「現実=色」に問題・課題があるのなら、先ず心を無にして、「大元=空=大切なこと=真心」に戻りなさいと教えてくれているように思います。
そして、「空=大元=真心」に戻って従来のしがらみや常識から解き放たれて、その本質(=コンセプト=核心)を把えてから「現実=色」を観ると
新しい世界(=現実=色=確信)が観えるということではないでしょうか。その確信を革新するのがイノベーションであり価値創造です。
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ここにも“二つでありながら一つ”がありますね。
「空」=「大元」に意識を置くこと(超意識)が重要です。
そのため、多くの経営者やイノベーターが「禅(ZEN)」や「「超越瞑想」の門を叩く理由なのでは、と思っています。

それでは、前夜に記した「マーケティング」と「イノベーティング」についてお話しします。
マネジメントの神様の「ピータードラッカー」は、企業(事業)の目的を

“顧客を創造すること”=“顧客価値を創造すること”

と云っています。顧客価値を創造できなければ、企業は倒産します。これが現実です。

そして、企業の中でそれを実現できるのは、「マーケティング」と「イノベーション」の二つだけだと言いきっています。
さて、またここに出てきましたね。

“二つ(マーケティングとイノベーション)でありながら一つ(顧客価値創造)”

ここがポイントです。
そうすると、イノベーションという言葉が引っ掛かります。
そうであれば、これは「イノベーティング」が適当なのではないかと。

昨夜(第32夜)は、「イノベーション」について記しました。

イノベーションとは、『①「モノやコト」が新しく結びつき、②それが新しい価値として社会的に受け入れられて、経済が発展している状態(ing)のコト』

そう、つまり顧客価値創造から見れば、「イノベーティング」なのです。

“二つ(マーケティングとイノベーティング)でありながら一つ(顧客価値創造)”

ここから、顧客価値創造の神髄となる三位一体としての「トリニティイノベーション」(第21夜の図)が出来上がりました。

おそらく、何年かすると事業開発や価値創造の領域では、「イノベーティング」と呼ばれるようになると思います。きっと。
それは、本日の夜話がきっかけになって・・・。笑

第33夜 価値創造による経営革新

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価値創造の知・第32夜 イノベーションと価値創造②

2017年2月28日 イノベーションの真髄

前夜に引き続き、「アイデア・イノベーション・禅」の共通項を紐解いていきます。
これが観えたときに、自分の中の価値創造の風景がステップアップしました。(第8夜 「わかる」ことは「かわる」こと)
その時の『かわる』を皆さんと共有できると嬉しいですね。

 さあ、今夜は「イノベーション」です。
イノベーションの元祖であるジョセフ・シュンペーターは、イノベーションを「新結合」と呼んで、次のように云っています。

イノベーションとは、『①「モノやコト」が新しく結びつき、②それが新しい価値として社会的に受け入れられて、経済が発展している状態(ing)のコト』
 新結合 = New Combination

前夜の「アイデアのつくり方」(ジェームス・W・ヤング)は、『アイデアとは既存の要素の新しい組合せ以外の何ものでもない』でした。
そして、今夜のイノベーションの前半は『①「モノやコト」が新しく結びつき』が『新結合 = New Combination』になっています。

つまり、「アイデアのつくり方」の方法と、「イノベーション」の前半の方法は殆ど同じことを云っています。
それは、ゼロから何かを生み出すことではなくて(=発明:インベンション)、既にあるモノ(コト)同士を組み合わせることによって新しい価値を生み出す方法、原理を意味します。(=イノベーション)
なので、私たちは誰でもイノベーションを生み出す、価値を創造することができるのです。

それまでになかった新しい組み合わせ、新結合の理解を進めるために、自分ゴトを含め、三つの事例を記します。
①活版印刷
ルネッサンス期の世界の三大発明と云われるグーテンベルクの活版印刷も、グーテンベルクの実家の刻印機と周辺のワイン製造のぶどう絞り機の新結合によって生まれました。(写真)
②ピュアモルトスピーカー等
第4夜(不足転じて満足となす:用意と卒意)と第17夜(「間(ま)」と「創造」)で、私がプロデュースした異業種コラボレーションによるヒット商品群を記しましたが、それはまさしく新結合そのものです。
③iPhone
世の中を変えたスティーブジョブズのiPhoneは、「iPodとデジカメと携帯電話、ネット」の新結合です。

さて皆さん、イノベーションへの挑戦に、俄然やる気が出てきましたか?

やる気が出てこられた方は、第1夜(「創造性」による生産性向上と働き方改革)をご覧ください。
そこには、
・模倣的(イミテイティブ)
・創造的(クリエイティブ)
・革新的(イノベイティブ)
のことを記しています。

昨夜(第31夜)は、「アイデアのつくり方」ですが、これは『・創造的(クリエイティブ』に属します。
「イノベイティブ」とは、iPhoneに代表されるように、「新しい世界を創り出すコト=現実を変えるコト」、「それが新しい価値として社会的に受け入れられて、経済が発展している状態(ing)のコト」にあります。
ゆえに、『クリエイティブは、イノベイティブの前段です』

クリエイティブ以上の『イノべイティブ』に到達するのに必要なのは、
・第21夜(気立て・見立て・仕立て)の気立てと仕立ての用意と卒意
・第17夜(「間(ま)」と「創造」)のダイアグラム作成 がポイントになります。

何れにしても、重要なことは、第11夜(イノベーションの心得:「本気・本質・本流」編)でも記しましたが、結果として、次のS曲線(本流)に乗り移れるかどうかにかかっています。
『イノベーション』の理解のお役に立てれば幸甚です。

今までの多くの経験から、いくらいい構想があっても既存組織には足を引っ張る力が働きます。(コメント写真:イノベーションのジレンマ)ここを乗り越えることも必要です。
更に、世の中はとっくにイノベーションが進化した『オープンイノベーション』の時代です。本気・本質、そしてビジネスの『型』を際立たせましょう。
モタモタしてはいる時間はありませんね。

次の夜に記しますが、私はイノベーションという言い方をマーケティングと同様に、『イノベーティング』と云いたいと思っています。
その理由は「禅」との関係から・・・

第32夜 価値創造による経営革新

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価値創造の知・第31夜 アイデアのつくり方① 基礎編

2017年2月27日 『アイデアとは既存の要素の新しい組合せ以外の何ものでもない』

アイデア/アイディア(idea)とは、「頭に浮かんだ考え」「発想」「着想」「思想」などの意味を持つ英単語です。(引用:ニコニコ大百科)

ビジネスにかかわらず、色々な場面で
「課題を解決するために、みんなで何かいいアイデアを出しましょう」
という「場面」に、皆さんも参加されたことがあると思います。
でも、なかなかそこからいいアウトプットに繋がらないことも経験しますね。

 さて、下に記す3項目の真髄(一番重要なコト)は共通しています。それは、一体何でしょうか?三番目の『禅』の重要なことが一体何かが鍵ですね。これが観えるとモノゴトの本質が洞察できるようになります。(グループで10分で検討していただくこともあります)
① アイデアのつくり方
② イノベーション
③ 禅

それでは、それらを3夜に分けて綴っていきたいと思います。
最初に『①アイデアのつくり方』からいきます。

写真の本『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング)の原著の初版は1940年に出版され、数十年間売れ続けている知的発想法のロングセラーです。
日本語版は、約100ページの薄い本ですが、大きい書店に行けば必ず置いてあります。研修・セミナーの場ではよくご紹介します。

そのエッセンスを記します。
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アイデアの作成について、知っておくべき一番大切なことは、
“ある特定のアイデアをどこから探し出してくるかということでなく、すべてのアイデアが作りだされる方法に心を訓練する仕方であり、すべてのアイデアの源泉にある原理を把握する方法なのである”

アイデア作成の基礎となる一般的原理については、大切なことが二つあるように思われる
1.アイデアとは既存の要素の新しい組合せ以外の何ものでもない
2.既存の要素を新しい一つの組合せに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい

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いかがでしょうか。今まで連載にお付き合いしていただいた方達はピンときますね。
上記の1.2.は、第26夜「未詳俱楽部入門」で記した松岡正剛師匠の『編集』そのものですね。
第18夜「間(ま)からご縁へ」はその実践例です。
第17夜「間(ま)と「創造」はそれを実現できるようにしたダイアグラムとなります。

次に、谷口正和師匠は「円形情報から球体アイデアへ」で下記のように説明をされています。
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気付きは、ほんの一瞬の出来事です。
それはあらゆる気付きの連鎖が、アイデアという発想を生み出します。常に気付きを意識することで、重層性が生まれ奥行きとなって表れていきます。

一瞬に思うことは幾重にも重なり合った情報がもたらします。
円を描くように収集された情報も、重層性を持つことでその情報は、球体へと変化していきます。
球体となって集約されたアイデアこそが、パラダイムチェンジを巻き起こすのです。
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上記、“①『編集』における関係性”と②『気づき』における重層性の双方の結合
が重要なポイントになります。
なので、「情報収集/選択の努力と、編集/創造スキルの習得」を実践され、相乗されると一気に価値創造の飛躍があります。

『アイデアとは既存の要素の新しい組合せ以外の何ものでもない』

さてさて、次夜は「アイデアとイノベーション」の関係を綴りたいと思います。
根っこは全く同じなのです。楽しみにしてください。
第31夜・価値創造による経営革新

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価値創造の知・第30夜 新価値創造研究所『経営革新のススメ』

2017年2月24日 新価値創造研究所『経営革新のススメ』

福沢諭吉の著書に『学問のすすめ』があります。価値創造夜話の連載が30夜を迎えたので、最近寄稿した「顧客価値創造にもとづく経営革新」をそのまま下記『経営革新のススメ』としてご覧いただけると幸甚です。

経営革新のすすめ「顧客価値創造にもとづく経営革新」ファイル

価値創造の知・第29夜 未常識と非常識

2017年2月19日 『第3の道』

前々回、前回の夜話は「志」「新しい目的」でしたので、その実現に深く関係する「未常識と非常識」をテーマにしました。
「価値創造」にとって、「常識」を離脱・逸脱することは必須なのですが、それにまつわる痛い体験を二つ綴ります。

1.第10夜詳細:「オーディオのイノベーション」
1992年の経営会議で、
「2005年前後を境にして、オーディオはCDの時代から、超高密度メディア(USBメモリ)や通信の時代に移行する可能性が大きい。
その為の準備を2000年までに行いたい」
という旨のプレゼンテーションを委員会メンバーを代表して行いました。

当時はCD全盛の時代ですから、すぐに担当部長に呼ばれて、
「橋本よ、そんなことは起きるはずがない」と。
その報告は非常識に思えたのでしょう。
その担当部長が退職されるときに、私のところにきました。
「お前が云うとおりになったな」
その時に、返答したのが、
「それは未常識だっただけです。超高密度メディア委員会メンバーのシミュレーションをただ図解してお伝えしただけです」と。

2.第14夜詳細:「社長直訴そしてヒット商品緊急プロジェクトへ」
1990年移行、ホームオーディオは衰退期に入っていました。
そこで、「『性能・機能』ではなく、『効能としてのライフスタイル』をベースにして、異業種コラボレーションでヒット商品を生み出す」
という提案を1995年の経営会議で行いました。
その後に、ある役員からお呼びがかかり、
「新社長がOKしても、こんな提案が上手く行くわけがないだろう。
一体、何を考えているんだ・・・・」
次々に厳しい言葉が続いて浴びせられました。

今、「目前にある課題・問題」に集中して、それを解決することを責務として事業を任せられている人からみたら、そのように映ったのもわかります。
ただ、第13夜「倒産、そして新価値創造」を体験してきた自分からは、
「役員の人達が退職するまではそれでいいかもしれないけれど、その後に残った多くの若い社員や家族のためには、今ここで新しい目的のために行動に移さなければならない」
という熱い思い(志)がありました。

役員からみたら、良からぬ非業、非常識に見えたでしょう。
どちらも自分からの常識から見ていたのです。そして、私の方は「後になれば判る未常識」だったのです。

①は時間軸で、②は対立軸で「常識とは何か」を教えてくれます。
そんな『常識』『未常識』『非常識』を教えてくれたのが、写真の本です。

それは31年前、つまり自分が30歳の時に出会った山本七平さんの著書です。有楽町にある本屋さんで、何故かこのタイトルが気になり、「常識の研究」「常識の落とし穴」と後に続く常識シリーズに夢中になりました。その後の自分の「常識を超える未常識」の基盤になりました。

丁度、「倒産、そして価値創造」(第13夜)に記した前職・パイオニア社の当時2000人規模のセンター工場で労働組合の支部書記長をしていた頃です。
30~35歳の時は、家に帰ってもなかなか眠れずに、夜中の2時くらいまで起きていて、自分の磨き方、生き方や将来の道筋を考えて悶々としていました。

組合執行部の会議の合間にその話しをしたら、「オレも、オレも」と相槌があり、自分だけではないのだと嬉しくなったことを思い出します。会社人生のその時期は、「次のステップへの大事な時」なのですね。きっと。

さて、山本七平さんは「常識」について次のように記しています。
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「常識」とは分析不可能なものであり、また明治になってできた言葉です。小林秀雄によれば、徳川時代には「常見」といったそうです。[反対語は断見(だんけん)]
常見(コモン・センス)の「センス」は「識」よりも「見」に近い。私達は確かに「常見」の世界に生きていて、「常見」で世の中、世界を見ている。
ただ、「見」は必ずしも「識」ではない。視点を違えて別の見方をすれば、「常見」とは違う面が見える。このさまざまな「見」を総合して判断を下せば、そこにははじめて「真の常識」が成り立つであろう。
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事例を二つほど記します。
1. 量の変化が質を変える
日本の高校進学率は、経済成長とほぼ同一カーブで上昇し、昭和30年50%、40年70%、50年90%となっている。これを量の問題として捉えると、これに対する教育施設の拡充、教員の補充といった問題になり、それに対応するのに大わらわになる。

その時、量に対応すれば問題が解決するのではなく、ここで問題の質が変化するのだとは、殆ど誰も考えない。
いわば、それ以前はもちろん、クラスの50%が高校に進学する時でも、残りの50%は、自分たちは「落ちこぼれだ」という意識は持たないし、社会もそういう目では見ない。

ところが90%前後高校進学となると、そうはいかない。ここで問題の質は変わり、これは教育施設の量の拡大では対応できない教育問題となってくる。

2.「二者択一以外」の道
日本に、カモシカ問題がある。同じようにどの国でも、絶滅に瀕した動物を保護すると、急速に増加するが、今度はその動物による食害問題が起こる。

すると、保護をやめて一定数以上は射殺・捕獲すべきか、あくまで保護すべきかが当然問題になる。日本でも檜の苗木をばりばり食べられてしまえば、山林業者にとってはカモシカは害獣ということになるであろう。保護を続けるなら、山林の保護をどうするか、業者への損害保障はどうすべきかが当然問題になる。

そして、こういう場合、議論はしばしば保護か、捕獲・射殺かの二者択一になりやすく、多くの場合、両者とも自説を固持して譲らないという対立になりやすい。

これはすべての問題についていえる。環境問題、貿易問題、また企業内の問題、各人の抱える問題、そのすべてについて、問題が二者択一のように見えてきたら、そのいずれでもない「第3の道」があるのではないか、ともう一度、探索してみる必要があるのであろう。

上記二つには、ビジネスのイノベーション・価値創造の本質が記されていました。
・「量」が、一定の水準を超えると、「質」が、劇的に変化する(第10夜、第11夜、複雑系)
・「矛盾」とは、発展の原動力“矛盾の止揚”である(第15夜、第17夜、第18夜)
この「質への変化」「矛盾の止揚」の視点・視座を柔軟に活用できることが、創造性「クリエイティブ&イノベイティブ」(第1夜)への本筋です。

ただ、実際の現場では、それまでの「常識」で成功した人達や組織が存在して権力(既得権)を持っているので、新しい「常識」に移行するのが遅くなったり、困難になることがあります。

さて、そこで重要になるのが、「何が変わって、何が変わらないのか」という認識です。特に、「何が変わらないのか」ということを共通認識することが移行をスムースにさせることが多いことを経験しています。
その双方をトップが認識されて、リーダーシップを発揮している会社は、卓越した機動力があります。

さて、本研究所の研修・セミナーでは、それまでの「常識」という分厚い黒い殻を破る心得と方法を先ず最初にお伝えしています。(コメントに追加しています)

そこでのポイントは、「これまではこうやって上手くやってきた」という従来のやり方や考え方を捨て去り、常識の壁を破り、その奥にある「3つの本質」を掴み取ることです。(第11夜)
それが価値創造の「トリニティ・イノベーション」(第21夜)です。

さて、山本七平さんは、あの有名な「日本人とユダヤ人」の作者とも言われています。
特に、明治維新という大変化の前後で起きた価値観の変化や、武士以外の庶民がどうして上手に対応できたのか、ということも分かり易く説明されています。
その示唆は、現在生じている日本や企業の課題や、これから起きるであろう諸問題への対応にはたいへん有効です。

30歳の時に、山本七平さんの書物から、ものの見方や考え方、特に「第3の道」に触れられることができたことを幸せに思います。そして、是非、若い方達にもそれらを経験して欲しいと思っています。

第29夜・価値創造による経営革新

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価値創造の知・第28夜 新しい目的をつくる

2017年2月16日  それは何ために?

私が編集の基礎を学んだ「プランニング編集術」(松岡正剛監修:第26夜)の編集エクササイズに「コップの言い換え」というお題があります。「コップ」は、どのように言い換えられるのでしょうか。

コップを「容器」と言い換えることができれば、Glass、花瓶、、歯ブラシ立て、水を入れた楽器、等々とイメージが広がります。コップを割れば「凶器」としても使えます。糸で紙コップをつなげれば、おもちゃの糸電話になります。
花器や楽器、凶器など、それらはコップの新しい使い道です。それは当初の飲料を飲むという目的と違う新しい目的になります。モノゴトの視点、視座の転換、逸脱です。

 様々な業種の経営をご支援していますが、事業を成立させているその会社の「要素・機能・属性」の中から、上記新しい目的を見つけることで、新商品や新事業を構想することができます。
これは効果覿面(てきめん)です。これは「生き方」「人財開発」にも応用、活用できます。

さて、動物園で新しい目的の事例を見てゆきましょう。従来の動物園はパンダやコアラ等の奇獣・珍獣で人を集めていました(それが目的でした)が、どんどん観客数が右肩下がりになりました。旭山動物園の獣医係長が「普通の動物の命の大切さを伝えたい」という新しい目的を見つけて実行、展開、更新することで、今の旭山動物園の隆盛があります。獣医係長は園長になりました。
そうなのです。人生や会社経営に行き詰っているときに先ず実践していただきたいのが、新しい目的を上手に真剣に見つけることです。人生と経営の風景ががらりと変わります。
その心得と方法は、トリニティ・イノベーション(第21夜)ステージの一番最初に「理論と演習」でお伝えしています。

さてさて、今夜ご紹介するのは「紺野 登」さんです。第15夜にも登場していただきました。
2004年、私が49歳の時に、総合研究所のトップから「研究所の二つの顕在的な課題・不足を解決する」ため呼ばれました。
それは、
①顧客と接触が不足しているコト
②将来の構想力が不足しているコト
でした。
「総合研究所の10年先の可能性、リスクをシナリオプランニングで洞察・構想する」ために、日本のシナリオプランニングの第1人者の紺野さんにモデレーターをお願いしました。
そこで、先の見えない不確かな未来を洞察する心得と方法をナビゲートして貰いました。その最中に、何か紺野さんと自分の共通項が多いことに気づきました。
聴いてみると、高校も大学も一緒だったのです。それも、高校の同級生で隣のクラスにいたのでした。(第22夜)
ご縁を感じずにはいられませんでした。

その重要なプロジェクトの中で、紺野さんが大事にされていたのは、

「一体、それは何のために」

という「目的」とさらに「未来の新しい目的、世界」について深く、高く、広く質問され、メンバーから未来の可能性を引き出していました。
2006年にそのプロジェクトで作成したものは、それまで作成したものと次元が違って納得のいく仕上がりになりました。
それはこれまで連載してきた、①編集工学(第26夜)、②目的工学(第28夜)、③価値創造工学(第21夜)の3つの工学の知が一つになった結晶です。
早速、発表会用に、2軸でできる4象限シナリオに基づいた10分のビデオ(2017年の未来)を作成しました。それは、10年後の世界を見事にいい当てることができたのでした。
是非、会社を経営を革新したい方達に見ていただきたいですね。(詳細は第15夜に記しています)
この結合の心得と方法(新しい型)が、その後の自分の知の財産になりました。

その紺野さんが2013年に著されたのが、写真の
「利益や売上ばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか」(紺野登+目的工学研究所)
です。
少し抜粋します。

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産業革命以来のビジネスと言えば、人々の消費と所有というニーズを満たすために、目に見える有形のモノをつくり、これを提供することがもっぱらでした。
多くの場合、価格や品質、経済性や利便性、時には新奇性やプレゼントなどに訴えて、その購買を促してきました。
人々のウォンツやニーズは、「技術ありき」のようなやり方だけで満たすことが難しく、すっかり口うるさくなった消費者や顧客の購買意欲を引き出すために、
モノとモノ、あるいは、サービスや経験など無形のコトと抱き合わせるようになりました。
(中略)
そして現在、--それこそ目的工学が求められている大きな理由の一つでもありますが、--従来のモノづくり、その発展形としてもコトづくりを超えて、
「コトづくりのなかにモノづくりを埋め込む」という考え方に変わってきています。

言い換えれば、ある目的を実現するために、あるべきコトを構想し、これをビジネスモデルに具体化し、ここにふさわしいモノ(手段)--それはローテクでもかまいません--を探したり、
時にはすでにある資産を再活用することです。
既存の資産や外部の知を、新しい視点やビジネスモデルで組み替えていくこと。これもイノベーションといえるのです。
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「手段の時代」から「目的の時代」です。手段にとらわれすぎて本質を失い、傾く経営を何度もみてきました。
本書は、まず「利益」ではなくて、「よい目的」を考えるビジネスを実践するために書かれています。
より良い未来を創ることを志向するビジネスパーソンにお薦めです。

AIやIoT、Robotという手段は間違いなく進展していくと思います。その特に、その手段がどのような意味を持ち、上位にある「よい目的」と自身の強みや資産とをつなげて価値創造することが肝要です。
「良い目的」が見つかると、良い未来が見えてきます。そうすると、それを実現するための良きパートナーも見えてきます。
上記を、①「構想」し、②「行動」し、③「更新」していく時代です。

さあ、隆々とした未来を創るために、「懸命」と「賢明」を結合し、共に顔晴って頑張ってゆきましょう。

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価値創造の知・第27夜 志(こころざし)

2017年2月13日 田坂広志さん

皆さん、田坂広志さんをご存知ですか。2011年 民主党政権にて内閣官房参与として原発事故対策、原子力行政改革、原子力政策転換に取り組まれていたので、よくメディアに出られていましたね。
田坂さんと私の出会いは20年前で、 田坂さんが日本総合研究所で「産業インキュベーション」のビジョンと戦略を掲げ、10年間に民間企業702社とともに、20のコンソーシアムを設立し、民間主導による新産業創造に取り組まれていた時でした。

 ちょうど、前職で多くの異業種コラボレーションによるヒット商品を創出していた時に、上記の「産業インキュベーション・異業種コンソシアム」の会合に呼ばれました。
そこで、スピーチを依頼されたのですが、その内容は後述します。

さてその時から感じていたのは、この方は「志(こころざし)に真剣であり本気の人」ということでした。
「未来を拓く君たちへ」(写真)で、「志」とは何か、を記されていますのでその一部をのせます。

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「志」とは、何か。
一言で述べておこう。

与えられた人生において、
己のためだけでなく、
多くの人々のために、
そして、世の中のために、
大切な何かを成し遂げようとの決意。
それが「志」だ。

その「志」を抱いて生きる。

そのことを、決して忘れないでほしい。
では、なぜ、我々は、「志」を抱いて生きるのか。
この本では、君に、そのことを語ろう。
だから、この本の副題は、
「なぜ、我々は『志』を抱いて生きるのか」
その理由について、君に語ろう。
その理由を知ることは、
この人生という名の山の
登り方を知ること。
そして、それは、君の人生にとって、
とても大切なこと。

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凄まじく伝わってくるものがあります。「広志」さんという名前は、志を広める人という意味が込められているのですね。現代のスーパー伝道師なのです。
人生に前向きな私の友人達が、田坂さん塾長の下記「田坂塾」に入門しています。

「田坂塾」とは、企業の経営者や組織のリーダーの方々が、互いの人間成長をめざし、切磋琢磨をしていく場です。
そして、「現実を変革する知の力」としての「21世紀の知性」を身につけた人間像を目指した活動をされています。

さて、自分が40歳前半の時にに、田坂さんから大きく影響を受けたことを3つ上げます。
1.「志」を抱いて生きる
2.「使える弁証法」
3.「知行合一(ちぎょうごういつ、ちこうごういつ)」
=知(知ること)と行(行うこと)は同じ心の良知から発する作用であり分離不可能である

よく、自分のセミナーや研修では、事業開発や人材開発を航海に例えることが多いのですが、これから船出(新事業)する時に、重要なコトは、錨(いかり)を何に置いているのか、そして、何処をめざしていくのか(北極星)、を明確にしてゆくことです。(価値創造第25夜 トリニティーイノベーションの①②です)

それを導きだしてくれるのが、1.「志」と2.「弁証法」になります。そして、1.&2.を結ぶ新機軸がみえたら、羅針盤を描くことができます。広い視野と大局観が生まれます。あとは「知行合一」あるのみです。

上記①②③と、全く同じことを前職の「ヒット商品プロジェクト」でプロデュースしていました。そして、様々な企業をご支援する現在も、その考え方、進め方は全く変わっていません。

さてさて、「ヘーゲルの弁証法」です。
これからのIoT社会、AI社会の未来を洞察する時の最強のツールになります。「使える弁証法」(2005年初版)を是非ご覧になって、使いこなされることをお薦めします。
「ビジネス生態系」「自分の人生」「ライフスタイル」等々、活用の幅はとてつもなく広いものがあります。

最後に、首記の自分のスピーチの一部をお伝えします。

「(前略)
田坂さんから、先ほど「弁証法」(=正反合)のお話しがありました。『知』にも触れられていたので、それについて思うところを述べます。

現在の知は『教養』ですが、それがITの時代になって進化が必要になってきたと思います。
弁証法で捉えれば、過去の江戸時代に大事にされていたのは、『修養』(徳性をみがき、人格を高めること)です。

その中心は、肚(丹田)にあり、肚の文化でした。茶道も柔道も相撲もそうですね。その修養が『正』です。
それが、頭のほうに上がってきて『教養』重視になったのが明治です。その教養が『反』です。

さて、21世紀の「知」はどのようになるのでしょうか。
弁証法でとらえれば、それは、「修養(正)」と「教養(反)」が結合した『修教(合)』の時代ではないでしょうか。
21世紀の日本に求められている、新しい「知」=『修教』をこの異業種コンソシアムで共に創り上げたいですね。
(後略)」

20年前にお伝えしたこの気持ちは今も変わっていません。
「おもてなし」(第2夜)と「現在の日本の教育」に求められているのは『修教の知』と確信しています。

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価値創造の知・第26夜 未詳(まだつまびらかでないこと)

2017年2月8日 未詳倶楽部

前職の40歳の時から、異業種コラボレーションをして「連続ヒット商品」をプロデュースしていました。その真っ只中に、「会えば、きっと橋本さんの将来を変える人になると思うのでおつなぎしたい」と知人に云われ、すぐに代官山近くにある事務所に伺いました。

 それが、松岡正剛師匠です。

メディアでは「知の巨人」と云われていますが、それを遥かに超えています。尋常ではなく蓄えられた知識と、それらを縦横無尽に取り扱う編集能力が凄まじいのです。そして、師匠の元に集う方達がとびきり格別で素晴らしい。
さて、ここでいう『編集』について語られていることを著書「知の編集術」より抜粋します。

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私が使う「編集」という言葉は、とても大きな範囲に使われています。普通は、新聞や雑誌の編集者がしている仕事を「編集」というのですが、そういう狭い見方をしていません。たとえば、人々が言葉や仕草でコミュニケーションをすること、その全てに「編集」というものが生きているとみなします。
だから普段の会話にも学問にもエンターテインメントにも、スポーツも料理も「編集」が生かされているわけです。
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当時の自分には、何かと何かをクロスすることで、生まれてくる「新しい性質・効能」、或は、動的には「新しい命づくり」の方法を「編集」と受け止めていました。
現在は当たり前なのですが、20年前に、当時では珍しかった異なる会社同士をつなぎ合わせる、編集する「異業種コラボレーション」、「新しい文化の創造」を使命にしていました。
その縁でお引き合わせしていただいたのだと思っていましたが、そんなに浅いレベルの話ではなかったことが後々わかりました。

事務所に何回か出入りしていると、「未詳俱楽部」という松岡師匠の主宰するプライベートクラブがあることを知りました。
どのようなものなのかも明らかにされずに、一泊二日の「未詳俱楽部」に参加することを許されました。
「未詳」とは、まだ詳しからず、まだつまびらかでないのです。

最初に例會の案内状が届きます。そこには、集合の時間と場所(日本各地)が書いてあるだけです。
そこに集う女性達は、服装がノーマルではなく半数以上が着物でした。男性も何か雰囲気が違い、サラリーマンのような自分がくる「場」ではないと感じました。
そして、集合場所で一枚の次第が渡されますが、プログラムの一切が伏せられたまま進行します。この伏せるふるまいが粋(いき)にもつながっていきます。

会員証(写真)の裏側には、五つの会則が記されていますが、その二つを上げます。

一.会員はかけがえなく、あてどもない気質をそなえている

一.会員はみだりに当倶楽部のことを口外しない

ということで、「みだりに(=これといった理由もなくやたらに)」記すことができません。(笑)

さて、その集合場所からしつらわれた会場に移動します。
そこは、おもてなし(第2夜)の世界です。そのしつらいから皆さんは亭主の趣向を想像していくようなのですが、粋(いき)な人達の中に野暮な自分がいることが判ってきて冷や汗がどっとでてきました。
それから、特別なゲストが登場します。様々なジャンルの「格別で別格な方達」が毎回来られるのです。そのゲストと共に夜のプログラムは進み、夜中を越えて宴は続きます。

そこでは、主人と客は分離されていなくて、毎回「主客一体」「一期一会」となり演じていきます。
「能、大鼓、三味線、謳い、俳句、料理、書、歌、茶道、茶碗(第5夜)・・・・」

それは、「日本という方法」を身をもって体感できる「至福と冷や汗」の入り混じった極上の「場」と「時間」でした。ただ、自分は粋人ではなかったので、いつもスタッフから「イジラレテ」、場を和ませる役どころでした。

最初の例會のその夜に師匠のヒアリングがあり、一人ひとり俳号をいただけます。
自分の俳号は、「耳窓」です。それは奥深いのです。
(そして、それがメールの頭の「jiso」になっています)

さて1998年に入門して以来、一年に2回くらいの「未詳俱楽部」に十数年参加し続けました。
また、そのご縁で、「連塾」「時塾」「椿座」にも連続参加して、「日本という方法」を自分の心と体と脳に刻み付けました。
それらの「極上の場」に、絶妙のタイミングで参加できたことを感謝しています。
さてここまで、「未詳俱楽部」を「みだり」に記したつもりはないのですが、破門だけはお許しください(笑)

前夜(第25夜)にも記しましたが、自分(新価値創造研究所)は、価値創造の肝となる方法を下記「トリニティ(三位一体)イノベーション」にまとめました。

①人を深く読む: 禅、わびさび
②未来を高く読む: 守破離
③広く全体を読む: 間(ま)

①②③それぞれに右側の「日本という方法」を中心に理論と演習を入れて、もう2000人以上の方達に、研修・セミナー・プロジェクトでお伝えしてきました。
それはこの「未詳俱楽部」の実体験が元になって「再編集」したものです。
より多くの方達に「日本という方法」と「ビジネス」を結合・編集したものをお伝えして、恩返ししてゆきたいと思います。

松岡師匠、ありがとうございました。これからも宜しくお願い致します。 橋本元司拝

 

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