2026年9月1日:「顕密思考」は、顕と密を往還するOSであり、「深く・高く・広く」は、そのOSを動かす三つの知である。
「密」とは、隠れているものではなく、まだ顕になっていないもの。

これまで私は、「顕密思考」という言葉について、考察を続けてきました。
⦿「顕」とは、目に見えているもの。
データ、言葉、商品、制度、常識、既成概念……。
AIが得意とするのも、まさにこちらの世界です。
⦿一方、「密」とは、まだ目には見えていないもの。
違和感、気配、感情、身体感覚、記憶、経験、関係性、そして「本当はこうしたい」という生きがい。私は、これを単純に「見えるもの」と「見えないもの」と考えないほうがよいと思うようになりました。
⇒「密」とは、隠れているものではなく、まだ顕になっていないもの。
そう考えると、「顕密思考」とは、
◎「顕になっている世界」と「まだ顕になっていない世界」を往還しながら、新しい意味・問い・価値を生み出す思考OS
と把えるとすっきりしてきます。
■「顕」だけでは、価値創造は起こりにくい
AIによって、私たちは膨大な情報を瞬時に集め、整理し、比較できるようになりました。
・「何がおきているのか」
・「何が売れているのか」
・「世の中は何を求めているのか」
こうした「顕」の世界を扱う能力は、かつてないほど高まっています。
しかし、ここに一つの問題があります。
⦿顕になっているものを、どれほど精密に分析しても、そこから生まれるのは「今までの延長線上」の答えになりやすい。
新しい価値を生み出すには、
・「なぜ、私はこれに引っかかるのだろう?」
・「なぜ、こんなことが気になるのだろう?」
という、言葉になる前の小さな違和感に立ちいる必要があります。
私は、この「ズレ」こそが、顕から密へ入っていく入口なのだと考えています。
「ズレ」がチャンスの入り口です。
■そこで「3つの知」が登場する
では、「密の世界」に入ったあと、私たちはどうすればよいのでしょうか。
ここで、私がこれまで考えてきた「3つの知」――「深く・高く・広く」がつながってきます。
1. 第一の知 「深く」
まず、深く掘る。
表面的な現象の奥にある、
・「本当は何が大切なのか」
・「この人は何を求めているのか」
・「自分は何に心が動くのか」
という、本質や意味まで降りていく。
これは、まさに「密」への探究です。
特にAI時代には、この「深く」が重要になります。
AIは答えを大量に出してくれます。
だからこそ、人間には、
⦿「私は、そもそも何を大切にしたいのか」
を問う力が必要になる。
ここで、これまで考えてきた「生きがい」の知ともつながってきます。
2. 第二の知 「高く」
しかし、深く掘るだけでは、過去や現在に閉じてしまうことがあります。
そこで、今度は高く飛ぶ。
現在の常識や既成概念から一度離れて、
・「もし、まったく違う物差しで見たら?」
・「10年後から今を見たら?」
・「そもそも、これは別のものなのではないか?」
と考えてみる。
ここで生まれるのが、「逸脱」や「別様」です。
つまり「高く」とは、単に高尚になることではありません。
⦿ 今までの物差しから一度離れ、別の可能性を見ること。
それが「高く」の知なのです。
3. 第三の知 「広く」
そして最後に、広くつなぐ。
一つの専門領域だけで考えるのではなく、
・人と人、
・過去と未来、
・異分野と異分野、
・地域と世界、
・技術と文化、
・本業とSDGs、
・本業とAI、
・AIと生きがい……
異なるものを横断してみる。
すると、それまで関係がないと思っていたものの間に、新しい関係が見えてきます。
私は、この「広く」の知が、新結合を生み出す力だと綴ってきました。
「深く・高く・広く」は、三方向の知である
ここまで考えると、「3つの知」は単なる知識の分類ではありません。
・深く=本質へ降りる。
・高く=既成概念から飛び出す。
・広く=異なるものをつなぐ。
この三つを往還することで、初めて「別様」が見えてくる。
そして、その「別様」を現実の世界に仕立て直したとき、
⇒ 新しい価値が生まれる。

■ 顕密思考と3つの知
私は、ここで「顕密思考」と「3つの知」の関係が見えてきました。
⦿顕密思考は、「顕」と「密」を往還する思考のOS。
⦿そして3つの知は、その往還を動かすための三つの方向性です。
・深く――密へ降りる。
・高く――既成の物差しから飛び出す。
・広く――異なるものをつなぐ。
そして、
「深く・高く・広く」考えることで、「まだ顕になっていないもの」が少しずつ顕になってくる。

■ AI時代だからこそ、「密」が重要になる
AIは、「顕」の世界をますます強くしていきます。
検索する。
整理する。
比較する。
要約する。
生成する。
AIは、人間の「顕」を大きく拡張してくれるでしょう。
しかし、
・「なぜ、これをやりたいのか」
・「なぜ、これが気になるのか」
・「自分はどんな未来を生きたいのか」
・「自分に生きがいは」
という問いは、単純にデータから導き出せるものではありません。
そこには、
・身体感覚
・経験
・記憶
・感情
・生きがい
・人との関係
といった「密」の世界があります。
だから私は、AI時代に必要なのは、
・「AIを使う能力」だけではない。
むしろ、
⦿「AIには扱いきれない、自分の密を感じ取る能力」
なのではないかと思うのです。
「顕密思考」から「価値創造」へ
すると、これまで考えてきた私自身の価値創造のプロセスも、少し違って見えてきます。
顕
↓
違和感・ズレ
↓
密
↓
深く掘る
↓
問いをつくる
↓
高く飛ぶ
↓
別様を見る
↓
広くつなぐ
↓
新しい結合
↓
仕立てる
↓
新しい価値
↓
再び「顕」の世界へ
そして、そこで生まれた新しい価値が、また誰かの「密」を刺激する。
また違和感が生まれる。
また新しい問いが生まれる。
つまり、価値創造は一度きりの直線ではなく、
⇒ 「顕」と「密」を往還する螺旋
となります。
■ 「深く・高く・広く」は、AI時代の人間の知になる
AIは、ますます「顕」の世界を広げていく。
だからこそ、人間は「密」の世界を大切にしなければならない。
そして、
深く、自分の内側へ。
高く、既成概念の外側へ。
広く、異なる世界の間へ。
この三方向に知を動かしていく。
私は、
・「顕密思考」×「3つの知」
という組み合わせの中に、
AI時代の「人間ならではの価値創造」の一つの可能性があると確信しています。
AIが「顕」を拡張する時代。
・人間は「密」を感じ、
・問いを生み、
・深く、高く、広く考え、
・まだ存在していない「別様」を見つける。
そして、それを新しい価値として「顕」にしていく。
・顕から密へ。
・密から別様へ。
・別様から価値へ。
・そして、再び顕へ。
この往還こそが、これからの「価値創造の知」です。
つまり、
「顕密思考」は、顕と密を往還するOSであり、「深く・高く・広く」は、そのOSを動かす三つの知である。
- 顕密思考=往還するための思考OS
- 3つの知=その往還を豊かにする3つの方向
- 価値創造=その結果として生まれるもの
⇒ 密に潜り、既成の物差しから高く飛び出し、異なるものを広くつなぐ。
その結果として、「別様」が生まれ、新しい価値になる。
価値創造から「事業創生・地域創生・人財創生」へ