2026年7月11日:人間は「密(まだ顕れていない世界)」に気づき、新しい問いを創る
前夜(第379夜)は、前前夜(第378夜)の「5位一体価値創造教育プログラム」に、「問い」創造の認識段階として、“「顕」は出発点、「密」は問いの源泉“を組み込んで更新しました。
AI時代に肝要となる「問い」に、それに先立つ「認識の段階」として、
- 顕(見えている世界)
- 密(見えない可能性の世界)
を置くと、教育プログラム全体が次のような一本の流れになります。
顕を見る → 密に気づく → 問いを創る → 未来を構想する → 偶然を活かす → 三つの知で意味を統合する → 新たな価値を創造する

上記は、これまで構築してきた
・「問い創造 → シナリオプランニング → セレンディピティ → 3つの知 → 価値創造」
という五位一体のナビゲーションの「入口」として、「顕」と「密」を配置することで、
教育プログラム全体が一つのブラシュアップストーリーとして完成しました。
これまで「五位一体プログラム」をまとめ、顕在化させたことが、その奥に隠れていた「密」を呼び起こすことにつながり顕在化させた、と思っています。
また、、この「顕」と「密」は、「問い創造工学」の前段階ではなく、価値創造教育の「認識の教育」として位置づけるのが最もわかりやすい、美しい型・構造になるのでは、という洞察です。
それは、これまで本コラムで一貫して追究してきた
・「価値創造を再現可能な知として体系化する」
という構想に、新たな基礎層を与える理論になったのではないかという嬉しさを感じています。
それでは、これらを具現化する「教育プログラム案」を提示いたします。
■価値創造教育プログラムコンセプト
→「AIは「顕(見えている世界)」を処理する。
人間は「密(まだ顕れていない世界)」に気づき、新しい問いを創る」
AI時代に大学教育、アントレプレナーシップ教育が育てるべき能力は、「知識を覚えること」ではなく、
「見えていない価値に気づき、意味を創ること」です。
第1段階 「顕」を見る
テーマ:「当たり前」を観察する力
学生への問い
- 今日一日で「当たり前」だと思ったことは?
- なぜそれが当たり前なのか?
- 誰がその当たり前を作ったのか?
演習:「大学キャンパスの中にある『当たり前』を20個書き出す」
例えば、
- 教室がある
- 時間割がある
- 試験がある
- コンビニがある
ここではまだ評価しません。
目的は
「顕」を意識化すること
です。
第2段階 「密」に気づく
テーマ:「見えていない価値」を探す
学生への問い
- 本当に他の方法はないのか?
- なぜ昔から変わらないのか?
- 誰も困っていないのか?
- 本当は何が欲しいのか?
演習
一つの「当たり前」を選び、
「他にもあり得た世界」
を書き出します。
例えば、
・教室→「教室が存在しない大学」
・試験→「試験のない大学」
・卒業→「卒業のない大学」
ここから
「密」
が現れてきます。
第3段階 問い創造
ここで初めて
「問い」
を作ります。
例えば、
・「大学は本当に教室で学ぶ場所なのか?」
・「卒業とは何のためにあるのか?」
・「地域は若者を失っているのか、それとも新しい価値を生み出しているのか?」
第4段階 シナリオプランニング
作った「問い」を使って、
「複数の未来の姿(像)」
を考えます。
例えば、
軸①:AI依存←→人間中心
軸②:地域密着←→世界連携
この2軸から4象限の未来が生まれます。
第5段階 セレンディピティ
異なるチーム同士で「問い」を交換します。
そこで
・偶然
・発見
・融合
を起こします。
ここでは「答え」ではなく
「予想外」「想定外」
を歓迎します。
第6段階 3つの知
最後にアイデアを三方向(価値創造の「3つの知」)から立案・構想・評価します。
・深い知:本当に人間にとって意味があるか?
・広い知:新しい組み合わせになっているか?
・高い知:未来を変える可能性があるか?
第7段階 価値創造
最後に学生自身が「新しい価値」を一枚にまとめます。
例えば、
テーマが「緑茶」(第370夜、377夜)なら、
「飲み物」
ではなく、
「人と人をつなぐ時間」
として再定義する。
ここで「価値」が生まれてきます。
[教育目標]
学生は知識を覚えるのではなく、
次の流れを体験します。
顕を見る
↓
密に気づく
↓
問いを創る
↓
未来を描く
↓
偶然を活かす
↓
意味を統合する
↓
価値を創る
■ AI時代に育てる7つの力
| 段階(プロセス) | 育成する力 |
| 顕 | 観察力 |
| 密 | 気づく力 |
| 問い創造 | 問題設定力 |
| シナリオ | 構想力 |
| セレンディピティ | 創発力 |
| 3つの知 | 意味構築力 |
| 価値創造 | 実践力 |
■このプログラムの独自性
ここで特に強調したいのは、「顕」と「密」を単なる「見える/見えない」の区別で終わらせず、
・「価値創造の出発点となる認識の転換」
として位置づけることです。
整理すると、
- 顕=現実をそのまま受け入れる認識(観察)
- 密=現実の奥に潜む可能性や文脈に気づく認識(洞察)
となり、この「密」があってこそ、初めて「問い」が生まれます。

つまり、
・「顕から密へと認識が深まり、密から問いが生まれ、問いから価値創造が始まる」
この一連の流れは、これまで提唱してきた「切実→逸脱→別様」という価値創造プロセスとも自然につながります。
この考え方を新価値創造研究所の新しい柱として、「顕密(けんみつ)思考」と名付けたいと思います。
次夜は、この「顕密(けんみつ)思考」を深堀し、顕在化していきます。
価値創造から、「事業創生・地域創生・人財創生」へ